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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 H7
管理番号 1386211 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-11 
確定日 2019-04-05 
意匠に係る物品 携帯情報端末 
事件の表示 意願2015− 23641「携帯情報端末」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、意匠法第14条第1項の規定により本願に係る意匠(以下「本願意匠」という。)を3年間秘密にすることを請求して、平成27年(2015年)10月23日に出願された、本意匠を意願2015−23640とする関連意匠の意匠登録出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 7月28日付け 拒絶理由の通知(1回目)
平成28年 9月21日 意見書の提出
平成29年11月16日 手続補正書の提出
平成29年11月28日付け 拒絶理由の通知(2回目)
平成30年 3月 5日付け 拒絶査定
平成30年 6月11日 拒絶査定不服審判の請求
平成31年 2月15日 上申書の提出

第2 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「携帯情報端末」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び願書に記載した本意匠
1 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由(平成29年11月28日付けの拒絶の理由)は、本願意匠が、願書に記載した本意匠(意願2015−23640の意匠。)に類似する意匠と認められないので、意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものであって、具体的には以下のとおりである。
「本願意匠と本意匠(意願2015−023640(意匠登録第1568966号)の意匠)には、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分について、主に以下の共通点と相違点があります。
[共通点]
・小円形とその外側に幅(*)のある環形が設けられていて、小円形は拡大する変化をし、環形の外縁(外径)は変化しない点
(*)ここでは、環形の「幅」とは、環形の外縁と内縁の間の径方向の長さのことをいいます。
[相違点]
・本願意匠は、小円形と最外部の環形の間に、「意匠を構成しないコンテンツ画像が表れる環形の領域」があるのに対し、本意匠は、同領域がない点
・本願意匠は、最外部の環形の外側付近の「意匠を構成しないコンテンツ画像が表れる領域」を含むのに対し、本意匠は、環形の外側付近の領域を含まない点
・本願意匠は、最外部の環形が、「画像表示部に表示される画像部分の拡大図3」の状態を除いて、中央の円形から離れており、最外部の環形は細幅でその幅が変化しないのに対し、本意匠は、外側の環形が中央の円形に接しており、中央の円形の拡大に応じて環形の幅が変化する点
・本願意匠は、色彩が含まれており、具体的には、小円形は中程度の明暗調子であり、最外部の環形は黒色と同程度の暗調子であるのに対し、本意匠は、色彩が含まれていない点
共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を検討すると、共通点が単純な幾何学形状である中で、最外部に幅の変化しない環形があるかないか、また、内部にコンテンツ画像が表れる領域を含むか否か(背景に当たるレイヤーの画像が見える領域を含むか否か)の相違点は目立つため、相違点が類否判断に及ぼす影響の方が共通点のそれよりも大きく、両意匠は類似しないと判断されます。」

2 願書に記載した本意匠
願書に記載した本意匠(以下、単に「本意匠」という。)は、意匠法第14条第1項の規定により3年間秘密にすることを請求され、平成27年(2015年)10月23日に意匠登録出願(意願2015−23640)され、平成29年(2017年)1月13日に意匠権の設定の登録(意匠登録第1568966号)がなされ、同年2月13日に意匠公報が発行されたものであり、本意匠の意匠に係る物品は、本意匠の出願の願書の記載によれば「携帯情報端末」であり、本意匠の形態は、同願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第2参照)。

第4 当審の判断
