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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 N3 |
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管理番号 | 1385239 |
総通号数 | 6 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2022-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-09-28 |
確定日 | 2022-05-10 |
意匠に係る物品 | 加速度表示用画像 |
事件の表示 | 意願2020− 16846「加速度表示用画像」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、本意匠を意匠登録第1683952号(意願2020−16842号)とする、令和2年8月11日の関連意匠の意匠登録出願であって、令和3年2月15日付けの拒絶理由の通知に対し、同年4月12日に意見書が提出されたが、同年7月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年9月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願の意匠 本願の意匠は、意匠に係る画像の用途を「加速度表示用画像」とし、その態様を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって(以下「本願意匠」という。)、画像の部分として意匠登録を受けようとする部分を、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」(以下「本願画像部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等(形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合)又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。 「この意匠登録出願の意匠は、加速度表示用画像の一部について意匠登録を受けようとするものであって、大きな十字と加速度に応じて位置が変化する小さな円形とからなるインジケータの下に長方形の左右に半円を組み合わせた形状の操作ボタンを配置したものであると認められます。 しかしながら、大きな十字とパラメータに応じて位置が変化する図形とからなるインジケータの画像は意匠1にみられるように本願出願前に公知です。また、パラメータに応じて位置が変化する部分に小さな円形を用いたインジケータは、意匠2にみられるように本願出願前に公知です。また、インジケータの下に長方形の左右に半円を組み合わせた形状の操作ボタンを配置したものは、意匠3にみられるように本願出願前に公知です。 そうすると、本願意匠は、加速度表示用の画像として、大きな十字とパラメータに応じて位置が変化する図形とからなるインジケータ、パラメータに応じて位置が変化する部分としての小さな円形、インジケータの下に長方形の左右に半円を組み合わせた形状の操作ボタンを配置、といういずれも本願出願前に公知の態様、配置を単純に組み合わせ表したものに過ぎないため、当業者であれば容易に創作できたものです。 (中略) 意匠1 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2020年 7月18日 受入日 特許庁意匠課受入2020年 7月30日 掲載者 Vieyra Software 表題 Physics Toolbox Sensor Suite − Google Play のアプリ 掲載ページのアドレス https://play.google.com/store/apps/details?id= com.chrystianvieyra.physicstoolboxsuite に掲載された画像の中央やや下の大きな十字と緑の丸及び小さな十字からなるインジケータの画像の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第RJ02080307号) 意匠2 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2020年 8月 9日 受入日 特許庁意匠課受入2020年 8月31日 掲載者 AppsNine 表題 Compass 9: Smart Compas s (Level / real−time ma p) − Google Play のアプリ 掲載ページのアドレス https://play.google.com/store/apps/details?id=com.appsnine.compass に掲載された画像の中央やや左の複数の同心円とその縦横を横切る十字、小さな赤い円からなるインジケータの画像の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第RJ02088422号) 意匠3 大韓民国意匠商標公報 2016年 1月29日 携帯情報端末(登録番号30−0837240)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH28403649号) のディスプレイに表された画像の意匠」 第4 当審の判断 以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。 1 本願意匠の認定 (1)本願意匠の意匠に係る画像の用途 本願意匠の意匠に係る画像(以下「本願画像」という。)は、「加速度表示用画像」であり、車両の受ける加速度の方向及び大きさに応じて、その情報が画像に表示され、ユーザーが車両の状況を把握することができるものである。 (2)本願画像部分について ア 本願画像部分の用途及び機能 本願画像部分の用途及び機能は、加速度データの表示及び操作を行うものである。 イ 本願画像部分の位置、大きさ及び範囲 本願画像部分の位置、大きさ及び範囲は、縦長長方形の画像全体に対し、その縦幅の下から約1/5の位置に、画像全体の横幅の左右に同幅のわずかな余地部を残した水平部を底辺とし、左右を垂直に、画像全体の縦幅の中央からやや上まで伸ばし、上辺を半円状とした一点鎖線に囲まれた部分とするものである。 ウ 本願画像部分の態様 (ア)本願画像部分の構成 本願画像部分は、画像全体の縦幅の中央よりやや上、同横幅の中央が重なる点を中心とし、同横幅の約8割の長さとする細線状の十字型のガイド部(以下「十字型ガイド部」という。)