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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 C1
管理番号 1382415 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-01 
確定日 2022-02-15 
意匠に係る物品 枕 
事件の表示 意願2019− 27187「枕」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和1年12月6日の意匠登録出願であり、主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年 8月28日付け:拒絶理由通知(1回目)の送付
同年10月 8日 :拒絶理由通知(1回目)に対する意見書の提出
同年12月 2日付け:拒絶理由通知(2回目)の送付
令和3年 1月15日 :拒絶理由通知(2回目)に対する意見書の提出
同年 4月22日付け:拒絶査定
同年 7月 1日 :審判請求書の提出

第2 本願の意匠(願書及び添付図面の記載)
本願は、意匠に係る物品を「枕」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするものである(以下「本願意匠」という。別紙第1参照。)。

第3 原査定の拒絶理由及び引用意匠
原査定の2回目の拒絶理由通知書(令和2年12月2日付け)における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって、具体的には、概要以下のとおりである。

この意匠登録出願の意匠は、意匠に係る物品を「枕」とするものであるが、この種の意匠の属する分野においては、本願出願前より、同形状の枕を上下2段に重ねて一つの枕とすることはごく一般的に行われている(例えば、下記の意匠1及び意匠2参照)。
そうすると、本願出願前に公知となった上段巻き四つ折り状横長矩形板状枕(下記の意匠3)をごく一般的に見受けられる上記手法により2段に重ね一体型の枕の態様としたにすぎない本願意匠は、当業者であれば容易に創作をすることができたものである。

意匠1
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1514282号の意匠

意匠2
大韓民国意匠商標公報 2015年12月 4日15−46号
枕(登録番号30−0828402)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH27450632号)

意匠3
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2014年10月20日に受け入れた
モノ マガジン 2014年10月16日19号
第80頁所載
まくらの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HA26005315号)

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
(1)本願意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「枕」であり、連結ボタンによって着脱可能な2つの枕を結合するもので、使用時に上枕が頭部を包み込むように立ち上がる態様とするものである。

(2)本願意匠の形態
ア 全体の構成
本願意匠は、正面視側に現れる枕(以下「上枕」という。)と背面視側に現れる枕(以下「下枕」という。)を上下2段に重ねて一体型の枕とした構成とするものである。

イ 全体の形状
上枕と下枕は、共に正面(背面)視における長辺:短辺を約3:2、上枕の中央部の厚みは長辺の長さの約9/100、下枕の中央部の厚みは長辺の長さの約6/100の横長矩形板状とするものである。

ウ 正面視及び背面視の分割態様
正面視及び背面視において、上枕と下枕は、共に縦に約2:1:1:2の割合で4分割されている。

エ 上枕と下枕の接合態様
(ア)上枕と下枕は、正面視及び背面視における分割位置が共通しているため、平面視において、分割位置が上枕と下枕ですべて連続して現れる態様とするものである。
(イ)また、左右から1つ目の分割部分には、側面視において、枕の高さ幅に対して上から約1/6、下から約1/6の位置に連結用ボタンを有しており、これにより上枕と下枕が着脱可能に結合されている。
(ウ)そして、左右から1つ目の分割部分より外側は、開放部となっており、平面視では、上枕と下枕の左右端部側が略倒V字状に開いて現れる態様とするものである。

オ 上枕と下枕の左右端部及び上下端部の態様
(ア)上枕と下枕の左右端部は、横長トラック形状の平板状としており、横長トラック形状を囲むパイピング処理状の縁を有している。
また、上枕の横長トラック形状部の高さは、下枕の横長トラック形状部の高さの約1/2である。
(イ)上枕と下枕の上下端部は、側面視、中央が僅かに膨らんだ態様とするもので、平面視においては、高さ方向中央に直線状の上下分割線を有している。

2 引用意匠の認定
原査定における拒絶の理由に用いられた意匠1ないし意匠3について、当審では、以下のとおり認定する。
なお、本願意匠の図面の向きに合わせて対比するものとする。

(1)意匠1(別紙第2参照)
ア 意匠1の意匠に係る物品
意匠1の意匠に係る物品は、「まくら」であり、2つの袋状部が積み重なって一体形状を呈したものである。

イ 意匠1の形態
(ア)全体の構成
意匠1は、正面視側に現れる上枕と背面視側に現れる下枕を上下2段に重ねて一体型の枕とした構成とするものである。

(イ)全体の形状
(a)上枕と下枕は、共に正面(背面)視における長辺:短辺を約3:2、厚みを長辺の長さの約1/10とする同形状の横長矩形板状で、
(b)平面視及び側面視において、上枕と下枕の上面及び下面を平坦状、外周は砲弾状に現れる形状とするものである。

