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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 L6
管理番号 1393164 
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-06-29 
確定日 2022-11-29 
意匠に係る物品 壁板 
事件の表示 意願2021− 3168「壁板」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、令和3年(2021年)2月15日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和 3年(2021年)10月11日付け 拒絶理由通知
同年 11月29日 意見書の提出
令和 4年(2022年) 3月18日付け 拒絶査定
同年 6月29日 審判請求書の提出

第2 本願意匠

本願は、意匠に係る物品を「壁板」とし、その形状等(形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合)は、願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定における拒絶の理由

原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下、「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」を「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法3条2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「本願意匠は、壁板に係るものであり、正面視略横長帯状を縦3段に構成し、表面に焼杉板状の加工を施した板材の上下端部にジョイント部を設けたものですが、この種物品分野では、上下端部にジョイント材を設け、表面に木目調の模様を施したものが本願出願前より公然知られています(意匠1)。また、壁板材には、焼杉板状の模様を施したものが公然知られています(意匠2及び意匠3)。焼杉板には、外壁材として用いるものが本願出願前より公然知られており、表面の模様も本願意匠のように細やかな筋が入り、細かいブロック状の集積した模様をしています(意匠4)。
そうすると、本願意匠は、意匠1の表面に木目調の模様を施した壁材を意匠2及び意匠3の手法によって、意匠4のような焼杉板の模様を施した壁材にしたに過ぎず、意匠の創作に当たっての独創的な美感が認められませんので、当業者にとって容易に創作できたものと認められます。

意匠1
特許庁意匠課が1996年11月 1日に受け入れた
’96外装建材カタログ
(日経産業新聞1996,5,13P18)
1996年 4月30日
第49頁所載
壁板の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HN08025673号)

意匠2
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2018年 7月10日
に受け入れた
Art & Decoration 530号
第40頁所載
壁板の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HB30002321号)

意匠3
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2009年 8月14日
に受け入れた
すまいの外観Design Book
第98頁所載
建築用壁板材の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC21010665号)

意匠4
■インターネット
著者の氏名 本と昼寝ひととまる
表題 日記帳
掲載箇所 焼杉板ワークショップでした。
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 2017年10月21日
検索日 [2021年10月11日]
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス https://hitotomaru.com/cat-blog/557
に掲載された杉板材の意匠」

第4 当審の判断

以下、本願意匠の意匠法3条2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠

(1)意匠に係る物品
本願の意匠に係る物品は、建築物等の補強或いは装飾を目的として、内装又は外装の壁材として用いる「壁板」である。

(2)本願意匠の形状等
ア 全体
全体を、正面視において横長帯状のブロック(以下「ブロック」という。)を2本の目地で3段に区分けした板材であって、表面は焼杉調の暗調子の凹凸(以下「焼杉調模様」という。)が形成され、側面視上下端部に施工するためのジョイント部を設けている。

イ 各ブロックの焼杉調模様の構成
正面視において、焼杉調模様は、上側のブロックでは、右側から左側に向かう方向に流れる板目状に構成され、下側のブロックでは、左側から右側に向かう方向に流れる板目状に構成され、中央のブロックでは柾目状に構成されている。

ウ 焼杉調模様を構成する凸部の態様
焼杉調模様は、水平方向又はやや斜め方向に配列された多数の凸部からなり、配列の間には深い溝が略横筋状に形成されている。凸部自体は長手方向に横長尾根状の凸条を有し略ワニの鱗状の形状をなしている。

エ 各ブロックの凸部の縦幅
各ブロックの上下端部近傍では、凸部の縦幅が小さく、各ブロックの略中央部では、凸部の縦幅が大きく表されている。

2 原査定の拒絶の理由で示された意匠の認定

原査定の拒絶の理由で示された意匠1ないし意匠4の意匠に係る物品や本願意匠の創作性の判断の基礎となる形状等は、要旨以下のとおりであり、意匠の認定にあたり、本願意匠の図の向きに、引用意匠の図を向きを合わせるものとする。

(1)意匠1(別紙第2参照)
ア 意匠に係る物品
意匠に係る物品は、建築物等の補強或いは装飾を目的として、外装の壁材として用いる「壁板」である。

イ 本願意匠の創作性の判断の基礎となる形状等
横長帯状のブロックを2本の目地により3段に区分けされた板材状とし、表面はべージュの色彩で長手方向の木目調模様が形成され、上下端部に施工するためのジョイント部を設けてなる。

(2)意匠2(別紙第3参照)
ア 意匠に係る物品
意匠に係る物品は、建築物等の補強或いは装飾を目的として用いる「壁板」である。

イ 本願意匠の創作性の判断の基礎となる形状等
目地により区分けされた3つのブロックの部分が表現された板材であり、ブロックの表面には細かな凹凸部やうねりを有する節目状の模様がランダムに配された焼杉調模様が表れている。

(3)意匠3(別紙第4参照)
ア 意匠に係る物品
意匠に係る物品は、建築物等の補強或いは装飾を目的として用いる「壁板」である。

イ 本願意匠の創作性の判断の基礎となる形状等
横長帯状のブロックを3本の目地により4段に区分けされた板材であり、表面は濃い茶色で、長手方向に筋状の木目が表れた焼杉調模様が形成されている。

(4)意匠4(別紙第5参照)
ア 意匠に係る物品
木材である杉を焼いた「焼杉板」である。

イ 本願意匠の創作性の判断の基礎となる形状等
独立した3枚の焼杉板の表面の模様で、暗調子の木目に応じた凹凸模様がランダムに表れている。

3 本願意匠の創作非容易性の判断

本願意匠に係る物品の当業者は、主に建築材料の設計や住宅の施工を行う者が想定され、それら当業者は、組立ての容易さや安全性・耐久性等を考慮することはもとより、一般需要者の嗜好を踏まえた表面の具体的凹凸の態様や色彩等にも十分配慮しつつ創作を行うものといえる。

本願意匠の形状等は、前記1(2)アで認定したとおりであり、この物品の属する分野において、帯状のブロックを2本の目地で3段に区分けした板材で、表面には焼杉調模様が表れ、側面視上下端部に施工するためのジョイント部を設けてなる態様の壁板の創作は意匠1ないし3に示された通り、本願出願前より見られるものである。

しかしながら、本願意匠の表面の態様は、前記1(2)イないしエで認定したとおり、焼杉調模様は水平方向又はやや斜め方向に配列された多数の凸部を組み合わせてなるもので、それら凸部の配列により各ブロックにも濃淡模様や、3段に区分けした板材全体でも板目状と柾目状の柄を組み合わせて、独自の視覚的効果をもたらしている。

この本願意匠の表面の具体的態様、特に横長尾根状の凸条を有し略ワニの鱗状の凸部を構成要素とした模様は、意匠4には見受けられず、その他意匠1ないし意匠3何れにも本願意匠と同様の模様が表れていないことから、本願意匠の表面が、意匠1ないし意匠4に基づいて創作されているという具体的な証拠が示されているとはいえない。
また、本願意匠が焼杉の表面模様をモチーフとして創作されたものであったとしても、本願意匠の表面の模様が、杉の板を焼いた場合に必然的に生じる模様と同様であるともいえない。
したがって、当業者が原査定の拒絶の理由で示された意匠1ないし意匠4の形状等に基づいて、本願意匠の形状等を容易に想到できたということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、原査定が示した理由によっては意匠法3条2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲














審決日 2022-11-16 
出願番号 2021003168 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (L6)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 藤澤 崇彦
江塚 尚弘
登録日 2022-12-27 
登録番号 1734094 
代理人 特許業務法人北斗特許事務所 

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