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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J2
管理番号 1392124 
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-03-18 
確定日 2022-11-29 
意匠に係る物品 置時計 
事件の表示 意願2021− 87「置時計」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする令和3年(2021年)1月5日の意匠登録出願であって、令和3年(2021年)8月11日付けの拒絶理由の通知に対し、同年11月18日に意見書が提出されたが、同年12月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、令和4年(2022年)3月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願の意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「置時計」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」ともいう。)を、願書の記載および願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「図において薄墨を付した部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」とし、「正面側最前面の一枚板(透明部および印刷部を示す参考図において斜線を付した部分)は透明材であるが、そのうち平行斜線部分には裏面印刷を施してある。すなわち、交差斜線部分(ディスプレイが透視される部分)は透明である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由および引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものであって、拒絶の理由に引用された意匠(以下、「引用意匠」といい、引用意匠の本願部分に対応する部分を「引用部分」という。)は、以下のとおりである。

引用意匠(別紙第2参照)
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2019年 8月 9日
受入日 特許庁意匠課受入2019年 9月 6日
掲載者 セイコークロック株式会社
表題 DL306B | シリーズC3 | セイコークロック株式会社
掲載ページのアドレス https://www.seiko-clock.co.jp/product-personal/up_img/DL306B.jpg
に掲載された「置時計」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ31026707号)

第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「置時計」であるから、一致するものである。

2 本願部分と引用部分の用途および機能の対比
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、いずれもデジタル表示型の置時計の、平面側の上方ボタン部、背面側の、設定などに用いる操作部、各種孔部および底面側の基台部の底面を除く置時計の本体部分であり、正面の表示面で時刻などの情報を表示し、アラーム機能なども有する、置時計の部分であるから、用途および機能が一致するものである。

3 両部分の位置、大きさおよび範囲の対比
両部分の位置および大きさは、上方ボタン部、背面の設定用操作部、各種孔部および基台部の底面を除く置時計の本体部分であるから共通し、範囲についても、置時計の本体のほぼ全面にわたる範囲であるから共通する。

4 両部分の形状等の対比
引用部分の向きは本願部分の図面の向きと合わせて認定する。
両部分の形状等を対比すると、主として以下の共通点および相違点が認められる。
(1)両部分の形状等の共通点
基本的構成態様
(共通点A)両部分は、主に、表示面のある筐体部と基台部から成り、筐体部を傾けて、それを背後で支える基台部を設けたものである点、
具体的態様
(共通点B)両部分の筐体部は、主に、前方の最前面の板(以下「前面板」という。)などの板部と後方側の機器などを覆う後方カバー部から成り、正面視で上辺中央の天面に上方ボタン部を設け、筐体部の前面は略横長長方形で、正面側のほとんどを占め、デジタル数字や文字などを表示する略横長長方形状の表示面をその中央に配し、上下辺縁側の横方向全幅に細幅帯状部を設けている点、
(共通点C)両部分の正面視での全体の縦横長さ比は、約1:3である点、
(共通点D)両部分の後方カバー部は、正面側より背面に向かうにつれて上下幅が小さくなる、扁平な略長方錐台状に形成し、放熱孔を左右端側に縦方向に複数並列して設け、上方には複数のボタン部やつまみ部などを横方向に並べて配した点、
(共通点E)基台部は、全体の縦方向長さで半分弱、横方向長さの約2/3の略倒台形柱状で、筐体部背面の下側中央に設けている点で共通する。
(2)両部分の形状等の相違点
具体的態様
(相違点a)筐体部については、本願部分の前面板を上下縁側の細幅帯状部の間に挟むように、前面板の後ろ側に、右側面視で略扁平コの字状に板枠部を一つながりに形成し、細幅帯状部は、前面板より盛り上がった凸条とし、その角部に面取りを施しているのに対し、引用部分は、正面側全面を面一に形成し、前面板を通して、上下縁側の細幅帯状部は木地模様を施した平坦面が看取され、細幅帯状部に近接して、表示面側の横方向いっぱいに線模様を施している点、
(相違点b)全体に対する奥行きの長さ比について、本願部分は縦横の長さの比が1:3であるのに対し奥行きの長さ比は0.75であるが、それに対し引用部分の奥行き方向の長さは不明である点、
(相違点c)正面視の表示面について、引用部分は通電状態であって、左端縦方向中央に「SEIKO」と記され表示部右から約2/3に「午前10:08 59」と時刻表示し、左側約1/3に2段に「10/25土」「25.0℃ 50%と」日付と気温などと表示しているのに対し、本願部分は、何らの表示も表れていない点、
(相違点d)筐体部の後方カバー部の態様について、本願部分は上下に背面内方に向けて略隅丸扁平等脚台形状に切り落としたように形成し、左右は背面内方に向けて傾斜して背面にかけて稜部は丸みを帯びているのに対し、引用部分は、すべての角部および稜部が丸みを帯びてなめらかに連なっているものである点、
(相違点e)背面側の態様について、引用部分は背面側上方に複数本のスリット状の孔部を設け、基台部の背面視左側面にUSBポートなどの孔部が認められるのに対し、本願部分は、背面側の上方に孔部は設けておらず、基台部にもUSBポートなどの孔部は形成していない点
(相違点f)本願部分は、線図で表され、色彩の付されていないものであるのに対し、引用部分は、正面側の線模様および表示文字が白色で、細長帯状部の木地模様が茶色で、その余の色彩は黒色である点で両部分は相違する。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

