ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J1 |
---|---|
管理番号 | 1388450 |
総通号数 | 9 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2022-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-03-17 |
確定日 | 2022-08-08 |
意匠に係る物品 | 検体センサーインサータ |
事件の表示 | 意願2020− 27917「検体センサーインサータ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続の経緯 本願は、2020年12月21日のアメリカ合衆国への出願に基づく優先権の主張を伴う、令和2年(2020年)12月23日の意匠登録出願であって、令和3年(2021年)7月26日付けの拒絶理由の通知に対し、同年10月26日に意見書が提出されたが、同年12月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、令和4年(2022年)3月17日に拒絶査定不服審判の審判請求がなされ、同年4月15日に手続補正書(補正対象書類名:審判請求書)が提出されたものである。 2 本願意匠の願書及び添付図面の記載 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「検体センサーインサータ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が、意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の拒絶理由通知における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当する、というものである。 拒絶理由通知において引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は、以下の意匠であって、その形状等を、同ウェブページに記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。 「著者の氏名 山村 聡 表題 フリースタイルリブレを個人輸入する方法を写真付きで紹介|ebayで購入する際の注意点 掲載箇所 健康のためのアドバイス 媒体のタイプ [online] 掲載年月日 2017年9月30日 検索日 [2021年7月12日検索] 情報の情報源 インターネット 情報のアドレス URL:https://sou3.jp/archives/693 に掲載された生体用センサーアプリケータの当該意匠に該当する部分の意匠」 以下、本審決では、引用意匠において本願部分と対比、判断する部分、すなわち、本願部分に相当する部分を、「引用部分」という。 第2 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は、「検体センサーインサータ」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「生体用センサーアプリケータ」であって一致しないものであるが、いずれも検体センサー等の医療機器を、人体に挿入又は付着するために用いられる器具であって、器具の下側部分を取り外して装着した医療機器を、器具を人体に押しつけることで人体に挿入又は付着することができる機能を有するものであるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、その用途及び機能が共通するものであると認められる。 (2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比 本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)の用途は、いずれも器具の医療機器を装着する部分を覆うカバーとして用いられる器具の略下半分の部分であり、器具を人体に押しつける部分を保護する機能を有する部分であるから、両部分の用途及び機能は一致するものである。 (3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比 両部分は、いずれも器具の下側部分をその大きさ及び範囲とするものであるから、両部分の位置、大きさ及び範囲は一致するものである。 (4)両部分の形状等の対比 両部分の形状等を対比する(以下、対比のため、引用意匠も本願意匠の図面の向きに合わせることとする。)と、その形状等には、主として以下の共通点及び相違点が認められる。 ア 形状等の共通点 (共通点1)両部分は、その上端部分を略扁平ドーム状に形成した略楕円錐台形状の本体の略上半分の部分(以下「本体上部」という。)と、略有底円筒形状の本体の略下半分の部分(以下「本体下部」という。)との境界部分に、略鍔状に突き出ている略円板状の部分(以下「鍔状部」という。)を形成した構成からなる検体センサーインサータ若しくは生体用センサーアプリケータにおける、本体下部の部分の形状等である点が共通する。 (共通点2)両部分は、本体下部の具体的な形状等を、略有底円筒形状としたものであって、その上端部に略短円筒形状の拡径部分を、段差を設けて形成し、その周側面部分に略凹状縦溝部分(以下「縦溝部」という。)を等間隔に複数形成したものである点が共通する。 イ 形状等の相違点 (相違点1)本願部分の鍔状部の具体的な形状等が、本体下部の上端部分に、断面視略逆L字状のフランジを形成し、その底面側の凹んだ部分に略板状体のフィンを等間隔に30個配設したものであるのに対し、引用部分の本体下部には、そのような鍔状部を設けていない点で、両意匠は相違する。 (相違点2)本願部分の縦溝部の長さが、本体下部の略有底円筒形状部分の約85%の部分に形成しているのに対し、引用部分の縦溝部の長さは、該部位の約60%の部分に形成している点で、両意匠は相違する。 (相違点3)本願部分の本体下部の底面部の具体的な形状等が、外周部のやや内側部分に略中空細幅円板状の脚部を形成し、その脚部の内側部分に略円形状の部分が表れているのに対し、引用部分の底面部の具体的な形状等は、不明である点で、両意匠は相違する。 