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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 H1 |
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管理番号 | 1390630 |
総通号数 | 11 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2022-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-06-07 |
確定日 | 2022-10-25 |
意匠に係る物品 | ヒューズ |
事件の表示 | 意願2021− 880「ヒューズ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和3年(2021年)1月18日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 令和 3年(2021年)10月25日付け 拒絶理由通知 同年 12月 1日 意見書の提出 令和 4年(2022年) 3月 3日付け 拒絶査定 同年 6月 7日 審判請求書の提出 同年 6月 8日 手続補足書の提出 第2 本願意匠 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、意匠に係る物品を「ヒューズ」とし、その形状等(形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合)は、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりであって、意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表された部分が、部分意匠として登録を受けようとする部分である。」としたものである。(別紙第1参照) 第3 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下、「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」を「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法3条2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。 「(中略)本願意匠の意匠登録を受けようとする部分は、略長方形板状であって、四方に半円形状の切欠きを有する基台部、当該基台部より一回り小さく、短辺側及び長辺側において、基台部との間に段状の隙間を有する筺体部、及び、基台部底面に設けられ、短辺側は略長方形状、長辺側は略横長「T」字状であって、基台部と同じ位置に半円形状の切欠きを有する電極から構成されるものですが、ヒューズの分野において、略長方形板状であって、四方に半円形状の切欠きを有する基台部、当該基台部より一回り小さく、短辺側及び長辺側において、基台部との間に段状の隙間を有する筺体部、及び、基台部底面に設けられた電極から構成されるものが、本願出願前から公然知られています(下記の意匠1)。 また、この物品分野において、基台部底面に設けられた電極の形状を、短辺側は略長方形状、長辺側は略横長「T」字状とし、いずれも半円形状の切欠きを有する形状としたものが、本願出願前より公然知られています(下記の意匠2)。 この物品分野において、電極の形状を、種々の形状に置き換えることは、本願出願前よりごく一般的に行われています。 そうすると、本願出願前に公知となった意匠1の電極の形状を、本願出願前に公知となった意匠2の電極の形状に置き換えたにすぎない本願の意匠は、当業者であれば、容易に創作することができたものです。 (意匠1) 掲載者 The SCHOTT Company 表題 Lithium Ion Battery Protectors 媒体のタイプ [online] 掲載年月日 2020年10月24日(注1) 検索日 2021年10月18日検索 情報の情報源 インターネット 情報のアドレス https://www.schott.com/products/lithium-ion-battery-protectors/product-variants に掲載された「ヒューズ」の意匠 (注1)上記掲載年月日は、上記記事が、2020年10月24日にインターネットに掲載され、閲覧可能となっていたことが、第三者機関であるインターネットアーカイブ(Internet Archive)が運営するウェイバックマシンによって記録されていることに基づきます。(下記の資料2/4参照) (意匠2) 掲載者 デクセリアルズ株式会社 表題 SCPとは−リチウムイオンバッテリーを過 充電・過電流などの異常から保護する二次保 護素子の基礎知識 媒体のタイプ [online] 掲載年月日 2020年10月12日 検索日 2021年10月18日検索 情報の情報源 インターネット 情報のアドレス https://techtimes.dexerials.jp/electronics/lithium-ion-battery-and-scp/ に掲載された「ヒューズ」の意匠」 第4 当審の判断 以下、本願意匠の意匠法3条2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。 なお、本願の願書に添付された図面において、「斜視図1」、「正面図」、「背面図」、「右側面図」、「左側面図」、「平面図」及び「底面図」に表された意匠と、「斜視図2」に表された意匠とを対比すると、破線で表現された部分の位置が異なるが、本願の願書に添付された図面を総合的に判断して、「斜視図2」における破線での表現が誤記であると判断し、「斜視図1」、「正面図」、「背面図」、「右側面図」、「左側面図」、「平面図」及び「底面図」の記載から、本願意匠は、筐体上面の平面視左上及び右下に位置する破線で表された部分を除いた部分を、意匠登録を受けようとする部分と認定する。 