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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 N3
管理番号 1382408 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-30 
確定日 2022-03-08 
意匠に係る物品 画面遷移用画像 
事件の表示 意願2020− 6319「画面遷移用画像」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年(2020年)4月1日の意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 9月18日付け 拒絶理由の通知(原審)
同年11月 9日 意見書の提出
令和3年 1月27日付け 拒絶査定
同年 4月30日 拒絶査定不服審判の請求
同年10月 6日付け 拒絶理由の通知(当審)
同年11月22日 意見書の提出

第2 本願意匠
本願は、画像について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願意匠の意匠に係る画像の用途は、本願の願書の記載によれば「画面遷移用画像」であり、本願意匠の態様は願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである。

第3 当審における拒絶の理由
当審における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「1 本願意匠について(別紙第1参照)
本願の願書及び願書添付図面の記載によれば、本願意匠の意匠に係る画像は「画面遷移用画像」であって、一の画面から他の画面に遷移させるための画像であり、「画像図」に示された画像を選択すると、「変化後を示す画像図1」から「変化後を示す画像図3」に変化し(以下、これらの図に表された画像を「本願画像」という。)、その「変化後を示す画像図3」の後に、他の画面に遷移します。そして、実線で表した部分(当審注:以下「本願画像部分」という。)が、意匠登録を受けようとする部分です。
本願画像部分は、「(物品の面に貼られる)シール」を模した略横長トラック形状境界線とその内側に配された「めくる」の文字部を含む領域(以下、この境界線に囲われた領域を「横長トラック部」という。)、及びめくられた横長トラック部の下に配された「あたり」の文字部を含む領域から成るものです。本願画像部分の用途は、一連の変化の後に他の画面に遷移させることであり、本願画像部分の機能は、最初の画像(「画像図」に示された画像)が選択可能であること、及び同画像の選択によって「変化後を示す画像図1」から「変化後を示す画像図3」に変化可能であること、です。
本願画像部分の形状については、「画像図」に表された略横長トラック形状境界線内の上下方向中央に水平状に「めくる」の文字部が配されています。また、「変化後を示す画像図3」に表された「あたり」の文字部が、「めくる」の文字部とほぼ同位置に配されています。「変化後を示す画像図1」では横長トラック部の左下が少しめくられる様子が表されており、「変化後を示す画像図2」では横長トラック部が右上方向に半分程度めくられる様子が表されています。

2 本願意匠の創作容易性について
画像を含む意匠において、一の画面から他の画面に遷移させるにあたって、アニメーション(変化する画像)を入れることは、本願の出願前に広く知られています(例えば、後記4の参考画像1として示す、「ページ遷移時にアニメーションを入れる方法」のデモページで表された画像(別紙第5第5頁〜第7頁)では、カーテンが左から右へ、右から左へ往復するようなアニメーションの後に画面が遷移しています。)。また、画像を含む意匠において、画面を操作することによって文字部を変化させて別の文字部を表出させることや、文字部を境界線内の上下方向中央に水平状に配することも、本願の出願前に広く知られています(例えば、後記4の参考画像2(別紙第6参照))。
そして、画像を含む意匠において、文字部を隠した略横長長方形状の付箋内に文字部を配し、それを選択(タップ)することによってめくることができる画像が、後記3の画像1(別紙第2参照)として本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となっており、また、付箋を左下から右上方向にめくりあげる画像も、後記3の画像2(別紙第3参照)として本願の出願前に刊行物に記載されています。さらに、「シール」の物品分野においては、キャンペーンやおみくじなどのシールとして2層シールを用いて、第一層(表面)にめくることを誘導する文字部を配し、第一層をめくって表出した第二層に「あたり」などの文字部を配することは、広く知られたありふれた手法です(例えば別紙第4参照)。
そうすると、本願画像部分は、シールのようにめくる付箋が表された画像1に基づいて、その付箋の形状を単純な略横長トラック形状に変更したにすぎず、めくりあがる方向を公然知られた画像2に見られるように左下から右上方向にするとともに、付箋内に配された文字部をありふれた配置、すなわち、上下方向中央で水平状の配置としたまでであって、画像の変化と、変化を入れた画面の遷移についても、上記の広く知られたありふれた手法によって、「めくる」の文字部をめくることにより変化させて「あたり」の文字部が表出するようにし、この変化を入れて画面を遷移させたにすぎないから、本願画像部分は当業者にとって容易に創作することができたといわざるを得ません。
したがって、本願意匠は、本願意匠の属する分野における通常の知識を有する者が本願の出願前に日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められます。

