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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C4
管理番号 1388433 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-24 
確定日 2022-06-16 
意匠に係る物品 マスク 
事件の表示 意願2020− 17120「マスク」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 主な手続の経緯
令和 2年(2020年) 8月18日 意匠登録出願
令和 3年(2021年) 2月25日付け 拒絶理由通知書
同年 4月 5日 意見書
同年 6月 9日付け 拒絶査定
同年 8月24日 審判請求書
同年 8月26日 手続補足書

第2 本願意匠
この意匠登録出願の意匠(以下「本願意匠」という。)の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「マスク」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における令和3年(2021年)2月25日付けの拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって、具体的には、拒絶の理由及び拒絶の理由に記載の「引例の意匠」(以下「引用意匠」という。)は、下記のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠と下記の引例の意匠を全体として比較すると、両意匠はいずれも「マスク」であって、意匠に係る物品が共通します。形状についても、マスク本体の縦横比を約1:2として、その正面視略中央に箱ひだを設けその上下に車ヒダを一つずつ形成する基本形状が顕著に共通することに加え、マスク本体の上下左右を縁取る溶着の態様や、箱ヒダ内部にノーズワイヤーを収納しその上下に溶着を設けてその位置を固定する態様など、各部の具体的な形状についても一致し、これらの共通点は意匠全体の骨格的態様を形成し、看者に同様の美感を与えています。
他方、正面視箱ひだ下方に設けた車ひだの縦幅と正面視車ひだ下方に表れる帯状部の縦幅との長短比について、本願意匠においては約1:1であるのに対し、引例の意匠においては約1:2である点に差異が認められますが、当該差異点は通常の変更の範囲内にとどまるものであることから、看者の注意を引き付け特別な美感を与えるものとは認められません。また、本願意匠はマスク本体背面側上縁部にクッション部を設けていますが、細部における付加的変更であり、この点についても格別の視覚効果を奏するものとは認められません。
したがって、上記差異点を併せてもなお、共通する態様が奏する印象を凌駕することはできず、本願意匠は引例の意匠に類似するものと認められます。」
「<引例の意匠>
2020年1月31日にインスタグラム閲覧サイト「Picuki」上で公開されたマスクの意匠
(書誌的事項)
・著者
@purimo9012
・表題
記載なし
・掲載箇所
拡大イメージを含む当該画像下半部
(https://instagram.fods5−1.fna.fbcdn.net/v/t51.2885−15/e35/p1080x1080/82372884_3767026599988978_3261534517937460455_n.jpg?_nc_ht=instagram.fods5−1.fna.fbcdn.net&_nc_cat=110&_nc_ohc=l9PlZ−Ws7QMAX9XxWrY&tp=1&oh=207fe208b8d60d20e4bad4a716fde5a4&oe=605F8153)
・媒体のタイプ
[online]
・掲載年月日
2020年1月31日
・検索日
2021年2月25日
・情報の情報源
インターネット
・情報のアドレス
https://www.picuki.com/media/2233547471381264536」

第4 当審の判断
1 本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「マスク」である。
(2)本願意匠の形状等
本願意匠は、基本的構成態様として、
(A)正面視でいずれも左右方向全幅に複数のひだ(プリーツ)を設けた略横長長方形状のマスク本体部の左右短辺の上下端寄りに略細幅帯状体の端部を溶着して耳かけ部を形成し、マスク本体の上辺寄り及び略中央の長手方向にワイヤーを内蔵したプリーツタイプのマスクである。
具体的構成態様として、
(B)マスク本体部については、左右全幅にマスク本体の正面視縦方向略中央に箱ひだ部を設け、その上下に上向き及び下向きのひだ部を1つずつ設けて、さらにひだ部より外側の上下端までは左右全幅の帯状部分(以下余地部という)を形成したものであって、正面視で、上余地部、上ひだ部、中央箱ひだ部、下ひだ部、下余地部として、この縦方向の長さ比が、1:0.6:1.25:0.6:0.75であって、下の余地部の幅が上の余地部より短いものである。
(C)マスク略中央のワイヤーについて、本願意匠はマスク本体部縦方向で約4:3に位置し、中央やや下寄りに配されている。
(D)マスクの正面及び背面の布状体(不織布等)を溶着している溶着部について、マスク本体部の正面側左右短辺端側においては、布状体の両端を固定する横4列の点状で縦方向に多数並列する模様となって表れ、上辺寄りにおいては、点状の溶着部は、ワイヤーを正面及び背面の布状体の内部に納めるために、ワイヤーの上下、長手方向に2本の直線状に並んで配置され、略中央においても、点状の溶着部は、ワイヤーを正面及び背面の布状体の内部に納めるために、ワイヤーの上下、長手方向に上下2本の直線状に並んで配置され、さらに、上辺寄りのワイヤー収納箇所の左右端寄りには、2つのやや大きめの点状の溶着部を配しているものである
(D)上辺部近傍の態様について、正面側は切端部などがなく、背面側は、マスク上辺部に沿って横方向いっぱいに、縦方向長さの約1/6幅の帯状の緩衝体が施され、側面視で3本の畝状(上下右側面視略4分の1円状、中央略半円状)の盛り上がりを形成している。

