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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7
管理番号 1390624 
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-03-09 
確定日 2022-10-04 
意匠に係る物品 血栓回収デバイス 
事件の表示 意願2020−27634「血栓回収デバイス」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の主な経緯
本願は、2020年6月23日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う、令和2年(2020年)12月22日の意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和 2年12月24日付け :拒絶理由の通知
令和 3年 1月 7日 :優先権証明書提出書の提出
3月30日 :意見書の提出
3月30日 :手続補正書の提出
4月 6日付け :手続補正指令
5月13日 :手続補正書の提出
5月26日付け :拒絶理由の通知
9月 1日 :期間延長請求書の提出
10月27日 :手続補正書の提出
10月27日 :意見書の提出
12月 8日付け :拒絶査定
令和 4年 3月 9日 :審判請求書の提出
3月 9日 :手続補正書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「血栓回収デバイス」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり「実線で示した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由(令和3年5月26日付けの拒絶理由通知書によるもの。)は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって、拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は、下記のとおりである。

引用意匠
特許庁発行の公開特許公報記載
特表2019−526365
【図1a】、【図1b】に表された血塊回収装置1のうち、本願意匠に該当する部分の意匠

なお、令和3年5月26日付けの拒絶理由通知書には、「特開2019−526365」と記載されていたが、この点につき、本件審判請求人(本願の出願人と同じ。以下、単に「請求人」という。)は、この誤記を了承の上、正しく認定して、意見書にて意見を述べ、審判請求書にて請求理由を主張しているから、このまま継続して審理するものとする。

第4 本意匠
(1)本意匠の主な経緯
ア.請求人は、審判の請求と同日の令和4年3月9日に手続補正書を提出し、願書の本意匠の表示を追加して、本願意匠を、意願2021−22587を本意匠とする関連意匠にした。

イ.本願意匠の本意匠に係る意願2021−22587は、原審において引用した引用意匠が記載された、請求人が出願人である特表2019−526365(特願2019−512828)が、令和3年10月5日に分割出願(特願2021−163950)され、その後、令和3年10月18日に意匠登録出願へ出願変更(意願2021−22587)されたものである。

ウ.意願2021−22587は、その後、令和4年8月5日に設定登録(意匠登録第1722488号、意匠権者:ニューラヴィ・リミテッド)がなされた。

(2)本意匠
本意匠は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「血塊回収装置」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり「実線で示した部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第2参照)。

第5 当審の判断
1.対比すべき意匠(本意匠)
上記「第4(1)」のとおりであるから、本願意匠は、令和4年3月9日の手続補正書の提出によって、意願2021−22587(意匠登録第1722488号)を本意匠とする関連意匠として出願されたことになり、本願意匠が、意匠法第10条第1項の規定に基づいて、関連意匠として意匠登録できると認められた場合は、本意匠となる意匠(意匠登録第1722488号)である上記「第3」の引用意匠は、意匠法第10条第2項の規定によって、意匠法第3条第1項第1号又は第2号に該当するに至らなかったものとみなされ、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできなくなり、上記「第3」の意匠によっては本願を拒絶すべきものとすることはできない。
よって、本願意匠が、意願2021−22587(意匠登録第1722488号)を本意匠として意匠法第10条第1項の規定に基づいて、関連意匠として意匠登録できるか検討する。
すなわち、本意匠(意匠登録第1722488号)に類似する意匠か否かについて検討する。

2.本願意匠
本願意匠は、上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると、以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「血栓回収デバイス」であって、脳梗塞に対する血栓回収療法において使用されるものであり、患部で展開して血栓に絡んでこれを捕捉し、血栓とともに体内から回収する方法で血栓を除去し、脳血管内の血流を回復させるものである。

(2)本願部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能
本願意匠に係る物品のうち、意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は、中心のステント部分を除いた長手方向に延びる網状部分である。
本願部分は、中央のステント部分を覆うように、ステント部分の外側に位置する、血栓回収デバイスにおける網状部分という大きさ及び範囲であって、血管内で血塊を絡めて係合させるという用途及び機能を有するものである。

(3)本願部分の形状
〔形状A1〕長手方向に延びる円筒状であって、長手方向に接続した5つのセグメントから成る、ワイヤで構成された網状である点。
〔形状A2〕先端側の網目の形状が、正面視及び平面視で、丸みを帯びた六角形状及び四角形状である点。
〔形状A3〕網状部を構成するワイヤの断面形状が四角形である点。
〔形状A4〕各セグメントのワイヤに幅広部分を設けている点。

3.本意匠
本意匠は、上記「第4(2)」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると、以下のとおりである。

(1)意匠に係る物品
本意匠の意匠に係る物品は「血塊回収装置」であって、脳梗塞に対する血栓回収療法において使用されるものであり、患部で展開して血栓に絡んでこれを捕捉し、血栓とともに体内から回収する方法で血栓を除去し、脳血管内の血流を回復させるものである。