3 引用画像
(1)画像1(別紙第2参照)
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2017年1月21日(別紙第2第2頁中段に記載)
掲載者 PBWEB.jp
表題 付箋で隠したフリップを作れるiPadアプリ
「AC Flip Pro」が、期間限定無用
掲載ページのアドレス http://www.pbweb.jp/news/2017/01/21/54036.html(出力日:令和3年9月28日)に掲載された「AC Flip Pro」の画像(別紙第2第2頁上段の図)
この画像内に、略横長長方形状の黄色い付箋が5つ表されており、それぞれの付箋は文字部(数字)を隠すとともに、上から3つの付箋内には選択(タップ)することを誘導する文字部が配されて、選択すると付箋をめくることができます。
(参考)米国非営利法人インターネット・アーカイブ(The Internet Archive)が運営するインターネット・アーカイブ(Wayback Machine)において、Apple社が運営する「App Store」が上記のアプリ「AC Flip Pro」を紹介したウェブサイトが2019年10月23日付けで保存・公開されており(URLは下記参照)、この事実は、上記画像1が本願の出願前に日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった画像であることを推認する事実であると認められます。
https://web.archive.org/web/20191023081441/https://apps.apple.com/jp/app/ac−flip−pro/id672523086(別紙第2第第9頁〜第10頁。出力日:令和3年9月28日。)

(2)画像2(別紙第3参照)
特許庁が平成29年(2017年)6月26日に発行した意匠公報記載
意匠登録第1579903号(意匠に係る物品、学習活動サポート機能付き電子計算機)の「変化した状態を示す正面図1」及び「変化した状態を示す正面図3」に表された画像
「変化した状態を示す正面図1」から「変化した状態を示す正面図3」にかけて、上部に表された略横長長方形状の付箋が左下から右上方向にめくりあがっています。また、「使用状態を示す参考図1」に示されているように、指などのドラッグ操作によって任意の大きさや縦横比の付箋を作成することができます。

4 参考事例、参考画像
(1)2層シールの事例(別紙第4参照)
米国の非営利団体であるThe Internet Archiveが運営する、ウェブアーカイブである「Wayback Machine」により2016年6月11日付けで保存・公開されている、
「2層シール:イベントやキャンペーン用シールとして活躍中!」
(インターネット・アーカイブURL:
https://web.archive.org/web/20160611010834/https://www.kojima−label.co.jp/news/2layer−seal−01/)
の2層シールの画像(別紙第4第3頁。出力日:令和3年9月28日。)

(2)参考画像1(別紙第5参照)
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2019年7月25日(別紙第5第1頁中段右端
に記載)
掲載者 東田ダダーン
表題 ページ遷移時にアニメーションを入れる方法
【ライブラリなし
掲載ページのアドレス https://higashidadan.com/web/css/page−transition.html(出力日:令和3年9月28日)に掲載された「デモページ」(別紙第5第1頁下から2行目)を選択して表示される、
ページ遷移時のアニメーションの画像(別紙第5第5頁〜第7頁)
(参考)米国非営利法人インターネット・アーカイブ(The Internet Archive)が運営するインターネット・アーカイブ(Wayback Machine)において、上記ウェブサイトが2019年11月19日付けで保存・公開されており(URLは下記参照)、この事実は、上記参考画像1が本願の出願前に日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった画像であることを推認する事実であると認められます。
https://web.archive.org/web/20191119161652/https://higashidadan.com/web/css/page−transition.html(別紙第5第第9頁〜第12頁。出力日:令和3年9月28日。)

(3)参考画像2(別紙第6参照)
Googleによる動画共有サービスである
YouTubeにより、
2017年12月13日付けで(株)小松総合印刷が公開した
「デジタルスクラッチ」の動画(動画時間0:15)において、以下の画像が現されています。
0:08の時点の画像(別紙第6第4頁上段)において、携帯情報端末機の画像中の灰色領域(境界線がギザギザ形状)が指でこすられて、下の白い画像が少し表出しています。灰色領域内には「こちらをこすってください」の文字部(白色)があり、同文字部は境界線内の上下方向中央に水平状に2段で配されています。
0:09の時点の画像(別紙第6第4頁中段)において、灰色領域が更に指でこすられて、下の白い画像がかなり表出しています。
0:11の時点の画像(別紙第6第4頁下段)において、灰色領域の大部分が指でこすられて消失し、下の白い画像がほぼ表出しています。その白い画像の上下方向中央に水平状に「あたり」の文字部(赤色)が配されています。
YouTubeのウェブサイトURL:
https://www.youtube.com/watch?v=v−T5azcJ−j4&t=15s(別紙第6第1頁〜第3頁。出力日:令和3年9月28日。)
(参考)米国非営利法人インターネット・アーカイブ(The Internet Archive)が運営するインターネット・アーカイブ(Wayback Machine)において、プリント&プロモーションが上記の「デジタルスクラッチ」を紹介したウェブサイトが2017年11月8日付けで保存・公開されており(URLは下記参照)、この事実は、上記参考画像2が本願の出願前に日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった画像であることを推認する事実であると認められます。
https://web.archive.org/web/20171108231604/https://p−prom.com/product/?p=22537(別紙第6第第6頁〜第9頁。出力日:令和3年9月28日。)」