2 両部分の用途および機能の類否判断
両部分の用途および機能は一致するものであるから、同一である。

3 両部分の位置、大きさおよび範囲の評価
両部分の位置、大きさおよび範囲については、一致するものであるから同一である。

4 両部分の形状等の共通点および相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品の需要者は、主に置時計の購入者および販売店などで販売する者であって、その置時計に求める機能や、インテリアとして調和するかなども考慮して、購入の選択をするものといえるから、時刻や他の情報表示の点、また、装飾性の点などからも正面態様に注意を払うといえる。
(1)両部分の形状等の共通点
まず、(共通点A)は、両部分全体の態様に係るものではあるが、置き時計として両部分の形状等を概括的に捉えた場合の共通点であって、この共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。
次に(共通点B)は、筐体部に前面板および後方カバー部を設けたものも、置時計として、通常見られる態様であって、正面視で、デジタル数字や文字などを表示する横長長方形状の表示面を中央に配したものは置時計の物品分野において、ごく普通の態様であって、上下辺縁側に横方向で全幅に細幅帯状部を設けることもよく見られる態様であるからこの共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。
そして、(共通点C)は、両部分全体の具体的態様にかかるものであるが、全体の縦横長さ比は、約1:3であるものも置時計の正面の縦横長さ比として、よく見られるものであるから、この共通点も両部分の類否判断に与える影響は小さく、(共通点D)および(共通点E)は、目につかない背面側の態様であって、各種孔部、複数のボタン部やつまみ部の配置態様や基台部の形状等についても特に特徴のある形状等ではないから、これらも両部分の類否判断に与える影響は小さい。
(2)両部分の形状等の相違点
まず、(相違点a)は、需要者の注意をひく、正面および側面からも観察できる相違であり、筐体部の、前面板を含む板部の構成に関わる具体的態様の相違でもあって、特に本願意匠の細幅帯状部が立体的な凸条を形成しているのに対し、引用意匠が細幅帯状部も含めて全面が平坦である点は、視覚的に両部分別異の印象を与え、両部分の類否判断に与える影響は極めて大きい。
次に、(相違点b)については、本願部分は縦横の長さの比が1:3であるのに対し奥行きの長さ比が0.75であるのに対し、引用部分は、奥行き方向の長さは不明である点は、全体のプロポーションに関わる具体的態様の相違であるが、奥行き方向のみの相違でもあって、両部分の類否判断に与える影響は一定程度に留まる。
そして、(相違点d)および(相違点e)については、目につかない背面側の態様であって、筐体部の後方カバー部の角部処理および各種孔部の有無などの部分的相違であるから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。
さらに、(相違点c)および(相違点f)については、両部分が図面で表されたものか、実際の製品の画像であるかの相違から生じた相違点であって、表示態様が表れているか否かの点や、色彩の有無の点については、特段の特徴のある態様でもないから、これらの相違が両部分の類否判断に与える影響は小さい。
そうすると、形状等における相違点の(相違点c)ないし(相違点f)については類否判断に与える影響は小さいとしても、(相違点b)は、類否判断に与える影響は一定程度あるものであって、(相違点a)は類否判断に与える影響は極めて大きいから、両部分の類否判断に及ぼす影響は、総じて大きいものであって、両部分の形状等の類否判断を決定付けるものであるのに対して、形状等の共通点の(共通点A)ないし(共通点F)の両部分の類否判断に与える影響は、いずれも小さく、それら(共通点A)ないし(共通点F)があいまっても、共通点の両部分の類否判断に与える影響は総じて小さいものであるから、相違点が共通点を凌駕し、両部分は類似しない。

5 両意匠の類否判断
したがって、両意匠は、意匠に係る物品、両部分の用途及び機能、並びに両部分の位置、大きさ及び範囲は同一であるが、形状等においては、両部分は類似しないものであって、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、本願意匠は、引用意匠に類似しない。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲






審決日 2022-11-15 
出願番号 2021000087 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J2)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 江塚 尚弘
渡邉 久美
登録日 2022-12-12 
登録番号 1732633 
代理人 三好 秀和 

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