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審決分類 審判    F4
管理番号 1381704 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-02-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2021-02-16 
確定日 2022-01-17 
意匠に係る物品 包装容器 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1597292号「包装容器」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
本件意匠登録第1597292号の意匠(以下「本件登録意匠」という。)は、平成29年(2017年)8月15日に意匠登録出願(意願2017−17549)されたものであって、審査を経て平成30年(2018年)1月19日に意匠権の設定の登録がなされ、同年2月13日に意匠公報が発行され、その後、当審において、概要、以下の手続を経たものである。

本件審判請求 令和3年 2月16日付け
審判事件答弁書提出 令和3年 6月14日付け
審判事件弁駁書提出 令和3年 8月12日付け
口頭審理陳述要領書(被請求人)提出 令和3年10月20日付け
口頭審理陳述要領書(請求人)提出 令和3年11月 4日付け
口頭審理 令和3年11月17日


第2 請求人の申し立て及び理由
請求人は、請求の趣旨を
「登録第1597292号意匠の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を、おおむね以下のとおり主張し(「審判事件弁駁書」及び「口頭審理陳述要領書」の内容を含む。)、その主張事実を立証するため、後記5に掲げた甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。

1 意匠登録無効の理由の要点
意匠登録第1597292号の意匠(以下「本件登録意匠」と称する。)は、甲第1号証の1、甲第1号証の2、乃至甲第8号証の1、甲第8号証の2の意匠と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。

2 本件意匠登録を無効とすべき理由
(1)本件登録意匠の説明
ア 本件登録意匠にについて
本件登録意匠は、下記の特徴を有する。
(特徴1)
本件登録意匠の意匠に係る物品は、食品の包装容器であり、食品を収容する容器本体のフランジ部よりも上側のトップフィルムからなる部分意匠である。
(特徴2)
本件登録意匠は、平面視の状態で、四隅が略円形に面取りされた略矩形で、周囲にフランジ部分があり、左下の隅には略半円形のタブがある。
(特徴3)
本件登録意匠は、フランジ部分の幅がすべて5mmであって統一的な幅であり、外縁部分の縦の長さに対するフランジ部分の幅の比は約0.059、外縁部分の横の長さに対するフランジ部分の幅の比は約0.045であり、平面視において、フランジ部分が少なからぬ視覚的な印象を与えるものである。
(特徴4)
本件登録意匠は、四隅の面取り部分における外縁部分の半径は15mmで、縦の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.27、横の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.19である。また内縁部分の半径は10mmで、縦の直線部分の長さに対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.17、横の直線部分の長さに対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.13である。四隅の面取り部分は平面視全体の中で視認可能な比率を占めていることから、面取り部分の存在が意匠全体において視覚的な印象を与えるものになっている。
(特徴5)
本件登録意匠は、ダブが平面視略円形で、半径7mmであり、平面視全体の中で視認可能な比率を占めていることから、タブの存在が意匠全体において視覚的な印象を与えるものになっている。
(特徴6)
本件登録意匠は、A−A断面図の状態で、トップフィルムのフランジ部分全面が容器本体のフランジ部全面に接合され、フランジ部分の内縁部よりも内側の領域が上方にドーム型に膨出している。
これにより、本件登録意匠は、トップフィルムの中央部が盛り上がった形状となっている。
イ 本件登録意匠の要部について
本件登録意匠は、全体として上記(特徴1)〜(特徴6)のような特徴を有する。
本件登録意匠に係る物品は、食料品店、スーパーやコンビニエンスストアの食料品売り場等において食品が販売される際に使用されるものであり、需要者は食品を購入する消費者である。
本件登録意匠に係る物品は、平積みされた状態や、平面視側が前面を向いた状態で陳列され、需要者は、食品を購入する際に、平面視の状態でトップフィルムに貼られたラベルや内部の食品を見て食品を購入するのが一般的である。つまり、需要者が本件登録意匠について最も注目するのは、平面視の状態で視認できる部分の全体形状である。
これらを総合すると、本件登録意匠の要部は、正面視において見える形状全体、つまり、平面視において特定の縦横比で、特定の大きさの面取りが行われた容器本体及びトップフィルムの略矩形の形状と、トップフィルムの中央部が特定の形状および高さに膨出した形状との組み合わせであると考えられる。
したがって、上述のとおり、本件登録意匠の要部は、上記(特徴1)〜(特徴6)に示す平面視の全体形状である。

(2)甲第1号証の1、甲第1号証の2について
ア 甲第1号証の1、甲第1号証の2の意匠の説明
甲第1号証の1は、twitter上の写真入りツイートである。このツイートのURLは下記のとおりである(甲第1号証の1の黒枠内にも記載あり)。
URL: https://twitter. com/Maxwellezu0926/status/786569160016793601
また、甲第1号証の1は、2020年(令和2年)10月27日に出力されたものである(甲第1号証の1の黒枠内にも記載あり)。
このツイートは、「えづらまさし」という投稿者が2016年(平成28年)10月13日にtwitterにアップロードしたものであり、投稿中にアップロードの日時である「午後11:07 2016年10月13日」という記載がある。
甲第1号証の2は、甲第1号証の1中の写真部分の拡大図である。ここには、複数の食品用包装容器が表示されている。URLと投稿者は甲第1号証の1と同じである(甲第1号証の2の黒枠内にも記載あり)。また、甲第1号証の2は、2020年(令和2年)10月26日に出力されたものである。
イ 本件登録意匠と甲第1号証の1、甲第1号証の2の意匠との対比
(ア)登録意匠と甲第1号証の1、甲第1号証の2の意匠の意匠に係る物品の対比
登録意匠に係る物品と、甲第1号証の1及び甲第1号証の2の意匠の意匠に係る物品は、ともに食品用包装容器であって、同一である。
(イ)本件登録意匠と甲第1号証の1、甲第1号証の2の意匠の形態の共通点及び差異点の列挙
a 共通点
甲第1号証の1、及び甲第1号証の2に写った個々の包装容器、たとえば甲第1号証の1の赤枠で囲んだ赤矢印[1]の包装容器(同じ包装容器を甲第1号証の2の赤矢印[1]に示す。)や、甲第1号証の1の青枠で囲んだ青矢印[2]の包装容器(同じ包装容器を甲第1号証の2の青矢印[2]に示す。)は、白色の容器本体と透明のトップフィルムとを備えたものである。なお、甲第1号証の1、及び甲第1号証の2において、それぞれの包装容器の内部には食品が収容されている。
甲第1号証の1、及び甲第1号証の2に係る包装容器は、平面視略矩形で周囲にフランジ部分があり、四隅に面取りがされた容器の平面視側にトップフィルムが存在する。トップフィルムの周囲は容器本体のフランジ部に貼着されている。トップフィルムの光沢の具合から、トップフィルムの中央部分は膨出している。トップフィルムの隅にはタブが存在する。
b 差異点
(あ)甲第1号証の1、及び甲第1号証の2に写った個々の包装容器では、平面視の状態における印象が略矩形であり、中央の列に写った包装容器で実測すると外縁部分の縦/横の比率は約0.53、内縁部分の縦/横の比率は約0.51である。
一方、本件登録意匠では、フランジ部分の外縁部分の縦/横比が約0.77、フランジ部分の内縁部分の縦/横比は約0.75である。
そのため甲第1号証の1、及び甲第1号証の2に写った個々の包装容器における容器本体やフランジ部分の略矩形の印象が微妙に相違する。
(い)甲第1号証の1、及び甲第1号証の2に写った個々の包装容器では、フランジ部分はすべて統一的な幅であり、トップフィルムの縦の長さに対するフランジ部分の幅の比が約0.095であり、トップフィルムの横の長さに対するフランジ部分の幅の比が約0.066である。
一方、本件登録意匠では、外縁部分の縦の長さに対するフランジ部分の幅の比は約0.059、外縁部分の横の長さに対するフランジ部分の輻の比は約0.045である。そのため甲第1号証の1、及び甲第1号証の2に写った個々の包装容器ではフランジ部分の幅に対する印象が本件登録意匠と微妙に相違する。
(う)甲第1号証の1、及び甲第1号証の2に写った個々の包装容器では、平面視における外縁部分及び内縁部分の四隅に面取り部分が設けられ、縦の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.23、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.133であり、縦の直線部分の長さに対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.27、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.11である。
一方、本件登録意匠は、縦の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.34、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.099であり、縦の直線部分の長さに対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.20、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.092である。そのため面取り部分と直線部分との相対的な印象が微妙に相違する。
(え)甲第1号証の1、及び甲第1号証の2に写った個々の包装容器では、例えば甲第1号証の2における右下の下段配置された包装容器のように左下側の隅部などに下向きに変形したタブを有するが、変形のため形状が不明である。
一方、本件登録意匠では、タブが平面視全体の中で視認可能な比率を占めていて、平面視で半径7mmの略円形である。そのためタブの印象が微妙に相違する。
(お)甲第1号証の1、及び甲第1号証の2に写った包装容器のトップフィルムの中央部分は、本件登録意匠のトップフィルムの中央部分に近似した状態で膨出していることは明らかだが、膨出の態様が完全に一致しているとは断定できない点で、本件登録意匠と微妙に相違する可能性もある。
(ウ)本件登録意匠と甲第1号証の1、甲第1号証の2の意匠の形態の共通点及び差異点の評価
上記(あ)に示す、本件登録意匠と、甲第1号証の1の意匠及び甲第1号証の2の意匠とに、平面視における外縁部分や内縁部分の略矩形の縦横比の差異があっても、その差異は微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(い)に示す、本件登録意匠と、甲第1号証の1の意匠及び甲第1号証の2の意匠との、トップフィルムの縦の長さや横の長さに対するフランジ部分の幅の比の差異も微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(う)に示す、本件登録意匠と、甲第1号証の1の意匠及び甲第1号証の2の意匠との、平面視方向の縦の直線部分の長さや横の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比や面取り部分の半径の比の差異も微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(え)に示す、本件登録意匠のタブと、甲第2号証の意匠のタブと、いずれも、平面視の一番隅の目立たない位置に存在し、かつ包装容器全体の大きさに占めるタブの大きさの占める比率は小さい。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(お)に示す、本件登録意匠のトップフィルムの中央部分の膨出の大きさと、甲第1号証の1の意匠及び甲第1号証の2の意匠のトップフィルムの中央部分の膨出の大きさとは、それぞれの、平面視におけるトップフィルムの外縁部分の(直線部分と面取り部分とを総合した)縱の長さや横の長さに比してはるかに微小である。また、トップフィルムの平面視前後方向の膨出の大きさや膨出の態様は、多少の差異があっても、平面視上下左右方向の差異よりも看者の美感に与える影響が小さい。そのため、本件登録意匠と、甲第1号証の1の意匠及び甲第1号証の2の意匠とのトップフィルムの膨出の大きさに差異があったとしても、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
以上示すとおり、上記(あ)〜(お)の差異点は全て微小なものなので、それらの差異点を総合しても、本件登録意匠と、甲第1号証の1の意匠及び甲第1号証の2の意匠の差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
つまり、本件登録意匠全体と、甲第1号証の1の意匠、及び甲第1号証の2の意匠は、いずれも、平面視略矩形で周囲にフランジ部分があり、四隅に面取りがされた容器の平面視側にトップフィルムが存在するものであり、トップフィルムの周囲は容器本体のフランジ部に貼着されており、トップフィルムの中央部分はトップフィルムの縦の長さや横の長さよりも微小な大きさ分膨出し、トップフィルムの隅には微小なタブが存在する、という美感上の特徴を有する包装容器の意匠である点で同一である。そして、上記(あ)〜(お)の差異点は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
ゆえに、本件登録意匠と、甲第1号証の1の意匠及び甲第1号証の2の意匠とは、需要者の視覚を通じて起こさせる美感において類似の印象を与えるものである。
(エ)本件登録意匠と甲第1号証の1、甲第1号証の2の意匠の意匠に係る物品及び形態の共通点及び差異点の評価に基づく類否の結論
以上示したとおり、本件登録意匠と、甲第1号証の1及び甲第1号証の2の意匠とは、意匠に係る物品が同一で、意匠が類似であるから、類似である。