1 本願意匠 (1)意匠に係る物品 本願の意匠に係る物品は、電子機器等の過充電や過電流を遮断するための「ヒューズ」である。 (2)本願部分の位置、大きさ及び範囲 本願部分は、電極部を備える基台及び筺体に係るもので、筐体上面の平面視左上及び右下に位置する破線で表された部分を除いた範囲を、意匠登録を受けようとする部分としたものである。 (3)本願部分の形状等 ア 全体 本願部分は、全体を、略長方形板状で四方に略半円形状の切欠きを有する基台部、当該基台部より一回り小さく、基台部との間に隙間を設けた平面視左上及び右下に位置する破線で表された部分を除く筺体部、及び、基台部底面に四箇所に配された電極部から構成されている。 イ 基台部 基台部は、平面視において両短辺のやや下側の箇所に二つ、両長辺中央部に二つの計四箇所に、同径の切欠きを設けたものであり、短辺全長に対する切欠きの半径の長さの比率を略1:0.08とし、長辺と短辺と幅の厚みの比率を、略12:7.2:1としている。 ウ 筐体部 筐体部は、略長方形板状を基調とし、上部の長辺に沿って面取り状の大きな傾斜面を備え、平面視において左上角部及び右下角部の二箇所に段差部を有し、基台部の長辺に対する筐体部の長辺の比率を、略1:0.94とし、基台部の短辺に対する筐体部の短辺の比率を略1:0.88としている。 エ 基台部と筐体部との関係 基台部と筐体部との間には、正面視及び背面視では略中央部に略扁平の鍔長シルクハット状の輪郭の隙間があり、右側面図及び左側面図においては略横長矩形の輪郭の隙間が二つあり、その二つの隙間を取り囲むように筐体部が略倒「E」字状の輪郭をなしている。また、基台部と筐体部との幅の比率は、正面視において略1:1.54としている。 オ 電極部 電極部は、基台部の裏面に、底面視において両短辺のやや上側の箇所に略長方形状の二つの電極、両長辺中央部に略横長「T」字状でそれぞれ二つの円形のサイドスルーホールを有した二つの電極を配し、それぞれの電極は基台部と同じ位置に切欠きを有している。 2 原査定の拒絶の理由で示された意匠の認定 原査定の拒絶の理由で示された意匠1及び意匠2の意匠に係る物品や本願部分の創作性の判断の基礎となる部分の形状等は、要旨以下のとおりであり、意匠の認定にあたり、本願意匠の図の向きに、引用意匠の図を向きを合わせるものとする。 (1)意匠1(別紙第2参照) ア 意匠に係る物品 意匠に係る物品は、電子機器等の過充電や過電流を遮断するための「ヒューズ」である。 イ 本願部分の創作性の判断の基礎となる部分の形状等 略長方形板状を基調として四方に半円形状の切欠きを有する基台部、当該基台部より一回り小さく、段差を伴い設けられた筺体部、及び、基台部底面の各辺にそれぞれ略長方形状の基台部と同じ位置に半円形状の切欠きを有する電極を配し、中央部には略横長のヒューズエレメントを溶断するヒーターを設けている。 (2)意匠2(別紙第3参照) ア 意匠に係る物品 意匠に係る物品は、電子機器等の過充電や過電流を遮断するための「ヒューズ」である。 イ 本願部分の創作性の判断の基礎となる部分の形状等 基台部の裏面の電極部であり、底面視において両短辺のやや上側の箇所に略長方形状の二つの電極、両長辺中央部に略横長「T」字状の二つの電極を配し、それぞれの電極は基台部と同じ位置に切欠きを有している。 3 本願部分の創作非容易性の判断 表面実装形のヒューズの創作について考察すると、本願意匠に係る物品の当業者は、ヒューズの設計をする技術者等であり、その当業者は、機能や性能の差を表現する伝熱の効率を良くするための電極の構成配置や、薄型の全体形状を実現するための造形等に配慮しつつ創作を行うものといえる。 本願部分の全体形状等は、前記1(3)アで認定したとおりであり、この物品の属する分野において、略長方形板状を基調として四方に半円形状の切欠きを有する基台部、段差を伴い設けられた筺体部からなる基本的構成態様のヒューズの創作は本願出願前より見られるものである。 しかしながら、本願部分の筐体部は、前記1(3)ウで認定したとおり、上部の長辺に沿って面取り状の大きな傾斜面を備えている点で、意匠1の前記2(1)イで認定した、傾斜面を有さない形状等とは明らかに異なる。本願部分の基台部と筐体部との関係は、前記1(3)エで認定したとおり接合や隙間の態様が具体的に表現されているのに対し、意匠1においては、その具体的形状等や接合及び隙間の態様が不明である。 また、本願部分の電極部は、前記1(3)オで認定したとおりで、これに対して意匠2は、前記2(2)イで認定したとおりであり、底面視において両短辺の中央よりやや上側の箇所に略長方形状の二つの電極、両長辺中央部に略横長「T」字状の二つの電極を配したという基本的構成において共通する点はあるものの、意匠2は、電極の具体的な輪郭形状や円形のサイドスルーホールの有無等が不明である。さらに、本願部分の電極部は、基台部裏面のみに電極が配されているのに対し、意匠1及び意匠2何れにも本願部分と同様の電極の構成配置となっているという証拠が示されていない。 これらの点から、当業者が原査定の拒絶の理由で示された意匠1及び意匠2の形状等に基づいて、本願部分の基台部と筐体部との間や電極部の形状等を容易に想到できたということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、原査定が示した理由によっては意匠法3条2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2022-10-07 |
出願番号 | 2021000880 |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(H1)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
藤澤 崇彦 江塚 尚弘 |
登録日 | 2022-11-04 |
登録番号 | 1729713 |
代理人 | 村松 由布子 |
代理人 | 杉村 光嗣 |
代理人 | 杉村 憲司 |