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審決分類 審判    J7
管理番号 1383280 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2021-07-14 
確定日 2022-03-05 
意匠に係る物品 マッサージ器 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1685102号「マッサージ器」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 意匠登録第1685102号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
登録第1685102号の意匠(以下「本件登録意匠」という。)は,令和2年(2020年)12月28日に意願2020−28408号として出願され,令和3年(2021年)4月19日に設定登録され,同年5月17日に意匠公報が発行されたものである。

そして,令和3年7月15日に,請求人により,本件登録意匠の登録を無効とする旨の無効審判の請求がされ,当審にて,期間を指定し,被請求人に対して答弁を求めたが,被請求人は指定した期間までに答弁書を提出しなかった。

その後,当審において,同年12月21日付けで,本件無効審判を書面審理とする旨を通知し,同年12月28日付けで審理を終結する旨を通知した。


第2 請求の趣旨及び理由の要点,並びに証拠方法
本件無効審判の請求の趣旨は「登録第1685102号意匠の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」というものであり,その理由として,本件登録意匠は,本件意匠の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された意匠に類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により無効とすべきである,と主張した。

また,請求人は,証拠方法として,以下の書証を提出した。
甲第1号証 中国専利公布公告(CN 306244689 S)写し


第3 被請求人の答弁
審判長は,被請求人に対し,審判請求書の副本を送達し,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,被請求人からの応答はなかった。


第4 書面審理及び審理終結
当審は,本件審判について,両当事者の申出に応じて,令和3年12月21日付けで書面審理に付する旨の通知を両当事者に通知し,令和3年12月28日付けで審理を終結する旨を通知した。


第5 請求人の主張の概要
1 本件登録意匠の説明(要旨等)
本件登録意匠は,意匠登録第1685102号の意匠公報に記載のとおり,意匠に係る物品を「マッサージ器」とし,該物品は振動するヘッド部に各種のアタッチメントを取り付けて使用するものである。その形態は,基本的構成態様が,本体を,略円柱状の基体部と,該基体部を後方から覆う断面コ宇の枠体部と,該枠体部から緩やかに斜め下方向に延伸する略円柱状の把持部と,前記基体部の前方に位置するアタッチメントの取付部を有するヘッド部と,前記枠体部の後方に位置するスイッチを有するバック部とを設けたものである。下記に示す通り,使用時には,本体部におけるヘッド部の取付部にあるアタッチメントを取り付けて使用する。各部の態様は,(3 本件登録意匠と先行意匠との対比)の項で詳述する。

2 甲第1号証の意匠の説明
甲第1号証は,本件登録意匠の出願の日前である令和2年12月22日に頒布された刊行物,すなわち,令和2年12月22日発行の中国専利公布公告(CN 306244689 S)に記載されたマッサージ器の意匠(以下,「先行意匠」ともいう)を開示する者であって,当該意匠におけるマッサージ器にかかる物品は振動するヘッド部に各種のアタッチメントを取り付けて使用するものである。その形態は,基本的構成態様が,本体を,略円柱状の基体部と,該基体部を後方から覆う断面コ字の枠体部と,該枠体部から緩やかに斜め下方向に延伸する略円柱状の把持部と,前記基体部の前方に位置するアタッチメントの取付部を有するヘッド部と,前記枠体部の後方に位置するスイッチを有するバック部とを設けたものである。下記に示す通り,使用時には,前記本体部におけるヘッド部にある取付部にアタッチメントを取り付けて使用する。各部の態様は,(3 本件登録意匠と先行意匠との対比)の項で詳述する。

3 本件登録意匠と先行意匠との対比
意匠に係る物品は,両意匠ともに「マッサージ器」に関するものであり,同一の物品であり,その形態については以下の共通点と差異点が認められる。

