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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K1 |
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管理番号 | 1386218 |
総通号数 | 7 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2022-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-21 |
確定日 | 2019-03-11 |
意匠に係る物品 | 研磨材シート |
事件の表示 | 意願2017− 25475「研磨材シート」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年(2017年)11月15日の意匠登録出願であって、平成30年5月30日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年7月13日に意見書が提出されたが、平成30年10月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年11月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願意匠は、意匠に係る物品を「研磨材シート」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原審の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠は、日本国特許庁発行の意匠公報(公報発行日:平成24年(2012年)11月5日)に記載された、意匠登録第1454470号(意匠に係る物品、研磨ディスク)の意匠であり、その形態を、同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。 第4 当審の判断 1 対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は、「研磨材シート」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「研磨ディスク」であるが、いずれも円形シート状の研磨用部材といえるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、その用途及び機能が共通する。 (2)形態の対比 本願意匠と引用意匠を対比すると、両意匠の形態については、以下のとおり、主な共通点及び相違点がある。 なお、対比のため、本願意匠の図面の記載にならい、引用意匠の「底面図」を引用意匠の「正面図」とし、同じく引用意匠の「正面図」を引用意匠の「平面図」とし、その他は、これに準じて表されているものとして対比する。 ア 形態の共通点 (共通点1)両意匠は、全体の基本的な構成態様が、中心部に円形貫通孔(以下「中央貫通孔」という。)を形成した薄い円板状としたものであって、この中央貫通孔より小径の円形貫通孔(以下「小円貫通孔」という。)を、中央貫通孔周辺部から外辺部に向かって略円弧状の曲線に沿った配置態様で略放射線状になるように複数列形成した点で共通する。 (共通点2)両意匠は、略放射線状に形成した小円貫通孔からなる1列において、隣り合う小円貫通孔の間隔が、外辺部に向かって僅かずつ広がりながら配設している点で共通する。 イ 形態の相違点 (相違点1)本願意匠の1列に配置した小円貫通孔の直径が、列の外辺部に向かって1番目、4番目、7番目に形成したものが他のものよりもやや大きなもの(以下、このような列を「第1列」という。)、列の外辺部に向かって2番目、5番目に形成したものが他のものよりもやや大きなもの(以下、このような列を「第2列」という。)、及び列の外辺部に向かって3番目、6番目に形成したものが他のものよりもやや大きなもの(以下、このような列を「第3列」という。)といった3種類の組合せがあるのに対し、引用意匠の1列に配置された小円貫通孔の直径が、外辺部に向かって僅かずつ大きなもの1種類である点で、両意匠は相違する。 (相違点2)本願意匠の小円貫通孔からなる列の形態及び配置態様が、7つの小円貫通孔からなる第1列、第2列及び第3列が、反時計回りにその順番で6回繰り返し、略放射線状になるように等間隔に18列配置したものであるのに対し、引用意匠の小円貫通孔からなる列の形態及び配置態様が、7つの小円貫通孔からなる1列を、略放射線状になるように等間隔に8列配置し、それらの列の中間部分に6つの小円貫通孔からなる1列を、略放射線状になるように等間隔に8列配置したものである点で、両意匠は相違する。 (相違点3)本願意匠の中央貫通孔の直径とシート全体の直径の比率が、約1:8.5であるのに対し、引用意匠の同比率が、約1:12.5である点で、両意匠は相違する。 2 判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は、その用途及び機能が共通するから類似するものである。 (2)形態の共通点及び相違点の評価 本願意匠の意匠に係る物品である「研磨材シート」もしくは引用意匠の意匠に係る物品である「研磨ディスク」は、その表面に形成した貫通孔の大きさやその配置態様によって研磨効率や作業性が変わるものであるから、需要者は、表面に設けられた貫通孔の形態やその配置態様を注視する。 したがって、小円貫通孔の具体的な形態及びその配置態様が需要者の注意を強く惹く部分であるといえる。 ア 形態の共通点 (共通点1)は、両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであり、意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2)における隣り合う小円貫通孔の間隔が、外辺部に向かって僅かずつ広がりながら配設している態様は、この種物品分野において極普通に見られるものであるから、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず、この(共通点2)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 イ 形態の相違点 (相違点1)は、需要者の注意を惹く小円貫通孔の具体的な形態に係るものであって、1列に配置した小円貫通孔において、小円貫通孔を2つ挟んでやや大きな小円貫通孔を規則的に配したもの3種類からなる本願意匠の形態は、大きさの異なる小円貫通孔を単調ではなくリズミカルに配置したとの印象を与えるのに対して、外辺部に向かって僅かずつ大きな直径のものとなる引用意匠の形態は、小円貫通孔が外辺部に向かって拡張していくように配置したとの印象を与えることから、両意匠は、小円貫通孔の具体的な形態が与える美感に大きな差異がある。 (相違点2)は、需要者の注意を惹く小円貫通孔からなる列の形態及び配置態様に係るものであって、本願意匠が、やや大きな小円貫通孔を部分的に配してアクセントを持たした態様からなる18列を、放射線状になるように等間隔に配した印象に加え、円板の全面に、大きな螺旋状の曲線に沿って配置したやや大きな小円貫通孔のみからなる列を、等間隔に6つ配した印象を与えるのに対し、引用意匠は、列の長さが長い8列の間に、それより長さの短い8列を放射線状になるように配した印象を与えるから、中央貫通孔周辺部及び外辺部の小円貫通孔の配置態様が同心円状に表れるか否かといった相違を含め、両意匠は、小円貫通孔からなる列の形態及び配置態様に大きな差異がある。 (相違点3)は、中央貫通孔の直径とシート全体の直径の比率に係るものであるが、この種物品においては、取り付けられる工具等の制約から様々な大きさの直径の中央貫通孔が見られるから、この(相違点3)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (3)両意匠の類否判断 両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、両意匠は、上記(2)の前文のとおり、需要者は、小円貫通孔の具体的な形態及びその配置態様を注視するところ、両意匠には上記イのとおり、小円貫通孔の具体的な形態、小円貫通孔からなる列の形態及び配置態様といった需要者の注意を惹く部分が与える美感に大きな差異がある。 そうすると、両意匠は、全体の基本的な構成態様や隣り合う小円貫通孔の間隔の態様が共通することを考慮しても、意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品は類似するものであるが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しないもからのである。 第5 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、当審の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2019-02-21 |
出願番号 | 2017025475 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(K1)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 渡邉 久美 |
登録日 | 2019-03-29 |
登録番号 | 1629787 |
代理人 | 弟子丸 健 |
代理人 | 山本 泰史 |
代理人 | 松下 満 |
代理人 | 倉澤 伊知郎 |
代理人 | ▲吉▼田 和彦 |
代理人 | 工藤 由里子 |
代理人 | 田中 伸一郎 |