第4 請求人の主張
請求人は、令和3年11月22日に提出した意見書において、本願意匠が登録されるべき理由について、要旨以下のとおり主張した。

1 本願意匠の創作非容易性
(1)別紙第5(参考画像1)
別紙第5(参考画像1)は、一の画面から他の画面に遷移させるための画像ではあるが、これは従来から一般的にありふれているものある。さらに、別紙第5(参考画像1)は本願意匠と主に以下の点で異なる。
(i)本願意匠のように「変化後を示す画像図1」から「変化後を示す画像図3」に変化するものではない。
(ii)タップした後、その下に「何らかの文字」が配されているものでない。
(iii)画像の機能が異なる。
(2)別紙第6(参考画像2)
別紙第6(参考画像2)は、主に以下の点で本願意匠とは異なる。
(i)一の画面から他の画面に遷移させるための画像ではない。
(ii)本願意匠のように「変化後を示す画像図1」から「変化後を示す画像図3」に変化するものではない。
(iii)シールを模した略横長トラック形状境界線とその内側に配された「めくる」の文字部を含む領域を有するものではない
(iv)画像の用途及び機能が異なる。別紙第6(参考画像2)は、画面に表示されたスクラッチを指でこするとスクラッチが削れ、その下の文字が出現するというものである。これに対し、本願意匠はシールがめくれた後に画面が遷移するという「画面遷移用画像」である。
(3)別紙第2(画像1)
別紙第2(画像1)は、主に以下の点で本願意匠とは異なる。
(i)一の画面から他の画面に遷移させるための画像ではない。
この別紙第2(画像1)は、単にタップするとめくれて、付箋の下に隠された数字を確認できるというものである。別紙第2(画像1)には、めくれた後、他の画面に遷移させるような機能・用途はない。このため、機能・用途は大きく異なる。
(ii)本願意匠のように「変化後を示す画像図1」から「変化後を示す画像図3」に変化するものではない。
拒絶理由に示されたURLを確認すると、実際の動きを確認できなかったため、本願意匠のような変化までか開示されていると言えない。
(4)別紙第3(画像2)
別紙第3(画像2)は、主に以下の点で本願意匠とは異なる。
(i)一の画面から他の画面に遷移させるための画像ではない。
この別紙第2(画像1)は、単にタップすると、めくれてその下の魚のヒレの形状を確認できることが開示されているが、タップした後、一の画面から他の画面に遷移するというものではない。すなわち、本願意匠はタップ後、めくれて、文字を確認することができ、その後、他の画面に遷移するものである。
(ii)また、同画像の選択によって、どのようにその後変化するのか具体的な開示がない。
確かに「変化した状態を示す正面図3」には、目隠し用の付箋が、僅かにめくれているような画像が表現されているが、その後、最後までめくれるか、そこで終わるのかが不明である。このため、機能が大きく異なる。
(iii)タップした後、その下に「何らかの文字」が配されているものでない)。
この別紙第3(画像2)は、その下の魚のヒレの形状を確認できということは開示されているが、そもそも本願意匠のように「何らかの文字」が配されているものではない。
(5)別紙第4(2層シールの事例)
別紙第4(2層シールの事例)は、主に以下の点で本願意匠とは異なる。
(i)物品が異なる。
本願意匠の画像は「画面遷移用画像」であり、別紙第4(2層シールの事例)の物品は「シール」である。「シール」の物品分野において、広く知られたありふれた手法を、「画像」の分野に適用して意匠を創作するということは困難である。
「シール」の物品分野には、そもそもシールがめくれた後に他の画面に遷移するという機能・用途はない。確か、形状等を無視すれば「画像」の分野では画面遷移というのは一般的かもしれないが、これを画像分野ではない「シール」の物品分野から着想を得て、本願意匠を創作することは困難である。
(ii)操作方法が異なる。
操作・使用方法について検討すると、物品「シール」では、ユーザは、「シール」の端部をつまんで左方向に移動させることにより、シールはめくられる。
しかし、「画像」では、シールを模した画像はそもそもデバイスのディスプレイに表示されているものであるため、ユーザは、ディスプレイ上に表示された画像をタップすることがはできても、「シール」をつまむという動作・操作をすることできない。
このために、物品「シール」の分野においてありふれた手法を参考に、用途・機能が異なる画像分野の意匠に適用しようという動機にはならない。
「シール」というのは、めくるユーザが異なれば、どのようにだってめくることができる。つまり、左下から右上に向かってめくるのか、右上から左下から向かってめくるのか、ユーザが異なればめくり方も様々である。一方、画像では、ユーザの操作に合わせて、どのようにどのようにめくれるのか、それも画像デザインの一つなのである。近年の画像分野(UX分野)では、より実際の物品「シール」をめくっているようなユーザ体験(ユーザーエクスペリエンス)をユーザに与えることで、ユーザは、使いやすさ、感動、印象といった体験を得る。そのため、画像デザインを創作するデザイナーは試行錯誤を凝らしデザインを行っている。単に物品「シール」のめくり方をそのまま適用したものではない。
(6)まとめ
そうすると、別紙第2(画像1)に基づいて、別紙第3(画像2)を組みわせても、本願意匠のような、本願意匠のように「変化後を示す画像図1」から「変化後を示す画像図3」に変化するようにすること、別紙第4(2層シールの事例)に示すような「シール」の分野におけるありふれた手法を適用して、「めくる」の文字部をめくることにより変化させて「あたり」の文字部が表出するようにことは、当業者にとって容易なことではない。
したがって、本願意匠は、別紙第5(参考画像1)、別紙第6(参考画像2)、別紙第2(画像1)、別紙第3(画像2)、及び別紙第4(2層シールの事例)に基づいて当業者が容易に意匠の創作をすることができたものでない。