ア 基体部,枠体部及び把持部
本件登録意匠及び先行意匠は,基体部,枠体部及び把持部が以下の点で共通する。すなわち,本件登録意匠及び先行意匠において,基体部は略円柱状であり,該基体部を後方から,本体の長さに対して約4分の3の長さの断面コ字状の枠体部が覆っている。平面図に示されるように,本体を上面視した場合,枠体部は,その前方が,緩やかに湾曲した形状をしており,後方部は左右(平面図では上下)にわずかに突出した形状を有し,後方先端にいくにつれて丸まった形状をしている。把持部は,正面図に示されるように,前記枠体部から緩やかに斜め下方向(正面図では右下方向)に延伸する略円柱状の形状であり,その先端部は丸みのある形状をしている。
各正面図から明らかなように,基体部に対する,枠体部の大きさ及び把持部の大きさの比率は,本件登録意匠及び先行意匠ともに同程度である。なお,底面図では,本件登録意匠の方が,先行意匠よりも,把持部の先端が膨らんでいるように見えるが,正面図,後に示す右側面図及び左側面図から把持部の先端も本件登録意匠と同程度の大きさ(他の部位に対する比率が同程度)であることは明らかである。
一方,本件登録意匠は,把持部の先端に充電器の接続部位がないのに対して,先行意匠は,把持部の先端に充電器の接続部位が存在する点で相違する。

イ ヘッド部
本件登録意匠において,ヘッド部は,基体部の前方に位置し,左側面図に示されるように,本体を前面視した揚合に円形状である。そして,円の内部には,中央部にアタッチメントの取付部が存在し,その取付部を囲むように複数の小さな孔部(又は穴部)を円周上に配置している。
先行意匠も,ヘッド部は,基体部の前方に位置し,左側面図に示されるように,本体を前面視した場合,円形状である。ここで,先行意匠は,アタッチメントを取り付けた状態の図で示されているため,左側面図ではヘッド部の内部の形状は見えないが,斜視図にヘッド部の内部形状が示されている。当該斜視図に示される通り,先行意匠も本件登録意匠と同様に,ベッド部の中央部にアタッチメントの取付部が存在し,その取付部を囲むように複数の小さな孔部(又は穴部)を円周上に配置している。よって,本件登録意匠のヘッド部の形状と先行意匠のヘッド部の形状とは共通する。

ウ バック部
本件登録意匠及び先行意匠において,バック部は,前記枠体部の後方に位置し,右側面図に示されるように,本体を後面視した場合に円形状である。そのバック部の中央部には,円状のスイッチが設けられている。そして,中央部の左右には,線状の模様が形成されている。よって,この点において,本件登録意匠及び先行意匠のバック部は共通する。
一方,本件登録意匠では,バック部の下側に凸部が設けられているのに対して,先行意匠は,バック部の下側に凸部が設けられていない点で相違する。なお,この凸部はスイッチなのか,充電器を接続するカバー部なのかは不明である。

エ 本件登録意匠と先行意匠との類否
両意匠の類否を検討すると,共通する基本的構成態様は,具体的態様の共通点と共に,両意匠の基調を形成しているのに対して,上記アの把持部の差異点はごく普通にありふれた充電器の接続部位があるか否かの相違に過ぎず,上記ウのバック部の差異点は,需要者の目につきにくいバック部の下側にデザイン性に影響を与えない程度の凸部が設けられているか否かの差異であり,いずれも類否判断に与える影響は微弱である。
よって,これらの差異点を総合的に勘案しても,両意匠を全体的に対比したときの共通感を凌駕するものではないので,本件登録意匠は,甲第1号証に記載の意匠に類似するものである。

4 むすび
したがって,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないもの,であり,その意匠登録は同法第48条第1項第1号の規定に該当し,無効とすべきである。


第6 当審の判断
1 本件登録意匠(別紙第1参照)
本件登録意匠は,意匠に係る物品を「マッサージ器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするものであり,当審では,以下のとおり認定する。

(1)本件登録意匠の意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品は,「マッサージ器」であって,各種のアタッチメントを取り付けて使用するものである。

(2)本件登録意匠の形態
ア 全体の構成
本件登録意匠は,正面視,略水平に現れる本体と,下方に伸びる把持部からなり,本体は,前側(正面視における左側)を基体部,基体部の左側面側のアタッチメント装着部を含む凹部をヘッド部,基体部の後方側(正面視における右側)を枠体部,枠体部の右側面側にスイッチ部を有する構成とするものである。