(3)
ア 甲第2号証の意匠の説明
甲第2号証は、2005年(平成17年)11月25日 11時36分に撮影された写真であり、写真提供者は「Sealpac International bv」である。甲第2号証には、食品用包装容器が2つ、具体的には、赤矢印[1]に示す包装容器と、青矢印[2]に示す包装容器が表示されている。甲第2号証の[1][2]に示す2つの包装容器は、撮影された方向は違っているが、同一の意匠を備えている。甲第2号証に示す2つの包装容器は、それぞれ白色の容器本体と透明のトップフィルムとを備えている。
なお、それぞれの包装容器の内部には食品が収容されている。
なお、甲第2号証の撮影日時は<図3>に示す。<図3>には、甲第2号証の画像上にパーソナルコンピュー夕のカーソルを重ねて「撮影日時」等の項目を表示させた状態を示している(ただし甲第2号証にある矢印と丸数字は表示していない。)。
また、甲第9号証に甲第2号証のデータを記録する。この甲第9号証に記録された「甲第2号証」のデータは、「プロパティ」の「詳細」の「元の場所」の「撮影日時」欄に、<図3>の「撮影日時」表示と同じ「2005/11/25 11:36」という表示が現れる。
イ 本件登録意匠と甲第2号証の意匠との対比
(ア)登録意匠と甲第2号証の意匠の意匠に係る物品の対比
登録意匠に係る物品と、甲第2号証の意匠の意匠に係る物品は、ともに食品用包装容器であって、同一である。
(イ)本件登録意匠と甲第2号証の意匠の形態の共通点及び差異点の列挙
a 共通点
甲第2号証に写った個々の包装容器は、平面視略矩形で周囲にフランジ部分があり、四隅に面取りがされた容器の平面視側にトップフィルムが存在する。
トップフィルムの周囲はフランジ部分に貼着されている。トップフィルムの光沢の具合から、トップフィルムの中央部分は膨出している。トップフィルムの隅にはタブが存在する。
b 差異点
(あ)甲第2号証に写った包装容器では、平面視の状態における印象が略矩形であり、周囲にはフランジ部分がある。
一方、本件登録意匠では、略矩形の印象をもたらすものであって、フランジ部分の外縁部分の縦/横比が約0.77、フランジ部分の内縁部分の縦/横比は約0.75である。
甲第2号証に係る包装容器は前後に傾斜して写っているので、フランジ部分の縦横比の正確な特定は難しい。本件登録意匠と甲第2号証に写った包装容器のフランジ部分の縦横比が本件登録意匠に近似することは明確であるものの、甲第2号証に係る包装容器の縦横比や略矩形の印象が本件登録意匠と微妙に相違する可能性はある。
(い)甲第2号証に写った包装容器では、トップフィルムの手前側及び両側部側の3辺のフランジ部分は同等の幅を有し、奥側の1辺のフランジ部分も他の3辺と同等の幅を有することが予測できるため、フランジ部分はすべて統一的な幅である。実測により測定可能な外縁部分の横の長さに対するフランジ部分の幅の比は約0.024である。
一方、本件登録意匠では、外縁部分の縦の長さに対するフランジ部分の幅の比は約0.059、外縁部分の横の長さに対するフランジ部分の幅の比は約0.045である。そのため甲第2号証に写った包装容器ではフランジ部分の幅に対する印象が本件登録意匠と微妙に相違する。
(う)甲第2号証に写った個々の包装容器では、外縁部分及び内縁部分の四隅に面取り部分が設けられている。
また測定可能な手前側の横の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.12、手前側の横の直線部分の長さに対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.10で ある。
一方、本件登録意匠は、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.19であり、横の直線部分の長さに対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.13である。
そのため面取り部分と直線部分との印象が微妙に相違する。
(え)甲2号証に写った個々の包装容器では、四隅の一部、具体的には上段の包装容器における左手前側と奥側との各隅にタブが形成されているが、このタブは半円形状で立ち上がっている。
一方、本件登録意匠は、タブが平面視において、半径7mmの略円形である。そのためタブの大きさの印象が微妙に相違する。
(お)甲第2号証に写った包装容器のトップフィルムの中央部分は、本件登録意匠のトップフィルムの中央部分に近似した状態で膨出していることは明らかだが、膨出の態様が完全に一致しているとは断定できない点で、本件登録意匠と微妙に相違する可能性がある。
(ウ)本件登録意匠と甲第2号証の意匠の形態の共通点及び差異点の評価
甲第2号証の意匠との、平面視における外縁部分や内縁部分の略矩形の縦横比は、本件登録意匠の平面視における外縁部分や内縁部分の略矩形の縦横比とほぼ差異のないものである。また、上記(あ)に示す、本件登録意匠と、甲第2号証の意匠との、平面視における外縁部分や内縁部分の略矩形の縦横比に差異があっても、その差異は微細なものであり、需要者に異なる美感を起こさせるほどではない。
上記(い)に示す、本件登録意匠と、甲第2号証の意匠との、トップフィルムの縦の長さや横の長さに対するフランジ部分の幅の比の差異も微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(う)に示す、本件登録意匠と、甲第2号証の意匠との、平面視方向の縦の直線部分の長さや横の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比や面取り部分の半径の比の差異も微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(え)に示す、本件登録意匠のタブと、甲第2号証の意匠のタブと、いずれも、平面視の一番隅の目立たない位置に存在し、かつ包装容器全体の大きさに占めるタブの大きさの占める比率は小さい。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(お)に示す、本件登録意匠のトップフィルムの中央部分の膨出の大きさと、甲第2号証の意匠のトップフィルムの中央部分の膨出の大きさとは、それぞれの、平面視におけるトップフィルムの外縁部分の(直線部分と面取り部分とを総合した)縦の長さや横の長さに比してはるかに微小であるし、膨出の大きさや膨出の態様に多少の差異があっても看者の美感に与える影響は小さい。そのため、本件登録意匠と、甲第2号証の意匠とのトップフィルムの膨出の大きさに差異があったとしても、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
以上示すとおり、上記(あ)〜(お)の差異点は全て微小なものなので、それらの差異点を総合しても、本件登録意匠と、甲第2号証の意匠の差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
つまり、本件登録意匠全体と、甲第2号証の意匠は、いずれも、平面視略矩形で周囲にフランジ部分があり、四隅に面取りがされた容器の平面視側にトップフィルムが存在するものであり、トップフィルムの周囲は容器本体のフランジ部に貼着されており、トップフィルムの中央部分はトップフィルムの縦の長さや横の長さよりも微小な大きさ分膨出し、トップフィルムの隅には微小なタブが存在する、という美感上の特徴を有する包装容器の意匠である点で同一である。そして、上記(あ)〜(お)の差異点は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
ゆえに、本件登録意匠と、甲第2号証の意匠とは、需要者の視覚を通じて起こさせる美感において類似の印象を与えるものである。
(エ)本件登録意匠と甲第2号証の意匠の意匠に係る物品及び形態の共通点及び差異点の評価に基づく類否の結論
以上示したとおり、本件登録意匠と甲第2号証の意匠とは、意匠に係る物品が同一で、意匠が類似であるから、類似である。

(4)
ア 甲第3号証の意匠の説明
甲第3号証は、2005年(平成17年)5月31日 19時20分に撮影された写真であり、写真提供者は「Sealpac International bv」である。甲第3号証には、中央の点線赤枠で囲んだ部分に食品用包装容器が1つ表示されている。甲第3号証に示す包装容器は、赤色の容器本体と透明のトップフィルムとを備えている。甲第3号証において、包装容器の内部には食品が収容されている。また、甲第3号証の左下側に写っている、白文字で「SEALPAC」と記載された青い棒状の部材は甲第3号証の意匠に係る包装容器を構成するものではない。
なお、甲第3号証の撮影日時は<図4>に示す。<図4>には、甲第3号証の画像上にパーソナルコンピュータのカーソルを重ねて「撮影日時」等の項目を表示させた状態を示している(ただし甲第3号証にある点線赤枠は表示していない。)。
また、甲第9号証に甲第3号証のデータを記録する。この甲第9号証に記録された「甲第3号証」のデータは、「プロパティ」の「詳細」の「元の場所」の「撮影日時」欄に、<図4>の「撮影日時」表示と同じ「2005/05/31 19:20」という表示が現れる。
イ 本件登録意匠と甲第3号証の意匠との対比
(ア)登録意匠と甲第3号証の意匠の意匠に係る物品の対比
登録意匠に係る物品と、甲第3号証の意匠の意匠に係る物品は、ともに食品用包装容器であって、同一である。
(イ)本件登録意匠と甲第3号証の意匠の形態の共通点及び差異点の列挙
a 共通点
甲第3号証に写った包装容器は、平面視略矩形で周囲にフランジ部分があり、四隅に面取りがされた容器の平面視側にトップフィルムが存在する。トップフィルムの周囲は容器本体のフランジ部に貼着されている。トップフィルムの光沢の具合から、トップフィルムの中央部分は膨出している。トップフィルムの隅にはタブが存在する。
b 差異点
(あ)甲第3号証に写った包装容器では、平面視の状態における印象が略矩形であり、外縁部分の縦/横の比率は約0.64、内縁部分の縦/横の比率も約0.61である。
一方、本件登録意匠では、フランジ部分の外縁部分の縦/横比が約0.77、フランジ部分の内縁部分の縦/横比は約0.75である。そのため甲第3号証の包装容器における容器本体やフランジ部分の略矩形の印象が微妙に相違する。
(い)甲第3号証に写った包装容器では、フランジ部分はすべて統一的な幅であるものの、トップフィルムの縦の長さに対するフランジ部分の幅の比が約0.06であり、トップフィルムの横の長さに対するフランジ部分の幅の比が約0.038である。
一方、本件登録意匠では、外縁部分の縦の長さに対するフランジ部分の幅の比は約0.059、外縁部分の横の長さに対するフランジ部分の幅の比は約0.045である。そのため甲第3号証ではフランジ部分の幅に対する印象が本件登録意匠と微妙に相違する。
(う)甲第3号証に写った包装容器では、平面視における外縁部分及び内縁部分の四隅に面取り部分が設けられ、縦の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.24、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.14であり、縦の直線部分の長さに対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.21、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.12である。
一方、本件登録意匠は、縦の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.34、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.099であり、縦の直線部分の長さに対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.20、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.092である。そのため面取り部分と直線部分との印象が微妙に相違する。
(え)甲第3号証に写った包装容器では、四隅の一部における面取り部にタブが形状は明確でないが下向きに変形して設けられている。
一方、本件登録意匠では、タブは平面視で半径7mmの略円形である。そのためタブの大きさの印象が微妙に相違する。
(お)甲第3号証に写った包装容器のトップフィルムの中央部分は、本件登録意匠のトップフィルムの中央部分に近似した状態で膨出していることは明らかだが、膨出の態様が完全に一致しているとは断定できない点で、本件登録意匠と微妙に相違する可能性がある。
(ウ)本件登録意匠と甲第3号証の意匠の形態の共通点及び差異点の評価
上記(あ)に示す、本件登録意匠と、甲第3号証の意匠とに、平面視における外縁部分や内縁部分の略矩形の縦横比の差異があっても、その差異は微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(い)に示す、本件登録意匠と、甲第3号証の意匠との、トップフィルムの縦の長さや横の長さに対するフランジ部分の幅の比の差異も微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(う)に示す。本件登録意匠と、甲第3号証の意匠との、平面視方向の縦の直線部分の長さや横の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比や面取り部分の半径の比の差異も微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(え)に示す、本件登録意匠のタブと、甲第3号証の意匠のタブと、いずれも、平面視の一番隅の目立たない位置に存在し、かつ包装容器全体の大きさに占めるタブの大きさの占める比率は小さい。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(お)に示す、本件登録意匠のトップフィルムの中央部分の膨出の大きさと、甲第3号証の意匠のトップフィルムの中央部分の膨出の大きさとは、それぞれの、平面視におけるトップフィルムの外縁部分の(直線部分と面取り部分とを総合した)縦の長さや横の長さに比してはるかに微小であるし、膨出の大きさや膨出の態様に多少の差異があっても看者の美感に与える影響は小さい。そのため、本件登録意匠と、甲第3号証の意匠とのトップフィルムの膨出の大きさに差異があったとしても、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
以上示すとおり、上記(あ)〜(お)の差異点は全て微小なものなので、それらの差異点を総合しても、本件登録意匠と、甲第3号証の意匠の差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
つまり、本件登録意匠全体と、甲第3号証の意匠は、いずれも、平面視略矩形で周囲にフランジ部分があり、四隅に面取りがされた容器の平面視側にトップフィルムが存在するものであり、トップフィルムの周囲は容器本体のフランジ部に貼着されており、トップフィルムの中央部分はトップフィルムの縦の長さや横の長さよりも微小な大きさ分膨出し、トップフィルムの隅には微小なタブが存在する、という美感上の特徴を有する包装容器の意匠である点で同一である。そして、上記(あ)〜(お)の差異点は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
ゆえに、本件登録意匠と、甲第3号証の意匠とは、需要者の視覚を通じて起こさせる美感において類似の印象を与えるものである。
上記の(あ)(い)(う)(え)(お)の差異点が意匠全体の印象に与える影響は小さく、全体として共通点が与える印象が大きい。
(エ)本件登録意匠と甲第3号証の意匠の意匠に係る物品及び形態の共通点及び差異点の評価に基づく類否の結論
以上示したとおり、本件登録意匠と甲第3号証の意匠とは、意匠に係る物品が同一で、意匠が類似であるから、類似である。

(5)
ア 甲第4号証の意匠の説明
甲第4号証は、2005年(平成17年)6月1日 8時38分に撮影された写真であり、写真提供者は「Sealpac International bv」である。甲第4号証には、中央の点線赤枠で囲んだ部分に食品用包装容器が1つ表示されている。甲第4号証の包装容器は、赤色の容器本体と透明のトップフィルムとを備えたものである。甲第4号証において、包装容器の内部には食品が収容されている。
なお、甲第4号証の撮影日時は<図5>に示す。<図5>には、甲第4号証の画像上にパーソナルコンピュータのカーソルを重ねて「撮影日時」等の項目を表示させた状態を示している(ただし甲第4号証にある点線赤枠は表示していない。)。
また、甲第9号証に甲第4号証のデータを記録する。この甲第9号証に記録された「甲第4号証」のデータは、「プロパティ」の「詳細」の「元の場所」の「撮影日時」欄に、<図5>の「撮影日時」表示と同じ「2005/06/01 8:38」という表示が現れる。
また、本審判請求書の<図1>に示す状態において、本件登録意匠の容器本体やトップフィルムの平面視略矩形の縦横比は、縦方向よりも横方向の方が長い状態に表示されているが、甲第4号証は、容器本体やトップフィルムの平面視略矩形の縦横比が、横方向よりも縦方向の方が長い状態に示されている。以下、甲第4号証の意匠については、同号証に表示された平面視の状態に基づいて説明する。
イ 本件登録意匠と甲第4号証の意匠との対比
(ア)登録意匠と甲第4号証の意匠の意匠に係る物品の対比
登録意匠に係る物品と、甲第4号証の意匠の意匠に係る物品は、ともに食品用包装容器であって、同一である。
(イ)本件登録意匠と甲第4号証の意匠の形態の共通点及び差異点の列挙
a 共通点
甲第4号証に写った包装容器は、平面視略矩形で周囲にフランジ部分があり、四隅に面取りがされた容器の平面視側にトップフィルムが存在する。トップフィルムの周囲は容器本体のフランジ部に貼着されている。トップフィルムの光沢の具合から、トップフィルムの中央部分は膨出している。トップフィルムの隅にはタブが存在する。
b 差異点
(あ)甲第4号証に写った包装容器では、平面視の状態における印象が略矩形であり、外縁部分の横/縦の比率は約0.73、内縁部分の横/縦の比率も約0.69である。
一方、本件登録意匠では、フランジ部分の外縁部分の縦/横比が約0.77、フランジ部分の内縁部分の縦/横比は約0.75である。そのため甲第4号証の包装容器における容器本体やフランジ部分の略矩形の印象が微妙に相違する。
(い)甲第4号証に写った包装容器では、フランジ部分はすべて統一的な幅であるものの、トップフィルムの横の長さ(短い方)に対するフランジ部分の幅の比が約0.090であり、トップフィルムの縦の長さ(長い方)に対するフランジ部分の幅の比が約0.067である。
一方、本件登録意匠では、外縁部分の縦の長さ(長い方)に対するフランジ部分の幅の比は約0.059、外縁部分の横の長さ(短い方)に対するフランジ部分の幅の比は約0.045である。そのため甲第4号証ではフランジ部分の幅に対する印象が本件登録意匠と微妙に相違する。
(う)甲第4号証に写った包装容器では、平面視における外縁部分及び内縁部分の四隅に面取り部分が設けられ、横の直線部分の長さ(短い方)に対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.29、縦の直線部分の長さ(長い方)に対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.18であり、横の直線部分の長さ(短い方)に対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.14、縦の直線部分の長さ(長い方)に対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.091である。
一方、本件登録意匠は、縦の直線部分の長さ(短い方)に対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.27、横の直線部分の長さ(長い方)に対する面取り部分の半径の比が約0.19であり、縦の直線部分の長さ(短い方)に対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.17、横の直線部分の長さ(長い方)に対する面取り部分の半径の比が約0.13である。そのため面取り部分と直線部分との印象が微妙に相違する。
(え)甲第4号証に写った包装容器では、右上の隅にタブが形状は明確でないが下向きに変形して設けられている。
一方、本件登録意匠では、平面視で半径7mmの略円形である。そのためタブの大きさの印象が微妙に相違する。
(お)甲第4号証に写った包装容器のトップフィルムの中央部分は、本件登録意匠のトップフィルムの中央部分に近似した状態で膨出していることは明らかだが、膨出の態様が完全に一致しているとは断定できない点で、本件登録意匠と微妙に相違する可能性がある。
(ウ)本件登録彦匠と甲第4号証の意匠の形態の共通点及び差異点の評価
上記(あ)に示す、本件登録意匠と、甲第4号証の意匠とに、平面視における外縁部分や内縁部分の略矩形の縦横比の差異があっても、その差異は微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(い)に示す、本件登録意匠と、甲第4号証の意匠との、トップフィルムの縦の長さや横の長さに対するフランジ部分の幅の比の差異も微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(う)に示す、本件登録意匠と、甲第4号証の意匠との、平面視方向の縦の直線部分の長さや横の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比や面取り部分の半径の比の差異も微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(え)に示す、本件登録意匠のタブと、甲第4号証の意匠のタブと、いずれも、平面視の一番隅の目立たない位置に存在し、かつ包装容器全体の大きさに占めるタブの大きさの占める比率は小さい。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(お)に示す、本件登録意匠のトップフィルムの中央部分の膨出の大きさと、甲第4号証の意匠のトップフィルムの中央部分の膨出の大きさとは、それぞれの、平面視におけるトップフィルムの外縁部分の(直線部分と面取り部分とを総合した)縦の長さや横の長さに比してはるかに微小であるし、膨出の大きさや膨出の態様に多少の差異があっても看者の美感に与える影響は小さい。そのため、本件登録意匠と、甲第4号証の意匠とのトップフィルムの膨出の大きさに差異があったとしても、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
以上示すとおり、上記(あ)〜(お)の差異点は全て微小なものなので、それらの差異点を総合しても、本件登録意匠と、甲第4号証の意匠の差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
つまり、本件登録意匠全体と、甲第4号証の意匠は、いずれも、平面視略矩形で周囲にフランジ部分があり、四隅に面取りがされた容器の平面視側にトップフィルムが存在するものであり、トップフィルムの周囲は容器本体のフランジ部に貼着されており、トップフィルムの中央部分はトップフィルムの縦の長さや横の長さよりも微小な大きさ分膨出し、トップフィルムの隅には微小なタブが存在する、という美感上の特徴を有する包装容器の意匠である点で同一である。そして、上記(あ)〜(お)の差異点は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
ゆえに、本件登録意匠と、甲第4号証の意匠とは、需要者の視覚を通じて起こさせる美感において類似の印象を与えるものである。
上記の(あ)(い)(う)(え)(お)の差異点が意匠全体の印象に与える影響は小さく、全体として共通点が与える印象が大きい。
(エ)本件登録意匠と甲第4号証の意匠の意匠に係る物品及び形態の共通点及び差異点の評価に基づく類否の結論
以上示したとおり、本件登録意匠と甲第4号証の意匠とは、意匠に係る物品が同一で、意匠が類似であるから、類似である。

