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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7 |
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管理番号 | 1384320 |
総通号数 | 5 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2022-05-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-09-28 |
確定日 | 2022-05-10 |
意匠に係る物品 | 鼻の拡張器 |
事件の表示 | 意願2020−7567「鼻の拡張器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,令和2年(2020年)4月10日の意匠登録出願であって,その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。 令和 3年 1月 6日付け :拒絶理由の通知 4月19日 :意見書の提出 6月28日付け :拒絶査定 9月28日 :審判請求書の提出 11月10日付け :拒絶理由の通知 令和 4年 1月28日 :意見書の提出 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「鼻の拡張器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 当審の拒絶の理由 当審における,令和3年11月10日付けの拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい,本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。 引用意匠 アメリカ合衆国特許庁から2012年5月8日に発行された 米国特許商標公報に記載の,FIG.6〜FIG.10に表されている 「鼻拡張テープ(登録番号US D659245S)」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH24308440号) 第4 当審の判断 1.本願意匠 本願意匠は,上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると,以下のとおりである。 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「鼻の拡張器」である。 (2)本願意匠の形状 〔形状A1〕全体の縦横比を約1:2.6とする横長テープ状としたものである。 〔形状A2〕全体を上下・左右対称形としたものである。 〔形状A3〕横長帯状の本体部には,上辺と下辺に沿って1本ずつ,合計2本の弾性バーを設けている。 〔形状A4〕弾性バーの幅と,上側弾性バーと下側弾性バーとの間隔がほぼ等しい。 〔形状A5〕最大縦幅に対する本体部の幅(縦幅)を,約54%としたものである。 〔形状A6〕本体部の,上辺及び下辺の左右両端には,左右にはみ出るように略四角形のタブを設けている。 言い換えれば,本体部の左右両縦辺は,物品の左右両端から中側に入った箇所にある。 〔形状A7〕左右両端が末広がりになるように,タブの外側の傾斜辺(上側のタブにおいては上辺,下側のタブにおいては下辺。)が約14%の勾配で少し傾斜している。 〔形状A8〕最大縦幅に対するタブの外側の傾斜辺の水平方向長さを,50%としたものである。 〔形状A9〕タブの端側辺(左側のタブにおいては左辺,右側のタブにおいては右辺。)が,外側から約2分の1までが斜辺で,内側の角が大きな円弧状としてタブの内側の辺へとつながっている。 〔形状A10〕タブの中間側(中間領域部側)の辺が,徐々になだらかになる山裾状の凹円弧状としている(以下「凹曲辺」という。)。 〔形状A11〕上側と下側の山裾状頂点の縦幅(上側のタブの外側の傾斜辺と凹曲辺の接点(α),下側のタブの外側の傾斜辺と凹曲辺の接点(β)の,接点(α)と接点(β)の距離)が,本体部の縦幅の1.6倍である。 〔形状A12〕本体部の左右両縦辺の形状は,円弧が凸・凹・凸と並んでいる。 2.引用意匠 (1)意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は「鼻拡張テープ」である。 (2)引用意匠の形状 〔形状B1〕全体の縦横比を約1:3.4とする横長テープ状としたものである。 〔形状B2〕全体を上下・左右対称形としたものである。 〔形状B3〕横長帯状の本体部には,上辺と下辺に沿って1本ずつ,合計2本の弾性バーを設けている。 〔形状B4〕弾性バーの幅と,上側弾性バーと下側弾性バーとの間隔がほぼ等しい。 〔形状B5〕最大縦幅に対する本体部の幅(縦幅)を,約61%としたものである。 〔形状B6〕本体部の,上辺及び下辺の左右両端には,左右にはみ出るように略四角形のタブを設けている。 言い換えれば,本体部の左右両縦辺は,物品の左右両端から中側に入った箇所にある。 〔形状B7〕左右両端が末広がりになるように,タブの外側の傾斜辺(上側のタブにおいては上辺,下側のタブにおいては下辺。)が約9%の勾配で少し傾斜している。 〔形状B8〕最大縦幅に対するタブの外側の傾斜辺の水平方向長さを,約61%としたものである。 〔形状B9〕タブの端側辺(左側のタブにおいては左辺,右側のタブにおいては右辺。)が,外側から約3分の2までが斜辺で,内側の角が小さな円弧状としてタブの内側の辺へとつながっている。 〔形状B10〕タブの中間側(中間領域部側)の辺が,徐々になだらかになる山裾状の凹円弧状としている(以下「凹曲辺」という。)。 〔形状B11〕上側と下側の山裾状頂点の縦幅(上側のタブの外側の傾斜辺と凹曲辺の接点(α),下側のタブの外側の傾斜辺と凹曲辺の接点(β)の,接点(α)と接点(β)の距離)が,本体部の縦幅の約1.5倍である。 〔形状B12〕本体部の左右両縦辺の形状は,円弧が低凸・高凸・低凸と並んでいる。 3.両意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠に係る物品は「鼻の拡張器」であり,引用意匠に係る物品は「鼻拡張テープ」である。 (2)両意匠の形状の対比 両意匠の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。 ア.共通点について 〔共通点1〕全体の縦横比をおおむね1:3とする横長テープ状とした点。(形状A1とB1) 〔共通点2〕全体を上下・左右対称形とした点。(形状A2とB2) 〔共通点3〕横長帯状の本体部には,上辺と下辺に沿って1本ずつ,合計2本の弾性バーを設けている点。(形状A3とB3) 〔共通点4〕弾性バーの幅と,上側弾性バーと下側弾性バーとの間隔がほぼ等しい点。(形状A4とB4) 〔共通点5〕本体部の,上辺及び下辺の左右両端には,左右にはみ出るように略四角形のタブを設けている点。(形状A6とB6) 〔共通点6〕上記〔共通点5〕の結果,本体部の左右両縦辺は,物品の左右両端から中側に入った箇所にある点。(形状A6とB6) 〔共通点7〕左右両端が末広がりになるように,タブの外側の傾斜辺が少し傾斜している点。(形状A7とB7) 〔共通点8〕タブの端側辺が,途中までが斜辺で,内側の角が略円弧状としてタブの内側の辺へとつながっている点。(形状A9とB9) 〔共通点9〕凹曲辺が,徐々になだらかになる山裾状の凹円弧状としている点。(形状A10とB10) イ.相違点について 〔相違点1〕全体の正確な縦横比につき,本願意匠は,約1:2.6とするものであるのに対して,引用意匠は,約1:3.4とした点。(形状A1とB1) 〔相違点2〕最大縦幅に対する本体部の幅(縦幅)につき,本願意匠は,約54%としたのに対して,引用意匠は,約61%とした点。(形状A5とB5) 〔相違点3〕タブの外側の傾斜辺の勾配につき,本願意匠は,約14%としたのに対して,引用意匠は,約9%とした点。(形状A7とB7) 〔相違点4〕最大縦幅に対するタブの外側の傾斜辺の水平方向長さにつき,本願意匠は,50%としたのに対して,引用意匠は,約61%とした点。(形状A8とB8) 〔相違点5〕タブの端側辺の詳細な形状につき,本願意匠は,外側から約2分の1までが斜辺で,内側の角が大きな円弧状としてタブの内側の辺へとつながっているのに対して,引用意匠は,外側から約3分の2までが斜辺で,内側の角が小さな円弧状としてタブの内側の辺へとつながっている点。(形状A9とB9) 〔相違点6〕本体部の縦幅に対する,上側と下側の山裾状頂点の縦幅につき,本願意匠は,1.6倍としたのに対して,引用意匠は,約1.5倍とした点。(形状A11とB11) 〔相違点7〕本体部の左右両縦辺の形状につき,本願意匠は,円弧が凸・凹・凸と並んでいるのに対して,引用意匠は,円弧が低凸・高凸・低凸と並んでいる点。(形状A12とB12) 4.判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 本願意匠に係る物品は「鼻の拡張器」であり,引用意匠に係る物品は「鼻拡張テープ」であって,共に鼻に貼り付けて,鼻を拡張するテープ状のものであるから,本願意匠に係る物品と引用意匠に係る物品は,共通する。 (2)両意匠における形状の評価 ア.共通点について 共通点1ないし3については,この種物品分野においてありふれた形状であるから,両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 共通点4ないし9については,これらの共通点が相まって,両意匠に一定程度の共通感を生み出すが,共通点4及び5については,両意匠のみの特徴とはいえず,両意匠の類否判断に与える影響は限定的であり,共通点6ないし9については,詳細には,相違点3ないし7の相違を内包しているものであるから,両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。 イ.相違点について 相違点1については,この種物品分野においては,使用者の鼻梁の高さや大きさに合わせて,数種類の大きさを用意して商品展開をしていることが一般的であることからすると,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 相違点2ないし6については,それぞれは微細な相違といえるが,相違点2ないし6が相まって,引用意匠のタブは縦幅が小さく横長であるのに対して,本願意匠のタブは縦幅が大きく接着面積が広いため,需要者に剥がれにくいとの印象を与え,引用意匠とは別異の印象を生じさせるといえ,両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 相違点7については,局所の相違ではあるが,具体的な形状が異なり,全体観察においては両意匠の類否判断に与える影響は一定程度認められる。 (3)両意匠における形状の類否判断 以上のとおり,共通点は,両意匠の類否判断に与える影響が,小さい又は限定的であり,この共通点によっては,両意匠の類否判断を決するものといえないのに対して,相違点2ないし7によって,需要者に別異の印象を起こさせるものであるから,両意匠の類否判断を決するものといえる。 そうすると,本願意匠の形状と引用意匠の形状は,類似するとは認められない。 (4)両意匠における類否判断 よって,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,上記のとおり本願意匠と引用意匠の形状は類似するものではないから,本願意匠と引用意匠は類似するとはいえない。 5.結び したがって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,当審で示した引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2022-04-19 |
出願番号 | 2020007567 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(J7)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 正田 毅 |
登録日 | 2022-05-17 |
登録番号 | 1715823 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 宮崎 修 |
代理人 | 伊東 忠重 |