2 引用意匠
(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は、意匠に係る物品は、「マスク」である。
(2)引用意匠の形状等
引用意匠は、インターネット掲載のインスタグラム閲覧サイトで公開されたものであって、掲載画像で正面側のみが確認できるものであるが、台上に置かれたマスクの中央ワイヤーを挟んだ上下部分は長手方向に、白色が濃く見て取れ、「マスク」の物品分野の当業者知識に照らせば、白色が濃い部分は折りたたまれた布状体のひだ部の重なりであって、略中央から上下対称方向に連なるプリーツタイプのマスクであると認め得るから下記のとおり認定し、向きについては、本願意匠の向きに合わせて引用意匠の向きを認定する。
引用意匠は、基本的構成態様として、
(a)正面視でいずれも左右方向全幅に複数のひだ(プリーツ)を設けた略横長長方形状のマスク本体部の左右短辺の上下端寄りに略細幅帯状体の端部を溶着して耳かけ部を形成し、マスク本体の上辺寄り及び略中央の長手方向にワイヤーを内蔵したプリーツタイプのマスクである。
具体的構成態様として、
(b)マスク本体部については、上左右全幅にマスク本体の正面視縦方向略中央に箱ひだ部を設け、その上下に上向き及び下向きのひだ部を1つずつ設けて、さらにひだ部より外側の上下端までは左右全幅の余地部を形成したものであって、正面視で、上余地部、上ひだ部、中央箱ひだ部、下ひだ部、下余地部として、この縦方向の長さ比が、1:0.4:1.25:0.4:1であるから上下ほぼ対称である。
(c)マスク略中央のワイヤーについて、引用意匠は、縦方向で約5:5に位置し、ほぼ中央に配されている。
(d)マスクの正面及び背面の布状体(不織布等)を溶着している溶着部について、マスク本体部の正面側左右短辺端側においては、布状体の両端を固定する横4列の点状で縦方向に多数並列する模様となって表れ、上辺寄りにおいては、点状の溶着部は、ワイヤーを正面及び背面の布状体の内部に納めるために、ワイヤーの上下、長手方向に2本の直線状に並んで配置され、略中央においても、点状の溶着部は、ワイヤーを正面及び背面の布状体の内部に納めるために、ワイヤーの上下、長手方向に上下2本の直線状に並んで配置され、さらに、上辺寄りのワイヤー収納箇所の左右端寄りには、2つのやや大きめの点状の溶着部を配しているものである。
(e)上辺部近傍の態様について、引用意匠の正面側は、上辺寄りのワイヤー収納部下方に布状体の切端部が認められるが、背面側は現れておらず、不明である。

3 対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠は「マスク」で、引用意匠は「マスク」であって、本願意匠と
引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。
(2)両意匠の形状等
両意匠の形状等を対比すると、主として、以下の共通点と相違点が認められる。
(あ)形状等の共通点
(共通点1)正面視でいずれも左右方向全幅に複数のひだ(プリーツ)を設けた略横長長方形状のマスク本体部の左右短辺の上下端寄りに略細幅帯状体の端部を溶着して耳かけ部を形成し、マスク本体の上辺寄り及び略中央の長手方向にワイヤーを内蔵したプリーツタイプのマスクである点、
(共通点2)マスク本体部については、左右全幅にマスク本体の正面視縦方向略中央に箱ひだ部を設け、その上下に上向き及び下向きのひだ部を1つずつ設けて、さらにひだ部より外側の上下端までは左右全幅の余地部を形成したものである点、
(共通点3)マスクの正面及び背面の布状体(不織布等)を溶着している溶着部について、マスク本体部の正面側左右短辺端側においては、布状体の両端を固定する横4列の点状で縦方向に多数並列する模様となって表れ、上辺寄りにおいては、点状の溶着部は、ワイヤーを正面及び背面の布状体の内部に納めるために、ワイヤーの上下、長手方向に2本の直線状に並んで配置され、略中央においても、点状の溶着部は、ワイヤーを正面及び背面の布状体の内部に納めるために、ワイヤーの上下、長手方向に上下2本の直線状に並んで配置され、さらに、上辺寄りのワイヤー収納箇所の左右端寄りには、2つのやや大きめの点状の溶着部を配しているものである点、
が共通している。
(い)形状等の相違点
(相違点1)マスク本体部について、正面視で、上余地部、上ひだ部、中央箱ひだ部、下ひだ部、下余地部として、縦方向の長さ比が、1:0.6:1.25:0.6:0.75の長さ比であって、下の余地部の幅が上の余地部より短いのに対し、引用意匠の長さ比は、1:0.4:1.25:0.4:1であるから上下ほぼ対称である点、
(相違点2)略中央のワイヤーについて、本願意匠はマスク本体部縦方向で約4:3に位置し、中央やや下寄りに配されているのに対し、引用意匠は、縦方向で約5:5に位置し、ほぼ中央に配されている点、
(相違点3)上辺部近傍の態様について、本願意匠は、正面側は切端部などがなく、マスク上辺部に沿って背面側横方向いっぱいに、縦方向長さの約1/6幅の帯状の緩衝体が施され、側面視で3本の畝状(上下右側面視略4分の1円状、中央略半円状)の盛り上がりを形成しているのに対して、引用意匠は、正面側は、上辺寄りのワイヤー収納部下方に布状体の切端部が認められるが、背面側は現れておらず、不明である点、
で相違する。