(6)
ア 甲第5号証の意匠の説明
甲第5号証は、2007年(平成19年)5月3日 15時6分に撮影された写真であり、写真提供者は「Sealpac International bv」である。甲第5号証には、中央の点線赤枠で囲んだ部分に食品用包装容器が1つ表示されている。甲第5号証の包装容器は、黄色の容器本体と透明のトップフィルムとを備えたものである。甲第5号証において、包装容器の内部には食品が収容されている。
なお、甲第5号証の撮影日時は<図6>に示す。<図6>には、甲第5号証の画像上にパーソナルコンピュータのカーソルを重ねて「撮影日時」等の項目を表示させた状態を示している(ただし甲第5号証にある点線赤枠は表示していない。)。
また、甲第9号証に甲第5号証のデータを記録する。この甲第9号証に記録された「甲第5号証」のデータは、「プロパティ」の「詳細」の「元の場所」の「撮影日時」欄に、<図6>の「撮影日時」表示と同じ「2007/05/03 15:06」という表示が現れる。
また、本審判請求書の<図1>に示す状態において、本件登録意匠の容器本体やトップフィルムの平面視略矩形の縦横比は、縦方向よりも横方向の方が長い状態に表示されているが、甲第5号証は、容器本体やトップフィルムの平面視略矩形の縦横比が、横方向よりも縦方向の方が長い状態に示されている。以下、甲第5号証の意匠については、同号証に表示された平面視の状態に基づいて説明する。
イ 本件登録意匠と甲第5号証の意匠との対比
(ア)登録意匠と甲第5号証の意匠の意匠に係る物品の対比
登録意匠に係る物品と、甲第5号証の意匠の意匠に係る物品は、ともに食品用包装容器であって、同一である。
(イ)本件登録意匠と甲第5号証の意匠の形態の共通点及び差異点の列挙
a 共通点
甲第5号証に写った包装容器は、平面視略矩形で周囲にフランジ部分があり、四隅に面取りがされた容器の平面視側にトップフィルムが存在する。トップフィルムの周囲は容器本体のフランジ部に貼着されている。トップフィルムの光沢の具合から、トップフィルムの中央部分は膨出している。トップフィルムの隅にはタブが存在する。
b 差異点
(あ)甲第5号証に写った包装容器では、平面視の状態における印象が略矩形であり、外縁部分の横/縦の比率は約0.68、内縁部分の横/縦の比率も約0.64である。
一方、本件登録意匠では、フランジ部分の外縁部分の縦/横比が約0.77、フランジ部分の内縁部分の縦/横比は約0.75である。そのため甲第5号証の包装容器における容器本体やフランジ部分の略矩形の印象が微妙に相違する。
(い)甲第5号証に写った包装容器では、フランジ部分はすべて統一的な幅であるものの、トップフィルムの横の長さ(短い方)に対するフランジ部分の幅の比が約0.079であり、トップフィルムの縦の長さ(長い方)に対するフランジ部分の幅の比が約0.054である。
一方、本件登録意匠では、外縁部分の縦の長さ(短い方)に対するフランジ部分の幅の比は約0.059、外縁部分の横の長さ(長い方)に対するフランジ部分の幅の比は約0.045である。そのため甲第5号証ではフランジ部分の幅に対する印象が本件登録意匠と微妙に相違する。
(う)甲第5号証に写った包装容器では、平面視における外縁部分及び内縁部分の四隅に面取り部分が設けられ、横の直線部分の長さ(短い方)に対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.29、縦の直線部分の長さ(長い方)に対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.16であり、横の直線部分の長さ(短い方)に対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.17、縦の直線部分の長さ(長い方)に対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.091である。
一方、本件登録意匠は、縦の直線部分の長さ(短い方)に対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.27、横の直線部分の長さ(長い方)に対する面取り部分の半径の比が約0.19であり。縦の直線部分の長さ(短い方)に対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.17、横の直線部分の長さ(長い方)に対する面取り部分の半径の比が約0.13である。そのため面取り部分と直線部分との印象が微妙に相違する。
(え)甲第5号証に写った包装容器では、包装容器の左上の隅部にタブが形状は明確でないが下向きに変形して設けられている。
一方、本件登録意匠では、タブは平面視で半径7mmの略円形である。そのためタブの大きさの印象が微妙に相違する。
(お)甲第5号証に写った包装容器のトップフィルムの中央部分は、本件登録意匠のトップフィルムの中央部分に近似した状態で膨出していることは明らかだが、膨出の態様が完全に一致しているとは断定できない点で、本件登録意匠と微妙に相違する可能性がある。
(ウ)本件登録意匠と甲第5号証の意匠の形態の共通点及び差異点の評価
上記(あ)に示す、本件登録意匠と、甲第5号証の意匠とに、平面視における外縁部分や内縁部分の略矩形の縦横比の差異があっても、その差異は微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(い)に示す、本件登録意匠と、甲第5号証の意匠との、トップフィルムの縦の長さや横の長さに対するフランジ部分の幅の比の差異も微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(う)に示す、本件登録意匠と、甲第5号証の意匠との、平面視方向の縦の直線部分の長さや横の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比や面取り部分の半径の比の差異も微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(え)に示す、本件登録意匠のタブと、甲第5号証の意匠のタブと、いずれも、平面視の一番隅の目立たない位置に存在し、かつ包装容器全体の大きさに占めるタブの大きさの占める比率は小さい。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(お)に示す、本件登録意匠のトップフィルムの中央部分の膨出の大きさと、甲第5号証の意匠のトップフィルムの中央部分の膨出の大きさとは、それぞれの、平面視におけるトップフィルムの外縁部分の(直線部分と面取り部分とを総合した)縦の長さや横の長さに比してはるかに微小であるし、膨出の大きさや膨出の態様に多少の差異があっても看者の美感に与える影響は小さい。そのため、本件登録意匠と、甲第5号証の意匠とのトップフィルムの膨出の大きさに差異があったとしても、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
以上示すとおり、上記(あ)〜(お)の差異点は全て微小なものなので、それらの差異点を総合しても、本件登録意匠と、甲第5号証の意匠の差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
つまり、本件登録意匠全体と、甲第5号証の意匠は、いずれも、平面視略矩形で周囲にフランジ部分があり、四隅に面取りがされた容器の平面視側にトップフィルムが存在するものであり、トップフィルムの周囲は容器本体のフランジ部に貼着されており、トップフィルムの中央部分はトップフィルムの縦の長さや横の長さよりも微小な大きさ分膨出し、トップフィルムの隅には微小なタブが存在する、という美感上の特徴を有する包装容器の意匠である点で同一である。そして、上記(あ)〜(お)の差異点は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
ゆえに、本件登録意匠と、甲第5号証の意匠とは、需要者の視覚を通じて起こさせる美感において類似の印象を与えるものである。
上記の(あ)(い)(う)(え)(お)の差異点が意匠全体の印象に与える影響は小さく、全体として共通点が与える印象が大きい。
(エ)本件登録意匠と甲第5号証の意匠の意匠に係る物品及び形態の共通点及び差異点の評価に基づく類否の結論
以上示したとおり、本件登録意匠と甲第5号証の意匠とは、意匠に係る物品が同一で、意匠が類似であるから、類似である。

(7)
ア 甲第6号証の1及び甲第6号証の2の意匠の説明
甲第6号証の1は、Interempresas Media社の発行する“Interempresas”のインターネット記事の一部である。甲第6号証の1は、2008年(平成20年)4月15日にInterempresas Media社によってアップロードされて公知になったものであって、2020年(令和2年)11月3日に出力されたものである。甲第6号証の1には、中央の点線赤枠で囲んだ部分に食品用包装容器が1つ表示されている。甲第6号証の1の包装容器は、青色の容器本体と透明のトップフィルムとを備えたものである。甲第6号証の1において、包装容器の内部には食品が収容されている。
http://www.interempresas.net/Alimentaria/Articulos/21255-Irta-Centa-celebra-una-jornada-sobre-envases-en-atmosfera-protectora.html
甲第6号証の2は、甲第6号証の1の記事の冒頭部分であって、2020年(令和2年)11月3日に出力されたものである。甲第6号証の2には、中央の点線赤丸で囲んだ部分に、記事がアップロードされて公知になった日/月/西暦を示す「15/04/2008」という記載がある。
なお、本審判請求書の<図1>に示す状態において、本件登録意匠の容器本体やトップフィルムの平面視略矩形の縦横比は、縦方向よりも横方向の方が長い状態に表示されているが、甲第6号証の1は、容器本体やトップフィルムの平面視略矩形の縦横比が、横方向よりも縦方向の方が長い状態に示されている。以下、甲第6号証の1の意匠については、同号証に表示された平面視の状態に基づいて説明する。
イ 本件登録意匠と甲第6号証の1の意匠との対比
(ア)登録意匠と甲第6号証の1の意匠の意匠に係る物品の対比
登録意匠に係る物品と、甲第6号証の1の意匠の意匠に係る物品は、ともに食品用包装容器であって、同一である。
(イ)本件登録意匠と甲第6号証の1の意匠の形態の共通点及び差異点の列挙
a 共通点
甲第6号証の1に写った包装容器は、平面視略矩形で周囲にフランジ部分があり、四隅に面取りがされた容器の平面視側にトップフィルムが存在する。トップフィルムの周囲は容器本体のフランジ部に貼着されている。トップフィルムの光沢の具合から、トップフィルムの中央部分は膨出している。
全体として、甲第6号証の1の包装容器の意匠は、本件登録意匠に類似したものである。
b 差異点
(あ)甲第6号証の1に写った包装容器では、平面視の状態における印象が略矩形であり、外縁部分の横/縦の比率は約0.68、内縁部分の横/縦の比率も0.66である。
一方、本件登録意匠では、フランジ部分の外縁部分の縦/横比が約0.77、フランジ部分の内縁部分の縦/横比は約0.75である。そのため甲第6号証の1に写った包装容器における容器本体やフランジ部分の略矩形の印象が微妙に相違する。
(い)甲第6号証の1に写った包装容器では、フランジ部分はすべて統一的な幅であり、トップフィルムの横の長さ(短い方)に対するフランジ部分の幅の比が約0.048であり、トップフィルムの縦の長さ(長い方)に対するフランジ部分の幅の比が約0.032である。
一方、本件登録意匠では、外縁部分の縦の長さ(短い方)に対するフランジ部分の幅の比は約0.059、外縁部分の横の長さ(長い方)に対するフランジ部分の幅の比は約0.045である。そのため甲第6号証の1ではフランジ部分の幅に対する印象が本件登録意匠と微妙に相違する。
(う)甲第6号証の1に写った包装容器では、平面視における外縁部分及び内縁部分の四隅に面取り部分が設けちれ、横の直線部分の長さ(短い方)に対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.25、縦の直線部分の長さ(長い方)に対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.15であり、横の直線部分の長さ(短い方)に対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.14、縦の直線部分の長さ(長い方)に対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.083である。
一方、本件登録意匠は、縦の直線部分の長さ(短い方)に対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.27、横の直線部分の長さ(長い方)に対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.19であり、縦の直線部分の長さ(短い方)に対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.17、横の直線部分の長さ(長い方)に対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.13である。そのため面取り部分と直線部分との印象が微妙に相違する。
(え)甲第6号証の1に写った包装容器には、タブは存在しない。この点で、タブが存在する本件登録意匠とタブの存在しない甲第6号証の1とは相違する。
(お)甲第6号証の1に写った包装容器のトップフィルムの中央部分は、本件登録意匠のトップフィルムの中央部分に近似した状態で膨出していることは明らかだが、膨出の態様が完全に一致しているとは断定できない点で、本件登録意匠と微妙に相違する可能性がある。
(ウ)本件登録意匠と甲第6号証の1の意匠の形態の共通点及び差異点の評価
上記(あ)に示す、本件登録意匠と、甲第6号証の1の意匠とに、平面視における外縁部分や内縁部分の略矩形の縦横比の差異があっても、その差異は微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(い)に示す、本件登録意匠と、甲第6号証の1の意匠との、トップフィルムの縦の長さや横の長さに対するフランジ部分の幅の比の差異も微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(う)に示す、本件登録意匠と、甲第6号証の1の意匠との、平面視方向の縦の直線部分の長さや横の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比や面取り部分の半径の比の差異も微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(え)に示す通り、甲第6号証の1の意匠にはタブは存在しない。しかし、本件登録意匠のタブは、平面視の一番隅の目立たない位置に存在し、かつ包装容器全体の大きさに占めるタブの大きさの占める比率は小さい。そしてそれゆえに、本件登録意匠と甲第6号証の1の意匠とにおけるタブの有無による差異は微小なものであり、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(お)に示す、本件登録意匠のトップフィルムの中央部分の膨出の大きさと、甲第6号証の1の意匠のトップフィルムの中央部分の膨出の大きさとは、それぞれの、平面視におけるトップフィルムの外縁部分の(直線部分と面取り部分とを総合した)縦の長さや横の長さに比してはるかに微小であるし、膨出の大きさや膨出の態様に多少の差異があっても看者の美感に与える影響は小さい。そのため、本件登録意匠と、甲第6号証の1の意匠とのトップフィルムの膨出の大きさに差異があったとしても、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
以上示すとおり、上記(あ)〜(お)の差異点は全て微小なものなので、それらの差異点を総合しても、本件登録意匠と、甲第6号証の1の意匠の差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
つまり、本件登録意匠全体と、甲第6号証の1の意匠は、いずれも、平面視略矩形で周囲にフランジ部分があり、四隅に面取りがされた容器の平面視側にトップフィルムが存在するものであり、トップフィルムの周囲は容器本体のフランジ部に貼着されており、トップフィルムの中央部分はトップフィルムの縦の長さや横の長さよりも微小な大きさ分膨出し、トップフィルムの隅には微小なタブが存在する、という美感上の特徴を有する包装容器の意匠である点で同一である。そして、上記(あ)〜(お)の差異点は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
ゆえに、本件登録意匠と、甲6号証の1の意匠とは、需要者の視覚を通じて起こさせる美感において類似の印象を与えるものである。
(エ)本件登録意匠と甲第6号証の1の意匠の意匠に係る物品及び形態の共通点及び差異点の評価に基づく類否の結論
以上示したとおり、本件登録意匠と甲第6号証の1の意匠とは、意匠に係る物品が同一で、意匠が類似であるから、類似である。