(ウ)上枕と下枕の接合態様
上枕と下枕は、平面視において、水平直線状に重なった態様とするもので、左右の端部側は、長辺の長さの約1/10内側までを開放部とし、側面視において、垂直直線状に重なった態様とするもので、上下の端部側は、短辺の長さの約1.5/10内側までを開放部としている。

(2)意匠2(別紙第3参照)
ア 意匠2の意匠に係る物品
意匠2の意匠に係る物品は、「枕」である。

イ 意匠2の形態
(ア)全体の構成
意匠2は、正面視側に現れる上枕と背面視側に現れる下枕を上下2段に重ねて一体型の枕とした構成とするものである。

(イ)全体の形状
(a)上枕と下枕は、共に正面(背面)視における長辺:短辺を約10:7、上枕の厚みを長辺の長さの約3/20、下枕の厚みを長辺の長さの約3/21とする略同形状の横長矩形板状で、
(b)平面視及び側面視において、上枕の上面と下枕の下面は、中央が緩やかに膨らんだ態様とするもので、外周は、上枕と下枕の接合部から枕の厚みの約2/5の高さにそれぞれ濃い調子の細いライン状(以下「外周ライン部」という。)に現れる頂部が一周するもので、上枕の外周ライン部と下枕の外周ライン部から上下枕の接合部に向かっては、直線状に内側方向に窪み、また、この間は薄い暗調子とするものである。

(ウ)上枕と下枕の接合態様
上枕と下枕は、平面視において、水平直線状に縫い合わせた態様とするもので、左右の端部側は、長辺の長さの約1/17内側までを開放部とし、側面視において、中心部は垂直直線状に縫い合わせた態様とするもので、上下の端部側は、短辺の長さの約1/17内側までを開放部としている。

(3)意匠3の認定(別紙第4参照)
ア 意匠3の意匠に係る物品
意匠3の意匠に係る物品は、「まくら」であり、頭を包み込む上部とそれを支える下部の枕を連結した2層構造とするものである。

イ 意匠3の形態
(ア)全体の構成
意匠3は、正面視側に現れる上枕と背面視側に現れる下枕を上下2段に重ねて一体型の枕とした構成とするものである。

(イ)全体の形状
上枕と下枕は、共に正面(背面)視において長辺と短辺の割合を略同じとする横長長方形で、上枕の中央部の厚みは長辺の長さの約9/100、下枕の中央部の厚みは長辺の長さの約6/100の横長矩形板状とするものである。

(ウ)正面視及び背面視の分割態様
正面視において、上枕は、縦に約2:1:1:2の割合で4分割されており、下枕は、背面図に相当するものは無いが、縦方向に約3:4:3の割合で3分割されているものと認められる。

(エ)上枕と下枕の接合態様
(a)上枕と下枕は、左右から1つ目の分割位置については共通しているため、平面視において、この部分については上枕と下枕が連続して現れる態様とするものであるが、上枕には中央にも縦方向に分割線を有しているのに対し、下枕には相当する分割線は無いため、下枕の左右から1つ目の分割線の内側は平坦状に現れ、上枕との連続性は有していない。
(b)また、上枕と下枕が、具体的にどのように連結しているのかは特定することができない。
(c)そして、左右から1つ目の分割部分より外側は、開放部となっており、上枕と下枕の左右端部側が略倒V字状に開いて現れる態様とするものである。

(オ)上枕と下枕の左右端部及び上下端部の態様
(a)上枕と下枕の左右端部は、略横長長方形とするもので、平面視、中央が緩やかに膨らんだもので、当該横長トラック形状の周囲を囲むパイピング処理状の縁の有無は、特定することができない。
また、上枕の略横長長方形状部の高さは、下枕の略横長長方形状部の高さの約1/2である。
(b)上枕と下枕の上下端部は、側面視、中央が僅かに膨らんだ態様とするものである。

3 本願意匠の創作非容易性について
本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。

まず、本願の意匠に係る物品は「枕」であり、意匠1ないし意匠3の属する分野と同じである。
そして、枕の分野において、同形状の横長矩形板状の枕を上下2段に重ねて一体型の枕とすることは、意匠1及び意匠2のとおり、普通に見られ、特段の創作性を認めることはできない。

次に、本願意匠の上枕及び下枕のように、横長矩形板状の枕を縦に約2:1:1:2の割合で4分割する態様は、意匠3のとおり、本願の出願前に当業者に公然知られたものであったということができる。

