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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1384322 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-05-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-08 
確定日 2022-04-19 
意匠に係る物品 Self ordering terminal with touch screen 
事件の表示 意願2019−502122「Self ordering terminal with touch screen」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)5月21日(パリ条約による優先権主張: 2018年(平成30年)11月29日、大韓民国)を国際登録の日とする国際意匠登録出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 1月19日付け 拒絶の通報(拒絶理由の通知)
令和3年 4月20日 意見書の提出
令和3年 7月 6日付け 拒絶査定
令和3年10月 8日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠(願書及び添付図面の記載)
本願の意匠は、意匠に係る画像の用途を「Self ordering terminal with touch screen(参考和訳:「タッチスクリーン付セルフオーダー端末」、以下参考和訳で示す。)」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって(以下「本願意匠」という。)、意匠登録を受けようとする部分を「The broken lines indicate portions of the article that form no part of the claimed design.(参考和訳:「破線は物品において登録を求める意匠の部分を構成しない箇所を示す。」)」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

そして、その引用意匠(別紙第2参照)は、大韓民国特許庁発行の大韓民国意匠公報(公報発行日2018年11月1日)に掲載された、意匠登録番号第30−09787934号(意匠に係る物品「ディスプレイ付き広告台」)の意匠のうち、この意匠登録出願の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分としたものである(以下「引用部分」という。)。

第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は「タッチスクリーン付セルフオーダー端末」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「ディスプレイ付き広告台」である。本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)とは、情報を提示する用途及び機能のものである点が共通する。一方、本願意匠がタッチパネルを備えているのに対し、引用意匠はタッチパネルを備えているか否かが明確でない。

2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)とは、背面側の換気口等を除いた意匠に係る物品のほぼ全てを占める範囲であり、情報を提示する用途及び機能のものである点が共通し、本願部分がタッチパネルを備えているのに対し、引用部分はタッチパネルを備えているか否かが明確でない。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分の位置、大きさ及び範囲は、背面側の換気口等を除いた意匠に係る物品のほぼ全てを占める範囲であり、物品全体の形態の中における位置、大きさ及び範囲が共通する。

4 両部分の形態の対比
(1)主な共通点
(共通点1)全体の構成
両部分は、縦長板状パネルの上方やや内側に縦長のスクリーンを設けた本体部を、これと幅がほぼ同じである略水平板状台座部の側面視中央よりやや後ろ側から立設した構成とした点が共通する。

(共通点2)縦長板状パネルについて
両部分は、縦長板状パネルの具体的な態様として、正面側を平坦なものとし、正面視において、パネル左右上端の角にほとんど丸みがない点が共通する。

(2)主な相違点
(相違点1)縦長板状パネルの構成について
ア 縦長板状パネルの背面側の形状について、本願部分では上方のスクリーン後方には凸部がなく、下方に下端が縦長板状パネルと揃い、縦長板状パネルの約1/3までの高さで、上端が斜面であり、縦長板状パネルと略同幅である1つの凸部(以下「下部背面凸部」という。)がある一方、引用部分では、上方のスクリーン後方にあたる縦長板状パネルよりやや横幅が狭い凸部(以下「上部背面凸部」という。)と、下方に縦長板状パネルの高さのうち下から約1/20から5/20までの部分に、上部背面凸部と略同幅とする凸部(以下「下部背面凸部」という。)がある点で相違する。

イ 縦長板状パネルの側面視の態様について、本願部分では前面パネルと、前面パネルより僅かに低く、薄い背面パネル部とに分かれ、背面パネル部下方には下部背面凸部の側面があらわれるのに対し、引用部分では前面パネルと、前面パネルの約2倍の厚さのある背面パネルとに分かれ、背面パネルの上方と下方にはそれぞれ上部背面凸部と下部背面凸部の側面があらわれる点が相違する。

(相違点2)略水平板状台座部
ア 略水平板状台座部の上面の態様について、本願部分は、縦長板状パネルとの接合部を頂点とし、側面視前方、後方へ向けて傾き角度を変えて斜めに下がる態様(前方約5°、後方約7°)とするのに対し、引用部分は前後とも水平とする点で相違する。

