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審決分類 |
審判 査定不服 意9条先願 取り消して登録 J7 |
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管理番号 | 1389459 |
総通号数 | 10 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2022-10-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-04-12 |
確定日 | 2022-08-22 |
意匠に係る物品 | 脛骨用骨プレート |
事件の表示 | 意願2020−24712「脛骨用骨プレート」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の主な経緯 本願は、意匠法第14条第1項の規定により、3年間秘密にすることを請求する、令和2年(2020年)11月17日の意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。 令和 3年 7月 6日付け :拒絶理由の通知 10月28日 :意見書の提出 令和 4年 1月11日付け :拒絶査定 4月12日 :審判請求書の提出 6月24日 :ファクシミリの提出 第2 本願意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「脛骨用骨プレート」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、「各図において、赤色で着色した部分以外の部分が、意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠は意匠法第9条第1項に規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとしたもので、引用した意匠(以下「引用意匠」といい、本願意匠と併せて「両意匠」ともいう。)は、意匠登録第1690636号の意匠(出願番号 意願2020−013208 令和2年6月30日出願)である(別紙第2参照)。 第4 当審の判断 1.本願意匠 本願意匠は、上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると以下のとおりである。 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「脛骨用骨プレート」である。 (2)本願部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能 本願意匠に係る物品のうち、意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は、脛骨用骨プレートに設けた8つのネジ穴の内周面部分を除いた部分である。 本願部分は、脛骨用骨プレートに設けた8つのネジ穴の内周面部分を除いた部分の位置、大きさ及び範囲であって、脛骨を接合する用途及び機能を有するものである。 (3)本願部分の形状 本願部分の形状の認定に当たっては、使用状態での方向(右脚の脛骨に装着したときの方向)で認定する。すなわち、正面図において、右側が「上」、左側が「下」、上側が「人体の前側」(つま先側。以下、単に「前」または「前側」という。)、下側が「人体の後側」(かかと側。以下、単に「後」または「後側」という。)、右側面図において、右側が「骨側」、左側が「人体の内側」(以下、単に「内側」という。) 〔形状A1〕本願部分は、薄板状のものである。 〔形状A2〕本願部分は、水平前後方向に延びる幅広の上端部、垂直下方向に延びる幅狭の帯状部、そして、前後幅を変化させて上端部と帯状部を結ぶ接続部から成る。 〔形状A3〕本願部分の前辺と後辺は後側に湾曲し、上端部は、帯状部に対して後側にずらして配置している。 〔形状A4〕本願部分は、上端部に向かって内側に僅かに湾曲しつつ、上端部においては前から後ろに向かって骨側に湾曲している。 〔形状A5〕本願部分は、上端部に前後に並ぶ3つのネジ穴を設け、接続部に1つのネジ穴を設けて、かつ、帯状部には上下に4つのネジ穴を設けている。 〔形状A6〕本願部分の全長(全体の縦長さ)を100とした場合の、各部の寸法比率は、(a)帯状部の長さが約60、(b)接続部の長さが約27、(c)上端部の縦長さが約13、(d)帯状部の幅が約13、(e)上端部の幅(前後長さ)が約30、(f)全体のおおむねの厚さが約3、(g)上端部の前端部分の厚さが約5である。 〔形状A7〕前辺の端面形状につき、骨側面はとても緩やかに内側に湾曲し、内側面はそれよりもやや大きな曲率で内側に湾曲しているから、上端部と接続部の接点で厚さが厚くなり(上記〔形状A6〕の(g)の認定どおり。)、その後、同じ程度に骨側に湾曲している。 〔形状A8〕後辺の端面形状につき、内側面と骨側面は、一定の間隔を開けて(一定の厚みで)緩やかに内側に湾曲し、上端部と接続部の接点で同じ程度に骨側に湾曲している。 〔形状A9〕帯状部は、直線状である。 〔形状A10〕上端部の上辺は、上端部に設けた前後に並ぶ3つのネジ穴に合わせて3山の波形となっている。 〔形状A11〕帯状部の下端は、先端を円弧にしたV字状である。 2.引用意匠 引用意匠は、その記載の内容によると、左脚用のものと認められるところ、本願意匠に合わせて、使用状態での方向で認定する。 (1)意匠に係る物品 引用意匠の意匠に係る物品は「骨プレート」であって、願書の「意匠に係る物品の説明」の欄の記載内容によると、骨折した大腿骨や脛骨を含む長骨の一部をスクリュによって固定する帯板状の骨プレートである。 (2)引用部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能 引用意匠中、本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい、本願部分と併せて「両部分」ともいう。)は、骨プレートに設けた8つのネジ穴の内周面部分を除いた部分である。 引用部分は、骨プレートに設けた8つのネジ穴の内周面部分を除いた部分の位置、大きさ及び範囲であって、脛骨を含む長骨を固定する用途及び機能を有するものである。 (3)引用部分の形状 〔形状B1〕引用部分は、薄板状のものである。 〔形状B2〕引用部分は、水平前後方向に延びる幅広の上端部、垂直下方向に延びる幅狭の帯状部、そして、前後幅を変化させて上端部と帯状部を結ぶ接続部から成る。 〔形状B3〕引用部分の前辺と後辺は後側に湾曲し、上端部は、帯状部に対して後側にずらして配置している。 〔形状B4〕引用部分は、上端部に向かって内側に湾曲しつつ、上端部においては前から後ろに向かって骨側に湾曲している。 〔形状B5〕引用部分は、上端部に前後に並ぶ3つのネジ穴を設け、接続部に1つのネジ穴を設けて、かつ、帯状部には上下に4つのネジ穴を設けている。 〔形状B6〕引用部分の全長(全体の縦長さ)を100とした場合の、各部の寸法比率は、(a)帯状部の長さが約78、(b)接続部の長さが約10、(c)上端部の縦長さが約12、(d)帯状部の幅が約11、(e)上端部の幅(前後長さ)が約30、(f)全体の厚さが約4、(g)上端部の前端部分の厚さも変わらず、約4である。 〔形状B7〕前辺の端面形状につき、内側面と骨側面は、一定の間隔を開けて(一定の厚みで)内側に湾曲し、接続部の位置で同じ程度に骨側に湾曲している。 〔形状B8〕後辺の端面形状につき、内側面と骨側面は、一定の間隔を開けて(一定の厚みで)内側に湾曲し、接続部の位置で同じ程度に骨側に湾曲している。 〔形状B9〕帯状部は下端から約3分の2の位置で、後側に屈曲している。 〔形状B10〕上端部の上辺は、直線状である。 〔形状B11〕帯状部の下端は、先端を円弧にしたV字状である。 3.両意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠に係る物品は「脛骨用骨プレート」であり、引用意匠に係る物品は「骨プレート」である。 (2)両部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能の対比 本願部分は、脛骨用骨プレートに設けた8つのネジ穴の内周面部分を除いた部分であるのに対して、引用部分は、骨プレートに設けた8つのネジ穴の内周面部分を除いた部分である。 本願部分は、脛骨用骨プレートに設けた8つのネジ穴の内周面部分を除いた部分の位置、大きさ及び範囲であるのに対して、引用部分は、骨プレートに設けた8つのネジ穴の内周面部分を除いた部分の位置、大きさ及び範囲である。 そして、本願部分は、脛骨を接合する用途及び機能を有するものであるのに対して、引用部分は、脛骨を含む長骨を固定する用途及び機能を有するものである。 (3)両部分の形状の対比 両部分の形状を対比すると、以下に示す主な共通点と相違点が認められる。 ア.共通点について 〔共通点1〕両部分共に、薄板状のものである。(形状A1とB1) 〔共通点2〕両部分共に、水平前後方向に延びる幅広の上端部、垂直下方向に延びる幅狭の帯状部、そして、前後幅を変化させて上端部と帯状部を結ぶ接続部から成る。(形状A2とB2) 〔共通点3〕両部分共に、前辺と後辺は後側に湾曲し、上端部は、帯状部に対して後側にずらして配置している。(形状A3とB3) 〔共通点4〕両部分共に、上端部に向かって内側に僅かに湾曲しつつ、上端部においては前から後ろに向かって骨側に湾曲している。(形状A4とB4) 〔共通点5〕両部分共に、上端部に前後に並ぶ3つのネジ穴を設け、接続部に1つのネジ穴を設けて、かつ、帯状部には上下に4つのネジ穴を設けている。(形状A5とB5) 〔共通点6〕両部分共に、全長(全体の縦長さ)を100とした場合の、上端部の幅(前後長さ)が約30である。(形状A6(e)とB6(e)) 〔共通点7〕両部分共に、後辺の端面形状は、内側面と骨側面は、一定の間隔を開けて(一定の厚みで)内側に湾曲し、上端部と接続部の接点で同じ程度に骨側に湾曲している。(形状A8とB8) 〔共通点8〕両部分共に、帯状部の下端は、先端を円弧にしたV字状である。(形状A11とB11) イ.相違点について 〔相違点1〕全長(全体の縦長さ)を100とした場合の、各部の寸法比率につき、本願部分は、帯状部の長さが約60、接続部の長さが約27、上端部の縦長さが約13、帯状部の幅が約13、全体のおおむねの厚さが約3、上端部の前端部分の厚さが約5であるのに対して、引用部分は、帯状部の長さが約78、接続部の長さが約10、上端部の縦長さが約12、帯状部の幅が約11、上端部の幅(前後長さ)が約30、全体の厚さが約4、上端部の前端部分の厚さも変わらず、約4である。(形状A6(ただし(e)を除く。)とB6(ただし(e)を除く。)) 〔相違点2〕前辺の端面形状につき、本願部分は、骨側面はとても緩やかに内側に湾曲し、内側面はそれよりもやや大きな曲率で内側に湾曲しているから、上端部と接続部の接点で厚さが厚くなり、その後、同じ程度に骨側に湾曲しているのに対して、引用部分は、内側面と骨側面は、一定の間隔を開けて(一定の厚みで)内側に湾曲し、接続部の位置で同じ程度に骨側に湾曲している。(形状A7とB7) 〔相違点3〕帯状部の形状につき、本願部分は、直線状であるのに対して、引用部分は、下端から約3分の2の位置で後側に屈曲している。