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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1388451 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-03-23 
確定日 2022-09-02 
意匠に係る物品 自動車用ホイール 
事件の表示 意願2020− 22079「自動車用ホイール」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、令和2年(2020年)10月14日の意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年 6月23日付け:拒絶理由の通知
同年 7月14日 :意見書の提出
同年12月23日付け:拒絶査定
令和4年 3月23日 :審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「自動車用ホイール」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2007年10月10日に受け入 れたカー・アンド・ドライバー 2007年11月10日21号
第15頁所載
自動車用ホイールの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HA19014307号)

第4 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、どちらも「自動車用ホイール」であるから一致する。

(2)両意匠の形状等の対比
両意匠の形状等を対比すると、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。(対比のため、引用意匠を本願意匠の図面の向きに合わせることとし、ホイールのアウター側を正面側とし、インナー側を背面側とする。)

ア 両意匠の形状等の共通点
(共通点1)全体は、略短円筒状のリム部の正面内側に、ディスク部を形成したスポークタイプのホイールである点、
(共通点2)リム部は、側面全周がくびれ、リム部の正面外周縁部に、拡開する突縁部からなるリムフランジ部を形成している点、
(共通点3)ディスク部は、中央に背面側をホイール取付け面とした肉厚のハブ部を設け、ハブ部からリムフランジ部に向かって7本の略Y字状のスポーク(以下、「Yスポーク部」という。)を、放射状に等間隔で配設し、隣り合うYスポーク部の間には、正面視略U字状の開口部(以下、「U開口部」という。)が表れ、Yスポーク部とリムフランジ部との間には、正面視略二等辺三角形の開口部が表れ、Yスポーク部の上部V字下端分岐点付近において、背面側方向に曲がっている点、
(共通点4)ハブ部は、中心部に円孔状のハブボア部を一つ配設し、その周囲にホイールナット用の小円孔を等間隔の5つ設けている点において共通する。

イ 両意匠の形状等の相違点
(相違点1)ディスク部の構成について、本願意匠は、Yスポーク部の下部が、ハブ部内側のハブボア部付近で接合しているのに対し、引用意匠は、Yスポーク部の下部が、表面が略椀状のハブ部の外周で接合している点、
(相違点2)Yスポーク部の間のU開口部の態様について、本願意匠は、リムの径に対して約1/9の幅であるのに対し、引用意匠は、リムの径に対して約1/6の幅であり、引用意匠の方が幅広の開口部である点、
(相違点3)Yスポーク部の表面形状について、本願意匠は、Yスポーク部の表面が平坦面で、外周角部には平坦な面取りが施され、上部V字下端分岐点付近で屈曲しているのに対し、引用意匠は、Yスポーク部の表面が丸みを帯びた曲面で、外周角部は隅丸処理が施され、上部V下端分岐点付近で緩やかに曲っている点、
(相違点4)リムフランジ部とYスポーク部の接合について、本願意匠は、リムフランジ部と面一に接合しているに対し、引用意匠は、リムフランジ部の手前で接合し、リムフランジ部との間に段差が形成されている点において相違する。

2 両意匠の類否判断

(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

(2)両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価
ア 共通点について
この種物品分野において、全体を、略短円筒状のリム部の前方側端部の内側にスポークタイプのディスク部を形成したものが、本願の出願前から、ごく普通に見られるので(例えば、意匠登録第1656567号の「Wheel rim」の意匠。参考意匠1、別紙第3参照)、また、リム部前側端部に、僅かな突縁部を持つリムフランジ部を形成することも(例えば、意匠登録第1631090号の「自動車用ホイール」の意匠。参考意匠2、別紙第4参照)、ハブ部の中心部に円孔状のハブボア部を一つ配設し、その周囲にホイールナット用の小円孔を等間隔の5つ設けることも(例えば、参考意匠1、参考意匠2)、ディスク部の中心からリムフランジ部に向かって7本のYスポーク部を、放射状に等間隔で配することも(例えば、参考意匠1、参考意匠2)、Yスポーク部が上部V字下端字分岐点付近において、後方側に曲がる態様も(例えば、意匠登録第1507703号の「自動車用ホイール」の意匠。参考意匠3、別紙第5参照)、両部分にのみ見られる態様とはいえないから、(共通点1)ないし(共通点4)は、いずれも、需要者が特段注意を払うものとはいえず、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

イ 相違点について
(相違点1)ディスク部の構成については、Yスポーク部の下部が、ハブボア部付近で接合しているか、ハブ部の外周で接合しているかの差は、目に付く部位における差異であって、視覚的印象が明らかに相違しており、需要者に異なる美感をもたらしているといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
(相違点2)及び(相違点3)のディスク部の態様の相違については、Yスポーク部の表面が平坦面であるか曲面であるか、外周角部の面取りが平坦面であるか隅丸であるか、Yスポーク部の上部V字下端分岐点付近で屈曲しているか緩やかに曲っているかの相違が、それぞれ本願意匠には角張った印象を与え、引用意匠には柔らかな印象を与えており、U開口部の幅の相違も相まって、需要者に別異な印象を与えるものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
(相違点4)リムフランジ部とYスポーク部の接合については、リムフランジ部との僅かな接合位置の部分的な差ではあるが、目に付く部位における差異であって、段差の有無の違いを形成しており、スポーク表面の視覚的印象に影響するものであるから、両意匠の類否判断に一定の影響を与えるものである。

ウ 両意匠における形状等の類否判断
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、両意匠全体を総合的に観察した場合、(共通点1)ないし(共通点4)は、両意匠の類否判断に与える影響が小さいのに対し、(相違点4)が、両意匠の類否判断に与える影響は一定程度に留まるものの、(相違点1)ないし(相違点3)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものであるから、相違点全体が相まって、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
よって、両意匠全体を総合的に観察した場合、両意匠の形状等は、共通点に比べて、相違点が類否判断に与える影響の方が大きいものであるから、両意匠の形状等は類似しない。

(3)小括
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、形状等においては、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでに至らないものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は共通点を凌駕しており、意匠全体として見た場合、両意匠は、需要者に異なる美感を与えるというべきであるから、本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。

3 むすび
以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲











審決日 2022-08-23 
出願番号 2020022079 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
上島 靖範
登録日 2022-09-07 
登録番号 1724914 
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所 

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