しかしながら、本願意匠の各部の形状を具体的にみた場合、下記のとおり、意匠1ないし意匠3の形状に基づいて、本願意匠が導き出されるということはできない。

(1)本願意匠と意匠3の各部の形状の相違点
ア 正面視及び背面視の分割態様
本願意匠は、正面視及び背面視において、上枕と下枕は、共に縦に約2:1:1:2の割合で4分割されているのに対し、意匠3は、上枕については、縦に約2:1:1:2の割合で4分割されており共通するものの、下枕は、縦方向に約3:4:3の割合で3分割されていると認められる点。

イ 上枕と下枕の接合態様
(ア)本願意匠の上枕と下枕は、正面視及び背面視における分割位置が共通しているため、平面視において、分割位置が上枕と下枕ですべて連続して現れる態様とするのに対し、意匠3の上枕と下枕は、左右から1つ目の分割位置については共通しているため、この部分については上枕と下枕が連続して現れるが、上枕には中央にも縦方向に分割線を有しているのに対し、下枕には相当する分割線は無いため、下枕の左右から1つ目の分割線の内側は平坦状に現れ、上枕との連続性は有していない態様とする点。
(イ)また、本願意匠の左右から1つ目の分割部分には、側面視において、枕の高さ幅に対して上から約1/6、下から約1/6の位置に連結用ボタンを有しており、これにより上枕と下枕が着脱可能に結合されているが、意匠3の上枕と下枕が、具体的にどのように連結しているのかは特定することができない点。

ウ 上枕と下枕の左右端部及び上下端部の態様
(ア)上枕と下枕の左右端部を、横長トラック形状の平板状としており、横長トラック形状を囲むパイピング処理状の縁を有しているのに対し、意匠3の上枕と下枕の左右端部は、略横長長方形とするもので、平面視、中央が緩やかに膨らんだもので、当該横長トラック形状の周囲を囲むパイピング処理状の縁の有無は、特定することができない点で相違している。
(イ)また、本願意匠の上枕と下枕の上下端部は、平面視において、高さ方向中央に直線状の上下分割線を有しているが、意匠3は、そのような態様は有していない点。

(2)検討
本願部分と意匠3の各部の形状を対比すると、前記(1)ア及びイ(ア)のとおり、本願意匠の上枕と下枕は、4分割の位置が共通し、上枕と下枕を重ねたときに、すべての分割部が重なることで、上枕と下枕に連続した一体感を生み出しているが、意匠3は、下枕が3分割となっているため、すべての分割部が重なった態様は、本願の出願前に公然知られていたとすることはできない。
これを、分割部を有さない意匠1及び意匠2の態様に当てはめて、単純に4分割された意匠3の上枕だけを取り出して、2段に重ねて一体型の枕とすることは、2段にすることによって生じる視覚的効果が異なっており、意匠の創作において飛躍がある。
一方、前記(1)イ(イ)における、上枕と下枕の左右から1つ目の分割部分で結合した態様については、本願意匠のように連結ボタンを用いる点は、当該物品分野における結合手段として当業者が想到する選択視の1つということができ、この点のみから創作非容易との判断はできない。
また、前記(1)ウ(イ)における、本願意匠の上枕と下枕の上下端部に直線状の上下分割線を有している点についても、枕という物品分野を考慮すれば、たんなる縫い合わせ部とも捉えられる程度のもので、積極的に評価するほどのものではないことから、この点のみにおいて創作非容易との判断はできない。
しかしながら、前記(1)ウ(ア)における、左右端部の態様については、意匠3の上枕を上下2段に重ねても本願意匠のように、横長トラック形状の平板状とし、横長トラック形状を囲むパイピング処理状の縁を有した意匠とはならないのは明らかであり、この相違を、当該分野においてありふれた手法による僅かな改変ということはできない。

(3)小括
したがって、上枕と下枕の分割部を揃え、連続した一体感を備えた意匠は、意匠1及び意匠2に見られるような、分割部を有さない横長矩形板状の枕を2段に重ねることから当業者が容易に思いつくということはできず、左右端部を横長トラック形状の平板状とし、周囲にパイピング処理を施した意匠は、意匠3の上枕を2段に重ねても、導き出すことはできない。

よって、本願意匠は、当業者がこれら公然知られた形態に基づいて容易に創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前に当業者が日本国内において公然知られた形態に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲









審決日 2022-01-25 
出願番号 2019027187 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (C1)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 正田 毅
北代 真一
登録日 2022-02-18 
登録番号 1708609 
代理人 特許業務法人坂本国際特許商標事務所 
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