以下、本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて検討する。

1 本願意匠
当審では、本願意匠について、以下のとおり認定する(別紙第1参照)。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は「携帯情報端末」であり、願書の「意匠に係る物品の説明」には、以下のとおり記載されている。
「本願物品は、各種デジタルコンテンツ(ウェブサイト、電子書籍、地図、音楽、静止画像、映像及びゲームなどを含む)の閲覧、再生、実行などに用いる装置であり、併せてカメラ機能、通信機能、位置情報計測機能などを備え得る。また、ユーザの運動時におけるデータ(例えば、ランニングスピードや心拍等)の閲覧、記録、管理などに使用することも可能である。参考図に示す画像表示部に表示されるGUI(graphical user interface)によって操作される。」
また、願書の「意匠の説明」には次の記載がある。
「一点鎖線で囲んだ部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。同部分は、運動時におけるユーザのランニングスピードや心拍数などを表示するGUIである。このGUIは、画像部分の拡大参考図において引出線1で示す図形(ターゲット図形)と同2で示す図形(インジケータ図形)の2つの図形で成り、これらの大きさの差によって、例えばユーザが目標として設定したランニングスピードと実際のランニングスピードの差や、目標とする心拍数と実際の心拍数の差、予定した気温・湿度と実際の気温・湿度の差、設定した走行距離と実際の走行距離の差などのように、運動時に必要となる数量データを中心としたウェアラブル端末装着時(特に画像表示部が振動している状態における使用時)にユーザが必要とする各種数量データを表示するものである。すなわち、画像表示部に表示される画像部分の拡大図1及び同図2においては、両図形の大きさに差があり、これによって実際の数値が設定等した数値から外れていること及びその程度が示される。同図3においては両図形の大きさが一致していることが表されており、設定等した数値と実際の数値とが一致している状態(例えば目標のランニングスピードでランニングできている状態)が示されている。ターゲット図形とインジケータ図形との間の領域(画像部分の拡大参考図において引出線3で示す領域)及び一点鎖線とターゲット図形との間の領域(画像部分の拡大参考図において引出線4で示す領域)には背景(実際の風景を表す画像等のコンテンツ画像その他意匠を構成する画像に該当しない画像)が現れる。これら領域の白色は、当該背景を代替する着色である。右側面図及び底面図は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分以外の部分のみ現れるので省略する。一点鎖線は、意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。」
これらの願書の記載及び願書添付図面の記載によれば、本願物品は、メガネ型のウェアラブル端末であって、特に、ユーザの運動時におけるデータ(例えば、ランニングスピードや心拍等)の閲覧、記録、管理などに使用することが可能であり、画像表示部に表示されるGUI(graphical user interface)によって操作され、画像表示部には、運動時におけるユーザのランニングスピードや心拍数などが表示される。したがって、本願物品は、ユーザの運動時におけるデータの閲覧などの用途を有し、画像表示部に表示されるGUIにより操作を行う機能を有する。
(2)本願意匠に表された画像
願書及び願書添付図面の記載によれば、本願意匠はメガネ型ウェアラブル端末であって、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、メガネ型ウェアラブル端末の平面視左下に設けられた画像表示部に表示される画像(「画像表示部に表示される画像部分の拡大図1」「同拡大図2」及び「同拡大図3」に表された画像。以下「本願画像」という。)において「一点鎖線で囲った内側の部分」(以下「本願画像部分」という。)であって、一点鎖線の外側の部分は本願画像部分には含まれない。
(3)本願画像部分の用途及び機能
上記(1)の願書の記載によれば、本願画像部分の用途及び機能は、ユーザの運動時におけるデータ(例えば、ランニングスピードや心拍等)の閲覧、記録、管理などに係るものである。
また、本願画像部分には、大きさの異なる2つの図形が表されており、設定値を示すターゲット図形と、実際の数値を示すインジケータ図形から成るところ、この2つの図形の大きさの差によって実際の数値が設定値からどの程度外れているかを表し、又は2つの図形の大きさが一致していることによって実際の数値が設定値と一致していることを表す機能が有る。
