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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1385247 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-05 
確定日 2022-04-19 
意匠に係る物品 電子計算機 
事件の表示 意願2020− 10240「電子計算機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年(2020年)5月25日(パリ条約による優先権主張 令和1年(2019年)11月29日、大韓民国)の意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年(2020年) 5月28日付け 優先権証明書の提出
令和3年(2021年) 1月14日付け 拒絶理由の通知
同 年 4月22日 意見書の提出
同 年 6月29日付け 拒絶査定
同 年 10月 5日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠
本願の意匠は、意匠に係る物品を「電子計算機」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって(以下「本願意匠」という。)、意匠登録を受けようとする部分を「実線で表された部分が意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。また、引用意匠における本願の意匠登録を受けようとする部分に対応する部分を以下「引用部分」といい、本願部分とあわせて「両部分」という。)は下記のとおりである。
また、この拒絶の理由には、以下のとおりの付記がなされたものである。

「本願意匠の意匠登録を受けようとする部分とそれに対応する引用意匠の部分とを比較すると、ヒンジ部近傍の造形おいて僅かに相違が確認できるものの、筐体全体の基本的形状に加え、操作に係るキーボードの配列の規則性やタッチパッドの構成配置に至るまで顕著に共通しており、意匠登録を受けようとする部分全体として対比観察するうえでは視覚的印象に差がなく、類似の範囲を出ないものと認められます。

大韓民国意匠商標公報 2016年 3月25日
携帯用電子計算機(登録番号30−0846756)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH28413495号)
なお、主な類否判断の対象となるのは本願の意匠登録を受けようとする部分に対応する部分です。」

第4 対比
以下において、引用意匠の向きを本願意匠の向きに合わせて認定する。

1 意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は、情報処理等に用いる「電子計算機」であり、引用意匠の意匠に係る物品も情報処理等に用いる「携帯用電子計算機」であるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。

2 両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲の対比
本願部分は電子計算機のうち、左側面に5つ並んであらわれる、左側面視左寄りの複数の端子接続部等、右側面視に5つ並んであらわれる、右側面視右寄りの複数の端子接続部等、底面の底面視上辺中央付近に左右対称に配された2つ、右辺中央付近に左右対称に配された2つ及び左辺中央付近に左右対称に配された2つそれぞれ配された小円部分を除いた部分並びに【開いた正面図】にあらわれる、蓋部を開いた正面視上辺中央付近のカメラ部分を除いた部分であって、引用部分もこれに対応する部分であるから、いずれも電子計算機のほぼ全体を占めるものであって、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は共通する。

3 両部分の形状等の対比
本願部分と引用部分の形状等の主な共通点及び相違点は以下のとおりである。

(1)両部分の主な共通点
(共通点1) キーボードの配列
両部分は、キーボード部分の配列が、右方にテンキーを4列とした配列である点及びキーボード部分の本体部の平面側における配置態様が共通する。

(共通点2) ヒンジ部分を除く本体部左右側面視形状等
両部分は、本体部の側面視において、接続部等の配された面が、左側面視では左側から約1/6の部分で最も厚みがあり、そこから正面側にかけて徐々に薄くなる側面視略くさび状の部分と、当該くさび状部分の下にあらわれる土台部分の二つからなる態様をしており、略くさび状部分は土台部分よりも一回り大きく、両部分の間には、僅かな段差(なお、当該段差は底面視において四方の縁取りとしてあらわれる)がある点が共通する。

(共通点3) トラックパッド部分の態様
両部分は、トラックパッド部分の本体部の平面側における配置態様が共通する。

(2)両部分の主な相違点
(相違点1) 開蓋時にあらわれるヒンジ部分
本願部分のヒンジ部分は、蓋部下端付近から薄い板状に張り出した部材で蓋部を支え、本体部と蓋部の間が窪んだ溝のような態様であるのに対し、引用部分のヒンジ部分は、蓋部下端につながった円柱部材を本体左右の円柱部材で挟み込む態様であり、本体部と蓋部の間が盛り上がった円柱のような態様となっている点が相違する。