、十字型ガイド部上に表示される小さな円形暗調子状のポインター(以下、たんに「ポインター」という。)、及び十字型ガイド部の下、画像全体の縦幅の下から約1/4の高さに、十字型ガイド部の横幅よりわずかに短い幅とし、縦幅:横幅を約1:5とする水平横長トラック状の操作ボタンによる構成とするものである。 (イ)画像の変化態様 車両の受ける加速度の方向及び大きさに応じて、ポインターが十字型ガイド部の中心から移動する変化を伴う態様とするものである。 2 引用された意匠1ないし意匠3の認定 原査定における拒絶の理由で引用された意匠1ないし意匠3について、本願画像部分に相当する部分を、それぞれ画像1部分ないし画像3部分とし、以下のとおり認定した。 なお、意匠1ないし意匠3の出典や公知日などについては、前記第3に記載したとおりである。 (1)意匠1(別紙第2参照) ア 意匠1の意匠に係る画像の用途 意匠1は、スマートフォン用ソフトウェアの計測機能の画像である。 イ 画像1部分について 意匠1において、本願画像部分に相当する部分は、十字型ガイド部及び十字型ガイド部上に表示されるポインターである。 (ア)用途及び機能 画像1部分の用途及び機能は、アジマス(方位)、ピッチ、ロールの記載から、傾きの測定結果の表示を行うものである。 (イ)位置、大きさ及び範囲 画像1部分である十字型ガイド部は、縦長長方形とする画像1全体の縦幅の下から約1/3、同横幅の中央が重なる点を中心とし、軸の長さを画像全体の横幅の約半分の長さとする位置、大きさ及び範囲とするものである。 (ウ)画像1部分の態様 (a)画像1部分の構成 画像1部分は、中心を縦長長方形とする画像1全体の縦幅の下から約1/3、同横幅の中央が重なる点とし、軸の長さを画像全体の横幅の約半分の長さとする白色細線状の十字型ガイド部及び当該十字型ガイド部上に表示される、十字型ガイド部の軸の長さの約半分の長さを直径とする円形緑色のポインターによる構成とし、円形緑色のポインターの中心部に小さな十字型ポインターが十字型ガイド部の軸よりも太い白色線状に表れるものである。 (b)画像の変化態様 アジマス、ピッチ、ロールの各測定結果に応じて、ポインターが十字型ガイド部の中心から移動する変化を伴う態様とするものである。 (2)意匠2(別紙第3参照) ア 意匠2の意匠に係る画像の用途 意匠2は、スマートフォン用ソフトウェアの地図機能の画像である。 イ 画像2部分について 意匠2において、本願画像部分に相当する部分は、十字型ガイド部及び十字型ガイド部上に表示されるポインターである。 (ア)用途及び機能 画像2部分の用途及び機能は、Levelの表示から、水平面に対するずれを測定し、その結果を表示するものである。 (イ)位置、大きさ及び範囲 画像2部分である十字型ガイド部は、縦長長方形とする画像2全体の縦幅の中央よりやや下、同横幅の約2:3とする中央からやや左に寄った位置が重なる点を中心とするもので、軸の長さを画像全体の横幅の約7/10とし、これを直径とする円状の位置、大きさ及び範囲とするものである。 (ウ)画像2部分の態様 (a)画像2部分の構成 画像2部分は、中心を縦長長方形とする画像2全体の縦幅の中央よりやや下、同横幅の2:3が重なる点とし、軸の長さを画像全体の横幅の約7/10とする白色細線状の十字型ガイド部、及び十字型ガイド部上に表示される小さな円形赤色のポインターによる構成とし、十字型ガイド部には、軸を直径とする白色細線状の円形のほか、灰色細線状の円形が中心から軸を均等に4分割するよう3つ表れた態様とするものである。 (b)画像の変化態様 縦軸方向及び横軸方向の水平面からのずれの値に応じて、ポインターが十字型ガイド部の中心から移動する変化を伴う態様とするものである。 (3)意匠3(別紙第4参照) ア 意匠3の意匠に係る画像の用途 意匠3は、携帯情報端末の意匠のディスプレイに表された家庭用の温度制御画像である。 イ 画像3部分について 意匠3において、本願画像部分に相当する部分は、下方の水平横長トラック状部である。 (ア) 用途及び機能 画像3部分の用途及び機能は、家庭用の温度制御画像の操作ボタンである。 (イ) 位置、大きさ及び範囲 画像3部分である水平横長トラック状部は、縦長長方形とする画像3全体の縦幅の下から約1/5の高さに、同横幅の約3/5とする長さで画像3全体の横幅の中央をその位置、大きさ及び範囲とするものである。 (ウ)画像3部分の態様 画像3部分は、縦幅:横幅を約1:5とする水平横長トラック状の操作ボタンとするものである。 3 本願意匠の創作非容易性について 本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。 本願画像である加速度表示用画像は、車両の受ける加速度の方向及び大きさに応じて、その情報が画像に表示され、ユーザーが車両の状況を把握することができるものであることから、その表示の見やすさ、操作のしやすさについては、創意工夫の大きな要素となる。 本願画像部分のように測定情報を十字型ガイド部と十字型ガイド部上に表示されるポインターで表し、測定結果によって、ポインターの位置が移動する変化を伴う態様とするものは、意匠1に表れている。 また、測定結果によって、十字型ガイド部上に表れるポインターを小さな円形とする態様も、意匠2に見られる。 そして、水平横長トラック状の操作ボタンを画像全体の下方に配する態様も、意匠3に表れている。 しかしながら、本願画像のように、車両の受ける加速度情報から車両の状況を、ユーザーが把握しやすいように、軸の先端部に外接する円等がないシンプルなものとする十字型ガイド部を画像全体の縦幅の中央よりやや上、同横幅の中央に、画像全体の横幅の約8割の長さとする大きさで配した態様としたものは、意匠1ないし意匠3のいずれにも表れていないため、これらを組み合わせても本願意匠を導き出すということはできない。 したがって、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等(形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合)又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2022-04-22 |
出願番号 | 2020016846 |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(N3)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
上島 靖範 正田 毅 |
登録日 | 2022-06-13 |
登録番号 | 1717854 |
代理人 | 杉村 光嗣 |
代理人 | 村松 由布子 |
代理人 | 杉村 憲司 |