(4)本願画像部分の位置、大きさ及び範囲
本願画像は、メガネ型ウェアラブル端末の背面視右側レンズ部内の中央やや右寄りの位置、大きさ及び範囲に表示されるものであり、本願画像部分は、縦横比が約5:8である本願画像において、右上寄りの位置にある。
(5)本願画像部分の形態
ア 「画像表示部に表示される画像部分の拡大図1」における形態
大きな円形状(以下「大円形状」という。)の内側に、大円形状と同心の小さな円形状(以下「小円形状」という。)が表されており、大円形状の外周の位置には太い境界縁(以下「外周境界縁」という。)が表されている。
小円形状は暗調子の灰色で表されており、大円形状の外周境界縁は黒色で表され、その内側(小円形状に至るまで)は白色で表されている(願書の「意匠の説明」によれば、この白色部分には意匠を構成しない背景が現れ、白色は背景を代替する着色である)。
大円形状の外縁から外側に僅かに広がった部分(以下「外縁近傍部」という。)があり、外縁近傍部は白色で表されている(願書の「意匠の説明」によれば、この白色部分には意匠を構成しない背景が現れ、白色は背景を代替する着色である)。
小円形状の径の大きさは、大円形状の径の大きさの約1/3.2である。
イ 「画像表示部に表示される画像部分の拡大図2」における形態
小円形状の径の大きさが大円形状の径の大きさの約1/2である以外は、前記アと同様である。前記アに比べて大円形状に占める小円形状の面積が拡大しており、すなわち、小円形状が拡大している。
ウ 「画像表示部に表示される画像部分の拡大図3」における形態
小円形状が更に拡大して、前記イの大円形状の外周境界縁の内側に至り、大円形状の大きさとほぼ同じになっている。

2 本意匠
当審では、本意匠について、以下のとおり認定する(別紙第2参照)。
(1)意匠に係る物品
本意匠の意匠に係る物品(以下「本意匠物品」という。)は「携帯情報端末」であり、願書の「意匠に係る物品の説明」には、以下のとおり記載されている。
「本願物品は、各種デジタルコンテンツ(ウェブサイト、電子書籍、地図、音楽、静止画像、映像及びゲームなどを含む)の閲覧、再生、実行などに用いる装置であり、併せてカメラ機能、通信機能、位置情報計測機能などを備え得る。また、ユーザの運動時におけるデータ(例えば、ランニングスピードや心拍等)の閲覧、記録、管理などに使用することも可能である。参考図に示す画像表示部に表示されるGUI(graphical user interface)によって操作される。」
また、願書の「意匠の説明」には次の記載がある。
「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。同部分は、運動時におけるユーザのランニングスピードや心拍数などを表示するGUIである。このGUIは、画像部分の拡大参考図において引出線1で示す図形(ターゲット図形)と同2で示す図形(インジケータ図形)の2つの図形で成り、これらの大きさの差によって、例えばユーザが目標として設定したランニングスピードと実際のランニングスピードの差や、目標とする心拍数と実際の心拍数の差、予定した気温・湿度と実際の気温・湿度の差、設定した走行距離と実際の走行距離の差などのように、運動時に必要となる数量データを中心としたウェアラブル端末装着時(特に画像表示部が振動している状態における使用時)にユーザが必要とする各種数量データを表示するものである。すなわち、画像表示部に表示される画像部分の拡大図1及び同図2においては、両図形の大きさの差があり、これによって実際の数値が設定等した数値から外れていること及びその程度が示される。同図3においては両図形の大きさが一致していることが表されており、設定等した数値と実際の数値とが一致している状態(例えば目標のランニングスピードでランニングできている状態)が示されている。右側面図及び底面図は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分以外の部分のみ現れるので省略する。」
これらの願書の記載及び願書添付図面の記載によれば、本意匠物品は、メガネ型のウェアラブル端末であって、特に、ユーザの運動時におけるデータ(例えば、ランニングスピードや心拍等)の閲覧、記録、管理などに使用することが可能であり、画像表示部に表示されるGUI(graphical user interface)によって操作され、画像表示部には、運動時におけるユーザのランニングスピードや心拍数などが表示される。したがって、本意匠物品は、ユーザの運動時におけるデータの閲覧などの用途を有し、画像表示部に表示されるGUIにより操作を行う機能を有する。