イ 本体の態様
(ア)本体は,正面視,横幅:高さ幅が約2:1の略円柱状とするものである。
(イ)また,本体は,基体部より一回り太い枠体部が,本体横幅の約1/4を残し,後方から基体部を覆う態様とし,枠体部は,平面視及び底面視において,前方側を凸弧状とし,正面側及び背面側において,前方側に倒れた略倒「ひ」の字状に窪むことで本体横幅の約7/10は基体部が露出した態様とするものである。
(ウ)基体部は,正面視前方側の角を緩やかなR状とし,ヘッド部は,左側面視基体部よりやや内側の円形状で,中心部にアタッチメントの取付け部を有し,ヘッド部外周やや内側には,多数の小長方形の凹部が中心から放射状に規則的に配されている。
(エ)枠体部は,正面視後方側の後端部の角を大きなR状とし,右側面視,後端部中央に,枠体部の横幅の約2/5の長さを直径とする略円形のスイッチ部を有し,スイッチ部は,やや太めの外周部の内側に円形のボタン部を配した構成とするものである。
また,枠体部は,右側面視において下側(把持部との接合部)に略逆さかまぼこ状の小凹部を有している。

ウ 把持部の態様
(ア)把持部は,正面視,本体の横幅:把持部の縦方向の長さが約9:10の略円柱状とするもので,本体の枠体部下面と緩やかなRを伴って接合され,本体に対して約100度の角度でやや後方側に向かって下方に伸びる態様とするものである。
(イ)把持部の縦方向の長さ:横幅は,おおむね5:2とするものであるが,本体側の径よりも下端側の径が僅かに小さく,下方へ向かって僅かに先窄まりとするもので,下端部は,略半球状の態様とするものである。

エ 色彩について
本件登録意匠は,基体部,枠体部前方側の基体部と接合する端部,及びスイッチ部のやや太めの外周部を濃灰色のメタリック調とし,スイッチ部のボタン部を含む枠体部及び把持部は灰色,ヘッド部は黒色とするものである。

2 甲1号証の意匠(以下「甲1意匠」という。別紙第2参照)
甲1意匠は,中華人民共和国国家知的財産権局によって,本件登録意匠の出願日(2020年12月28日)前,2020年12月22日に公開された中国意匠公報掲載の意匠であり,当審では,以下のとおり認定する。

(1)甲1意匠の意匠に係る物品
甲1意匠の意匠に係る物品は,「マッサージ器」であって,球状のアタッチメントが取り付けられている。

(2)甲1意匠の形態
ア 全体の構成
(ア)本件登録意匠は,正面視,略水平に現れる本体と,下方に伸びる把持部からなり,本体は,前側(正面視における左側)を基体部,基体部の左側面側のアタッチメント装着部を含む凹部をヘッド部,基体部の後方側(正面視における右側)を枠体部,枠体部の右側面側にスイッチ部を有する構成とするものである。
(イ)本体先端部には,球状のアタッチメントが取り付けられた構成とするものである。

イ 本体の態様
(ア)本体は,正面視,横幅:高さ幅が約2:1の略円柱状とするものである。
(イ)また,本体は,基体部より一回り太い枠体部が,本体横幅の約1/4を残し,後方から基体部を覆う態様とし,枠体部は,平面視及び底面視において,前方側を凸弧状とし,正面側及び背面側において前方側に倒れた略倒「ひ」の字状に窪むことで枠体部本体横幅の約7/10は基体部が露出した態様とするものである。
(ウ)基体部は,正面視前方側の角を緩やかなR状とし,ヘッド部は,左側面視基体部よりやや内側の円形状で,中心部にアタッチメントの取付け部を有し,ヘッド部外周やや内側には,多数の小長方形の凹部が中心から放射状に規則的に配されている。
(エ)枠体部は,正面視後方側の後端部の角を大きなR状とし,右側面視,後端部中央に,枠体部の横幅の約2/5の長さを直径とする略円形のスイッチ部を有し,スイッチ部は,やや太めの外周部の内側に円形のボタン部を配した構成とし,ボタン部中央には,円形枠とその中に縦棒を配した模様を有したものである。

ウ 把持部の態様
(ア)把持部は,正面視,本体の横幅:把持部の縦方向の長さが約9:10の略円柱状とするもので,本体の枠体部下面と緩やかなRを伴って接合され,本体に対して約100度の角度でやや後方側に向かって下方に伸びる態様とするものである。
(イ)把持部の縦方向の長さ:横幅は,おおむね5:2とするものであるが,本体側の径よりも下端側の径が僅かに小さく,下方へ向かって僅かに先窄まりとするもので,下端部は,略半球状の態様とするものである。

エ 色彩について
甲1意匠は,基体部,枠体部前方側の基体部と接合する端部,及びスイッチ部のやや太めの外周部を明るい灰色とし,枠体部及び把持部は濃紺色,ヘッド部は黒色とするものである。また,スイッチ部のボタン部は青色,中央の模様は白色とするものである。