(8)
ア 甲第7号証の1及び甲第7号証の2の意匠の説明
甲第7号証の1、甲第7号証の2には、中央部の点線赤枠で囲んだ部分に、本件登録意匠の出願日である平成29年(2017年)8月15日よりも前に製造販売されていた製造機械で製造された食品用包装容器が1つ表示されている。甲第7号証の1には同包装容器の平前視状態が、甲第7号証の2には同包装容器の正面視状態が示されている。甲第7号証の1、甲第7号証の2の包装容器は、平面視が薄茶色で正面視が白色の容器本体と透明のトップフィルムとを備えたものである。甲第7号証の1、甲第7号証の2において、包装容器の内部には食品が収容されている。
イ 本件登録意匠と甲第7号証の1、甲第7号証の2の意匠との対比
(ア)登録意匠と甲第7号証の1、甲第7号証の2の意匠の意匠に係る物品の対比
登録意匠に係る物品と、甲第7号証の1、及び甲第7号証の2の意匠の意匠に係る物品は、ともに食品用包装容器であって、同一である。
(イ)本件登録意匠と甲第7号証の1、甲第7号証の2の意匠の形態の共通点及び差異点の列挙
a 共通点
甲第7号証の1、及び甲第7号証の2に写った包装容器は、平面視略矩形の容器本体の周囲にフランジ部があり、四隅に面取りがされた容器本体の平面視側にトップフィルムが存在する。トップフィルムの周囲は容器本体のフランジ部に貼着されている。トップフィルムの光沢の具合から、トップフィルムの中央部分は膨出している。トップフィルムの隅には、包装容器全体の印象に大きな影響を与えない大きさと形状のタブが存在する。
b 差異点
(あ)甲第7号証の1、及び甲第7号証の2に写った包装容器のフランジ部分の幅はすべて約6mmであって統一的な幅であり、平面視において、フランジ部分が少なからぬ視覚的な印象を与えるが、トップフィルムの外縁部分の縦の長さ117mmで、外縁部分の縦の長さに対するフランジ部分の幅の比が約0.051であり、外縁部分の横の長さが193mmで、外縁部分の横の長さに対するフランジ部分の幅の比が約0.031である。
一方、本件登録意匠では、外縁部分の縦の長さに対するフランジ部分の幅の比は約0.059、外縁部分の横の長さに対するフランジ部分の幅の比は約0.045である。そのためフランジ部分の幅に対する印象が本件登録意匠と微妙に相違する。
(い)甲第7号証の1、及び甲第7号証の2に写った包装容器の四隅の面取り部分は、四隅の面取り部分の外縁部分の半径21mm、内縁部分の半径15mmで、面取り部分の存在が意匠全体において視覚的な印象を与えるものである。
甲第7号証の1、及び甲第7号証の2では、縦の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.25、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.14であり、縦の直線部分の長さに対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.18、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.098である。
一方、本件登録意匠は、縦の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.27、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.19であり、縦の直線部分の長さに対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.17、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.13である。そのため面取り部分と直線部分との印象が微妙に相違する。
ただし、面取り部分が平面視において占める比率は、容器本体のフランジ部やトップシールのフランジ部分の直線部分に比べてはるかに小さいので、本件登録意匠の平面視の形状は、四隅に面取りがされた略矩形の形状という印象を与えるものになっている。
(う)甲第7号証の1、及び甲第7号証の2に写った包装容器のタブは長さ約12mmであり、平面視全体の中で視認可能な比率を占め七いることから、タブの存在が意匠全体において視覚的な印象を与えるものになっている。
一方、本件登録意匠では、タブが平面視全体の中で視認可能な比率を占めているが、平面視略円形で半径7mmである。そのためタブの印象が微妙に相違する。
ただし、タブが平面視において占める比率は容器周縁部やフランジ部分の直線で形成された部分に比べてはるかに小さいので、本件登録意匠の平面視の形状は、タブの存在によって、四隅に面取りがされた略矩形の形状という印象が変わるもではない。
(え)甲第7号証の1、及び甲第7号証の2に写った包装容器のトップフィルムは、フランジ部分の内縁部よりも内側領域が上方に膨出している。甲第7号証の2から明らかなように、トップフィルムは内容物と部分的に接触することで多少いびつではあるものの、他の領域では内容物の上面より上方に離間して湾曲形状で配置されている。そのためトップフィルムは、フランジ部分の内縁部よりも内側領域が上方にドーム型に膨出した形状となっている。
一方、本件登録意匠は、トップフィルムがフランジ部分の内縁部よりも内側領域が上方にひずみなくドーム状に膨出している。
そのため甲第7号証の1、及び甲第7号証の2に写った包装容器は、ひずみの有無などにより本件登録意匠とは膨出状態の印象が微妙に相違する。
(ウ)本件登録意匠と甲第7号証の1、甲第7号証の2の意匠の形態の共通点及び差異点の評価
上記(あ)に示す、本件登録意匠と、甲第7号証の1、及び甲第7号証の2の意匠とに、平面視における外縁部分や内縁部分の略矩形の縦横比の差異があっても、その差異は微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(い)に示す、本件登録意匠と、甲第7号証の1、及び甲第7号証の2の意匠との、トップフィルムの縦の長さや横の長さに対するフランジ部分の幅の比の差異も微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(う)に示す、本件登録意匠と、甲第7号証の1、及び甲第7号証の2の意匠との、平面視方向の縦の直線部分の長さや横の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比や面取り部分の半径の比の差異も微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(え)に示す通り、甲第7号証の1、及び甲第7号証の2の意匠にはタブは存在しない。しかし、本件登録意匠のタブは、平面視の一番隅の目立たない位置に存在し、かつ包装容器全体の大きさに占めるタブの大きさの占める比率は小さい。そしてそれゆえに、本件登録意匠と甲第7号証の1、及び甲第7号証の2の意匠とにおけるタブの有無による差異は微小なものであり、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(お)に示す、本件登録意匠のトップフィルムの中央部分の膨出の大きさと、甲第7号証の1、及び甲第7号証の2の意匠のトップフィルムの中央部分の膨出の大きさとは、それぞれの、平面視に診けるトップフィルムの外縁部分の(直線部分と面取り部分とを総合した)縦の長さや横の長さに比してはるかに微小であるし、膨出の大きさや膨出の態様に多少の差異があっても看者の美感に与える影響は小さい。そのため、本件登録意匠と、甲第7号証の1、及び甲第7号証の2の意匠とのトップフィルムの膨出の大きさに差異があったとしても、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
以上示すとおり、上記(あ)〜(お)の差異点は全て微小なものなので、それらの差異点を総合しても、本件登録意匠と丁甲第7号証の1、及び甲第7号証の2の意匠の差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
つまり、本件登録意匠全体と、甲第7号証の1、及び甲第7号証の2の意匠は、いずれも、平面視略矩形で周囲にフランジ部分があり、四隅に面取りがされた容器の平面視側にトップフィルムが存在するものであり、トップフィルムの周囲は容器本体のフランジ部に貼着されており、トップフィルムの中央部分はトップフィルムの縦の長さや横の長さよりも微小な大きさ分膨出し、トップフィルムの隅には微小なタブが存在する、という美感上の特徴を有する包装容器の意匠である点で同一である。そして、上記(あ)〜(お)の差異点は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
ゆえに、本件登録意匠と、甲第7号証の1、及び甲第7号証の2の意匠とは、需要者の視覚を通じて起こさせる美感において類似の印象を与えるものである。
(エ)本件登録意匠と甲第7号証の1、甲第7号証の2の意匠の意匠に係る物品及び形態の共通点及び差異点の評価に基づく類否の結論
以上示したとおり、本件登録意匠と甲第7号証の1、及び甲第7号証の2の意匠とは、意匠に係る物品が同一で、意匠が類似であるから、類似である。

(9)
ア 甲第8号証の1及び甲第8号証の2の意匠の説明
甲第8号証の1、甲第8号証の2は、中央部の点線赤枠で囲んだ部分に、本件登録意匠の出願日である平成29年(2017年)8月15日よりも前に製造販売されていた製造機械で製造された食品用包装容器が1つ表示されている。甲第8号証の1には同包装容器の平面視状態が、甲第8号証の2には同包装容器の正面視状態が示されている。甲第8号証の1、甲第8号証の2の包装容器は、平面視が薄茶色で正面視が白色の容器本体と透明のトップフィルムとを備えたものである。甲第8号証の1、甲第8号証の2において、包装容器の内部には食品が収容されている。
イ 本件登録意匠と甲第8号証の1、甲第8号証の2の意匠との対比
(ア)登録意匠と甲第8号証の1、甲第8号証の2の意匠の意匠に係る物品の対比
登録意匠に係る物品と、甲第8号証の1及び甲第8号証の2の意匠の意匠に係る物品は、ともに食品用包装容器であって、同一である。
(イ)本件登録意匠と甲第8号証の1、甲第8号証の2の意匠の形態の共通点及び差異点の列挙
a 共通点
甲第8号証の1、甲第8号証の2に写った包装容器は、平面視略矩形で周囲にフランジ部分があり、四隅に面取りがされた容器の平面視側にトップフィルムが存在する。トップフィルムの周囲は容器本体のフランジ部に貼着されている。トップフィルムの光沢の具合から、トップフィルムの中央部分は膨出している。トップフィルムの隅にはタブが存在する。
b 差異点
(あ)甲第8号証の1、甲第8号証の2に写った包装容器のフランジ部分の幅はすべて統一的な幅であり、平面視において、フランジ部分が少なからぬ視覚的な印象を与えるが、外縁部分の縦の長さに対するフランジ部分の幅の比が約0.065であり、外縁部分の横の長さに対するフランジ部分の幅の比が約0.040である。
一方、本件登録意匠では、外縁部分の縦の長さに対するフランジ部分の幅の比は約0.059、外縁部分の横の長さに対するフランジ部分の幅の比は約0.045である。そのためフランジ部分の幅に対する印象が本件登録意匠と微妙に相違する。
(い)甲第8号証の1、甲第8号証の2に写った包装容器では、四隅の面取り部分の存在が意匠全体において視覚的な印象を与えるものであり、縦の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.23、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.13であり、縦の直線部分の長さに対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.15、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.083である。
一方、本件登録意匠は、縦の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比が約0.27、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.19であり、縦の直線部分の長さに対する内縁部分の面取り部分の半径の比が約0.17、横の直線部分の長さに対する面取り部分の半径の比が約0.13である。そのため面取り部分と直線部分との印象が微妙に相違する。
ただし、面取り部分が平面視において占める比率は、容器本体のフランジ部やトップシールのフランジ部分の直線部分に比べてはるかに小さいので、本件登録意匠の平面視の形状は、四隅に面取りがされた略矩形の形状という印象を与えるものになっている。
(う)甲第8号証の1、甲第8号証の2に写った包装容器のタブは左隅に設けられて変形しているが、平面視全体の中で視認可能な比率を占めていることから、タブの存在が意匠全体において視覚的な印象を与えるものになっている。
一方、本件登録意匠では、タブが平面視全体の中で視認可能な比率を占めていて、平面視略円形で半径7mmである。そのためタブの印象が微妙に相違する。
ただし、タブが平面視において占める比率は容器周縁部やフランジ部分の直線で形成された部分に比べてはるかに小さいので、本件登録意匠の平面視の形状は、タブの存在によって、四隅に面取りがされた略矩形の形状という印象が変わるものではない。
(え)甲第8号証の1、甲第8号証の2に写った包装容器のトップフィルムは、フランジ部分の内縁部よりも内側領域が上方にドーム型に膨出している。これにより、本件登録意匠はトップフィルムの中央部が盛り上がった形状となっている。
一方、本件登録意匠は、トップフィルムがフランジ部分の内縁部よりも内側領域が上方にドーム状に膨出していて、内縁部間100mmの領域で最も盛り上がった部分の高さが7mmである。
そのため甲第8号証の1、甲第8号証の2に写った包装容器は、フランジ部分の内側縁よりも内側領域の上方への膨出した高さが低く、本件登録意匠とは膨出状態の印象が微妙に相違する。
(ウ)本件登録意匠と甲第8号証の1、甲第8号証の2の意匠の形態の共通点及び差異点の評価
上記(あ)に示す、本件登録意匠と、甲第8号証の1、及び甲第8号証の2の意匠とに、平面視における外縁部分や内縁部分の略矩形の縦横比の差異があっても、その差異は微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(い)に示す、本件登録意匠と、甲第8号証の1、及び甲第8号証の2の意匠との、トップフィルムの縦の長さや横の長さに対するフランジ部分の幅の比の差異も微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(う)に示す、本件登録意匠と、甲第8号証の1、及び甲第8号証の2の意匠との、平面視方向の縦の直線部分の長さや横の直線部分の長さに対する外縁部分の面取り部分の半径の比や面取り部分の半径の比の差異も微細なものである。そして、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(え)に示す通り、甲第8号証の1、及び甲第8号証の2の意匠にはタブは存在しない。しかし、本件登録意匠のタブは、平面視の一番隅の目立たない位置に存在し、かつ包装容器全体の大きさに占めるタブの大きさの占める比率は小さい。そしてそれゆえに、本件登録意匠と甲第8号証の1、及び甲第8号証の2の意匠とにおけるタブの有無による差異は微小なものであり、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
上記(お)に示す、本件登録意匠のトップフィルムの中央部分の膨出の大きさと、甲第8号証の1、及び甲第8号証の2の意匠のトップフィルムの中央部分の膨出の大きさとは、それぞれの、平面視におけるトップフィルムの外縁部分の(直線部分と面取り部分とを総合した)縦の長さや横の長さに比してはるかに微小であるし、膨出の大きさや膨出の態様に多少の差異があっても看者の美感に与える影響は小さい。そのため、本件登録意匠と、甲第8号証の1、及び甲第8号証の2の意匠とのトップフィルムの膨出の大きさに差異があったとしても、その差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
以上示すとおり、上記(あ)〜(お)の差異点は全て微小なものなので、それらの差異点を総合しても、本件登録意匠と、甲第8号証の1、及び甲第8号証の2の意匠の差異は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
つまり、本件登録意匠全体と、甲第8号証の1、及び甲第8号証の2の意匠は、いずれも、平面視略矩形で周囲にフランジ部分があり、四隅に面取りがされた容器の平面視側にトップフィルムが存在するものであり、トップフィルムの周囲は容器本体のフランジ部に貼着されており、トップフィルムの中央部分はトップフィルムの縦の長さや横の長さよりも微小な大きさ分膨出し、トップフィルムの隅には微小なタブが存在する、という美感上の特徴を有する包装容器の意匠である点で同一である。そして、上記(あ)〜(お)の差異点は、需要者に異なる美感を起こさせるほどの差異ではない。
ゆえに、本件登録意匠と、甲第8号証の1、及び甲第8号証の2の意匠とは、需要者の視覚を通じて起こさせる美感において類似の印象を与えるものである。
(エ)本件登録意匠と甲第8号証の1、甲第8号証の2の意匠の意匠に係る物品及び形態の共通点及び差異点の評価に基づく類否の結論
以上示したとおり、本件登録意匠と甲第8号証の1、甲第8号証の2の意匠とは、意匠に係る物品が同一で、意匠が類似であるから、類似である。

