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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H1
管理番号 1396362 
総通号数 16 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-10-19 
確定日 2023-03-14 
意匠に係る物品 押しボタンスイッチ 
事件の表示 意願2022− 1442「押しボタンスイッチ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 事案の概要

1 手続の経緯
本願は、令和4年(2022年)1月26日の意匠登録出願であって、同年5月27日付けの拒絶理由の通知に対し、同年7月8日に意見書が提出されたが、同年7月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 本願意匠の願書及び添付図面の記載
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「押しボタンスイッチ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が、意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶理由通知における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。
上記の拒絶理由通知において引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は、以下の意匠であって、その形状等を、同ウェブページに記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

「本願意匠は、実線で表されたフレーム部およびボタン部を、意匠登録を受けようとする部分としたものと認められます。
本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と、引用意匠のこれに相当する部分とを対比すると、フレーム部は円環状であり、その正面側周縁部は、外側へ向かうにつれて後方へ傾斜する傾斜面として形成されており、ボタン部は正面視円形状である点が顕著に共通しています。
この共通点が見る者に強い共通の美感を起こさせますので、両意匠は類似するものといえます。

(引用意匠)
掲載者 Amazon.co.jp
表題 Amazon | IDEC(アイデック) 照光押ボタンスイッチ LBシリーズ フラッシュシルエット 丸/モメンタリ形 LB6ML-M1T14R | 産業・研究開発用品 | 産業・研究開発用品 通販
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 2018年1月31日
検索日 [2022年5月25日検索]
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス https://www.amazon.co.jp/dp/B079HH9N98/
に掲載された押しボタンスイッチの意匠のうち、本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分」

以下、本審決では、引用意匠において本願部分と対比、判断する部分、すなわち、本願部分に相当する部分を、「引用部分」という。

第2 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「押しボタンスイッチ」であって、一致する。

(2)本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
まず、本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、押しボタンスイッチの本体上部に配設した、上端部に形成された略中空円板状の枠体の部分(以下「ベゼル部」という。)を含む略円筒形状のフレームの上方部分(以下「フレーム上部」という。)、及びフレーム上部の内部に配設した平面視略円形状の操作ボタンの部分(以下「ボタン部」という。)からなる構成のものである。
次に、両部分の各構成部分における用途及び機能を対比すると、以下のとおりである。
ア 両部分のフレーム上部は、ボタン部の回転を抑制し、ベゼル部を支持する等のために用いられるものであって、フレーム部内周部分に形成した凸状部が、ボタン部の外周面に形成した凹溝部に嵌入することにより、ボタン部の回転を防ぐ等の機能を有している。
イ 両部分のベゼル部は、操作盤等に押しボタンスイッチを取り付ける際の取り付け枠として用いられるものであって、操作盤等に見栄えよくボタン部を取り付けて、ボタン部を保護する等の機能を有している。
ウ 両部分のボタン部は、押しボタンスイッチ内部の接点を開閉操作するために用いられるものであって、例えばオルタネイト型スイッチの場合、該部位を一度押下することで内部の接点が開いてボタン部全体が発光し、さらにもう一度押下することで内部の接点が閉じてボタン部全体の発光も消えるという機能を有している。
したがって、両部分の各構成部分における用途及び機能は一致するから、両部分の用途及び機能は一致するといえる。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分の位置、大きさ及び範囲については、両部分のベゼル部を含むフレーム上部及びボタン部は、いずれも押しボタンスイッチの本体上端部に位置し、両部分のベゼル部を含むフレーム上部及びボタン部の物品全体に占める大きさ及び範囲も一致している。

(4)両部分の形状等の対比
両部分の形状等を対比する(以下、対比のため、引用意匠も本願意匠の図面の向きに合わせることとする。)と、その形状等には、主として以下の共通点及び相違点が認められる。

ア 形状等の共通点
(共通点1)両部分は、押しボタンスイッチの上端部分に配設した、先端部にベゼル部を設けたフレーム上部及びフレーム上部の内周部分に配設したボタン部からなる構成とした点が共通する。
(共通点2)両部分は、ベゼル部の形状等を、正面視略円形枠状体とし、その枠状体の外側の部分を、背面側に向かって傾斜する傾斜面とした点が共通する。
(共通点3)両部分は、フレーム上部の形状等を、略短円筒形状とした点が共通する。
(共通点4)両部分は、ボタン部の形状等を、その上面部分が閉じた略円筒形状とし、ボタン部全体を、透光性を有する発光部分とした点が共通する。