2 結語
以上の通り、本願意匠は、意匠法第3条第2項の規定に該当するものではない。

第5 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
当審では、本願意匠について、以下のとおり認定する(別紙第1参照)。
(1)意匠に係る画像の用途
本願意匠の意匠に係る画像(以下「本願画像」という。)は、「画面遷移用画像」であり、願書の「意匠に係る物品の説明」には、以下のとおり記載されている。なお、この「意匠に係る物品の説明」の項目名は願書の仕様によるものであり、当審では「意匠に係る画像の説明」として認定する。
「本画像は、一の画面から他の画面に遷移させるための画面遷移用画像である。画像図に示された画像を選択すると、変化後を示す画像図1から3に示すように画像が変化する。本画像は、本画像が選択されると、本画像の左下から右側に向かってシールがめくれるように変化するとともに、新たな画像が漸次的に現れる。変化後を示す画像図3の後に、本画面は他の画面に遷移する。」
また、願書の「意匠の説明」には、以下のとおり記載されている。
「実線で表した部分が、意匠登録を受けようとする部分である。」
これらの願書の記載によれば、本願は、画像の部分について意匠登録を受けようとするものであり、本願画像は、他の画面に遷移させるための画像であって、その遷移は、本願画像を選択して始まる一連の変化が終了した後になされるものである。
(2)本願画像における意匠登録を受けようとする部分について
[画像図]及び「変化後を示す画像図1」では実線のみが表され、「変化後を示す画像図2」及び「変化後を示す画像図2」では実線と破線で描き分けられている。これら4つの画像図において、実線で表された部分(以下「本願画像部分」という。)が本願画像における意匠登録を受けようとする部分であると認められる。そして、上記の願書の記載によれば、「画像図」に示された画像を選択すると、一連の変化の後に他の画面に遷移する(ソフトウェアが進行する)から、本願画像部分は機器の操作の用に供される画像(令和元年改正意匠法第2条第1項で規定された画像)であると認められる。
本願画像部分は、具体的には、「(物品の面に貼られる)シール」を模した略横長トラック形状境界線とその内側に配された「めくる」の文字部を含む領域(以下、この境界線に囲われた領域を「横長トラック部」という。)、及びめくられた横長トラック部の下に配された「あたり」の文字部を含む領域から成る。
(3)本願画像部分の用途及び機能
本願画像部分の用途は、一連の変化の後に他の画面に遷移させることであり、本願画像部分の機能は、最初の画像(「画像図」に示された画像)が選択可能であって、同画像の選択によって「変化後を示す画像図1」から「変化後を示す画像図3」に変化することである。なお、最初の画像に文字部として表された「めくる」は、この変化を予想させる役割を有しており、変化後の画像(「変化後を示す画像図3」に示された画像)に文字部として表された「あたり」から、変化後に遷移する他の画面が、くじ等が当選した後の景品等が表示される画面であると推察することができる。
(4)本願画像部分の態様
ア 「画像図」に表された態様
縦横比が約1:3である横長トラック部の上下方向中央に水平状に「めくる」の文字部が配されている。
イ 「変化後を示す画像図1」に表された態様
横長トラック部の左下部が、右上方向に折り曲げられて、少しめくられる様子が表されている。
ウ 「変化後を示す画像図2」に表された態様
横長トラック部が更に右上方向に折り曲げられて、その略左半部がめくられる様子が表されている。また、下記エで認定する「あたり」の文字部の半分程度が表されている。
エ 「変化後を示す画像図3」に表された態様
横長トラック部が完全にめくられて、上記アの「めくる」の文字部とほぼ同じ位置に、「あたり」の文字部が表されている。
めくられた横長トラック部は、裏側(「めくる」の文字部が表されていない側)になった状態で、約1:3の縦横比のまま右斜め方向に、貼り付いたように表されている。横長トラック部の位置は、「あたり」の文字部を含む領域の右上であって、横長トラック部の左端は同領域の右上角部から少し離れている。

