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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K3
管理番号 1388457 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-05-31 
確定日 2022-08-30 
意匠に係る物品 シート止め材の継手 
事件の表示 意願2021−4874「シート止め材の継手」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の主な経緯
本願は、令和3年(2021年)3月10日の意匠登録出願であって、同年8月2日付けの拒絶理由の通知に対し、同年9月27日に意見書が提出されたが、令和4年2月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「シート止め材の継手」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい、本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は、下記のとおりである(別紙第2参照)。

引用意匠
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1125577号
(意匠に係る物品、ビニールハウス用結露回収具)の意匠

第4 当審の判断
1.本願意匠
本願意匠は、上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると、以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「シート止め材の継手」であって、ビニールハウスの骨組へシートを定着させる2つのシート止め材を、端部同士が向き合うようにして接続する継手である。

(2)本願意匠の形状
〔形状A1〕本体の概略の形状は、平面視で横長長方形の平板状である。
〔形状A2〕本体の手前側中央に排水ノズルを設けている。
〔形状A3〕本体の手前側と左右両辺とで、平面視で倒コ字状に溝(以下「コ字状溝」という。)を設けている。
〔形状A4〕本体の左右中央に縦溝を設けている。
〔形状A5〕本体のコ字状溝の内側には、上面に、鉤状の後側押え部、上面の幅(前後方向の長さ)が狭いスライダー部、及び鉤状の前側押え部の平面視で左右に延びる3条を設けている。
〔形状A6〕前側押え部中央に前側ストッパを設けている。
〔形状A7〕スライダー部中央に後側ストッパを設けている。
〔形状A8〕手前側の溝の底面は、正面視で偏平V字状に形成している。
〔形状A9〕スライダー部には、後側ストッパの両側に切欠きを設けている。
〔形状A10〕前側ストッパ部は、前側押え部から後側に向けて斜めに立ち上がる薄板状の起立部と、起立部の上端に設けた四角い当接部とで構成されている。
〔形状A11〕後側ストッパ部は、側面視で、略T字状であって、スライダー部から垂直に立ち上がる垂直部と、垂直部の上端から水平前後方向に延びる水平板部と、水平板部の前端から下向きに突出する突出部とで構成されている。
〔形状A12〕底面視及び背面視で観察される縦溝の、断面形状がU字状である。
〔形状A13〕本体の全幅を100としたときのU字状縦溝の高さが約19、横幅が約18である。

2.引用意匠
(1)意匠に係る物品
引用意匠の意匠に係る物品は「ビニールハウス用結露回収具」であって、ビニールハウスのシート内面に結露した結露水をビニールハウス外に回収する継手を兼ねた結露回収具であり、本体の上側に設けたシート止め材挿入用の差込溝を備えているものである。

(2)引用意匠の形状
〔形状B1〕本体の概略の形状は、平面視で横長長方形の平板状である。
〔形状B2〕本体の手前側中央に排水ノズルを設けている。
〔形状B3〕本体の手前側と左右両辺とで、平面視で倒コ字状に溝(以下「コ字状溝」という。)を設けている。
〔形状B4〕本体の左右中央に縦溝を設けている。
〔形状B5〕本体のコ字状溝の内側には、上面に、鉤状の後側押え部、上面の幅(前後方向の長さ)が広いスライダー部、及び鉤状の前側押え部の平面視で左右に延びる3条を設けている。
〔形状B6〕前側押え部中央に前側ストッパを設けている。
〔形状B7〕スライダー部中央に後側ストッパを設けている。
〔形状B8〕手前側の溝の底面は、正面視で偏平V字状に形成している。
〔形状B9〕スライダー部には、後側ストッパの手前まで長溝を設けている。
〔形状B10〕前側ストッパ部は、前側押え部の上端内側に、側面視で倒立水滴型のものを設けている。
〔形状B11〕後側ストッパ部は、スライダー部の上面に、側面視で角丸の倒立直角台形状のものを設けている。
〔形状B12〕底面視及び背面視で観察される縦溝の、断面形状がU字状である。
〔形状B13〕本体の全幅を100としたときのU字状縦溝の高さが約11、横幅が約11である。

3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は「シート止め材の継手」であり、引用意匠に係る物品は「ビニールハウス用結露回収具」である。

(2)両意匠の形状の対比
両意匠の形状を対比すると、以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
〔共通点1〕本体の概略の形状は、平面視で横長長方形の平板状である。(形状A1とB1)
〔共通点2〕本体の手前側中央に排水ノズルを設けている。(形状A2とB2)
〔共通点3〕本体の手前側と左右両辺とで、コ字状溝を設けている。(形状A3とB3)
〔共通点4〕本体の左右中央に縦溝を設けている。(形状A4とB4)
〔共通点5〕本体のコ字状溝の内側には、上面に、平面視で左右に延びる3条の、鉤状の後側押え部、スライダー部、及び鉤状の前側押え部を設けている。(形状A5とB5)
〔共通点6〕前側押え部中央に前側ストッパを設けている。(形状A6とB6)
〔共通点7〕スライダー部中央に後側ストッパを設けている。(形状A7とB7)
〔共通点8〕手前側の溝の底面は、正面視で偏平V字状に形成している。(形状A8とB8)
〔共通点9〕底面視及び背面視で観察される縦溝の、断面形状がU字状である。(形状A12とB12)