イ 形状等の相違点
(相違点1)本願部分のベゼル部の具体的な形状等が、その断面視において、枠状体の内側部分を急勾配の傾斜面とし、枠状体の外側部分を緩勾配の傾斜面とする断面視略山形の三角形状となるように形成しているのに対し、引用部分のベゼル部の具体的な形状等は、その断面視において、枠状体の内側部分を段差のある平坦面とし、枠状体の外側部分を緩勾配の傾斜面とする断面視略直角三角形状となるように形成している点で、両意匠は相違する。
(相違点2)本願部分のボタン部の上面部分の形状等が、緩やかな凹曲面形状となるように形成しているのに対し、引用部分のボタン上部の上面部分の形状等は、平坦面となるように形成している点で、両意匠は相違する。
(相違点3)本願部分のボタン部の外周面部分の正面視上下の部分には、略矩形状に切り欠いた凹部を形成しているのに対し、引用部分のボタン部の外周面部分は見ることができず、そのような凹部の有無が不明である点で、両部分は相違する。
(相違点4)本願部分のベゼル部の上端部分とボタン上部の上端部分が、同じ高さとなるように配設しているのに対し、引用部分のベゼル部の上端部分とボタン上部の上端部分は、ボタン上部がやや低い位置に配設している点で、両部分は相違する。
(相違点5)本願部分のフレーム上部の内周面部分には、正面視上下左右の位置に、正面視略直線状の張り出し部分(以下「直線状張出部」という。)を形成しているのに対し、引用部分のフレーム上部の内周面部分には、そのような部分の有無が不明である点で、両部分は相違する。

2 両意匠の類否判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、一致するから同一である。

(2)両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、一致するから同一である。

(3)両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置、大きさ及び範囲は、物品全体の形態の中における位置、大きさ及び範囲が一致するから、同一である。

(4)両部分の形状等の類否判断
ア 共通点の評価
(共通点1)は部分全体の構成態様に係るものであるが、この種物品においてこのような態様のものは既に存在するものであって、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないから、この(共通点1)が部分意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2)ないし(共通点4)は、ベゼル部、フレーム上部及びボタン部の形状等に係るものであるが、これらの共通点は、両部分の形状等を概括的に捉えた場合のものにすぎないものであるから、この種物品分野でごく普通に見られる発光部分の共通性も含め、これらの(共通点2)ないし(共通点4)が部分意匠全体の美感に与える影響は小さい。

イ 相違点の評価
(相違点1)のベゼル部の具体的な形状等については、使用時に特に目に付く部分であって、本願部分のものが、枠状体の外側部分のみならず内側部分も傾斜面とし、ボタン部上方の外周面部分の形状が表れるような従来にはない特徴的な形状のベゼル部であるとの印象を与えるのに対し、引用部分のものは、枠状体の外側部分のみを傾斜面とした従来からごく普通に見られる形状のベゼル部であるとの印象を与えるから、需要者の注意を惹くベゼル部の具体的な形状等の相違点が、部分意匠全体の類否判断に与える影響は大きい。
(相違点2)のボタン上部の上面部分の形状等については、該部位が緩やかな凹曲面形状のものも、平坦面のものも、ごく普通に見られるものであるから、このボタン上部の上面部分の形状等の相違が、部分意匠全体の類否判断に与える影響は小さい。
(相違点3)のボタン部外周面部分の凹部の有無の相違については、この物品分野においては、ボタン部の回転防止等のためにこのような凹部を形成することはごく普通に見られるものであって、需要者の注意を特段惹くものでもないから、ごく普通に存在しているこのような凹部の有無の相違が、部分意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(相違点4)のベゼル部の上端部分とボタン上部の上端部分の高さの相違については、いわれて気付く程度のごく僅かな相違であるから、この相違が、部分意匠全体の類否判断に与える影響は小さい。
(相違点5)のフレーム上部内周面部分の直線状張出部の有無の相違については、フレーム部とボタン部との間の隙間の部分にある目に付きにくいものであるが、フレーム上部内周面部分の正面視上下左右の部分を、略直線状に張り出して形成した本願部分の形状等は、従来にはない特徴的なものであるから、この相違が、部分意匠全体の類否判断に与える影響は一定程度ある。

ウ 両部分の形状等の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点についての個別評価に基づき、両部分を部分全体として総合的に観察した場合、両部分は、需要者の注意を惹くベゼル部の具体的な形状等の相違が、部分意匠全体の類否判断に大きな影響を与え、フレーム上部内周面部分の直線状張出部の有無の相違も、部分全体の類否判断に一定の影響を与えているのに対し、部分全体の構成態様やベゼル部、フレーム上部、及びボタン上部の形状等の共通性が、部分全体の美感に与える影響は小さいものであるから、これらの共通点が部分全体の類否判断に与える影響は、上記相違点が類否判断に与える影響を覆すには至らず、本願部分の形状等と引用部分の形状等は類似するとはいえないものである。

(5)小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一であり、両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲も同一であるが、両部分の形状等において、類似するとはいえないものであるから、本願意匠と引用意匠は類似するということはできない。

第3 むすび

上記のとおりであって、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲





審決日 2023-03-01 
出願番号 2022001442 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H1)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2023-04-13 
登録番号 1742561 
代理人 伊東 忠重 
代理人 伊東 忠彦 

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