(2)本意匠部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能
本意匠は、血塊回収装置の部分についての意匠であり、本意匠に係る物品のうち、意匠登録を受けようとする部分(以下「本意匠部分」といい、本願部分と併せて「両部分」という。)は、中心のステント部分を除いた長手方向に延びる網状部分である。
本意匠部分は、中央のステント部分を覆うように、ステント部分の外側に位置する、血塊回収装置における網状部分という大きさ及び範囲であって、血管内で血塊を絡めて係合させるという用途及び機能を有するものである。

(3)本意匠部分の形状
〔形状B1〕長手方向に延びる円筒状であって、長手方向に接続した5つのセグメントから成る、ワイヤで構成された網状である点。
〔形状B2〕先端側の網目の形状が、正面視及び平面視で、一部が細長いひし形及び三角形であり、ひし形の網目は先端まで到達するものである点。
〔形状B3〕単一の太い線で表されているため、網状部を構成するワイヤの断面形状が不明である点。
〔形状B4〕幅広部分を有するか否かが不明な点。

4.本願意匠と本意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品は「血栓回収デバイス」であり、本意匠に係る物品は「血塊回収装置」である。

(2)両部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能の対比
本願部分は、血栓回収デバイスの、中心のステント部分を除いた長手方向に延びる網状部分であるのに対して、本意匠部分は、血塊回収装置の、それである。
本願部分は、血栓回収デバイスの、中央のステント部分を覆うように、ステント部分の外側に位置する、血栓回収デバイスにおける網状部分という大きさ及び範囲であるのに対して、本意匠部分は、血塊回収装置の、それである。
そして、両部分は、いずれも血管内で血塊を絡めて係合させるという用途及び機能を有するものである。

(3)両部分の形態の対比
両部分の形態を対比すると、以下に示す主な共通点と相違点が認められる。
ア.共通点について
長手方向に延びる円筒状であって、長手方向に接続した5つのセグメントから成る、ワイヤで構成された網状である点。(形状A1とB1)

イ.相違点について
〔相違点1〕正面視及び平面視における先端側の網目の形状につき、本願部分は、丸みを帯びた六角形状及び四角形状であるのに対して、本意匠部分は、一部が細長いひし形及び三角形であり、ひし形の網目は先端まで到達するものである点。(形状A2とB2)
〔相違点2〕網状部を構成するワイヤの断面形状につき、本願部分は、四角形であるのに対して、本意匠部分は、不明である点。(形状A3とB3)
〔相違点3〕ワイヤの幅広部分につき、本願部分は、各セグメントに設けているのに対して、本意匠部分は、設けているか否かが不明な点。(形状A4とB4)

5.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
本願意匠に係る物品は「血栓回収デバイス」であり、本意匠に係る物品は「血塊回収装置」であって、表記は異なるが、共に脳梗塞に対する血栓回収療法において使用されるものであって、患部で展開して血栓に絡んでこれを捕捉し、血栓とともに体内から回収する方法で血栓を除去し、脳血管内の血流を回復させるものであるから、本願意匠に係る物品と本意匠に係る物品は、共通する(以下、共に「血栓回収デバイス」という。)。

(2)両部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能の評価
両部分共に、血栓回収デバイスの、中心のステント部分を除いた長手方向に延びる網状部分であるから、一致している。
両部分共に、血栓回収デバイスの、中央のステント部分を覆うように、ステント部分の外側に位置する、血栓回収デバイスにおける網状部分という大きさ及び範囲であるから、一致している。
両部分共に、血管内で血塊を絡めて係合させるという用途及び機能を有するものであるから、一致している。

(3)両部分における形状の評価
ア.共通点について
長手方向に延びる円筒状であって、長手方向に接続した5つのセグメントから成る、ワイヤで構成された網状である点は、両部分の骨格を構成し、共通の印象を強く与えるものと認められ、両部分の類否判断に与える影響は大きい。

イ.相違点について
相違点1ないし3は、どれも部分的な相違にすぎないものであって、相違点1ないし3が相まって生じる効果を考慮したとしても、両部分の全体観察においては両部分に別異の美感を起こさせるほどのものではないと認められ、両部分の類否判断に与える影響は、小さい。

(4)小括
そうすると、両部分の形状については、その共通点及び相違点の評価に基づくと、上記のとおり、共通点は、類否判断に及ぼす影響が大きいものであるのに対して、相違点1ないし3は、類否判断に及ぼす影響は小さいものといえるものであり、両部分の形状は、類似すると認められる。

(5)本願意匠と本意匠における類否判断
以上のとおり、本願意匠と本意匠は、意匠に係る物品が共通し、両部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能が一致している。
そして、上記(4)のとおり、両部分の形状は、類似すると認められるものである。
よって、本願意匠は、本意匠と類似する。
また、本願は、その他、意匠法第10条第1項の要件を充足していると認められる。

第6 結び
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第10条第1項に規定する関連意匠に該当するものとなり、原審の拒絶理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできないものである。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲




審決日 2022-09-20 
出願番号 2020027634 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2022-10-28 
登録番号 1729379 
代理人 永田 豊 
代理人 押野 宏 
代理人 加藤 公延 
代理人 大島 孝文 

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