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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L3
管理番号 1392130 
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-07-01 
確定日 2022-12-12 
意匠に係る物品 住宅 
事件の表示 意願2021− 16073「住宅」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、令和3年(2021年)7月26日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和 4年(2022年) 1月27日付け 拒絶理由通知書
同年 3月22日 意見書の提出
同年 3月24日付け 拒絶査定
同年 7月 1日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る建築物を「住宅」とし、その形状等(形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
表題 住宅をカルチャーに?!LIFE LABELが雑誌「POPEYE」とのコラボレーションをスタート!
媒体のタイプ [online]
掲載日 2021年2月9日
検索日 2022年1月24日
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス URL:https://lifelabel.jp/magazines/359
に掲載された住宅の意匠の本願意匠について部分意匠として意匠登録を受けようとする部分に相当する部分

なお、原査定の引用意匠の認定において、「住宅の意匠の本願意匠について部分意匠として意匠登録を受けようとする部分に相当する部分」との記載があるが、本願意匠は、建築物の部分について意匠登録を受けようとする出願ではないので、この記載は、事実誤認であると認められる。

第4 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る建築物
本願意匠の意匠に係る建築物は「住宅」であり、引用意匠の意匠に係る建築物も「住宅」であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る建築物は、一致する。

(2)両意匠の形状等
両意匠の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。

ア 共通点
(ア)全体
全体は、家屋、玄関アプローチ階段及び塀からなるものである点、
(イ)家屋
(イ−1)家屋は、上端中央の棟から左右対象に傾斜状の板屋根を葺いた切妻家屋で、正面において、軒下の壁(妻壁)は、略直角五角形で、破風板の両端にケラバを形成している点、
(イ−2)正面の縦横の長さの比率を、約1:1.3とし、屋根の傾斜角度を、約42度としている点、
(イ−3)壁の下方、左寄りに略横長長方形の窓と、右寄りに略縦長長方形の玄関扉を設けている点、
(ウ)玄関アプローチ階段及び塀
玄関扉の前に3段の玄関アプローチ階段を壁の右側に若干飛び出た位置まで設置し、その左端から家屋の左側より外側に飛び出た位置まで略横長長方形の低い塀を設けている点、において共通する。

イ 相違点
(ア)家屋
(ア−1)全体について、本願意匠は、正背に同じ軒を設けた奥行きのある家屋で、平面視における縦(奥行き)横の長さの比率は、約1:0.6で、側面視における屋根の長さ(横幅)は、壁の長さの約1.13倍であるのに対し、引用意匠は、正面以外の図の開示がないため、不明である点、
(ア−2)屋根について、本願意匠は、板面全体に縦縞模様を施し、破風板は、一枚板であるのに対し、引用意匠は、板面の態様については、正面以外の図の開示がないため、不明であり、破風板は、3枚の薄板を張り合わせたものである点、
(ア−3)正面の壁の窓について、本願意匠は、縦横の長さの比率が、約1:3であるのに対し、引用意匠は、約5:6で、本願意匠の方が横長である点、
(ア−4)玄関扉について、本願意匠は、縦横の長さの比率が、約2:1で、全体に縦縞模様を施しているのに対し、引用意匠は、縦横の長さの比率が、約2.5:1で、全体に木目調の薄い破線模様を施している点、
(ア−5)正面の壁以外の壁について、本願意匠は、左側面の壁に4つの窓、右側面の壁に2つの窓、背面の壁に3つの窓を設けているのに対し、引用意匠は、正面以外の図の開示がないため、不明である点、
(イ)基礎
基礎について、本願意匠は、玄関アプローチと高さを揃えて形成しているのに対し、引用意匠は、玄関アプローチより一段上に形成している点、において相違する。

類否判断

以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る建築物
両意匠の意匠に係る建築物は、同一である。

(2)両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価
両意匠は、建築物のうち、住宅であるから、需要者は、主に外観に注目する住宅の購入者のほか、住宅の取引業者や住宅の施工を行う施工業者が含まれる。
したがって、まず、需要者が最も注意を払うファサード(正面から見た外観)について評価し、かつそれ以外の形状等も併せて、各部を総合して意匠全体として形状等を評価することとする。

ア 両意匠の形状等の共通点の評価
共通点(ア)及び共通点(イ)について、この種、建築物の分野において、上端中央の棟から左右対象に傾斜状の板屋根を葺いた切妻家屋の正面に、窓と玄関扉を左右に1つずつ設け、家屋の前に玄関アプローチ階段と囲いを設けたものが、両意匠の他にも一般に見られる態様であることから(例えば、株式会社新建築社が2018年9月19日に発行した内国雑誌「新建築住宅特集」390号第151頁に所載の「家屋」の意匠(公知資料番号RA02059483)。参考意匠、別紙第3参照)、これらの共通点は、両意匠のみに共通する態様とはいえず、格別、需要者が注意を払うものではないから、これらの共通点が、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。
また、家屋の軒下の壁を略直角五角形とし、破風板の両端にケラバを形成したものも、本願意匠の出願前から、ごく普通に見られるものであり、正面の縦横の長さの比率及び屋根の傾斜角度についても、この種、建築物の分野において、ごく普通に見られる寸法比及び傾斜角度であるから、これらの共通点は、いずれも両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。
一方、共通点(ウ)について、正面視において、玄関アプローチ階段の左端に密着状に、家屋の外側まで低い塀を設けたものは、両意匠の他には見当たらないものであるが、こうした住宅においては、塀を設けたものも設けていないものも、どちらもごく普通に見受けられるものであるところ、塀は、家屋にとって付随的なものといえ、格別、需要者の関心が高いものとはいえないから、両意匠の類否判断に与える影響は、一定程度にとどまる。

イ 両意匠の形状等の相違点の評価
相違点(ア)のうち、(ア−1)全体における各部の長さの比率、(ア−2)屋根の板面の態様、(ア−5)正面の壁以外の壁の態様については、引用意匠は、いずれも不明であり、本願意匠と対比、検討することができない。そして、需要者は、正面のファサードのみに注目するものではなく、正面以外の態様も含めた各部の形状等を総合して意匠全体として認識するものであるから、引用意匠のこれらの態様が不明であることは、とりもなおさず、引用意匠が、対比可能な程度に表されていないことを示すものといえ、したがって、これらの相違点は、両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものである。
次に、相違点(ア)のうち、(ア−2)破風板、(ア−3)正面の窓の寸法比、(ア−4)正面の玄関扉の寸法比及び相違点(イ)基礎については、いずれも、常套的になされる改変の範囲内、もしくは、さほど目立たない箇所における部分的な相違であって、これらの相違は、意匠全体の美感に与える影響は一定程度にとどまるか、微弱なものであるから、格別、需要者が注意を払うものとはいえず、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。

ウ 両意匠の形状等の評価
以上のとおり、共通点が両意匠の類否判断に与える影響は、一定程度にとどまるか、小さいものであるのに対し、相違点(ア)のうち、(ア−2)の破風板、(ア−3)、(ア−4)及び相違点(イ)は、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであるが、相違点(ア)のうち、(ア−1)、(ア−2)の屋根の板面、(ア−5)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものであるから、相違点全体が相まって両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。

3 小括

したがって、両意匠は、意匠に係る建築物は同一で、形状等においても、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両意匠は、視覚的印象を異にするというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲







審決日 2022-11-29 
出願番号 2021016073 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 藤澤 崇彦
内藤 弘樹
登録日 2022-12-15 
登録番号 1733000 
代理人 特許業務法人南青山国際特許事務所 

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