類否判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、一致するから同一である。
(2)マスクの物品分野の意匠の類否判断
マスクの需要者は、主にマスクを実際に使用する購入者及びその購入者に向けて販売をする業者などであって、プリーツタイプのマスクの通常の使用においてはひだ部を上下に広げて展開し、上辺部をノーズワイヤーなどによって鼻上部の凹凸にそって変形保持して、耳かけ部を両耳にかけて使用するものであるから、需要者が観察するに当たっては、そのマスクに求める効果を実現するための機能が備わっているか否かはもちろん、その素材や、そのフィット感につながる使用時の態様に注目するものである。そして、直接顔に触れる上辺部背面側の態様は、装着時の付け心地に関わる部分であって、使用時に着目する部位であると認められる。
したがって、マスクの意匠の類否判断においては、背面側上辺部の態様及びそれ以外の項目も併せて、各項目を総合して意匠全体として形状等を評価する。
(3)両意匠の形状等の共通点の評価
まず、(共通点1)については、正面視で横幅いっぱいに中央とその上下にひだ部を形成したプリーツタイプのマスクであるもの、ワイヤー部を上辺及び略中央に2本配したマスクは、マスクとしてごく普通に見られる形状等であるから、この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
次に(共通点2)については、プリーツタイプのマスクとしてごく普通のひだ部の形成態様であるから、この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
そして、(共通点3)のマスクの正面及び背面の布状体を溶着している溶着部の態様については、マスク本体部の正面側左右短辺端側に点状の溶着部を縦方向に多数並列させて、マスクを構成する布状体を固定することも、ワイヤーを正面及び背面の布状体の内部に納めるために、ワイヤーの上下に点状の溶着部を直線状に並べて配することも、上辺寄りのワイヤー収納箇所の左右端寄りに点状の溶着部を配することも、マスクの物品分野でよく見られる溶着部の態様であるからこの共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
そうすると、(共通点1)ないし(共通点3)は、両意匠の類否判断に及ぼす影響はいずれも小さく、総じても両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいということができる。
(4)両意匠の形状等の相違点の評価
これに対して、前記認定した(相違点1)ないし(相違点3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は、以下のとおりである。
まず、(相違点1)及び(相違点2)は、正面視でのマスクの具体的なプロポーションについての相違であって、(相違点1)の引用意匠がほぼ上下対称であるのに対し本願意匠は下の余地部の縦幅が上の余地部より短く、上下非対称である点は(相違点2)の中央箱ひだ部に配された略中央ワイヤーがやや下寄りに配されている点に関わり、略中央のワイヤーの位置差はさほど大きくはないものの、マスク略中央のワイヤーは、主にマスク部に張りを持たせてマスク内の空間を確保するためのものであるから、マスクの着用時の快適さにも影響する部分であって、需要者もある程度注目し、両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。(相違点3)は使用に際して直接肌に接する部分の相違であって、特にマスク上辺部に沿って背面側横方向いっぱいに、縦方向長さの約1/6幅の帯状の緩衝体を配したか否かの点については、需要者が使用時の態様を意識し、十分に注意を払う上辺部背面側の態様であり、本願意匠の帯状の緩衝体が3本の畝状の盛り上がりを形成している点は、一層マスク上辺部がずれ難く、密着するとの印象を与え、背面側の態様が不明である引用意匠とは、その印象を大きく異にし、需要者に対して、両意匠別異の感を起こさせるといえるから両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そうすると、(相違点1)及び(相違点2)は両意匠の類否判断に及ぼす影響が一定程度あり、(相違点3)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく、相違点を総合すると、相違点は両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいというほかない。
(5)両意匠の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は同一であるが、両意匠の形状等については、共通点は、総じて両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいのに対して、相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は総じて大きいから、本願意匠は引用意匠に類似しない。

第5 むすび
以上のとおり、本願意匠は、当審における拒絶の理由に引用した意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲






審決日 2022-06-01 
出願番号 2020017120 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C4)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 山田 繁和
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2022-08-18 
登録番号 1723316 
代理人 弁理士法人コスモ国際特許事務所 

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