3 本件登録意匠と甲1意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本件登録意匠と甲1意匠(以下「両意匠」という。)は,いずれも「マッサージ器」に係るものであり,意匠に係る物品は共通する。

(2)形態の対比
本件登録意匠は,アタッチメントを装着していないのに対し,甲1意匠は,球状のアタッチメントを装着しているが,甲1意匠には,本体及び把持部が現れていることから,甲1意匠は,アタッチメントを除く本体及び把持部を本件登録意匠の対比の対象とする。

A 共通点
(共通点1)全体の構成
正面視,略水平に現れる本体と,下方に伸びる把持部からなり,本体は,前側(正面視における左側)を基体部,基体部の左側面側のアタッチメント装着部を含む凹部をヘッド部,基体部の後方側(正面視における右側)を枠体部,枠体部の右側面側にスイッチ部を有する構成とする点。

(共通点2)本体の態様
(ア)本体は,正面視,横幅:高さ幅が約2:1の略円柱状とする点。
(イ)また,本体は,基体部より一回り太い枠体部が,本体横幅の約1/4を残し,後方から基体部を覆う態様とし,枠体部は,平面視及び底面視において,前方側を凸弧状とし,正面側及び背面側において前方側に倒れた略倒「ひ」の字状に窪むことで枠体部本体横幅の約7/10は基体部が露出した態様とする点。
(ウ)基体部は,正面視前方側の角を緩やかなR状とし,ヘッド部は,左側面視基体部よりやや内側の円形状で,中心部にアタッチメントの取付け部を有し,ヘッド部外周やや内側には,多数の小長方形の凹部が中心から放射状に規則的に配されている点。
(エ)枠体部は,正面視後方側の後端部の角を大きなR状とし,右側面視,後端部中央に,枠体部の横幅の約2/5の長さを直径とする略円形のスイッチ部を有し,スイッチ部は,やや太めの外周部の内側に円形のボタン部を配した構成としている点。

(共通点3)把持部の態様
(ア)把持部は,正面視,本体の横幅:把持部の縦方向の長さが約9:10の略円柱状とするもので,本体の枠体部下面と緩やかなRを伴って接合され,本体に対して約100度の角度でやや後方側に向かって下方に伸びる態様とする点。
(イ)把持部の縦方向の長さ:横幅は,おおむね5:2とするものであるが,本体側の径よりも下端側の径が僅かに小さく,下方へ向かって僅かに先窄まりとするもので,下端部は,略半球状の態様とする点。

(共通点4)色彩について
基体部,枠体部前方側の基体部と接合する端部,及びスイッチ部のやや太めの外周部をおおむね同じ色調とし,枠体部及び把持部を同じ色調とし,ヘッド部は黒色とする点。

B 相違点
(相違点1)本体の態様
(ア)枠体部の後端部中央に設けられたスイッチ部について,本件登録意匠はボタン部に模様は有していないが,甲1意匠のボタン部中央には,円形枠とその中に縦棒を配した模様を有している点。
(イ)本件登録意匠は,右側面視において枠体部の下側(把持部との接合部)に略逆さかまぼこ状の小凹部を有しているが,甲1意匠にはそのような態様は有していない点。

(相違点2)色彩について
(ア)本件登録意匠は,基体部,枠体部前方側の基体部と接合する端部,及びスイッチ部のやや太めの外周部をメタリック調とし,スイッチ部のボタン部を含む枠体部及び把持部は灰色とするものであるが,甲1意匠は,基体部,枠体部前方側の基体部と接合する端部,及びスイッチ部のやや太めの外周部を明るい灰色とし,枠体部及び把持部は濃紺色とする点。
(イ)本件登録意匠のスイッチ部のボタン部は,枠体部と同じ灰色で模様は有していないのに対し,甲1意匠は,スイッチ部のボタン部を青色,中央の模様を白色とする点。

類否判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は,いずれも「マッサージ器」に係るものであるから,同一である。

(2)両意匠の形態の類否判断
両意匠の意匠に係る物品はマッサージ器であり,その形態から,需要者は,個人の使用者,購入者であり,実際に使用する際の使いやすさとして,本体及び把持部のバランス,持ちやすさ,操作のしやすさ等の観点,及び色彩を含めた全体の印象等に着目するものとして評価する。