3 「審判事件弁駁書」における主張
(1)後記第3の1(2)に対する反論
被請求人は「本件登録意匠の部分は「被包装物に接したドーム状に形成したトップフィルム」を指すものであり、当該部分が当該物品の「包装容器」の需要者が注意を引く要部(意匠的特徴)である。」と主張している。
ここで、「フィルム」とは「薄皮。薄膜。」である(「広辞苑」第5版。甲第10号証)。そして、一般的には、合成樹脂などの高分子成分などを薄い膜状に成型したものであって軟質であり、固体の物体が接触した場合、その接触した部分は物体の形状に沿って変形する。
もし、物体が接触した部分が変形しないとすれば、それはフィルムが硬質の材質で形成されているような特殊な場合であるが、本件登録意匠の「意匠に係る物品の説明」には、本件意匠に係る物品であるトップフィルムが硬質の特殊な材質で形成されている旨の記載はない。
したがって、本件意匠を構成するトップフィルムは一般的な「フィルム」であり、たとえ容器内部の圧力等によってドーム状に成型されていたとしても、容器内部に収容された被包装物(たとえば固体の食品)とトップフィルムとが接触した部分は、その「被包装物の表面に沿って」変形して膨出するものである。
それゆえ、本件意匠を構成するトップフィルムは、字義どおりの単純な「ドーム型」ではなく、「被包装物の表面に沿って変形し膨出した部分を少なくとも一部に含む略ドーム型」となる。
本件意匠に係る物品の類比判断の基準となるべき需要者は、量販店等の店舗で本件意匠に係る物品の包装容器に収容された被包装物(食品)を購入する消費者である。その需要者は、被包装物(食品)が内包された包装容器を店舗で視認する場合、被包装物が当接した部分が「被包装物の表面に沿って」変形し膨出していることを踏まえつつ、包装容器の意匠ないし包装容器のフランジ及びトップフィルムの意匠を認識するものである。換言すれば、被包装物に接触してトップフィルムの少なくとも一部が「被包装物の表面に沿って」変形し膨出していることは、需要者が店舗で当該意匠に係る物品を視認する際に見慣れたものであって、特段注目される部分ではないので、公知意匠と本件意匠の類比を判断する上で大きな特徴として認識されることはない。
よって、本件意匠と公知意匠とは、上述したような本件意匠の意匠に係る物品の特質と実情に鑑みて、類比が判断されるものである。

(2)後記第3の1(3)アに対する反論
被請求人は、「甲第1号証の1、甲第1号証の2に現れた包装容器の意匠は、表面はドーム状でなく、平面である。」と述べている。
しかし、甲第1号証の1、甲第1号証の2に現れた包装容器のトップフィルム表面には、弧状に湾曲した光沢が形成されている(甲第11号証)。この光沢の位置と形状は、甲第1号証の1、甲第1号証の2に示すトップフィルムが上方側に湾曲して略ドーム状に膨出していることを示している。
従って、甲第1号証の1、甲第1号証の2のフランジ及びトップフィルムの意匠は、被請求人が主張するような平面ではなく、略ドーム状に形成されており、本件意匠に類似する。

(3)後記第3の1(3)イ〜クに対する反論
被請求人は、甲第2号証乃至甲第8号証の1、甲第8号証の2に係る意匠について「「被包装物の表面に沿って」トップフィルムを覆いかぶせる仕様」であると主張し、また、「本件登録意匠の『トップフィルムは、「被包装物に接したドーム状に形成することにより被包装物を立体的に」包装』とは意匠的特徴が異なる」と主張している。
しかし、甲第2号証乃至甲第8号証の1、甲第8号証の2に係る意匠は、容器内部に封入されたガスの圧力によってトップフィルムが略ドーム型に膨出している。また、上記6(1)にて述べたとおり、トップフィルムの少なくとも一部が「被包装物の表面に沿って」膨出していることは、需要者が店舗で当該意匠に係る物品を視認する際に見慣れたものであって、特段注目される部分ではない。
さらには、甲第2号証乃至甲第8号証の1、甲第8号証の2において、被包装物がトップフィルムに接触した部分の被包装物の表面に沿った膨出の度合いは、トップフィルムが全体として略ドーム型に膨出している膨出の度合いよりもはるかに小さい。そのため、被包装物がトップフィルムに接触した部分の被包装物の表面に沿った膨出は、本件意匠に係る物品を視認した需要者の心象に大きな影響を与えるものではない。
そして、甲第2号証乃至甲第8号証の1、甲第8号証の2に係る意匠において、トップフィルムの少なくとも一部が「被包装物の表面に沿って」膨出していることは、本件意匠の類比判断において大きな特徴として認識されることはないし、大きな相違にもなっていない。
よって、甲第2号証乃至甲第8号証の1、甲第8号証の2に係るフランジ及びトップフィルムの意匠は、被請求人が主張するような平面ではなく、略ドーム状に形成されており、本件意匠に類似する。

4 「口頭審理陳述要領書」における主張
(1)後記第3の2(1)に対する再反論(その1)
被請求人は、後記第3の2(1)において、「本件登録意匠の部分は「被包装物に接したドーム状に形成したトップフィルム」であり、請求人の主張する「字義どおりの単純な「ド一ム型」ではなく、「被包装物の表面に沿って変形し膨出した部分を少なくとも一部に含む略ドーム型」となる。」とは異なる。」と主張している。
しかし、トップフィルムが軟質の部材で形成され、容器本体とトップフィルムで形成された空間内に食品のような被包装物と大気圧より高いガス圧が存在する場合、トップフィルムがガス圧で膨出することと、包装容器のトップフィルムが容器本体よりも高さのある被包装物に接触して膨出することは、双方同時に起こり得るものである。
容器本体の内部に、 容器本体よりも高さ方向に盛り上がった部分のある固体の被包装物が収容され、大気圧より圧力の高いガスが充填されて、トップフィルムの一部が被包装物に接触した状態で周縁部がフランジに溶着された場合、トップフィルムには下記(a)(b)に示す押圧力がそれぞれ加わる。
(a)トップフィルムが被包装物に接触していない部分:トップフィルム全体がガス圧に押圧されて、 平面視略中央部近傍を頂点とするドーム型(ガスの圧力による作用でトップフィルムが変形した形状)となる。
(b)トップフィルムが被包装物に接触している部分:被包装物の接触部分が部分的に押圧されて、被包装物に沿って高さ方向に盛り上がった形状(被包装物の形状によってトップフィルムが変形した形状)となる。
これにより、トップフィルムは、上記(a)のみによる字義どおりの単純なドーム型ではなく、上記(a)と(b)が融合することによる、「被包装物の表面に沿って変形し膨出した部分を少なくとも一部に含む略ドーム型」となるものである。

(2)後記第3の2(1)に対する再反論(その2)
被請求人は、後記第3の2(1)において、「被包装物である食品を購入する消費者は、日常、日々の購入行動により、見慣れたものであるからこそ、購入対象の包装容器に収納された食品の、包装状況も含めた変化に敏感に反応して注目し、その差を判断するものである。」と主張し、さらに、「「公知意匠と本件意匠の類比を判断する上で大きな特徴として認識されることはない。」との請求人の主張は妥当でない。」と主張している。
仮に、被請求人が、被請求人口頭審理陳述要領書で主張するように、需要者が「購入対象の包装容器に収容された 食品の、包装状況も含めた変化に敏感に反応して注目し、その差を判断する」のであれば、食品を収容しても本件登録意匠の【斜視図】【正面図】【右側面図】【A−A断面図】、さらには【透明部分を薄墨で表した参考図】【使用状態を示す参考図】に示す完全なドーム型のトップフィルムが維持される包装容器のみが、本件登録意匠の権利範囲ということになる。
また、上述した被請求人の主張が正しいとすれば、包装容器に収容された食品によってトップフィルムの形状が変化した場合、その変化した形状が需要者に最も注目される部分すなわち意匠の要部ということになる。つまり、本件登録意匠に係る物品の包装容器に食品が収容されて、トップフィルムの少なくとも一部が食品の形状に沿って変形した状態で店舗に陳列された場合、需要者はその変形した状態に敏感に反応して注目することになり、そのような包装容器には本件登録意匠の意匠権が及ばない、ということになる。
一方、請求人が弁駁書で主張したように、本件意匠に係る物品であるトップフィルムが硬質の特殊な材質で形成されている旨の記載はない。
いずれにせよ、被請求人口頭審理陳述要領書における上記主張は不合理であり、妥当なものとはいえない。

(3)後記第3の2(2)に対する再反論
被請求人は、後記第3の2(2)において、「「弧上(請求人注:「弧状」の誤記と思われる)の光沢」は、MAP包装の「食品用包装容器」に被包装物である食品を包装した直後はトップフィルムは平らであるが、トップフィルムがトレー内面方向に陰圧で凹んだ事により発生したものである。」と主張している。
しかし、この光沢はトップフィルムの凹みによって発生したものではない。凹みが生じた場合の光沢は、このような形状にはならない。
請求人は、甲11号証に写った包装容器のトップフィルムがドーム状に膨出したものであることを説明する資料を新たに提出する(甲第12号証)。
例えば、甲第12号証に写った包装容器のうち、一番右の上から2つ目のものは、下記(特徴1)〜(特徴4)に示す特徴を有する。
(特徴1)〜(特徴4) 省略
上記(特徴1)〜(特徴4)が全てあらわれるためには、包装容器のトップフィルムがドーム状に膨出していることが必須となる。もし、甲第12号証に示す包装容器のトップフィルムの中央が凹んでいれば、上記(特徴1)〜(特徴4)が全てあらわれることはない。
以上により、請求人が前記3(2)で述べた主張は妥当なものである。

(4)後記第3の2(3)に対する再反論
被請求人は、後記第3の2(3)において、「請求人の主張する「甲第1号証の1、甲第1号証の2のフランジ及びトップフィルムの意匠は、略ドーム状」の意匠とは異なり、本件意匠とは非類似である。」と主張している。
しかし、上記(3)に示したとおり、被請求人の「口頭審理陳述要領書」における上記主張は不合理であり、妥当なものとはいえない。
よって、請求人が前記3(2)で述べた主張は妥当なものである。

5 請求人が提出した証拠
請求人は、以下の甲第1号証ないし甲第12号証(甲第9号証は原本。それ以外は全て写しである。)を、審判請求書、審判事件弁駁書及び口頭審理陳述要領書の添付書類として提出した。
甲第1号証の1 Twitterのツイート
甲第1号証の2 Twitterのツイート(甲第1の1の写真部分拡大図)
甲第2号証 食品用包装容器の写真
甲第3号証 食品用包装容器の写真
甲第4号証 食品用包装容器の写真
甲第5号証 食品用包装容器の写真
甲第6号証の1 ホームページのキャプチャ画像
甲第6号証の2 ホームページのキャプチャ画像
甲第7号証の1 食品用包装容器の写真
甲第7号証の2 食品用包装容器の写真
甲第8号証の1 食品用包装容器の写真
甲第8号証の2 食品用包装容器の写真
甲第9号証 DVD-ROM
甲第10号証 広辞苑(第五版)
甲第11号証 Twitterのツイート(甲第1の1の写真部分拡大図)
甲第12号証 Twitterのツイート(甲第1の1の写真部分拡大図)


第3 被請求人の答弁及び理由
被請求人は、審判事件答弁書を提出し、答弁の趣旨を
「意匠登録第1597292号の登録を無効とすることはできない、
審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を、おおむね以下のとおり主張した(「口頭審理陳述要領書」の内容を含む。)。

1 答弁の理由
(1)答弁の要点
本件登録意匠は甲第1号証の1、甲第1号証の2、乃至甲第8号証の1、甲第8号証の2の意匠と非類似であり、本件登録意匠を無効とすべき理由はない。

