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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 B7
管理番号 1386236 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-02-03 
確定日 2022-06-28 
意匠に係る物品 美容用パックシート 
事件の表示 意願2020− 19621「美容用パックシート」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年(2020年)9月15日の意匠登録出願であって、主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 6月30日付け 拒絶理由の通知
同年 8月 3日 意見書の提出
同年11月 1日付け 拒絶査定
令和4年 2月 3日 拒絶査定不服審判の請求

第2 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「美容用パックシート」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、本願よりも前に出願された意匠に類似するものと認められるので、最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないため、意匠法第9条第1項の規定により意匠登録を受けることができないとの理由であって、拒絶の理由に引用した意匠は以下の意匠である。

意匠登録第1599896号の意匠
(出願番号:意願2017−004196、出願日:平成29年(2017年)3月2日)

第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は「美容用パックシート」であり、美容液等を付着又は含浸させて目元、鼻、顎先又は頬(ほうれい線)等の顔の局所部に貼付して使用するものである。引用意匠の意匠に係る物品は「身体用貼付シート」であって、剥離フィルムを剥がしてゲル層面を身体に貼り付けて使用するものである。このように、美容液等を付けて使用するか、ゲル層面を貼り付けて使用するかという用途の相違が認められるが、どちらも身体に貼付するシートであるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、機能が共通する。

2 形状等の対比
(1)形状等の共通点
(共通点1)全体は、正面視略横長ハート形状の薄いシート状のものであって、左右対称である。
(共通点2)左端及び右端の形状が外側に凸の弧状に表されている。
(共通点3)正面下端中央部は、下に凸の山状に突出している。

(2)形状等の相違点
正面から見て、以下の相違点が認められる。
(相違点1)上端形状の相違
本願意匠では、上端の中央部に扁平V字状の窪みが形成され、V字の左右が左上方向又は右上方向に直線上に伸長して、最も高くなった部位から左端又は右端に連続している。
これに対して、引用意匠では、上端の中央部に弧状の窪みが形成され、その稜線形状は、下端の中央部に形成されたと弧状の突出の稜線形状とほぼ同じである。また、その上端中央部の窪みの左右が緩やかに弧状に隆起して左右に広がって、左端又は右端に連続している。
(相違点2)左端形状又は右端形状の相違
本願意匠の正面中央から、左端形状又は右端形状の中間点を結ぶ線(仮想線)が、左上方向又は右上方向に伸びており、その傾きは、上端中央部に形成された扁平V字の左右の傾きとほぼ同じである。すなわち、本願意匠の左端部と右端部は、上端の扁平V字と同じ傾きで左上又は右上に張り出している。
これに対して、引用意匠の正面中央から左端形状又は右端形状の中間点を結ぶ線は、ほぼ水平であり、左端部と右端部は、水平方向に張り出している。
(相違点3)下端形状の相違
本願意匠では、左端又は右端から下端の中央部に向かって、直線状に下降して、その傾きは、正面中央から左端形状又は右端形状の中間点を結ぶ線の傾きとほぼ同じである。
これに対して、引用意匠では、左端又は右端から、内側に向けて一旦水平状になってから、上に凸の緩やかな弧状を経て下端中央部に連続している。
(相違点4)シートの態様の相違
本願意匠は1枚のシートによって構成されているのに対して、引用意匠は「A−A部におけるB−B線拡大端面図」で表されているように3層から成るシートであり、使用時には剥離フィルムの層が剥がされて2層となる。
(相違点5)下端中央部の形状の相違
本願意匠の下端中央部とその左右の連続部分(山の裾野の部分)は屈曲状であるが、引用意匠のその部分はなだらかである。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、機能が共通するから、類似する。

