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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J2
管理番号 1387556 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-18 
確定日 2022-07-19 
意匠に係る物品 腕時計用側 
事件の表示 意願2020− 17163「腕時計用側」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、2020年2月21日の世界知的所有権機関への出願に基づく優先権の主張を伴う、令和2年(2020年)8月18日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和 3年(2021年) 3月23日付け 拒絶理由通知
同年 6月23日 意見書の提出
同年 10月 8日付け 拒絶査定
令和 4年(2022年) 1月18日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「腕時計用側」とし、その形状等(形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合)は、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
独立行政法人工業所有権総合情報館が2001年 5月18日に受け入れた
小学館発行の内国雑誌「DIME」(2001年 5月 3日発行)10号
第150頁所載
腕時計に表された「腕時計用側」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HA13005605号)

第4 当審の判断

1 本願意匠及び引用意匠の対比

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「腕時計用側」であり、引用意匠の意匠に係る物品も腕時計に表された「腕時計用側」であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。

(2)両意匠の形状等
両意匠の形状等については、主として、以下の共通点及び相違点がある。

ア 共通点
(ア)基本的構成態様
全体は、ミドルケース、透明レンズ、ベゼル及び裏蓋からなる略円盤形状の本体(以下「本体ケース部」という。)と、本体ケース部の周側面において、上下中央に設けた略横長長方形板状のラグ、右端中央に設けた先端を半球状に形成した略横向き短円柱形状のリューズカバー及び正面から見て5時の位置に設けたリューズカバーと本体ケース部を環状の鎖で繋ぐリューズカバー保持用の板(以下「リューズカバー保持板」という。)からなるものである点。

(イ)本体ケース部
本体ケース部は、正面中央に縁に沿って細幅のリングを取り付けた略円形のレンズを配置し、その外縁に外側に向かって若干下がる傾斜面とする略円環状のベゼル及び背面に略円形の裏蓋を設けたものであり、レンズの直径とベゼルの幅の長さの比率を、略21:2.5としている点。

(ウ)リューズカバー
リューズカバーは、基台の上につまみを取り付けたものであって、具体的には、基台は、略縦長リング状の金具を本体ケース部の周面に沿って下向きに形成した略円環状で、つまみは、先端中央に略ドーム状のキャップを取り付けた基台より大径の略円盤状で、周面に沿って細かい横筋状の凹凸模様を多数施している点。

(エ)リューズカバー保持板
リューズカバー保持板は、本体ケース部の周面に沿って湾曲した右側面視略縦長長方形状で、その上端中央(正面から見て4時の位置)に略縦長の環状の金具を、正面視縦に設けて、リューズカバーの基台に設けた金具と鎖状に繋いでいる点。

イ 相違点
(ア)リューズカバー保持板と本体ケース部との段差
本願意匠のリューズカバー保持板と本体ケース部とは、凹凸がなく面一状をなしているのに対し、引用意匠のリューズカバー保持板は、本体ケース部より段差状に突出して設けている点。

(イ)リューズカバー保持板の環状の金具
本願意匠のリューズカバー保持板の環状の金具は、略台形状であるのに対し、引用意匠の環状の金具は、略縦長角丸「コ」の字状である点。

類否判断

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、ともに腕時計の構成部品である「腕時計用側」であるから、同一である。

(2)形状等の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、腕時計の部品である「腕時計用側」であるから、需要者は、主に、腕時計関係の取引業者や販売業者である。
したがって、まず、需要者が最も注意を払う部位であるケース本体や時計操作に係わるリューズ周りの形状等について評価し、かつそれ以外の形状等も併せて、各部を総合して意匠全体として評価することとする。

ア 共通点の評価
まず、共通点(ア)について、この種物品の分野において、本体ケース部、リューズカバー及びリューズカバー保持板からなる時計用側は、以下の参考意匠に見られるとおり、本願の出願前から公然知られており、両意匠のみが有する態様とはいえないことから、需要者が格別注目するものとはいえず、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

参考意匠(別紙第3参照)
特許庁意匠課が2011年3月8日に受け入れた
インターネットに掲載された
表題「Pasha watch, small model / Product Visuals / Show Me / Images / Media」、掲載頁のアドレス「http://www.cartier.us/#/media/images/show-me/product-visuals/wj11951g_1-png?view=1」所載
腕時計の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ22077512号)

次に、共通点(イ)ないし共通点(エ)については、上の参考意匠に見られるように本願の出願前から公然知られており、両意匠のみが有する特徴とはいえないことから、格別需要者の注意を引くものとはいえず、これらの共通点は、いずれも両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

イ 相違点の評価
まず、相違点(ア)について、リューズカバー保持板と本体ケース部とが凹凸なく面一状をなしている態様は、本願意匠の出願前の先行意匠にはみられず、本願意匠独自の態様といえる。他方、引用意匠のリューズカバー保持板は、本体ケース部より明らかに外径側に段差状に突出して設けており、当該部分が凹凸なく面一状をなす本願意匠との対比において、一見して異なる視覚的印象をもたらすものといえ、且つ当該部分は通常の使用の状態において見えやすく、需要者が注意して観察する部分であるから、相違点(ア)の相違が両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
次に、相違点(イ)について、リューズカバー保持板の小さな箇所における相違ではあるが、本願意匠のように略台形状の金具は本願意匠以外には見られず、また、リューズカバー近傍で比較的目立つものであることから、需要者に別異の美感を与えるものといえ、相違点(イ)は、両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。

3 形状等の類否判断
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、共通点(ア)ないし(エ)が両意匠の類否判断に与える影響は小さいのに対して、相違点(ア)が両意匠の類否判断に与える影響は大きく、相違点(イ)も両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。
したがって、両意匠の形状等を総合的に観察した場合、共通点に比べて、相違点がもたらす影響の方が大きいものであるから、両意匠の形状等は類似しない。

4 小括
上記のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、形状等において、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として観察した場合、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲




審決日 2022-07-06 
出願番号 2020017163 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J2)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 江塚 尚弘
藤澤 崇彦
登録日 2022-07-22 
登録番号 1721191 
代理人 茜ヶ久保 公二 
代理人 林 美和 
代理人 稲葉 良幸 

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