(2)本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠公報の記載のとおり、意匠に係る物品は「包装容器」である部分意匠であり、意匠の説明にあるように、図面中の実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けた部分である。
本部分は、包装容器の蓋としてトップフィルムを収納容器のフランジに熱貼着した部分である。
さらに、本物品は、意匠に係る物品の説明の記載のとおり、収納容器に被包装物を収納後、蓋としてトップフィルムを収納容器のフランジに熱貼着した包装容器であり、トップフィルムは被包装物に接したドーム状に形成することにより被包装物を立体的に包装でき、従来の食品用ラップフィルムでくるんだ包装にあるよれや重なりなどのもたつきがなく、スリムでコンパクトな清潔感溢れる美的な外観を有するものである。
当該記載の中で『トップフィルムは「被包装物に接したドーム状に形成することにより被包装物を立体的に」包装』とあるとおり、本件登録意匠の部分は「被包装物に接したドーム状に形成したトップフィルム」を指すものであり、当該部分が当該物品の「包装容器」の需要者が注意を引く要部(意匠的特徴)である。そして、本件意匠から生ずる美感は、「被包装物に接したドーム状に形成したトップフィルム」が、被包装物を立体的に包装して、従来の食品用ラップフィルムでくるんだ包装にあるよれや重なりなどのもたつきがなく、スリムでコンパクトな清潔感溢れる外観となり現れるものである。
したがって、従来の食品用ラップフィルムでくるんだ包装や、『収納容器に被包装物を収納後、「被包装物の表面に沿って」トップフィルムを覆いかぶせる仕様でトップフィルムを収納容器のフランジに熱貼着した包装容器』の意匠の意匠的特徴とは異なる。

(3)出願前公知意匠
ア 甲第1号証の1、甲第1号証の2の意匠
甲第1号証の1、甲第1号証の2によると、「これがガス置換による賞味期限を延長するMAP包装。@ダイエー向丘店。生物ならD+2は見込めるかな?たぶん。」とのツイート記載がある。
しかし、甲第1号証の1、甲第1号証の2に現れた包装容器の意匠は、表面はドーム状でなく、平面である。
したがって、本件登録意匠の『トップフィルムは「被包装物に接したドーム状に形成することにより被包装物を立体的に」包装』とは意匠的特徴が異なるものであり、非類似である。
イ 甲第2号証の意匠
甲第2号証の意匠は、前記の食品用ラップフィルムでくるんだ包装同様の『収納容器に被包装物を収納後、「被包装物の表面に沿って」トップフィルムを覆いかぶせる仕様でトップフィルムを収納容器のフランジに熱貼着した包装容器』の意匠である。
したがって、本件登録意匠の『トップフィルムは「被包装物に接したドーム状に形成することにより被包装物を立体的に」包装』とは意匠的特徴が異なるものであり、非類似である。
ウ 甲第3号証の意匠
甲第3号証の意匠は、前記の食品用ラップフィルムでくるんだ包装同様の『収納容器に被包装物を収納後、「被包装物の表面に沿って」トップフィルムを覆いかぶせる仕様でトップフィルムを収納容器のフランジに熱貼着した包装容器』の意匠である。
したがって、本件登録意匠の『トップフィルムは「被包装物に接したドーム状に形成することにより被包装物を立体的に」包装』とは意匠的特徴が異なるものであり、非類似である。
エ 甲第4号証の意匠
甲第4号証の意匠は、前記の食品用ラップフィルムでくるんだ包装同様の『収納容器に被包装物を収納後、「被包装物の表面に沿って」トップフィルムを覆いかぶせる仕様でトップフィルムを収納容器のフランジに熱貼着した包装容器』の意匠である。
したがって、本件登録意匠の『トップフィルムは「被包装物に接したドーム状に形成することにより被包装物を立体的に」包装』とは意匠的特徴が異なるものであり、非類似である。
オ 甲第5号証の意匠
甲第5号証の意匠は、前記の食品用ラップフィルムでくるんだ包装同様の『収納容器に被包装物を収納後、「被包装物の表面に沿って」トップフィルムを覆いかぶせる仕様でトップフィルムを収納容器のフランジに熱貼着した包装容器』の意匠である。
したがって、本件登録意匠の『トップフィルムは「被包装物に接したドーム状に形成することにより被包装物を立体的に」包装』とは意匠的特徴が異なるものであり、非類似である。
カ 甲第6号証の1、甲第6号証の2の意匠
甲第6号証の1、甲第6号証の2の意匠は、前記の食品用ラップフィルムでくるんだ包装同様の『収納容器に被包装物を収納後、「被包装物の表面に沿って」トップフィルムを覆いかぶせる仕様でトップフィルムを収納容器のフランジに熱貼着した包装容器』の意匠である。
したがって、本件登録意匠の『トップフィルムは「被包装物に接したドーム状に形成することにより被包装物を立体的に」包装』とは意匠的特徴が異なるものであり、非類似である。
キ 甲第7号証の1、甲第7号証の2の意匠
甲第7号証の1、甲第7号証の2の意匠は、前記の食品用ラップフィルムでくるんだ包装同様の『収納容器に被包装物を収納後、「被包装物の表面に沿って」トップフィルムを覆いかぶせる仕様でトップフィルムを収納容器のフランジに熱貼着した包装容器』の意匠である。
したがって、本件登録意匠の『トップフィルムは「被包装物に接したドーム状に形成することにより被包装物を立体的に」包装』とは意匠的特徴が異なるものであり、非類似である。
なお、前記第2の2(8)アには、「本件登録意匠の出願日である平成29年(2017年)8月15日よりも前に製造販売されていた製造機械で製造された食品用包装容器が1つ表示されている。」との記載があるが、製造機械の販売日は、包装容器の意匠の公知日とは関連性がない。
ク 第8号証の1、甲第8号証の2の意匠
第8号証の1、甲第8号証の2の意匠は、前記の食品用ラップフィルムでくるんだ包装同様の『収納容器に被包装物を収納後、「被包装物の表面に沿って」トップフィルムを覆いかぶせる仕様でトップフィルムを収納容器のフランジに熱貼着した包装容器』の意匠である。
したがって、本件登録意匠の『トップフィルムは「被包装物に接したドーム状に形成することにより被包装物を立体的に」包装』とは意匠的特徴が異なるものであり、非類似である。
なお、前記第2の2(9)アには、「本件登録意匠の出願日である平成29年(2017年)8月15日よりも前に製造販売されていた製造機械で製造された食品用包装容器が1つ表示されている。」との記載があるが、製造機械の販売日は、包装容器の意匠の公知日とは関連性がない。
ケ まとめ
以上のとおり、本件登録意匠と、甲第1号証の1、甲第1号証の2、乃至甲第8号証の1、甲第8号証の2の意匠は、類似しているものということができない。

(4)むすび
以上のとおりであって、請求人の主張する理由によって、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。

2 「口頭審理陳述要領書」における主張
(1)前記第2の3(1)に対する反論
請求人は「「フィルム」とは「薄皮。薄膜。」であるため・・・固体の物体が接触した場合、その接触した部分は物体の形状に沿って変形する。」と主張する。
しかし、風船のように、薄い膜から形成される素材が、内部からのガスの存在により薄膜が膨張し、内部にガス以外の接触物がない状態で膨張状態が保持されるものが、存在することは事実である。
そのため、請求人の主張する「たとえ容器内部の圧力等によってドーム状に成型されていたとしても、容器内部に収容された被包装物(たとえば固体の食品)とトップフィルムとが接触した部分は、その「被包装物の表面に沿って」変形して膨出するものである。」という主張は妥当ではない。
本件登録意匠の部分は「被包装物に接したドーム状に形成したトップフィルム」であり、請求人の主張する「字義どおりの単純な「ドーム型」ではなく、「被包装物の表面に沿って変形し膨出した部分を少なくとも一部に含む略ドーム型」となる。」とは異なる。
また、請求人は「本件意匠に係る物品の類比判断の基準となるべき需要者
は、量販店等の店舗で本件意匠に係る物品の包装容器に収容された被包装物
(食品)を購入する消費者である。その需要者は、・・・当該意匠に係る物品を視認する際に見慣れたものであって、特段注目される部分ではない」と主張するが、被包装物である食品を購入する消費者は、日常、日々の購入行動により、見慣れたものであるからこそ、購入対象の包装容器に収納された食品の、包装状況も含めた変化に敏感に反応して注目し、その差を判断するものである。
そのため「公知意匠と本件意匠の類比を判断する上で大きな特徴として認識されることはない。」との請求人の主張は妥当でない。
したがって「本件意匠と公知意匠とは、上述したような本件意匠の意匠に係る物品の特質と実情に鑑みて、類比が判断されるものである。」との請求人の主張は妥当でない。

(2)前記第2の3(2)に対する反論
甲第1号証の1、甲第1号証の2、甲第11号証中の写真の「食品用包装容器」は、「甲第1号証の1」に記載されたえづらまさし氏のツイート「これがガス置換による賞味期限を延長するMAP包装。」のとおり、MAP
包装である。甲第11号証中の写真の「弧上の光沢」は、MAP包装の「食品用包装容器」に被包装物である食品を包装した直後はトップフィルムは平らであるが、トップフィルムがトレー内面方向に陰圧で凹んだ事により発生したものである。陰圧になった理由は、[1]最初からガス封入量が少なかった、[2]使用しているガスに炭酸ガスが混合されている、からである。特に[2]は、水分に溶け込みやすい性質を有する炭酸ガスが、食品の水分に溶け込む事により、パック内のガス体積が減少して、陰圧状態になったことによる。
したがって、請求人の主張する「この光沢の位置と形状は、甲第1号証の
1、甲第1号証の2に示すトップフィルムが上方側に湾曲して略ドーム状に膨出していることを示している。」との主張は誤りである。

(3)前記第2の3(3)に対する反論
前記(1)に記載のとおり、見慣れたものであるからこそ、購入対象の包装容器に収納された食品の、包装状況も含めた変化に敏感に反応して注目し、その差を判断するものであり、「公知意匠と本件意匠の類比を判断する上で大きな特徴として認識されることはない。」との請求人の主張は妥当でない。
そのため、「トップフィルムに接触した部分の被包装物の表面に沿った膨出は、本件意匠に係る物品を視認した需要者の心象に大きな影響を与えるものではない。」との主張は妥当ではない。そして、「本件意匠の類比判断において大きな特徴として認識されることはないし、大きな相違にもなっていない。」との主張も妥当でない。
したがって、請求人の主張する「甲第1号証の1、甲第1号証の2(当審注:「甲第2号証乃至甲第8号証の1、甲第8号証の2」の誤記と認められる。)のフランジ及びトップフィルムの意匠は、略ドーム状」の意匠とは異なり、本件意匠とは非類似である。


第4 口頭審理
当審は、本件審判について、令和3年(2021年)11月17日に口頭審理を行い、審判長は、同日付けで審理を終結した。(令和3年11月17日付け「第1回口頭審理調書」)


第5 当審の判断
1 本件登録意匠(別紙第1参照)
(1)本件登録意匠の意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品(以下「本件物品」という。)は、意匠公報(別紙第1参照)の記載によれば「包装容器」であり、【意匠に係る物品の説明】には、「本物品は、収納容器に被包装物を収納後、蓋としてトップフィルムを収納容器のフランジに熱貼着した包装容器であり、トップフィルムは被包装物に接したドーム状に形成することにより被包装物を立体的に包装でき、従来の食品用ラップフィルムでくるんだ包装にあるよれや重なりなどのもたつきがなく、スリムでコンパクトな清潔感溢れる外観の包装容器である。」と記載されている。そして、願書添付図面中の「使用状態を示す参考図」には、被包装物として食品が示されているから、本件物品は、主として食品を包装するものであると認められる。
また、本件登録意匠は、部分意匠として意匠登録を受けようとするものであり、【意匠の説明】には、「実線で表された部分(当審注:以下「本件部分」という。)が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」と記載されている。
(2)本件部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
本件部分は、包装容器のうち、平面のほぼ一杯を占めるトップフィルム部と、その周囲のフランジ部から成り、被包装物を収納する用途及び機能を有し、正面視上部に位置して、正面視全高の約1/4の縦幅の大きさ及び範囲を占めている。
(3)本件部分の形態
本件部分の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、以下のとおりである。
ア 正面の構成態様
正面から見て、フランジ部は水平の薄板状に表されており、その左端寄り及び右端寄りから中央に向けて、トップフィルム部が上方に膨出して、トップフィルム部の上端が略凸弧状に表されている。
イ 平面の構成態様
平面から見て、フランジ部は、略角丸四角形(縦横比は約1:1.2)の枠状に表されており、角は約1/4円弧状である。フランジ部の幅は平面視全幅の約1/21であり、左下の角部に、斜めに張り出したタブ部が形成されている。
また、フランジ部の内側のトップフィルム部は、略角丸四角形(縦横比は約1:1.2)に表されており、角は約1/4円弧状である。
ウ タブ部の形状
タブ部の外周形状は略半円弧状であり、その円弧の仮想中心点はフランジ部の幅の中間点よりやや外寄りである。

2 無効理由の要点
ア 無効理由1
請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由1は、本件登録意匠が、甲第1号証の1(別紙第2参照)及び甲第1号証の2(別紙第3参照)に現された意匠、すなわち、「えづらまさし」という投稿者が2016年(平成28年)10月13日にtwitterにアップロードしたツイートに掲載された写真に現された「食品用包装用容器」の意匠(以下「甲1意匠」という。)に類似するので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠、すなわち、「意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠」(同法同条同項第2号に掲げる意匠)に類似する意匠に該当し、同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないことから、本件登録意匠の登録が、同法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定によって、無効とされるべきであるとするものである。
イ 無効理由2
請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由2は、本件登録意匠が、甲第2号証(別紙第4参照)に現された意匠、すなわち、「Sealpac International bv」が提供した、2005年(平成17年)11月25日11時36分に撮影された写真に現された「食品用包装用容器」の意匠(以下「甲2意匠」という。)に類似するので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠、すなわち、「意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠」(同法同条同項第2号に掲げる意匠)に類似する意匠に該当し、同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないことから、本件登録意匠の登録が、同法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定によって、無効とされるべきであるとするものである。
ウ 無効理由3
請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由3は、本件登録意匠が、甲第3号証(別紙第5参照)に現された意匠、すなわち、「Sealpac International bv」が提供した、2005年(平成17年)5月31日19時20分に撮影された写真に現された「食品用包装用容器」の意匠(以下「甲3意匠」という。)に類似するので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠、すなわち、「意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠」(同法同条同項第2号に掲げる意匠)に類似する意匠に該当し、同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないことから、本件登録意匠の登録が、同法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定によって、無効とされるべきであるとするものである。
エ 無効理由4
請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由4は、本件登録意匠が、甲第4号証(別紙第6参照)に現された意匠、すなわち、「Sealpac International bv」が提供した、2005年(平成17年)6月1日8時38分に撮影された写真に現された「食品用包装用容器」の意匠(以下「甲4意匠」という。)に類似するので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠、すなわち、「意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠」(同法同条同項第2号に掲げる意匠)に類似する意匠に該当し、同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないことから、本件登録意匠の登録が、同法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定によって、無効とされるべきであるとするものである。
オ 無効理由5
請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由5は、本件登録意匠が、甲第5号証(別紙第7参照)に現された意匠、すなわち、「Sealpac International bv」が提供した、2007年(平成19年)5月3日15時6分に撮影された写真に現された「食品用包装用容器」の意匠(以下「甲5意匠」という。)に類似するので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠、すなわち、「意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠」(同法同条同項第2号に掲げる意匠)に類似する意匠に該当し、同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないことから、本件登録意匠の登録が、同法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定によって、無効とされるべきであるとするものである。
カ 無効理由6
請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由6は、本件登録意匠が、甲第6号証の1(別紙第8参照)及び甲第6号証の2(別紙第9参照)に表された意匠、すなわち、Interempresas Media社が2008年(平成20年)4月15日にアップロードした“Interempresas”のインターネット記事に表示された「食品用包装用容器」の意匠(以下「甲6意匠」という。)に類似するので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠、すなわち、「意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠」(同法同条同項第2号に掲げる意匠)に類似する意匠に該当し、同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないことから、本件登録意匠の登録が、同法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定によって、無効とされるべきであるとするものである。
キ 無効理由7
請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由7は、本件登録意匠が、甲第7号証の1(別紙第10参照)及び甲第7号証の2(別紙第11参照)に現された意匠、すなわち、本件登録意匠の出願日である平成29年(2017年)8月15日よりも前に製造販売されていた製造機械で製造された「食品用包装容器」の意匠(以下「甲7意匠」という。)に類似するので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠、すなわち、「意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠」(同法同条同項第2号に掲げる意匠)に類似する意匠に該当し、同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないことから、本件登録意匠の登録が、同法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定によって、無効とされるべきであるとするものである。
ク 無効理由8
請求人が主張する本件登録意匠の登録の無効理由8は、本件登録意匠が、甲第8号証の1(別紙第12参照)及び甲第8号証の2(別紙第13参照)に現された意匠、すなわち、本件登録意匠の出願日である平成29年(2017年)8月15日よりも前に製造販売されていた製造機械で製造された「食品用包装容器」の意匠(以下「甲8意匠」という。)に類似するので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠、すなわち、「意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠」(同法同条同項第2号に掲げる意匠)に類似する意匠に該当し、同条同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないことから、本件登録意匠の登録が、同法第48条第1項第1号に該当し、同項柱書の規定によって、無効とされるべきであるとするものである。