2 両意匠の類否判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、その用途及び機能が共通するものであるから類似する。 (2)両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は、一致するから同一である。 (3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価 両部分の位置、大きさ及び範囲は、物品全体の形態の中における位置、大きさ及び範囲が一致するから、同一である。 (4)両部分の形状等の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、患者等の使用者自らが、検体センサー等の医療機器を人体に挿入又は付着して、例えば血液の成分分析等を行うために使用される医療用の器具であるから、この種物品の需要者は、当該物品を個人で購入し、自ら使用する患者等や、当該物品の使用を患者に勧める医療関係者であるといえる。 そうすると、この種物品を自ら使用する患者等や、この種物品の使用を患者等に勧める医療関係者等の需要者にとってみれば、使用の際に使いやすい工夫を凝らした部分に係る形状等が、需要者の特に注意を惹く部分であるということができる。 したがって、両部分の形状等の類否判断にあたっては、使用者が使いやすいよう工夫を凝らした部分である、使用時には取り外す本体下部に形成された滑り止めの機能を有する縦溝部の形状等が、需要者の特に注意を惹く部分であり、また、この種物品を落下した際等に、内部機構等を保護する目的等で形成された、鍔状部の具体的な形状等も、需要者の注意を惹く部分であるとの前提に基づいて、両意匠の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について、以下評価することとする。 ア 共通点の評価 (共通点1)は本体下部の構成態様に係るものであるが、これらは、両部分の形状等を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから、この(共通点1)が部分意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2)は本体下部の具体的な形状等に係るものであるところ、その形状等を略有底円筒形状とした点は、検体センサー等の医療機器を装着する略円筒形状の部分の形状に合わせて略有底円筒形状に形成したにすぎず、特段特徴のある形状等とはいえないものの、略有底円筒形状部分の上端部に段差を設けて拡径部分を形成した点や、略有底円筒形状部分の周側面部分に、略凹状の縦溝部を等間隔に複数形成した点に一定の特徴が認められるから、この(共通点2)が部分意匠全体の美感に与える影響は一定程度あるといえる。 イ 相違点の評価 (相違点1)の鍔状部の形状等の相違については、この種物品の需要者の注意を惹く部分の形状等であるところ、その凹んだ部分に複数のフィンが配設された幅広な鍔状部を、本体下部に形成することで、この種物品が落下した際に、衝撃を分散し、吸収して本体下部をしっかり保護できるとの印象を与える本願部分の形状等と、鍔状部がないために本体下部は衝撃から保護できないとの印象を与える引用部分の形状等では、この部分を観察する需要者にとってみれば、別異の印象を強く与えるものであるから、この(相違点1)が部分全体の美感に与える影響は大きい。 (相違点2)の縦溝部の長さの相違については、使用時には取り外す本体下部の周側面部分に形成された滑り止めの機能を有する溝部に係るものであって、縦溝部を本体下部の広範囲に形成して、本体下部をしっかり保持できるとの印象を与える本願部分のものと、縦溝部を本体下部の約下半分程度に形成して、本体下部を部分的に保持ができるとの印象を与える引用部分のものとでは、使用時にこの部分を観察する需要者にとってみれば、別異の印象を与えるものであるから、この(相違点2)が部分全体の美感に与える影響は一定程度ある。 (相違点3)の本体下部の底面部の具体的な形状等の相違については、使用時には取り外される本体下部の目に付きにくい部位に係るものであるから、この(相違点3)が部分全体の美感に与える影響は小さい。 ウ 両部分の形状等の類否判断 両部分の形状等における共通点及び相違点についての個別評価に基づき、両部分全体として総合的に観察した場合、両部分は、需要者が注視する鍔状部の形状等の相違点が、部分全体の美感に与える影響が大きく、縦溝部の長さの相違も、部分全体の美感に一定程度影響を与えるのに対し、本体下部の形状等の共通点が、部分全体の美感に与える影響は一定程度のものでしかなく、部分全体の構成態様の共通点が部分全体の美感に与える影響も小さいものであるから、これらの共通点が部分全体の美感に与える影響は、上記相違点が与える影響を覆すには至らず、本願部分の形状等と引用部分の形状等とは類似しないものである。 (5)小括 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が類似するものであり、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲も同一であるが、両部分の形状等において類似しないものであるから、本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。 第3 むすび 上記のとおりであって、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
審決日 | 2022-07-27 |
出願番号 | 2020027917 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(J1)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
上島 靖範 |
特許庁審判官 |
江塚 尚弘 渡邉 久美 |
登録日 | 2022-08-24 |
登録番号 | 1723755 |
代理人 | 伊藤 孝太郎 |
代理人 | 中村 知公 |
代理人 | 本田 彩香 |
代理人 | 朝倉 美知 |
代理人 | 前田 大輔 |
代理人 | 小西 富雅 |