2 引用画像、参考事例及び参考画像の認定
当審における拒絶の理由で引用した画像1及び画像2、並びに参考として示した参考事例、参考画像1及び参考画像2について、以下のとおり認定する。画像などの態様については、主として本願画像部分に相当する部分について認定する。なお、これらの出典や公知日などについては、前記第3の3及び4のとおりである。
(1)画像1(別紙第2参照)
ア 画像1の用途及び機能
画像1は、付箋で隠したフリップを作れるiPadアプリ「AC Flip Pro」の画像であり、画像1の用途及び機能は、画像において表された付箋をタップすることによってめくることである。なお、実際にどのようにめくられるかについては、画像1が掲載されたインターネット記事の記載の限りでは不明である。
イ 画像1の態様
画像1には、複数の同形同大の付箋が、上から下に5つ表されており、付箋の縦横比は約5:9であって全体が黄色で表され、付箋の右下角部がやや濃く表されている。
上側2つに表された付箋の上端寄りに、水平状に「タップでめくる」の文字部が赤色で配されている。また、中央に表された付箋には、水平状の文字部が3段黒色で表されている。
また、各付箋の下には、その付箋で隠された文字部(数字)が表されていると推認される。(画像1が掲載されたインターネット記事には、「資料の隠したい部分に付箋を貼って・・・」との記載がある。別紙第2第1頁参照。)

(2)画像2(別紙第3参照)
ア 画像2の用途及び機能
画像2は、学習活動サポート機能付き電子計算機の正面に表示される、「変化した状態を示す正面図1」及び「変化した状態を示す正面図3」に表された画像である。画像2の用途は、ドラッグ操作によって目隠し用の付箋を貼ることであり、「変化した状態を示す正面図1」には貼られた付箋が表されている。また、画像2の機能は、付箋を消去させることであり、徐々に付箋が捲りあがるようにして消えていく様子が「変化した状態を示す正面図3」に表されている。
イ 画像2の態様
(ア)「変化した状態を示す正面図1」に表された態様
横長トラック部の左下部が右上方向に折り曲げられて、少しめくられる様子が表されている。
(イ)「変化した状態を示す正面図3」に表された態様
横長トラック部が更に右上方向に折り曲げられて、その左側略1/3がめくられる様子が表されている。

(3)2層シールの事例(別紙第4参照)
ア 2層シールの用途及び機能
2層シールは、上層のシールを剥がすと下層のシールが現れる機能を持ったシール(物品)であり、商品を購入した場合における抽選券のような用途を有しており、主にキャンペーンシールやおみくじシールとして使われるものである。
イ 2層シールの態様
(ア)左側に表された態様
事例として別紙第4第1頁左側に示された2層シールは、略角丸四角形状であって、表面に「TRY LOTTERY」の文字部が2段にわたって白抜きで表されている(背景は赤色)。その「TRY」の文字部は、表面のほぼ中央に配されている
(イ)右側に表された態様
表層(第1層)の左下部が、右上方向に折り曲げられて、ほぼ対角線の位置付近までめくられる様子が表されている。下層(第2層)には、上記(ア)の「TRY LOTTERY」(仮訳:「くじに挑戦」)の文字部とほぼ同じ位置に、「SUCCESS」(仮訳:「あたり」)と推認される文字部が表されている。