3 無効理由1の判断
(1)甲1意匠(別紙第2及び別紙第3参照)
ア 甲1意匠について
甲1意匠は、「えづらまさし」という投稿者が2016年(平成28年)10月13日にtwitterにアップロードしたツイートに掲載された写真に現された「食品用包装用容器」の意匠であり、甲第1号証の1によれば、同写真の直下に「午後11:07 2016年10月13日」の記載があり、写真の真上には、「これがガス置換による賞味期限延長を実現するMAP包装。」との解説文が掲載されている。
イ 甲1意匠が意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠に該当するか否かについて
一般に、twitterにアップロードされたツイート記事は後から編集不可であり、また、アップロード日を後から修正することもできないので、上記の「えづらまさし」のツイート記事が2016年10月13日に公開された蓋然性は高く、それについて被請求人も争ってはいない。そうすると、当該ツイート記事に掲載された写真も本件登録意匠の出願前である2016年10月13日に公開されたというべきであるから、同写真に現された甲1意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠)に該当すると認められる。
(2)甲1意匠の意匠に係る物品
甲第1号証の1には、食品を包装した容器が現されているので、甲1意匠の意匠に係る物品は「食品用包装容器」である。甲1意匠において本件部分と対比の対象になるのは、甲1意匠のうち、本件部分に相当する部分、すなわち、食品用包装容器のうち、平面のほぼ一杯を占めるトップフィルム部と、その周囲のフランジ部から成る部分(以下「甲1部分」という。)である。
(3)甲1部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
甲1部分は、被包装物を収納する用途及び機能を有し、全体の上部に位置しているものの、全高のうちどの程度の縦幅の大きさ及び範囲を占めているかは不明である。
(4)甲1部分の形態
甲1部分の形態は、以下のとおりである。なお、本件登録意匠の向きに合わせて甲1部分の形態を認定する。
ア 正面の構成態様
正面から見て、フランジ部は水平状に張り出しているが、薄板状であるかは不明であり、その左端寄り及び右端寄りから中央に向けて、トップフィルム部が上方に膨出していると推認されるが、その膨出の態様は不明であって、上端形状も不明である。
イ 平面の構成態様
平面から見て、フランジ部は、略角丸四角形(縦横比は約1:1.9)の枠状に表されており、角は約1/4円弧状である。フランジ部の幅は平面視全幅の約1/17である。
また、フランジ部の内側のトップフィルム部は、略角丸四角形(縦横比は約1:2.1)に表されており、角は約1/4円弧状である。
(5)本件登録意匠と甲1意匠の対比
ア 意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品と甲1意匠の意匠に係る物品は、共に食品などを包装する用途及び機能を有するから、共通する。
イ 本件部分と甲1部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
本件部分と甲1部分は、共に被包装物を収納する用途及び機能を有し、全体の上部に位置している点で共通するものの、本件部分が正面視全高の約1/4の縦幅の大きさ及び範囲を占めているのに対して、甲1部分が全高のうちどの程度の縦幅の大きさ及び範囲を占めているかが不明である点で相違する。
ウ 本件部分と甲1部分の形態
本件部分と甲1部分の形態には、以下の共通点と相違点が認められる。
(ア)共通点
(A)正面の構成態様についての共通点
フランジ部が水平状に張り出し、その左端寄り及び右端寄りから中央に向けて、トップフィルム部が上方に膨出している。
(B)平面の構成態様についての共通点
フランジ部は、略角丸四角形の枠状に表されており、角は約1/4円弧状である。
トップフィルム部は、略角丸四角形に表されており、角は約1/4円弧状である。
(イ)相違点
(a)正面の構成態様についての相違点
本件部分のフランジ部は薄板状であるが、甲1部分のフランジ部が薄板状であるかは不明である。
本件部分のトップフィルム部の上端は略凸弧状に表されているが、甲1部分のトップフィルム部の上端形状は不明である。
(b)平面の構成態様についての相違点
本件部分のフランジ部の縦横比は約1:1.2であり、幅は平面視全幅の約1/21であるが、甲1部分では、それぞれ、約1:1.9、約1/17である。
本件部分のトップフィルム部の縦横比は約1:1.2であるが、甲1部分では、約1:2.1である。
本件部分では、外周形状が略半円弧状であるタブ部が、フランジ部の左下の角部に形成されているが、甲1部分にはタブ部は形成されていない。
(6)本件登録意匠と甲1意匠の類否判断
本件登録意匠の意匠に係る物品である「包装容器」の使用状態においては、物品の全体が露出しており、購入者は全方向から物品を観察することとなり、特に、フランジ部やタブ部は、実際に購入者が手に触れる部分であるから、購入者や取引者を含む「包装容器」の需要者は、フランジ部やタブ部の形状に着目し、また、需要者は、食品を覆うトップフィルム部の膨出の程度やその形状にも着目する。そうすると、需要者はこれらの各部について全方向から詳細に観察するということができる。したがって、「包装容器」の意匠の類否判断においては、これらを前提として、需要者の視点から、「包装容器」の各部の形状を評価することとする。
ア 意匠に係る物品
前記(2)アで認定したとおり、本件登録意匠と甲1意匠の意匠に係る物品は共通する。
イ 本件部分と甲1部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
前記(2)イで認定したとおり、本件部分と甲1部分の用途及び機能並びに位置は共通するが、本件部分が正面視全高の約1/4の縦幅の大きさ及び範囲を占めているのに対して、甲1部分が全高のうちどの程度の縦幅の大きさ及び範囲を占めているかが不明である点で相違しており、正面方向から両部分を観察する需要者にとって、この相違が本件登録意匠と甲1意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
ウ 本件部分と甲1部分の形態の共通点の評価
共通点(A)及び共通点(B)で指摘した、フランジ部が水平状に張り出してトップフィルム部が上方に膨出している共通点、及び枠状のフランジ部とトップフィルム部が共に略角丸四角形に表されて角が約1/4円弧状である共通点は、例を挙げるまでもなく、「包装容器」の物品分野において本件登録意匠の意匠登録出願前に既に見受けられるので、共通点(A)及び共通点(B)が本件部分と甲1部分の類否判断に及ぼす影響は小さいというべきである。
エ 本件部分と甲1部分の形態の相違点の評価
これに対して、本件部分と甲1部分の形態の相違点については、以下のとおり評価される。
まず、相違点(a)で指摘した、フランジ部が薄板状であるか(本件部分)、不明であるか(甲1部分)の相違点は、手に触れるフランジ部の形状に着目する需要者にとって大きな相違であるというべきであり、トップフィルム部の上端が略凸弧状に表されているか(本件部分)、不明であるか(甲1部分)の相違点も、食品を覆うトップフィルム部の形状に着目する需要者にとっては顕著な相違であるといわざるを得ない。したがって、相違点(a)が本件部分と甲1部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に、相違点(b)のうち、タブ部の有無の相違、すなわち、外周形状が略半円弧状であるタブ部が形成されているか(本件部分)否か(甲1部分)の相違は、「包装容器」を実際に使用する需要者が特に注目する相違であるから、この相違が本件部分と甲1部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方、フランジ部の縦横比が約1:1.2であるか(本件部分)、約1:1.9であるか(甲1部分)の相違、及びフランジ部の幅が平面視全幅の約1/21であるか(本件部分)、約1/17であるか(甲1部分)の相違、並びにトップフィルム部の縦横比が約1:1.2であるか(本件部分)、約1:2.1であるか(甲1部分)の相違は、「包装容器」の物品分野においては、フランジ部とトップフィルム部の縦横比、フランジ部の幅の全幅に占める比率には様々なものが見受けられるので、需要者は殊更着目するとはいい難い。したがって、これらの相違が本件部分と甲1部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると、相違点(a)とタブ部の有無の相違は、いずれも本件部分と甲1部分の類否判断に大きな影響を及ぼすことから、その余の相違が類否判断に及ぼす影響は小さいとしても、相違点を総合すると、本件部分と甲1部分を別異のものと印象付けるものであるということができる。
オ 請求人の主張について
請求人は、本件部分のトップフィルム部の形状について、「被包装物の表面に沿って変形し膨出した部分を少なくとも一部に含む略ドーム型」となるものであると指摘し、その理由として、「トップフィルムが軟質の部材で形成され、容器本体とトップフィルムで形成された空間内に食品のような被包装物と大気圧より高いガス圧が存在する場合、トップフィルムがガス圧で膨出することと、包装容器のトップフィルムが容器本体よりも高さのある被包装物に接触して膨出することは、双方同時に起こり得るものである。」と述べている。
しかし、本件部分のトップフィルム部の形状は、前記1(3)アで認定したとおり、正面視上端が略凸弧状であり、変形し膨出した部分は表されていない。請求人のいう「被包装物の表面に沿って変形し膨出した部分」は、物理的な変形可能性であって、その前提はトップフィルムが軟質の部材で形成されていることに依るものであるが、前記1(1)で引用した本件登録意匠の意匠公報(別紙第1参照)の【意匠に係る物品の説明】には、トップフィルムが軟質の部材であることの記載はなく、物理的な変形可能性を示唆する説明もないので、請求人の主張を採用することはできない。
カ 総合判断
本件登録意匠と甲1意匠は、意匠に係る物品が共通し、本件部分と甲1部分の用途及び機能並びに位置も共通するが、その大きさ及び範囲は異なっており、また、形態においても、共通点が類否判断に及ぼす影響はいずれも小さいのに対して、相違点は総じて類否判断に及ぼす影響は大きく、共通点が需要者に与える美感を覆して本件部分と甲1部分を別異のものと印象付けるものであるから、本件登録意匠は、甲1意匠に類似するということはできない。
(7)小活
以上のとおり、本件登録意匠は、その意匠登録出願の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1意匠(「えづらまさし」のツイート記事に掲載された写真に現された「食品用包装容器」の意匠)に類似しないので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠には該当せず、同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないとはいえない。
したがって、請求人が主張する本件意匠登録の無効理由1には、理由がない。

4 無効理由2の判断
(1)甲2意匠(別紙第4参照)
ア 甲2意匠について
甲2意匠は、「Sealpac International bv」が提供した写真(甲第2号証)に現された「食品用包装用容器」の意匠であり、前記第2の2(3)アの請求人の説明によれば、その写真は2005年(平成17年)11月25日 11時36分に撮影されたものであって、甲第9号証により、甲第2号証のデータの「撮影日時」が「2005/11/25 11:36」である事実が立証されている。
イ 甲2意匠が意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠に該当するか否かについて
ある写真の撮影日時が仮に正しいとしても、その撮影日時が一般に公開された日時であるとはいえない。写真である甲第2号証についても、その撮影日時が2005年(平成17年)11月25日 11時36分であったとしても、そのときに甲第2号証が公開されたものであることを請求人は主張しておらず、立証もしていない。
そうすると、甲第2号証が本件登録意匠の出願前に公開されたものであるとは認められないから、甲第2号証に現された甲2意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠)には該当しない。
(2)小括
以上のとおり、甲2意匠は意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠には該当しないので、本件登録意匠は、同号に掲げる意匠に類似する意匠、すなわち、同項第3号に掲げる意匠には該当せず、同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないとはいえない。
したがって、請求人が主張する本件意匠登録の無効理由2には、理由がない。

5 無効理由3の判断
(1)甲3意匠(別紙第5参照)
ア 甲3意匠について
甲3意匠は、「Sealpac International bv」が提供した写真(甲第3号証)に現された「食品用包装用容器」の意匠であり、前記第2の2(4)アの請求人の説明によれば、その写真は2005年(平成17年)5月31日 19時20分に撮影されたものであって、甲第9号証により、甲第3号証のデータの「撮影日時」が「2005/05/31 19:20」である事実が立証されている。
イ 甲3意匠が意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠に該当するか否かについて
ある写真の撮影日時が仮に正しいとしても、その撮影日時が一般に公開された日時であるとはいえない。写真である甲第3号証についても、その撮影日時が2005年(平成17年)5月31日 19時20分であったとしても、そのときに甲第3号証が公開されたものであることを請求人は主張しておらず、立証もしていない。
そうすると、甲第3号証が本件登録意匠の出願前に公開されたものであるとは認められないから、甲第3号証に現された甲3意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠)には該当しない。
(2)小括
以上のとおり、甲3意匠は意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠には該当しないので、本件登録意匠は、同号に掲げる意匠に類似する意匠、すなわち、同項第3号に掲げる意匠には該当せず、同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないとはいえない。
したがって、請求人が主張する本件意匠登録の無効理由3には、理由がない。

