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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 J7
管理番号 1382419 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-25 
確定日 2022-02-28 
意匠に係る物品 輸液バッグ 
事件の表示 意願2020−20458「輸液バッグ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の主な経緯
本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする,令和2年(2020年)9月25日の意匠登録出願であって,その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和 2年10月21日 :新規性の喪失の例外証明書の提出
令和 3年 1月18日付け :拒絶理由の通知
3月 5日 :意見書の提出
4月19日付け :拒絶理由の通知
5月28日 :意見書の提出
7月 5日付け :拒絶査定
10月25日 :審判請求書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「輸液バッグ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり「実線で表した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。『各部名称及び意匠登録を受けようとする部分を示す参考正面図』及び『参考A−A,B−B部分拡大図』において,薄墨を施した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原審の拒絶の理由
原審における,令和3年4月19日付けの拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ,頒布された刊行物に記載され,又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には,以下のとおりである。
「この意匠登録出願は,上下2エリアから構成された本体の下側エリア中央付近に,略しずく形状模様を付した「輸液バッグ」の意匠であり,当該模様を意匠登録を受けようとする部分としたものです。
この意匠登録出願に係る「輸液バッグ」の分野において,本体の下側エリア中央付近に,様々な形状の模様を所定の大きさで付したものは,本願出願前から公然知られています。例えば,意匠1には方形状の模様を付したもの,意匠2には円弧状部分が上方を向いた半月状の模様を付したもの,意匠3には円の下方を直線状に切り欠いた形状の模様を付したもの,がそれぞれ表されています。
また,バッグの表面に略しずく状の模様を付したものは,例えば意匠4に表されるように,本願出願前から公然知られています(なお,意見書において主張されるように,意匠4に表れた模様の右下は別の模様(ライチの模様)で隠されていますが,別の模様により隠された部分を単に滑らかに結ぶ略しずく状の模様も,当業者が想起し得るものと認められます。)。
そうすると,本願意匠は,本願出願前に公然と知られた輸液バッグの下側エリアに付された模様を,意匠4等にみられる略しずく形状の模様に置き換えたものにすぎないため,当業者の知識を有する者が容易に創作することができたものです。

意匠1:
著者の氏名 株式会社大塚製薬工場
表題 くすりのしおり
掲載箇所 右上図
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 令和2年8月
検索日 [令和3年4月16日検索]
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス URL:https://www.rad−a
r.or.jp/siori/print.c
gi?n=43520に掲載されたエルネオパ
NF2号輸液(2000mL)の意匠

意匠2:
著者の氏名 株式会社大塚製薬工場
表題 くすりのしおり
掲載箇所 右上図
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 令和2年8月
検索日 [令和3年4月16日検索]
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス URL:https://www.rad−a
r.or.jp/siori/print.c
gi?n=30586に掲載されたビーフリー
ド輸液(500mL)の意匠

意匠3:
著者の氏名 株式会社大塚製薬工場
表題 くすりのしおり
掲載箇所 右上図
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 令和2年8月
検索日 [令和3年4月16日検索]
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス URL:https://www.rad−a
r.or.jp/siori/print.c
gi?n=38465に掲載されたビーフリー
ド輸液(1000mL)の意匠

意匠4:
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2016年 5月27日
受入日 特許庁意匠課受入2016年 6月17日
掲載者 ケンコーコム株式会社
表題 タイトルなし
掲載ページのアドレス http://photo.kenko.co
m/E458212H_L.jpg
に掲載された「注出口付き包装用袋」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ28011607号)」

第4 当審の判断
以下において,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,つまり,本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。

1.本願意匠の認定
(1)本願意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「輸液バッグ」である。

(2)本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,収容部が上下二つに分かれた輸液バッグにおける,下側の収容部の正面側の中央に表した模様部分(その内側において破線で表された部分を除く)である。
本願部分は,下側の収容部の略中央に位置し,縦長さが物品全体の約6分の1,横長さが物品全体の約4分の1の略雫形(その内側において破線で表された部分を除く)を占める大きさ及び範囲であって,使用者が薬液の投与前に下側の収容部を押すという正しい手順を踏んで使用できるようにするための表示の周りを囲って目立たせることで当該表示の視認性を向上させて注意を促すという用途及び機能を有している。

(3)本願部分の形状
本願部分の形状は,おおむね,上側約3分の1が,頂点が角丸とした略直角の略直角二等辺三角形状(以下,単に「三角形」という。)で,本願部分の下約3分の2が,略正円形円弧状(以下,単に「円形」という。)の略雫形である。
具体的には,三角形における等辺の直線と,円形部分の円弧は,正接している。
そして,本願部分の形状である,この三角形と円形が上下に連なってできた模様の,中央より上の範囲に,中央に左右の手を重ねたような形状の空隙が存在する。

2.本願意匠の創作の容易性について
(1)出願前に公然知られた形状
本願意匠の出願前に日本国内又は外国において公然知られ,頒布された刊行物に記載され,又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像と認められるものは,以下のとおりである。
ア.意匠1ないし3より
下側の収容部の正面側の中央に,使用者が薬液の投与前に下側の収容部を押すという正しい手順を踏んで使用できるようにするための表示の周りを囲って目立たせることで当該表示の視認性を向上させて注意を促すという用途及び機能を有している,各種の模様を設けた態様が表れている。
イ.意匠4より
上側約5分の2が,等辺が僅かに膨出した曲線状である,頂点が頂角の略二等辺三角形状(以下,単に「三角形」という。)で,下側約5分の3が,略正円形円弧状(以下,単に「円形」という。)の滴形の形状。

(2)本願意匠の創作の容易性について
しかし,収容部が上下二つに分かれた輸液バッグにおける,下側の収容部の正面側の中央に表した模様を,上側約3分の1が,頂点が角丸とした略直角の略直角二等辺三角形状で,下側約3分の2が,略正円形円弧状とした略雫形としたものは,本願の出願前の公然知られた形状に基づいて容易に意匠の創作をすることができたとはいえない。
すなわち,意匠4に表された滴形の形状は,液体が下方に落下する際の態様を模した形状であるのに対して,本願部分の略雫形の形状は,そのようなものではなく,正しい手順を踏んで使用できるようにするための,押す箇所の視認性を向上させつつ,下側の収容部の薬液が上方に流れるイメージを表現した形と認められ,意匠4に表された滴形の形状と本願部分の略雫形の形状を同視することはできない。

3.結び
したがって,本願意匠は,原審で示した意匠1ないし4を基にしては,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,原審の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲








審決日 2022-02-08 
出願番号 2020020458 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (J7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2022-03-04 
登録番号 1709666 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 野間 悠 
代理人 黒川 朋也 

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