イ.相違点について
〔相違点1〕スライダー部上面の幅(前後方向の長さ)につき、本願意匠は、幅が狭いのに対して、引用意匠は、幅が広い。(形状A5とB5)
〔相違点2〕スライダー部の形状につき、本願意匠は、後側ストッパの両側に切欠きを設けているのに対して、引用意匠は、後側ストッパの手前まで長溝を設けている。(形状A9とB9)
〔相違点3〕前側ストッパ部の設置場所及び形状につき、本願意匠は、前側押え部から後側に向けて斜めに立ち上がる薄板状の起立部と、起立部の上端に設けた四角い当接部とで構成されているのに対して、引用意匠は、前側押え部の上端内側に、側面視で倒立水滴型のものを設けている。(形状A10とB10)
〔相違点4〕後側ストッパ部の形状につき、本願意匠は、側面視で、略T字状であって、スライダー部から垂直に立ち上がる垂直部と、垂直部の上端から水平前後方向に延びる水平板部と、水平板部の前端から下向きに突出する突出部とで構成されているのに対して、引用意匠は、スライダー部の上面に、側面視で角丸の倒立直角台形状のものを設けている。(形状A11とB11)
〔相違点5〕本体の全幅を100としたときの、底面視及び背面視で観察されるU字状縦溝の高さ及び横幅につき、本願意匠は、高さが約19、横幅が約18であるのに対して、引用意匠は、高さが約11、横幅が約11である。(形状A13とB13)

4.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
本願意匠に係る物品は「シート止め材の継手」であって、ビニールハウスに用いるシートを止めるシート止め材を接続する継手である。そして、本体の手前側中央に排水ノズルを設けている(形状A2)ことから、シートに結露した水を外に排出する機能があると推認できる。
対して、引用意匠に係る物品は「ビニールハウス用結露回収具」であって、シート止め材挿入用の差込溝を備えた継手を兼ねた結露回収具である。
そうすると、本願意匠と引用意匠は共に、結露した水を排出する機能を持った、シート止め材の継手と認められるから、両意匠の意匠に係る物品は共通する(以下、共に「シート止め材の継手」という。)。

(2)両意匠における形状の評価
ア.共通点について
共通点1ないし9によって、一定程度の共通感を生み出している。
しかし、共通点1については、継手というものは、おおむね継手方向に長くするものであるから、機能的必然性によるものと認められ、両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。
共通点2ないし4については、シートの結露水と、2つのシート止め材の隙間から落ちる水を受けて外部に排出させるためには必要なものであるから、機能的必然性によるものといえ、両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。加えて、共通点4については、相違点5の相違を内包するものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は、小さい。
共通点5については、シート止め材を押えてシート止め材の脱落を防止するために鉤状に形成しているものであるから、後側押え部と前側押え部を鉤状とすることは、機能的必然性によるものと認められ、両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。そして、スライダー部については、相違点1の相違を内包するものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は、小さい。
共通点6については、具体的には相違点3の相違を内包するものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は、小さい。
共通点7については、具体的には相違点4の相違を内包するものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は、小さい。
共通点8については、各溝に回収された水が、本体の手前側中央に設けた排水ノズルへ流れるようにしたものであるから、機能的必然性によるものといえ、両意匠の類否判断に与える影響は限定的である。
共通点9については、具体的には相違点5の相違を内包するものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は、小さい。

イ.相違点について
相違点1については、継手作業中には目に付き易い本体上面における相違であるから、相違点2と相まって、両意匠に別異の印象を生じさせているといえ、両意匠の類否判断に与える影響は、大きいといえる。
相違点3及び相違点4については、継手作業中には、シート止め材をどこまで差し込むのかという観点で、注目する部分の相違であるから、両意匠に別異の印象を生じさせているといえ、両意匠の類否判断に与える影響は、大きいといえる。
相違点5については、縦溝の高さ(深さ)及び横幅が2倍近く異なるという相違であって、ビニールハウスに設置した状態では、目に付きにくい底面側の相違であるが、需要者が購入する際には、手に取って見える部分であり、この相違によって、排水能力の違いを評価できる相違であるから、需要者にとって関心のある相違と推認でき、よって、両意匠に別異の印象を生じさせていると認められ、両意匠の類否判断に与える影響は大きいといえる。

(3)両意匠における形状の類否判断
以上のとおり、共通点は、両意匠の類否判断に与える影響が、限定的または小さいものであり、この共通点によっては、両意匠の類否判断を決するものといえないのに対して、相違点1ないし5によって、需要者に別異の印象を起こさせるものであるから、両意匠の類否判断を決するものといえる。
そうすると、本願意匠の形状と引用意匠の形状は、類似するとは認められない。

(4)両意匠における類否判断
よって、両意匠は、意匠に係る物品は共通するが、上記のとおり本願意匠と引用意匠の形状は類似するものではないから、本願意匠と引用意匠は類似するとはいえない。

5.結び
したがって、本願意匠は、引用意匠に類似せず、原査定の引用意匠をもって、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできず、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審が更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲






審決日 2022-08-16 
出願番号 2021004874 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2022-09-05 
登録番号 1724583 
代理人 石川 憲 

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