6 無効理由4の判断
(1)甲4意匠(別紙第6参照)
ア 甲4意匠について
甲4意匠は、「Sealpac International bv」が提供した写真(甲第4号証)に現された「食品用包装用容器」の意匠であり、前記第2の2(5)アの請求人の説明によれば、その写真は2005年(平成17年)6月1日 8時38分に撮影されたものであって、甲第9号証により、甲第4号証のデータの「撮影日時」が「2005/06/01 8:38」である事実が立証されている。
イ 甲4意匠が意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠に該当するか否かについて
ある写真の撮影日時が仮に正しいとしても、その撮影日時が一般に公開された日時であるとはいえない。写真である甲第4号証についても、その撮影日時が2005年(平成17年)6月1日 8時38分であったとしても、そのときに甲第4号証が公開されたものであることを請求人は主張しておらず、立証もしていない。
そうすると、甲第4号証が本件登録意匠の出願前に公開されたものであるとは認められないから、甲第4号証に現された甲4意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠)には該当しない。
(2)小括
以上のとおり、甲4意匠は意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠には該当しないので、本件登録意匠は、同号に掲げる意匠に類似する意匠、すなわち、同項第3号に掲げる意匠には該当せず、同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないとはいえない。
したがって、請求人が主張する本件意匠登録の無効理由4には、理由がない。

7 無効理由5の判断
(1)甲5意匠(別紙第7参照)
ア 甲5意匠について
甲5意匠は、「Sealpac International bv」が提供した写真(甲第5号証)に現された「食品用包装用容器」の意匠であり、前記第2の2(6)アの請求人の説明によれば、その写真は2007年(平成19年)5月3日 15時6分に撮影されたものであって、甲第9号証により、甲第5号証のデータの「撮影日時」が「2007/05/03 15:06」である事実が立証されている。
イ 甲5意匠が意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠に該当するか否かについて
ある写真の撮影日時が仮に正しいとしても、その撮影日時が一般に公開された日時であるとはいえない。写真である甲第5号証についても、その撮影日時が2007年(平成19年)5月3日 15時6分であったとしても、そのときに甲第5号証が公開されたものであることを請求人は主張しておらず、立証もしていない。
そうすると、甲第5号証が本件登録意匠の出願前に公開されたものであるとは認められないから、甲第5号証に現された甲5意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠)には該当しない。
(2)小括
以上のとおり、甲5意匠は意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠には該当しないので、本件登録意匠は、同号に掲げる意匠に類似する意匠、すなわち、同項第3号に掲げる意匠には該当せず、同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないとはいえない。
したがって、請求人が主張する本件意匠登録の無効理由5には、理由がない。

8 無効理由6の判断
(1)甲6意匠(別紙第8及び別紙第9参照)
ア 甲6意匠について
甲6意匠は、Interempresas Media社がアップロードしたインターネット記事(甲第6号証の1及び甲第6号証の2)に表示された「食品用包装用容器」の意匠であり、前記第2の2(6)アの請求人の説明によれば、2008年(平成20年)4月15日にアップロードされて公知になったものであるとされ、甲第6号証の2(中央の点線赤丸で囲んだ部分)において、「15/04/2008」の記載がある事実が示されている。
イ 甲6意匠が意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠に該当するか否かについて
甲6意匠が表示されているインターネット記事は公的なサイトに掲載されたものではなく、私企業であるInterempresas Media社(スペインの会社)が運営するサイトに掲載されたものであること、及びインターネット記事に表示される画像が後日差し替えられる可能性があることを踏まえると、甲第6号証の1及び甲第6号証の2の限りでは、甲6意匠が2008年(平成20年)4月15日に公開された事実が、十分に立証されているとはいい難い。
そうすると、甲6意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠)には該当しないというべきである。
ウ 本件登録意匠が甲6意匠に類似しないことについて
仮に、甲6意匠が意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠に該当したとしても、以下の理由により、本件登録意匠は甲6意匠に類似しない。
(ア)甲6意匠の意匠に係る物品
甲第6号証の1には、食品を包装した容器が現されているので、甲6意匠の意匠に係る物品は「食品用包装容器」である。甲6意匠において本件部分と対比の対象になるのは、甲6意匠のうち、本件部分に相当する部分、すなわち、食品用包装容器のうち、平面のほぼ一杯を占めるトップフィルム部と、その周囲のフランジ部から成る部分(以下「甲6部分」という。)である。
(イ)甲6部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
甲6部分は、被包装物を収納する用途及び機能を有し、全体の上部に位置していると推認されるものの、全高のうちどの程度の縦幅の大きさ及び範囲を占めているかは不明である。
(ウ)甲6部分の形態
甲6部分の形態は、以下のとおりである。なお、本件登録意匠の向きに合わせて甲6部分の形態を認定する。
a 正面の構成態様
正面から見て、フランジ部は水平状に張り出していると推認されるが、薄板状であるかは不明であり、その左端寄り及び右端寄りから中央に向けて、トップフィルム部が上方に膨出していると推認されるが、その膨出の態様は不明であって、上端形状も不明である。
b 平面の構成態様
平面から見て、フランジ部は、略角丸四角形(縦横比は約3:2)の枠状に表されており、角は約1/4円弧状である。フランジ部の幅は平面視全幅の約1/22である。
また、フランジ部の内側のトップフィルム部は、略角丸四角形(縦横比は約3:2)に表されており、角は約1/4円弧状である。
(エ)本件登録意匠と甲6意匠の対比
a 意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品と甲6意匠の意匠に係る物品は、共に食品などを包装する用途及び機能を有するから、共通する。
b 本件部分と甲6部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
本件部分と甲6部分は、共に被包装物を収納する用途及び機能を有し、全体の上部に位置している点で共通するものの、本件部分が正面視全高の約1/4の縦幅の大きさ及び範囲を占めているのに対して、甲6部分が全高のうちどの程度の縦幅の大きさ及び範囲を占めているかが不明である点で相違する。
c 本件部分と甲6部分の形態
本件部分と甲6部分の形態には、以下の共通点と相違点が認められる。
(i)共通点
(A)正面の構成態様についての共通点
フランジ部が水平状に張り出し、その左端寄り及び右端寄りから中央に向けて、トップフィルム部が上方に膨出している。
(B)平面の構成態様についての共通点
フランジ部は、略角丸四角形の枠状に表されており、角は約1/4円弧状である。
トップフィルム部は、略角丸四角形に表されており、角は約1/4円弧状である。
(ii)相違点
(a)正面の構成態様についての相違点
本件部分のフランジ部は薄板状であるが、甲6部分のフランジ部が薄板状であるかは不明である。
本件部分のトップフィルム部の上端は略凸弧状に表されているが、甲6部分のトップフィルム部の上端形状は不明である。
(b)平面の構成態様についての相違点
本件部分のフランジ部の縦横比は約1:1.2であり、幅は平面視全幅の約1/21であるが、甲6部分では、それぞれ、約3:2、約1/22である。
本件部分のトップフィルム部の縦横比は約1:1.2であるが、甲6部分では、約3:2である。
本件部分では、外周形状が略半円弧状であるタブ部が、フランジ部の左下の角部に形成されているが、甲6部分にはタブ部は形成されていない。
(オ)本件登録意匠と甲6意匠の類否判断
本件登録意匠の意匠に係る物品である「包装容器」の使用状態においては、物品の全体が露出しており、購入者は全方向から物品を観察することとなり、特に、フランジ部やタブ部は、実際に購入者が手に触れる部分であるから、購入者や取引者を含む「包装容器」の需要者は、フランジ部やタブ部の形状に着目し、また、需要者は、食品を覆うトップフィルム部の膨出の程度やその形状にも着目する。そうすると、需要者はこれらの各部について全方向から詳細に観察するということができる。したがって、「包装容器」の意匠の類否判断においては、これらを前提として、需要者の視点から、「包装容器」の各部の形状を評価することとする。
a 意匠に係る物品
前記(エ)aで認定したとおり、本件登録意匠と甲6意匠の意匠に係る物品は共通する。
b 本件部分と甲6部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
前記(エ)bで認定したとおり、本件部分と甲6部分の用途及び機能並びに位置は共通するが、本件部分が正面視全高の約1/4の縦幅の大きさ及び範囲を占めているのに対して、甲6部分が全高のうちどの程度の縦幅の大きさ及び範囲を占めているかが不明である点で相違しており、正面方向から両部分を観察する需要者にとって、この相違が本件登録意匠と甲6意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
c 本件部分と甲6部分の形態の共通点の評価
共通点(A)及び共通点(B)で指摘した、フランジ部が水平状に張り出してトップフィルム部が上方に膨出している共通点、及び枠状のフランジ部とトップフィルム部が共に略角丸四角形に表されて角が約1/4円弧状である共通点は、例を挙げるまでもなく、「包装容器」の物品分野において本件登録意匠の意匠登録出願前に既に見受けられるので、共通点(A)及び共通点(B)が本件部分と甲6意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいというべきである。
d 本件部分と甲6部分の形態の相違点の評価
これに対して、本件部分と甲6部分の形態の相違点については、以下のとおり評価される。
まず、相違点(a)で指摘した、フランジ部が薄板状であるか(本件部分)、不明であるか(甲6部分)の相違点は、手に触れるフランジ部の形状に着目する需要者にとって大きな相違であるというべきであり、トップフィルム部の上端が略凸弧状に表されているか(本件部分)、不明であるか(甲6部分)の相違点も、食品を覆うトップフィルム部の形状に着目する需要者にとっては顕著な相違であるといわざるを得ない。したがって、相違点(a)が本件部分と甲6部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に、相違点(b)のうち、タブ部の有無の相違、すなわち、外周形状が略半円弧状であるタブ部が形成されているか(本件部分)否か(甲6部分)の相違は、「包装容器」を実際に使用する需要者が特に注目する相違であるから、この相違が本件部分と甲6部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方、フランジ部の縦横比が約1:1.2であるか(本件部分)、約3:2であるか(甲6部分)の相違、及びフランジ部の幅が平面視全幅の約1/21であるか(本件部分)、約1/22であるか(甲6部分)の相違、並びにトップフィルム部の縦横比が約1:1.2であるか(本件部分)、約3:2であるか(甲6部分)の相違は、「包装容器」の物品分野においては、フランジ部とトップフィルム部の縦横比、フランジ部の幅の全幅に占める比率には様々なものが見受けられるので、需要者は殊更着目するとはいい難い。したがって、これらの相違が本件部分と甲6部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると、相違点(a)とタブ部の有無の相違は、いずれも本件部分と甲6部分の類否判断に大きな影響を及ぼすことから、その余の相違が類否判断に及ぼす影響は小さいとしても、相違点を総合すると、本件部分と甲6部分を別異のものと印象付けるものであるということができる。
e 総合判断
本件登録意匠と甲6意匠は、意匠に係る物品が共通し、本件部分と甲6部分の用途及び機能並びに位置も共通するが、その大きさ及び範囲は異なっており、また、形態においても、共通点が類否判断に及ぼす影響はいずれも小さいのに対して、相違点は総じて類否判断に及ぼす影響は大きく、共通点が需要者に与える美感を覆して本件部分と甲6部分を別異のものと印象付けるものであるから、本件登録意匠は、甲6意匠に類似するということはできない。
(2)小括
以上のとおり、甲6意匠は意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠には該当しないので、本件登録意匠は、同号に掲げる意匠に類似する意匠、すなわち、同項第3号に掲げる意匠には該当せず、同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないとはいえない。
また、仮に甲6意匠が意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠に該当したとしても、本件登録意匠は、甲6意匠に類似しないので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠には該当せず、同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないとはいえない。
したがって、請求人が主張する本件意匠登録の無効理由6には、理由がない。

9 無効理由7の判断
(1)甲7意匠(別紙第10及び別紙第11参照)
ア 甲7意匠について
甲7意匠は、令和3年2月16日付けで請求人が提出した証拠説明書中の甲第7号証の1及び甲第7号証の2の記載によれば、請求人本人によって作成(撮影)された写真に現された「食品用包装用容器」の意匠であり、前記第2の2(8)アの請求人の説明によれば、その食品用包装用容器は、本件登録意匠の出願日である平成29年(2017年)8月15日よりも前に製造販売されていた製造機械で製造されたものとされている。
イ 甲7意匠が意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠に該当するか否かについて
ある製造物が、特定の時点より前に製造販売されていた製造機械で製造されたものであるとしても、その事実は、その製造物がその時点よりも前に公開されたことを意味しない。製造物である、甲第7号証の1及び甲第7号証の2に現された意匠、すなわち甲7意匠についても、仮にそれが平成29年(2017年)8月15日(本願登録意匠の出願日)よりも前に製造販売されていた製造機械で製造されたものであるとしても、その事実は、甲7意匠がその日よりも前に公開されていたことを意味しない。そして、請求人は、甲7意匠が本願登録意匠の出願日よりも前に公開されたものであることを主張しておらず、立証もしていない。
そうすると、甲7意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠)には該当しない。
(2)小括
以上のとおり、甲7意匠は意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠には該当しないので、本件登録意匠は、同号に掲げる意匠に類似する意匠、すなわち、同項第3号に掲げる意匠には該当せず、同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないとはいえない。
したがって、請求人が主張する本件意匠登録の無効理由9には、理由がない。

10 無効理由8の判断
(1)甲8意匠(別紙第12及び別紙第13参照)
ア 甲8意匠について
甲8意匠は、令和3年2月16日付けで請求人が提出した証拠説明書中の甲第8号証の1及び甲第8号証の2の記載によれば、請求人本人によって作成(撮影)された写真に現された「食品用包装用容器」の意匠であり、前記第2の2(9)アの請求人の説明によれば、その食品用包装用容器は、本件登録意匠の出願日である平成29年(2017年)8月15日よりも前に製造販売されていた製造機械で製造されたものとされている。
イ 甲8意匠が意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠に該当するか否かについて
ある製造物が、特定の時点より前に製造販売されていた製造機械で製造されたものであるとしても、その事実は、その製造物がその時点よりも前に公開されたことを意味しない。製造物である、甲第8号証の1及び甲第8号証の2に現された意匠、すなわち甲8意匠についても、仮にそれが平成29年(2017年)8月15日(本願登録意匠の出願日)よりも前に製造販売されていた製造機械で製造されたものであるとしても、その事実は、甲8意匠がその日よりも前に公開されていたことを意味しない。そして、請求人は、甲8意匠が本願登録意匠の出願日よりも前に公開されたものであることを主張しておらず、立証もしていない。
そうすると、甲8意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠)には該当しない。
(2)小括
以上のとおり、甲8意匠は意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠には該当しないので、本件登録意匠は、同号に掲げる意匠に類似する意匠、すなわち、同項第3号に掲げる意匠には該当せず、同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないとはいえない。
したがって、請求人が主張する本件意匠登録の無効理由8には、理由がない。


第6 むすび
以上のとおりであって、請求人の主張する無効理由1ないし無効理由8にはいずれも理由がないので、本件登録意匠の登録は、意匠法第48条第1項の規定によって無効とすることはできない。

審判に関する費用については、意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。


















審決日 2021-12-09 
出願番号 2017017549 
審決分類 D 1 113・ 113- Y (F4)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 渡邉 久美
小林 裕和
登録日 2018-01-19 
登録番号 1597292 
代理人 石井 明夫 
代理人 尾関 眞里子 
代理人 佐野 弘 

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