(2)本意匠に表された画像
願書及び願書添付図面の記載によれば、本意匠はメガネ型ウェアラブル端末であって、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、メガネ型ウェアラブル端末の平面視左下に設けられた画像表示部に表示される画像(「画像表示部に表示される画像部分の拡大図1」「同拡大図2」及び「同拡大図3」に表された画像。以下「本意匠画像」という。)において「実線で表した部分」(以下「本意匠画像部分」という。)である。
(3)本意匠画像部分の用途及び機能
上記(1)の願書の記載によれば、本意匠画像部分の用途及び機能は、ユーザの運動時におけるデータ(例えば、ランニングスピードや心拍等)の閲覧、記録、管理などに係るものである。
また、本意匠画像部分には、大きさの異なる2つの図形が表されており、設定値を示すターゲット図形と、実際の数値を示すインジケータ図形から成るところ、この2つの図形の大きさの差によって実際の数値が設定値からどの程度外れているかを表し、又は2つの図形の大きさが一致していることによって実際の数値が設定値と一致していることを表す機能が有る。
(4)本意匠画像部分の位置、大きさ及び範囲
本意匠画像は、メガネ型ウェアラブル端末の背面視右側レンズ部内の中央やや右寄りの位置、大きさ及び範囲に表示されるものであり、本意匠画像部分は、縦横比が約5:8である本意匠画像において、中央の位置にある。
(5)本意匠画像部分の形態
ア 「画像表示部に表示される画像部分の拡大図1」における形態
大きな円形状(以下「大円形状」という。)の内側に、大円形状と同心の小さな円形状(以下「小円形状」という。)が表されており、大円形状及び小円形状の外周が線で表されている。
小円形状の径の大きさは、大円形状の径の大きさの約1/3.4である。
イ 「画像表示部に表示される画像部分の拡大図2」における形態
小円形状の径の大きさが大円形状の径の大きさの約1/2である以外は、前記アと同様である。前記アに比べて大円形状に占める小円形状の面積が拡大しており、すなわち、小円形状が拡大している。
ウ 「画像表示部に表示される画像部分の拡大図3」における形態
小円形状が更に拡大して、前記イの大円形状の大きさと同じになっている。

3 本願意匠と本意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「携帯情報端末」であって、共にメガネ型のウェアラブル端末であるから一致する。
(2)本願画像部分と本意匠画像部分の用途及び機能
本願画像部分と本意匠画像部分(以下「両画像部分」という。)は、いずれもユーザの運動時におけるデータの閲覧などの用途を有し、GUIにより操作を行う機能を有するから、両画像部分の用途及び機能は一致する。
また、両画像部分には、大きさの異なる2つの図形が表されており、設定値を示すターゲット図形と実際の数値を示すインジケータ図形の大きさの差によって実際の数値が設定値からどの程度外れているかを表し、又は2つの図形の大きさが一致していることによって実際の数値が設定値と一致していることを表す機能が有るから、この点においても、機能が一致する。
(3)両画像部分の位置、大きさ及び範囲
ア 両意匠における位置、大きさ及び範囲の共通点
両画像部分は、共にメガネ型ウェアラブル端末の背面視右側レンズ部内の中央やや右寄りの位置、大きさ及び範囲に表示される画像(縦横比が約5:8)に含まれている点で共通する。
イ 両画像における位置の相違点
本願画像部分が本願画像の右上の位置にあるのに対して、本意匠画像部分が本意匠画像の中央の位置にある点で相違する。
(4)両画像部分の形態
両画像部分の形態を対比すると、以下の共通点と相違点が認められる。
ア 形態の共通点
(A)大円形状と小円形状
「画像表示部に表示される画像部分の拡大図1」において、大円形状の内側に、大円形状と同心の小円形状が表されている。
(B)大円形状に占める小円形状の大きさ
「画像表示部に表示される画像部分の拡大図1」において、大円形状の径の大きさに占める小円形状の径の大きさは、本願画像部分では約1/3.2であり、本意匠画像部分では約1/3.4であるから、ほぼ同じである。
「画像表示部に表示される画像部分の拡大図2」において、大円形状の径の大きさに占める小円形状の径の大きさは共に約1/2である。
(C)小円形状の変化
「画像表示部に表示される画像部分の拡大図2」において、大円形状に占める小円形状の面積が拡大しており、すなわち、小円形状が拡大している。その拡大の程度は、本願画像部分では約1.6倍(=1/2÷1/3.2)であり、本意匠画像部分では約1.7倍(=1/2÷1/3.4)であるので、ほぼ同じである。
(D)「画像表示部に表示される画像部分の拡大図3」における形態