(形状A9とB9) 〔相違点4〕上端部の上辺の形状につき、本願部分は、上端部に設けた前後に並ぶ3つのネジ穴に合わせて3山の波形となっているのに対して、引用部分は、直線状である。(形状A10とB10) 4.判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 本願意匠に係る物品が「脛骨用骨プレート」であるところ、引用意匠に係る物品は「骨プレート」であって、表記は異なるが、引用意匠の骨プレートは、大腿骨や脛骨を含む長骨の一部をスクリュによって固定する骨プレートであるから、本願意匠に係る物品と共通するものである(以下、共に「脛骨用骨プレート」という。)。 (2)両部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能の評価 両部分共に、脛骨用骨プレートに設けた8つのネジ穴の内周面部分を除いた部分であるから、一致している。 両部分共に、脛骨用骨プレートに設けた8つのネジ穴の内周面部分を除いた部分の位置、大きさ及び範囲であるから、一致している。 本願部分は、脛骨を接合する用途及び機能を有するものであるのに対して、引用部分は、脛骨を含む長骨を固定する用途及び機能を有するものであるから、共通している。 (3)両部分における形状の評価 ア.共通点について 共通点1ないし8によって、一見すると両部分に一定程度の共通感を生み出してはいるが、これらの共通点は、相違点1ないし4の相違を内包するものであるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 イ.相違点について 相違点1によって、本願部分は、接続部が長く、広がり角度が小さくて徐々に前後幅が広がっており、帯状部以外の部位(上端部と接続部を合わせた部位)が大きく目立つのに対して、引用部分は、接続部が短く、広がり角度が大きくて急に前後幅が広がっているものであって、帯状部以外の部位が小さく目立たないことから、両意匠に別の印象を生じさせているといえ、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 また、相違点1は、相違点3と相まって、本願部分には、直線状の短い帯状部という印象を持ち、対する引用部分には、下端から約3分の2の位置で後側に屈曲した長い帯状部という異なった印象を持つものであるから、両意匠に別の印象を生じさせているといえ、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 相違点2については、この種物品分野においては、従来、平板材を切断した上で、曲げたりねじったりして成形していたものであるところ、引用部分は、全体が一定の厚みであることから従来の製造方法で成形したものと捉えることができるのに対して、本願部分は、上端部と接続部の接点で厚さが厚くなり従来の製造方法では成形できない形状をもたらしている点で需要者に新規な形状と感じさせるものであり、僅かな部位での相違とはいえ、両意匠に別の印象を生じさせているといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 相違点4については、端部における僅かな部位の相違であるから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 (4)小括 そうすると、両部分の形状については、その共通点及び相違点の評価に基づくと、上記のとおり、共通点は、類否判断に及ぼす影響が小さいものであるのに対して、相違点によって類否判断に及ぼす影響は大きいものといえるものであり、両部分の形状は、類似するとは認められないものである。 (5)両意匠における類否判断 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、両部分の位置、大きさ及び範囲が一致し、両部分の用途及び機能が共通している。 しかし、上記のとおり、両部分の形状は、類似するとは認められないものである。 よって、本願意匠と引用意匠とは類似するとはいえない。 5.結び 以上のとおりであって、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第9条第1項に掲げる意匠に該当しないものであるから、原査定における拒絶の理由によって、本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審が更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2022-08-09 |
出願番号 | 2020024712 |
審決分類 |
D
1
8・
4-
WY
(J7)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
刈間 宏信 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 正田 毅 |
登録日 | 2022-09-13 |
登録番号 | 1725454 |
代理人 | 鈴木 博子 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 鈴木 博子 |
代理人 | 山本 泰史 |
代理人 | 山本 泰史 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 倉澤 伊知郎 |
代理人 | ▲吉▼田 和彦 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | ▲吉▼田 和彦 |
代理人 | 渡邊 徹 |
代理人 | 須田 洋之 |
代理人 | 渡邊 徹 |
代理人 | 倉澤 伊知郎 |