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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J1
管理番号 1394037 
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-05-06 
確定日 2023-01-23 
意匠に係る物品 検体センサーデバイス 
事件の表示 意願2020− 27905「検体センサーデバイス」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 事案の概要

1 手続の経緯
本願は、2020年12月21日のアメリカ合衆国への出願に基づく優先権の主張を伴う、令和2年(2020年)12月23日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和3年(2021年) 7月26日付け:拒絶理由通知の送付
同 年 10月26日 :期間延長請求書の提出
同 年 12月28日 :手続補正書(補正対象書類: 図面)の提出
同 年 12月28日 :意見書の提出
令和4年(2022年) 1月31日付け:拒絶査定
同 年 5月 6日 :審判請求書の提出
同 年 6月 9日 :手続補正書(補正対象書類: 審判請求書)の提出

2 本願意匠の願書及び添付図面の記載
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「検体センサーデバイス」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が、意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶理由通知における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
上記の拒絶理由通知において引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は、以下の意匠であって、その形状等を、同ウェブページに記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。
「本願意匠は、実際に人体に貼付けるためと思われる部分とセンサー本体と穿刺部らを組み合わせた「検体センサーデバイス」のうち、センサー本体部分の上半分ほどを意匠登録を受けようとする部分としたものですが、当該センサー本体部分は薄円盤状を基調として、上面中央やや片側に、内側が縁取りのある小グラウンド状孔でその外側が円孔の2重孔部分が設けられている点で共通しています。
したがって、両意匠を意匠全体として対比する場合、類似するものと認められます。
著者の氏名 日経BP(記事:大石有美)
表題 コイン2枚大、Abbottの新型血糖値センサーがCEマーク取得
掲載箇所 WORLD NEWS DIGEST>NEWS
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 2020年10月6日
検索日 [2021年7月12日検索]
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス
URL:https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/news/world/00027/?ST=print
に掲載された生体用センサーの意匠」

以下、本審決では、引用意匠において本願部分と対比、判断する部分、すなわち、本願部分に相当する部分を、「引用部分」という。

第2 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は、「検体センサーデバイス」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「生体用センサー」であって一致しないものであるが、いずれも人体に挿入又は付着させて、血糖値等の情報を測定するために使用されるものであるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、その用途及び機能が共通する。

(2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
まず、本願部分は、検体センサーデバイスの本体部分(以下「本体部」という。)の上蓋に相当する実線で表された部分(以下「上蓋部分」という。)と、上蓋部分の上面部分に形成された円孔及びその内部の実線で表された部分(以下「平面側円孔部分」という。)、及び本体部の底面部分に形成された円孔及びその内部の実線で表された部分(以下「底面側円孔部分」という。)からなるものである。
次に、本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)の各部分における用途及び機能を対比すると、以下のとおりである。
ア 上蓋部分については、本体部の筐体を構成する上蓋として用いられるものであり、検体センサーデバイスの内部機構を保護する筐体としての機能を有するから、両部分の該部位の用途及び機能は一致する。
イ 平面側円孔部分については、本体内部に収納された検体センサーの上面側の部分が表れているものであって、使用時に抜き取られる穿刺針等が、上蓋部分の上面部分に接触しないようにする等の機能を有するから、両部分の該部位の用途及び機能は一致する。
ウ 底面側円孔部分については、引用部分においては、その部分の形状等が全く表れていないため、両部分の該部位の用途及び機能を対比することはできない。
したがって、両部分は、底面側円孔部分について、その用途及び機能を対比することはできない。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分の物品全体に占める位置、大きさ及び範囲については、上蓋部分は、本体部全体の略上半分の部分にあたるものであって、両部分の該部位の位置、大きさ及び範囲は一致し、平面側円孔部分は、本体部上面部分の中心からはずれた部分に位置し、平面視において本体部の直径の約1/3.6の大きさの円形の範囲を占めるものであって、両部分の該部位の位置、大きさ及び範囲は一致するが、引用部分においては、底面側円孔部分の形状等が全く表れていないため、両部分の該部位の位置、大きさ及び範囲を対比することはできない。
したがって、両部分は、底面側円孔部分について、その位置、大きさ及び範囲を対比することはできない。

(4)両部分の形状等の対比
両部分の形状等を対比する(以下、対比のため、引用意匠も本願意匠の図面の向きに合わせることとする。)と、その形状等には、主として以下の共通点及び相違点が認められる。