小円形状が更に拡大して、大円形状の大きさと(ほぼ)同じになっている。
イ 形態の相違点
(a)大円形状及び小円形状の外周
本意匠画像部分では、大円形状及び小円形状の外周が線で表されているが、本願画像部分では、大円形状の外周の位置に太い境界縁(外周境界縁)が表されており、小円形状の外周は線で表されていない。
(b)大円形状及び小円形状の色彩
本願画像部分では、大円形状の外周境界縁は黒色で表され、その内側は白色(背景を代替する着色)で表されており、小円形状は暗調子の灰色で表されているが、本意匠画像部分の大円形状及び小円形状には色彩は表されていない。
(c)大円形状の外縁近傍部
本願画像部分では、大円形状の外縁近傍部が白色(背景を代替する着色)で表されているが、本意匠画像部分には、そのような外縁近傍部は無い。

4 判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。
(2)両画像部分の用途及び機能の類否判断
両画像部分の用途及び機能は、同一である。
(3)両画像部分の位置、大きさ及び範囲の評価
ア 両意匠における位置、大きさ及び範囲の共通点の評価
ウェアラブル端末の物品分野においては、メガネ型であって、背面方向(ユーザの目に対向する方向)に画像表示部を表示することは、本願の出願前に既にありふれており、また、縦横比が約5:8である画像もありふれているので、両意匠における位置、大きさ及び範囲の共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
イ 両画像における位置の相違点の評価
両画像において、右上の位置にあるか(本願画像部分)、中央の位置にあるか(本意匠画像部分)の相違点は、「携帯情報端末」などの画像を含む物品分野においては、画像の要素が画像内の様々な位置に表されることが普通に見られるから、この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(4)形態の共通点及び相違点の評価
両画像部分の形態を評価するに当たっては、本願意匠と本意匠の願書添付図面に参考図において、「正面図」などの一組(意匠法施行規則様式第6備考8)又は「画像表示部に表示される画像部分の拡大図1」などの必要な図(同規則様式第6備考14)に表された形態とは異なる形態が表されている場合には、その異なる形態を考慮しない。ただし、その異なる形態が意匠の理解を助けるために表されている場合には、形態と物品の用途及び機能との関係を理解する上で、その異なる形態を考慮する。
ア 形態の共通点の評価
両画像部分の共通点(A)、すなわち、大円形状の内側に、大円形状と同心の小円形状が表されている共通点は、円形状が共にありふれた幾何学図形であって、複数の円形状を同心円状に並べることもありふれた配置態様であるとしても、大円形状がターゲット図形の機能を有し、小円形状がインジケータ図形の機能を有することを踏まえると、ユーザの運動時におけるデータの閲覧などの用途を有する両画像部分を需要者が観察した際には、共通する用途及び機能を実現する上で、共通の形態を採用したことに対して、すなわち、ターゲット図形とインジケータ図形として大きさの異なる2つの円形状を同心円状に配したことに対して、需要者は着目し、大円形状に占める小円形状の大きさが(ほぼ)同じである共通点(B)とあいまって、需要者に一定の視覚的印象を与えているというべきである。したがって、共通点(A)及び(B)が両画像部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
そして、両画像部分の共通点(C)、すなわち、大円形状に占める小円形状の面積が拡大し、その拡大の程度がほぼ同じである共通点(C)についても、ユーザの運動時におけるデータの閲覧などを行う需要者は、2つの図形の大きさの差に常に注意を払い、具体的には、インジケータ図形(小円形状)がターゲット図形(大円形状)にどの程度近づいているか、例えば、運動中の心拍数が目標値(設定値)に迫っているか、について注意を払うことになる。そうすると、大円形状に占める小円形状の面積が拡大すること、及びその程度が需要者の視覚に与える効果は大きいというべきであるから、共通点(C)が両画像部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
さらに、ユーザの運動時における最終目標は、インジケータ図形(小円形状)がターゲット図形(大円形状)に一致させることであるから、小円形状の大きさが大円形状の大きさと(ほぼ)同じになっている共通点(D)に対して、需要者は特に注目するというべきである。したがって、共通点(D)が両画像部分の類否判断に及ぼす影響は大きいというほかない。