(相違点2) ヒンジ部分等の左右側面視形状
本願部分のヒンジ部分は、左右側面からほぼ視認できないのに対し、引用部分のヒンジ部分は、ヒンジ側面が円柱状になっているのに加え、左右側面において、本体部とヒンジ部位の間に円弧状の溝を設け、蓋部側のヒンジ付近も円弧状にえぐった形状とすることで、円柱状のヒンジであることを強調する態様となっている点が相違する。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

2 両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲の類否判断
両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は、同一である。

3 両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価
両意匠はいずれも情報処理等に用いられるものであり、本体部と蓋部がヒンジで接続され、蓋部を閉じることで容易に持ち運ぶことができるよう配慮しているものであるから、両意匠の需要者は、情報処理等の際に用いる表示や入力のしやすさ等に関わる部分の形状等だけでなく、蓋部を閉じるための形状等や、持ち運びに影響する形状等についても関心を有しているものと認められる。

(1)両部分の形状等の共通点
(共通点1) キーボードの配列
(共通点1)は、情報処理等の際の入力のしやすさ等に関わる部分であるものの、両部分のキーボードの配列はありふれたものであり、本体部の平面側における配置態様もありふれたものとするもので、この共通点は需要者の注意を引かないものであるから、類否判断に及ぼす影響は、小さい。

(共通点2) ヒンジ部分を除く本体部左右側面視形状等
(共通点2)は、両部分のように側面視を略くさび状とする先行意匠は見られるものの、土台部と僅かな段差を設ける等具体的な態様に特徴があり、持ち運びに影響するものであり、この共通点は需要者の関心を引くものであるから、類否判断への影響を一定程度有するものと認められる。

(共通点3) トラックパッド部分の態様
(共通点3)は、両部分のトラックパッド部分の本体部の平面側における配置態様はいずれもありふれたものであり、この共通点は需要者の注意を引かないものであるから、類否判断に及ぼす影響は、小さい。

(2)両部分の形状等の相違点
(相違点1) 開蓋時にあらわれるヒンジ部分
本願部分のヒンジ部分のように蓋部下端付近から薄い板状に張り出した部材で蓋部を支え、本体部と蓋部の間が窪んだ溝のような態様であるものはこの意匠の出願前から見られ、本願部分独自の特徴とまでは認められず、引用部分のヒンジ部分のように蓋部下端につながった円柱部材を本体左右の円柱部材で挟み込む態様であり、本体部と蓋部の間が盛り上がった円柱のような態様となっているものもこの意匠の出願前から見られ、引用部分独自の特徴とまでは認められないものの、蓋部を開いたときに目につきやすい部分であり需要者の関心を引くものであるから、類否判断に及ぼす影響は、大きい。

(相違点2) ヒンジ部分等の左右側面視形状
本願部分のように左右側面からほぼ視認できないヒンジ部分はありふれており、引用部分のように左右側面において、ヒンジ側面を円柱状とするものも引用部分独自の特徴とまでは認められないものの、引用部分の、本体部とヒンジ部位の間に円弧状の溝を設け、蓋部側のヒンジ付近も円弧状にえぐった形状とすることで、円柱状のヒンジであることを強調する態様は引用部分独自の特徴といえ、両部分は持ち運びの際等に見えやすい位置にあり、この相違点は需要者の関心を引くものであるから、類否判断への影響を一定程度有するものと認められる。

(3)両部分の形状等の類否判断
本願部分と引用部分の(共通点2)は類否判断に一定の影響を及ぼすものの、(共通点1)及び(共通点3)が類否判断に及ぼす影響は小さいのに対し、(相違点1)は類否判断に大きな影響を及ぼし、これに加え(相違点2)も類否判断に一定の影響を及ぼすものであるから、相違点はあいまって共通点を凌駕し、本願部分は引用部分に類似しないものと認められる。

4 両意匠の類否判断
両意匠は意匠に係る物品が同一であり、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲が同一であるものの、両部分は形状等が類似しないことから、本願意匠は、引用意匠に類似しないものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲









審決日 2022-03-30 
出願番号 2020010240 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 大峰 勝士
宮田 莊平
登録日 2022-05-23 
登録番号 1716217 
代理人 渡辺 陽一 
代理人 鶴田 準一 
代理人 青木 篤 
代理人 三橋 真二 
代理人 水野 みな子 
代理人 南山 知広 
代理人 胡田 尚則 

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