ア 共通点の評価
(a)全体の構成における(共通点1)は,同様な態様とするものが,本件登録意匠の出願日前より公然知られており(参考意匠:特許庁意匠課公知資料番号第RH02003134号に表された「筋膜銃(当審注:ガンタイプのマッサージ器)」の意匠。別紙第3参照。),両意匠の形態の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(b)本体の態様における(共通点2)(ア)も,両意匠のみの特徴ということはできず,類否判断に及ぼす影響は小さい。
しかしながら,基体部と枠体部の態様における(共通点2)(イ)は,両意匠の基調を形成するもので,需要者に強い共通した印象を与えるものであることから,両意匠の形態の類否判断に極めて大きな影響を及ぼす。
(c)ヘッド部の態様等における(共通点2)(ウ)は,多数の小長方形の凹部が中心から放射状に規則的に配されている態様が,需要者に一定の共通した印象を与えるものではあるが,使用時にはアタッチメントによって目に付きにくくなる部分であり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は限定的なものにすぎない。
(d)枠体部後方側の態様における(共通点2)(エ)は,操作のために使用するスイッチ部という点で,需要者が着目する部分の1つではあるが,上記参考意匠にも見られるように,枠体部の後端部中央に円形のスイッチ部を配することは,従来から見られる態様にすぎず,類否判断に及ぼす影響は限定的なものといわざるを得ない。
(e)把持部の本体との態様における(共通点3)(ア)は,本体及び把持部のバランスといった需要者が着目する全体の印象にかかるものであり,類否判断に及ぼす影響は大きい。
一方,把持部の具体的態様における(共通点3)(イ)の,下方へ向かって先窄まりとする点は,一見してわかるものではない程度のもので,また,下端部を略半球状とする点も,よく見られる態様にすぎず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(f)色彩における(共通点4)は,全体を大きく2色の構成とする点については,従来から見られる手法ではあるが,(共通点2)(イ)の特徴をより強めるものであり,類否判断に及ぼす影響は大きい。

イ 相違点の評価
(a)本体の態様における(相違点1)のうち,スイッチ部の態様における相違点(ア)は,意匠全体としてみると,小さな部分にすぎず,この点が両意匠の形態の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(b)(相違点1)(イ)における,略逆さかまぼこ状の小凹部を有しているか否かの相違点も,意匠全体の中においては,小さな部分にすぎず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(c)色彩についての(相違点2)(ア)は,両意匠の色彩の違いよりも,(共通点4)に示した本体及び把持部の同箇所を2つの異なる色調とした共通点の印象の方が強く,この相違点が類否判断に及ぼす影響は小さい。
(d)また,スイッチ部のボタン部における(相違点2)(イ)も,意匠全体の中においては,小さな部分にすぎず,この点が両意匠の形態の類否判断に及ぼす影響は小さい。

ウ 総合評価
両意匠の形態における共通点,相違点の評価に基づき,両意匠を総合的に観察した場合,両意匠の相違点は,前記イに説示したとおり,いずれも両意匠の形態に及ぼす影響が小さいのに対し,両意匠の共通点は,前記アに説示したとおり,(共通点1),(共通点2)(ア),(ウ)及び(エ),(共通点3)(イ)については,小さい,あるいは限定的なものにすぎないが,(共通点2)(イ)が両意匠の形態の類否判断に及ぼす影響は極めて大きく,(共通点3)(ア)及び(共通点4)が及ぼす影響は大きい。
これら共通点及び相違点の評価を総合すると,共通点が及ぼす影響が相違点を圧しており,両意匠の形態は類似する。

(3)両意匠の類否判断
両意匠は,意匠に係る物品が同一で,形態が類似する。
したがって,両意匠は類似する。

第7 結び
以上のとおりであって,本件意匠は,請求人の主張する無効理由によって,意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当し,同条同項柱書の規定に違反して意匠登録を受けたものであるから,登録第1685102号の意匠登録は,無効にすべきものである。

審判に関する費用については,意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって結論のとおり審決する。

別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。









審理終結日 2021-12-28 
結審通知日 2022-01-06 
審決日 2022-01-26 
出願番号 2020028408 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (J7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 北代 真一
正田 毅
登録日 2021-04-19 
登録番号 1685102 
代理人 山下 隆志 
代理人 宮崎 栄二 

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