このように、共通点(C)及び共通点(D)が両画像部分の類否判断に及ぼす影響は大きく、また、共通点(A)及び(B)が両画像部分の類否判断に及ぼす影響も一定程度認められるから、共通点を総合すると、共通点が両画像部分の類否判断に与える影響は大きいといえる。
イ 形態の相違点の評価
これに対して、前記3(4)イで認定した相違点(a)ないし相違点(c)が両画像部分の類否判断に与える影響は、以下のとおり評価され、いずれの相違点も、共通点が両画像部分の類否判断に与える影響を覆すほどのものではない。
相違点(a)及び相違点(b)は、詰まるところ、大円形状の外周が線であるか、太い境界縁であるか、小円形状の外周線の有無及び円形状の色彩の有無に関するものであるが、円形状において外周が線であるものと太い境界縁であるものはどちらもありふれており、また、外周線がないものもありふれており、さらに、本願画像部分に見られる暗調子の灰色や黒色による配色も周囲とのコントラストを表す手法としてありふれているから、これらの相違点に対して、需要者は特に注目するとはいい難い。加えて、小円形状の大きさは変化するのであって、需要者はその変化や、大円形状と小円形状の大きさの関係に特に注目しているところ、ダイナミックな大きさの関係の変化に視覚を奪われる傾向が強くなり、相対的に円形状の色彩などの態様には目を向けなくなるといえる。したがって、相違点(a)及び相違点(b)が両画像部分の類否判断に与える影響は小さい。
相違点(c)、すなわち、本願画像部分では大円形状の外縁近傍部が白色で表されて、本意匠画像部分には外縁近傍部自体が無いという相違は、本願画像部分に表された外縁近傍部の幅は僅かであって比較的目立たず、需要者が本願画像部分の外縁近傍部に注視するとはいい難い。また、そもそもこの外縁近傍部には意匠を構成しない背景が現れるだけであるから、相違点(d)は、意匠を構成しない範囲が両画像部分に存在するか否かの相違に換言され、意匠を構成しない要素の有無が両画像部分の美感を左右するとはいい難い。したがって、相違点(c)が両画像部分の類否判断に与える影響は小さい。
このように、相違点(a)ないし相違点(c)が両部分の類否判断に与える影響はいずれも小さいといわざるを得ない。
(5)両意匠の類否判断
両意匠は意匠に係る物品が同一であり、両画像部分の用途及び機能も同一であって、両画像部分の位置、大きさ及び範囲の共通点と位置の相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいものの、両画像部分の形態については、共通点が総じて両画像部分の類否判断に及ぼす影響が大きいのに対して、相違点が両画像部分の類否判断に与える影響はいずれも小さい。
したがって、本願意匠は本意匠に類似する。

5 本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて
本意匠は、本願の意匠登録出願人の意匠登録出願に係る意匠であるから、意匠法第10条第1項に規定されている本意匠の要件を満たしている。
また、本願意匠の意匠登録出願の日は、本意匠の意匠登録出願の日以後であって本意匠の意匠公報の発行の日前であるから、意匠法第10条第1項に規定されている関連意匠の意匠登録出願の日の要件を満たしている。
さらに、前記4(5)のとおり、本願意匠は、本意匠に類似するものと認められるので、意匠法第10条第1項に規定されている、本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たしている。
したがって、本願意匠は、意匠法第10条第1項の規定に該当する。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、意匠法第10条第1項の規定に該当するから、本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができる。そうすると、原査定における拒絶の理由は成り立たない。
また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲







審決日 2019-03-25 
出願番号 2015023641 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (H7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 木本 直美
特許庁審判官 小林 裕和
宮田 莊平
登録日 2019-05-17 
登録番号 1633919 
代理人 五味 飛鳥 

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