(4)参考画像1(別紙第5参照)
ア 参考画像1の用途及び機能
参考画像1は、デモページに表された画像であって、ページ遷移時にアニメーションを入れる方法を示した画像であり、一の画面から他の画面に遷移させるにあたって、その途中にアニメーション(変化する画像)を入れた画像である。参考画像1の用途は、アニメーションを入れることにより、サイトの印象を強くすることであり、その機能は、カーテンが左から右へ、右から左へ移動するように変化させることである。
イ 参考画像1の態様
「DEMOPAGE1」の文字部が表された画像(別紙第5第5頁上段)の上に被さるように、やや半透明で黄土色の領域(領域の全体は横長四角形状)が左から出現して右に移動して一旦消え去り(同第5頁中段〜同第6頁中段)、次に、その領域が今度は右から出現して左に移動して(同第6頁下段〜同第7頁中段)、領域が消え去って「DEMOPAGE2」の文字部が表された画像(同第7頁下段)に遷移する。

(5)参考画像2(別紙第6参照)
ア 参考画像2の用途及び機能
参考画像2は、YouTubeに現された画像であって、画面を操作することによって文字部を変化させて別の文字部を表出させる用途及び機能を有するものである。具体的には、スクラッチくじ(「スクラッチ」はこすり取ることを意味する。)を模した画像であって、下部の文字部を含む領域を指でなぞることによって消失させると、別の文字部を含む領域が現れるというものである。
イ 参考画像2の態様
(ア)0:08の時点の画像(別紙第6第4頁上段)
携帯情報端末機の画像内の下部の灰色領域(境界線がギザギザ形状)において、指でなぞられた部分が白く表されて、白色領域が少し表出している。灰色領域内には「こちらをこすってください」の文字部(白色)が表されており、同文字部は境界線内の上下方向中央に水平状に2段で配されています。
(イ)0:09の時点の画像(別紙第6第4頁中段)
灰色領域が更に指でなぞられて、白色領域がかなり表出している。また、下記(ウ)で認定する「あたり」の文字部の半分程度が表されている。
(ウ)0:11の時点の画像(別紙第6第4頁下段)
灰色領域の大部分が指でなぞられて消失し、白色領域がほぼ表出している。白色画像の上下方向中央に水平状に「あたり」の文字部(赤色)が配されている。

3 本願意匠の創作非容易性について
本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。
画像を含む意匠において、一の画面から他の画面に遷移させるにあたって、アニメーション(変化する画像)を入れることは、参考画像1のように本願の出願前に広く知られており、画面を操作することによって文字部を変化させて別の文字部を表出させることや、文字部を境界線内の上下方向中央に水平状に配することも、参考画像2のように本願の出願前に広く知られている。そして、画像を含む意匠においては、文字部を配した付箋を選択(タップ)することによってめくることができる画像や、付箋を左下から右上方向にめくりあげる画像も本願の出願前に見受けられ、「シール」の物品分野においては、キャンペーンやおみくじなどのシールとして2層シールを用いることは、広く知られたありふれた手法である。
しかしながら、本願画像部分の「変化後を示す画像図3」に表された態様における横長トラック部の態様については、画像1、画像2、参考事例、参考画像1及び参考画像2の態様から容易に想到できたということはできない。
具体的には、完全にめくられた横長トラック部が裏側になった状態で、約1:3の縦横比のまま右斜め方向に貼り付いたように表されている態様は、画像1、画像2、参考事例、参考画像1及び参考画像2においては表されておらず、特に、画像1では付箋が実際にどのようにめくられるか、めくられた後にどうなるかが不明であり、画像2においても、付箋がめくられた後にどうなるかが不明である。また、参考事例である2層シールは、物品「シール」の事例であって、剥がされた上層のシールは下層のシールから物理的に分離するので、本願画像部分の横長トラック部のように外形を保ったまま貼り付くように表されることはあり得ない。
したがって、当審における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、当審の拒絶の理由、すなわち本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するとの理由によって、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲












































審決日 2022-02-16 
出願番号 2020006319 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (N3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 小林 裕和
江塚 尚弘
登録日 2022-03-10 
登録番号 1710216 
代理人 杉浦 健文 
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