ア 形状等の共通点
(共通点1)両部分は、検体センサーデバイスの本体部における、上蓋部分、平面側円孔部分及び底面側円孔部分からなる構成とした点が共通する。
(共通点2)両部分は、上蓋部分の形状等を、その上面縁部分に断面視略円弧状の面取りが施された上端部分が閉じた略短円筒形状とし、その上面部分に、本体部の直径の約1/3.6の大きさの円孔を、本体部の直径を約1:2に内分する位置に、1つ配設した点が共通する。
(共通点3)両部分は、平面側円孔部分の形状等を、円孔内部の内周面部分と略円形状の平面部分からなり、その平面部分の縁付近には、一箇所が略半円状に凹んだ略円形状の線模様が表れ、その平面部分の中央部分には、平面視が略長円形状の略中空円筒状の凸部を1つ立設している点が共通する。

イ 形状等の相違点
(相違点)本願部分の底面側円孔部分の形状等が、その底面部分の中央部分には、一方の長辺部中央部分に切り欠きを形成した底面視略長円形状の略楕円孔部を1つ形成し、その周囲に、底視略隅丸等脚台形状に表れる僅かに盛り上がった凸状部分を4つ配設しているのに対し、引用部分の底面側円孔部分の形状等は、全く表れていないため、両部分の該部位を対比することはできず、この形状等が共通するということはできない。

2 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、その用途及び機能が共通するものであるから類似するものである。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断
両部分は、底面側円孔部分について、その用途及び機能を対比することはできないから、両部分の用途及び機能が一致又は共通するということはできない。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分は、底面側円孔部分について、その位置、大きさ及び範囲を対比することはできないから、両部分の物品全体に占める位置、大きさ及び範囲が一致又は共通するということはできない。

(4)両部分の形状等の類否判断
ア 共通点の評価
(共通点1)は部分全体の構成態様に係るものであるが、これらは、両部分の形状等を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであるから、この(共通点1)が部分意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2)は上蓋部分の具体的な形状等に係るものであるが、この種物品において、上蓋部分の形状を、その上面縁部分に断面視略円弧状の面取りが施された上端部分が閉じた略短円筒形状とし、その上面部分の中心からはずれた位置に平面側円孔部を形成したものは、本願意匠出願前に既に見られるものの、この円孔部の大きさには両部分にのみ見られる特徴が認められるから、この(共通点2)が部分意匠全体の美感に与える影響は一定程度ある。
(共通点3)は平面側円孔部分の具体的な形状等に係るものであるところ、この円孔部の形状等には両部分にのみ見られる特徴が認められるから、この(共通点3)が部分意匠全体の美感に与える影響も一定程度ある。

イ 相違点の評価
(相違点)の底面側円孔部分の形状等については、この種物品の需要者である看者や医療関係者等の注意を惹くセンサー先端部が突設される部分の形状等であるところ、本願部分が、底面視略長円形状の略楕円孔部の周囲に、底視略隅丸等脚台形状に表れる僅かに盛り上がった凸状部分を4つ配設した他の先行意匠には見られない特徴的な形状等であるのに対し、引用部分の形状等は全く不明であることから両部分の形状等は、同一若しくは類似するということはできず、この需要者の注意を惹く底面側円孔部分の形状等の相違は、部分全体の類否判断に一定以上の影響を与えている。

ウ 両部分の形状等の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点についての個別評価に基づき、両部分全体として総合的に観察した場合、両部分は、需要者が注視する底面側円孔部分の形状等の相違が、部分全体の類否判断に一定以上の影響を与えているのに対し、上蓋部分の具体的な形状等や平面側円孔部分の具体的な形状等の共通点が、部分全体の美感に与える影響は一定程度のものでしかなく、部分全体の構成態様の共通点が部分全体の美感に与える影響も小さいものであるから、これらの共通点が部分全体の類否判断に与える影響は、上記相違点が類否判断に与える影響を覆すには至らず、本願部分の形状等と引用部分の形状等は類似するとはいえないものである。

(5)小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が類似するものであるが、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は、同一又は類似するものとは判断できず、両部分の形状等においても類似するとはいえないものであるから、本願意匠と引用意匠が類似するということはできない。

第3 むすび

上記のとおりであって、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲





審決日 2023-01-11 
出願番号 2020027905 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (J1)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2023-01-26 
登録番号 1736033 
代理人 前田 大輔 
代理人 本田 彩香 
代理人 朝倉 美知 
代理人 中村 知公 
代理人 小西 富雅 
代理人 伊藤 孝太郎 

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