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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C4 |
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管理番号 | 1393166 |
総通号数 | 13 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2023-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-08-10 |
確定日 | 2022-12-07 |
意匠に係る物品 | Elastic therapeutic adhesive tape |
事件の表示 | 意願2020−502548「Elastic therapeutic adhesive tape」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯 本願は、令和2年(2020年)6月11日に国際登録がなされた国際意匠登録出願であり(国際登録番号DM212234)、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年(2021年) 7月30日付け 拒絶の通報 令和4年(2022年) 1月 7日 意見書提出 同年 2月25日付け 拒絶査定 同年 8月10日 審判請求書提出 第2 本願の意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「Elastic therapeutic adhesive tape 」(参考訳:「伸縮性治療用粘着テープ」、以下日本語訳で示す。)とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「the portions in broken lines of even length depict portions of the adhesive tape and form no part of the claimed design」(参考訳:「長さが均一な破線の部分は粘着テープの部分を描き、登録を求める意匠の部分は構成しない」)及び「the broken lines of uneven length define the boundaries of the claimed design and form no part of the claimed design」(参考訳:「長さが不均一な破線は登録を求める意匠の境界を明示するものであり、登録を求める意匠の部分ではない。」)としたものである。(別紙第1参照) 第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠(別紙第2参照) 特許庁発行の公開特許公報記載 特許公開第2004−121411 【図10】(b)において表された「皮膚貼付治療体」の意匠 第4 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「伸縮性治療用粘着テープ」であるのに対し、引用意匠は「皮膚貼付治療体」であって、表記は異なるが、薬剤などを経皮から吸収し、治療に用いる「治療用粘着テープ」であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。 (2)本願部分と引用意匠の用途及び機能 本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分(以下、「引用部分」といい、本願部分と引用部分をあわせて「両部分」という。)は、いずれも、治療目的で人体に貼付するシートの周側面を除く部分、及び使用時の密着性の向上等が目的と推察される、複数の切れ込みのうちの一つの切れ込みの部分であるから、両部分の用途及び機能は一致する。 (3)両部分の位置、大きさ及び範囲 両部分の位置は、周側面を除く平面及び底面の部分である点で一致する。しかし、切れ込みについて、本願部分は平面及び底面の中央に位置しているが、引用部分は、中央よりも、上下方向に全体の約1/8ずれて位置している点で相違する。 両部分の大きさ及び範囲は、粘着テープの平面及び底面と切れ込みの一つであるから、一致する。 (4)両部分の形状等 両部分の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。なお、引用意匠の認定に際しては、本願意匠と同じ向きとして、認定する。 ア 共通点 両部分は、真ん中付近に横長の切れ込みを有する、縦長の薄いシート状である点において、共通する。 イ 相違点 (ア)外形状について、本願部分は、略縦長長方形のシート状であるのに対 し、引用部分は、略横長長円形を縦方向に4つ連ね、各間にくびれを 設けて一体に形成したシート状である点、 (イ)切れ込みの大きさについて、本願部分のシートの横幅に対する切れ込 みの幅は、約2/3であるのに対して、引用部分は、約5/18であ る点、 また、切れ込みの形状について、本願部分の横の長さに対する縦の長 さは、約1/4であるのに対して、引用部分は、約1/9である点、 (ウ)平面について、本願部分は、全体に梨地状の模様を施しているのに対 し、引用部分は、模様を施していない点において、相違する。 2 類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響の評価に基づき、総合的に観察して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。 (1)意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。 (2)両部分の用途及び機能 両部分の用途及び機能は、同一である。 (3)両部分の位置、大きさ及び範囲 両部分の位置、大きさ及び範囲は、切れ込みの位置を除いて同一である。なお、切れ込みの位置の相違については、両部分とも、真ん中付近に位置していることから、この相違が、両部分の類否判断に与える影響は小さい。 (4)両部分の形状等の共通点及び相違点の評価 ア 共通点の評価 この種物品の分野において、真ん中付近に切れ込みを有する全体が縦長の薄いシート状としたものは、例を掲げるまでもなく、両部分以外にも一般的に見られるものであることから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。 イ 相違点の評価 まず、相違点(ア)は、略縦長長方形のシート状である本願部分と、略横長長円形を縦方向に4つ連ね、各間にくびれを設けて一定に成形したシート状である引用部分とは、一見して異なる視覚的印象となって、需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。 次に、相違点(イ)は、両部分におけるシートの横幅に対する切れ込みの幅の比率及び切れ込み自体の縦横の長さの比率は大きく相違しており、一見して異なる視覚的印象となって、需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。 また、相違点(ウ)は、需要者の目に付く部分であって、一見して異なる視覚的印象となって、需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。 ウ 形状等の類否判断 両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、共通点は、両部分の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、相違点(ア)ないし相違点(ウ)は、両部分の類否判断に与える影響は大きいものである。 したがって、両部分の形状等を全体として総合的に観察した場合、両部分の形状等は、共通点に比べて、相違点が両部分の類否判断に与える影響の方が大きいものであるから、両部分の形状等は類似しない。 (5)小括 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一で、両部分の用途及び機能は同一で、位置、大きさ及び範囲は、概ね同一であるが、形状等において、共通点が未だ両部分の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2022-11-22 |
出願番号 | 2020502548 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(C4)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
石坂 陽子 渡邉 久美 |
登録日 | 2022-12-22 |
登録番号 | 1733751 |
代理人 | 行田 朋弘 |
代理人 | 藤森 三奈 |
代理人 | 小暮 理恵子 |
代理人 | 阿部 達彦 |