2 形状等の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、顔などの身体に貼る美容用のパックであって、美容用品を扱う者(取引者)が美容用のパックを選定するに当たっては、美容用パックが顔のどの部位に貼られるか、その大きさはどうか、などについて関心を持つといえる。したがって、両意匠の形状等の類否判断を行うに当たっては、貼られる部位や大きさに基づく形状等を評価するとともに、全体の視覚的印象についても評価すべきである。
(1)形状等の共通点
全体が正面視略横長ハート形状の薄いシート状のものであって、左右対称である点は、特開2000−103720の図61の意匠(参考意匠1。別紙第3参照。)や、特開2006−249030の図1の意匠(参考意匠2。別紙第4参照。)に見られるように、「美容用パックシート」の物品分野の意匠においてはありふれた態様であり、需要者がこの共通点に特に注目するとはいい難いから、共通点1が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
一方、左端及び右端の形状が外側に凸の弧状に表されている共通点2と、正面下端中央部が下に凸の山状に突出している共通点3は、両意匠に共通して見られる特徴であって、細部の形状を観察する需要者が注意を払うというべきである。したがって、共通点2及び共通点3が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
(2)形状等の相違点
相違点1ないし相違点3で述べたとおり、本願意匠では、V字の左右が左上方向又は右上方向に直線上に伸長する上端、そのV字と同じ傾きで左上又は右上に張り出している左端部と右端部、その傾きと同じ傾きで下降する下端が、顔の局所部に貼付するのに適した形状であるとの視覚的印象を需要者に与えているのに対して、引用意匠では、左端部と右端部がほぼ水平状に左右に伸びており、上端と下端に共に緩やかな弧状が形成されている点は、上端中央部の窪みと下端中央部の突出の稜線形状がほぼ同じである特徴とあいまって、額などに伸ばして使用するのに適した形状であるとの視覚的印象を需要者に与えているというべきである。このような視覚的印象は、各部の形状の相違が相乗的に組み合わさってもたらされるものであって、各部自体形状についても、例えば上端中央部の窪みが扁平V字であるか(本願意匠)、弧状の窪みであるか(引用意匠)の相違に対しても、需要者は注意を払うこととなる。加えて、本願意匠が単に美容液等を付けるだけであって剥がれやすいものであるから本願意匠の形状が略V字状になっているのに対して、引用意匠がゲル層面を貼り付けるから剥がれ難く、水平状に伸びた形状になっている点についても、需要者は注意を払うこととなる。そうすると、この相違点1ないし相違点3は、それぞれの差異として、それらが組み合わさった相違としても、両意匠の類否判断に大きな影響を与えているといわざるを得ない。
また、シートの態様の相違、すなわち1枚のシートであるか、3層から成るシートであるかの相違は、使用時において需要者が注目する態様に関する相違であるから、両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方、下端中央部の形状の相違、すなわち、下端中央部の裾野の部分が屈曲状であるか(本願意匠)、なだらかであるか(引用意匠)の相違点5は、需要者に別異の印象を与えるほどのものではないので、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。

3 両意匠の類否判断
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、顔の局所部に貼付するのに適した形状であるのか、額などに伸ばして使用するのに適した形状であるのかの相違は、美容用品を扱う者が特に関心を持つといえるから、相違点1ないし相違点4が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいというべきである。そうすると、相違点5が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいとしても、相違点は総じて両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいから、両意匠の類否判断に及ぼす影響が一定程度認められる共通点2及び共通点3を考慮したとしても、相違点は共通点を圧して、両意匠に異なる美感を起こさせるといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は類似するが、その形状等において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、原査定における拒絶の理由に引用した、本願よりも前に出願された意匠に類似するものではないから、最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当し、意匠法第9条第1項の規定を適用することはできない。すなわち、同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲




審決日 2022-06-15 
出願番号 2020019621 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (B7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 山田 繁和
特許庁審判官 江塚 尚弘
小林 裕和
登録日 2022-07-19 
登録番号 1720735 
代理人 三橋 史生 
代理人 上西 浩史 
代理人 蜂谷 浩久 
代理人 伊東 秀明 

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