イ 本願部分はキャスターを有さないのに対し、引用部分はキャスターを有する点で相違する。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠は、本願意匠がタッチパネルを備えているのに対し引用意匠はタッチパネルを備えているか否かが明確でないものの、主たる用途及び機能が共通することから、意匠に係る物品は類似する。

2 両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、本願部分がタッチパネルを備えているのに対し引用部分はタッチパネルを備えているか否かが明確でないものの、主たる用途及び機能が共通することから、両部分の用途及び機能も類似する。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置、大きさ及び範囲は、物品全体の形態の中における位置、大きさ及び範囲が共通するから、同一である。

4 両部分の形態の共通点及び相違点の評価
(1)需要者について
両意匠は施設等に設置され、施設等の利用者に対し情報を提示するため等に用いると認められることから、需要者は施設等の利用者に見えやすい、正面視や側面視の形態に関心が高く、設置場所によって利用者に見られることのある背面視の形態にも一定の関心を有するものと認められる。

(2)両部分の形態の共通点
共通点1及び共通点2は、全体の構成や縦長板状パネルにおける利用者が見えやすい部分に係るものであるが、本願の出願前から引用意匠以外にも同様の意匠が多数存在していることから、相まって生じる効果を考慮したとしても、部分全体の類否判断に与える影響は、小さい。

(3)両部分の形態の相違点
相違点1のうちアは、上方に凸部がなく、下部背面凸部の下端が縦長板状パネルと揃い、縦長板状パネルと略同幅であることから一体感を有してまとまった態様とする本願部分と、上方に上部背面凸部があり厚みを感じさせ、上部背面凸部、下部背面凸部のいずれも縦長板状パネルよりも幅が狭く、縦長板状パネルとの一体感の乏しい態様である引用部分では、背面視の印象が異なることから、部分全体の類否判断に一定程度の影響を及ぼすものと認められる。
また、相違点1のうちイは、本願部分が側面視の特に上方において前面パネルが厚みのほとんどを占め、おおむね一枚のパネルによる構成として印象を与えるのに対し、引用部分は側面視において前面パネルに比べ背面パネルの厚みが大きく、二つのパネルを貼り合わせたような印象を生じさせるものであることから、部分全体の類否判断に一定程度の影響を及ぼすものと認められる。
相違点2のうちアは、本願部分の縦長板状パネルとの接合部を頂点とし、側面視前方、後方へ向けて傾きを変えて斜めに下がる態様は、特に前後の傾きを変えている点に特徴があり、引用部分の前後とも水平とするありふれた態様とは異なる印象を生じさせるものであることから、部分全体の類否判断に及ぼす影響は、大きい。
相違点2のうちイは、両意匠の属する分野において、スタンド型の端末にキャスターを有するものも有さないものもいずれもありふれており、引用意匠のキャスターの形態に類否判断に影響を生じさせるような特徴も認められないことから、部分全体の類否判断に及ぼす影響は、小さい。

5 両意匠の類否判断
両部分の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に判断した場合、両部分は、相違点2イであるキャスターの有無が類否判断に及ぼす影響は小さいものの、特に相違点2アである略水平板状台座部の相違が類否判断に及ぼす影響が大きく、これに加え、相違点1アである縦長板状パネル背面の態様や、相違点1イである縦長板状パネル側面の態様にも類否判断に一定の影響を及ぼす相違がある。これに対し、両部分の共通点は、相まって生じる効果を考慮したとしても部分全体の類否判断に及ぼす影響は小さいことから、相違点を凌駕するものとは認められない。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が類似し、両部分の用途及び機能が類似し、両部分の位置、大きさ及び範囲が同一であるが、その形態が類似しないものであることから、類似しない。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲


審決日 2022-03-30 
出願番号 2019502122 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 大峰 勝士
渡邉 久美
登録日 2022-05-09 
登録番号 1715207 
代理人 渡辺 陽一 
代理人 南山 知広 
代理人 胡田 尚則 
代理人 青木 篤 
代理人 鶴田 準一 
代理人 水野 みな子 
代理人 三橋 真二 

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