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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K3
管理番号 1384313 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-26 
確定日 2022-05-10 
意匠に係る物品 水耕栽培器 
事件の表示 意願2020− 4791「水耕栽培器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとし、物品の部分について意匠登録を受けようとする、令和2年(2020年)3月10日の意匠登録出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年(2021年) 1月 8日付け:拒絶理由の通知
同年 2月 1日 :意見書の提出
同年 4月26日付け:拒絶査定
同年 6月26日 :審判請求書の提出

第2 本願意匠

本願意匠は、意匠に係る物品を「水耕栽培器」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、物品の部分として意匠登録を受けようとする部分を、「実線で表された部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は、下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
特許庁発行の公開実用新案公報記載
平成 6年実用新案出願公開第079227号
図1、2及び関連する記載から導きだされる「園芸棚」の意匠の当該部分の意匠

以下、本審決では、引用意匠において本願部分と対比、判断する部分、すなわち、本願部分に該当する部分を、「引用部分」という。

第4 対比

1 意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は、「水耕栽培器」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「園芸棚」であるが、いずれも植物を栽培するためのものであって、具体的には植物、栽培用容器及び受水用容器等を配置する棚であるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、用途及び機能が共通する。

2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分が、棚の前板部であって、2本の角柱状脚部を連結する梁としての用途及び機能と、植物、栽培用容器及び受水用容器等が載置されるすのこ状底板部を固定する用途及び機能を有し、さらに載置される受水用容器を正面から視認されにくくするという用途及び機能も有する。これに対し、引用部分は、脚部内方のL字状固定具に支持され、中央部に植物及び栽培用容器を載置する平面視略ロの字状の、樋を兼ねた受水用容器の外側板であって、樋を兼ねた受水用容器の一部としての用途及び機能を有するものである。
したがって、両部分の用途及び機能は相違する。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
本願部分の位置は、前側の2本の角柱状脚部間の上下方向略中央であり、前面が前側の2本の角柱状脚部の前面と面一であって、本願部分の本願意匠に占める大きさ及び範囲は、正面視における左右の長さが物品全体に対して約6/7、上下の幅が物品全体の約1/11である。これに対し、引用部分の位置は、前側の2本のL字状脚部間の上下方向略中央であり、前面がL字状脚部の前面よりも奥側であって、引用部分の引用意匠に占める大きさ及び範囲は、正面視における左右の長さが物品全体に対して約16/17、上下の幅が物品全体の約1/19である。
したがって、両部分の位置、大きさ及び範囲は相違する。

4 両部分の形態の対比
以下、対比のため、引用意匠の向きを本願意匠の図の向きに合わせて認定する。

(1)両部分の形態の共通点
(共通点1)全体が板体であって、正面視において横長長方形状である点で共通する。
(2)両部分の形態の相違点
(相違点1)正面視における縦横比について、本願部分が約1:5.4であるのに対し、引用部分は約1:26である点。
(相違点2)板体の厚みについて、本願部分が角柱状脚部の約1/2であるのに対し、引用部分はL字状脚部の板厚と同程度である点。

第5 判断

1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が共通するから、類似する。

2 両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、前記第4の2で認定したとおり相違するから、類似しない。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置、大きさ及び範囲は、前記第4の3で認定したとおり相違するから、類似しない。

4 両部分の形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、いずれも植物を栽培するためのものであって、具体的には植物、栽培用容器及び受水用容器等を配置する棚であるから、需要者は、作業上の利便性並びに植物、栽培用容器及び受水用容器等を配置した際の外観を考慮した物品全体の美感という観点から、両意匠に係る物品を観察するということができる。
需要者が注意を引く部分は、作業時においては、正面側の態様を斜め上方から見る機会が多く、また、物品全体は、カタログ等において主に正面側の写真が掲載されることから、主に物品の正面側全体を見る機会が多いというべきである。
したがって、作業上の利便性という観点からは、正面側の斜め上方の態様が需要者の注意を強く惹く部分であるとともに、植物、栽培用容器及び受水用容器等を配置した際の外観を考慮した物品全体の美感という観点からは、正面側全体の態様が需要者の注意を強く惹く部分であるということができる。

(1)両部分の形態の共通点
共通点1は、全体形状に係るものではあるが、この物品分野においては、全体が板体であって、正面視において横長長方形状とした態様は、例を示すまでもなくありふれているので、需要者が注目するものとはいえず、類否判断に与える影響は小さい。
(2)両部分の形態の相違点
相違点1は、設置状態においてまず目に入る箇所であり、また物品全体の中で占める割合も大きいものであるところ、本願部分が正面視において上下の幅が一定程度ある横長状の板体と看取されるのに対し、引用部分は幅狭の帯状板体と看取されるものであって、具体的な構成比率が大きく異なることから、需要者へ異なる印象を与えるといえ、類否判断に与える影響は大きい。
相違点2は、作業時において視認されやすい箇所であるところ、本願部分の板体の厚みが角柱状脚部の約1/2であって視覚的に相当の量感を与えるものであるのに対し、引用部分の板体の厚みはL字状脚部の板厚と同程度であって、屈折が容易に可能なごく薄い板体であるとの印象を与え、この相違は一見して目につくものであるから、類否判断に与える影響は大きい。

5 両意匠の類否判断
両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、上記第4の4(2)のとおり、正面視における縦横比及び板体の厚みの相違が類否判断に与える影響は大きい。
一方、共通点は、ありふれた態様であるから類否判断に与える影響は小さい。
これら共通点及び相違点の評価を総合すると、両部分の形態は、共通点よりも相違点の方が類否判断に与える影響は大きいものであって、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が類似するが、両部分の用途及び機能並びに両部分の位置、大きさ及び範囲が類似せず、その形態においても、相違点が共通点を圧して需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。

第6 むすび

以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲





審決日 2022-04-13 
出願番号 2020004791 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
加藤 真珠
登録日 2022-05-12 
登録番号 1715488 
代理人 長谷川 和家 

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