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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K7
管理番号 1397253 
総通号数 17 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-08-09 
確定日 2023-03-28 
意匠に係る物品 接合ツール 
事件の表示 意願2020− 27962「接合ツール」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 主な手続の経緯

令和2年(2020年)12月24日 意匠登録出願
令和3年(2021年)10月14日付け 拒絶理由通知書
令和4年(2022年) 1月24日 意見書提出
同年 4月26日付け 拒絶査定
同年 8月 9日 審判請求書提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「接合ツール」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が、意匠登録を受けようとする部分である。断面図を含めて意匠登録を受けようとする部分を特定している。一点鎖線は、意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2002−066761
図1、図2の1及び関連する記載から導きだされる「回転工具」の意匠の当該部分の意匠

第4 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「接合ツール」であるのに対し、引用意匠は「回転工具」であって、表記は異なるが、どちらも摩擦攪拌接合等の方法により金属を接合するために用いられる工具であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。

(2)本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
本願部分と、引用意匠において本願部分と対比する部分、すなわち本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい、本願部分と引用部分をあわせて「両部分」という。)の用途及び機能は、金属等の被接合材に押し当てることにより摩擦熱を発生させる柱状体の端面であるから、一致し、その位置は、被接合材と接する端面の中心付近の部分で、大きさ及び範囲は、端面が全体の約1/4の大きさ及び範囲で、孔が全深さの約1/2の深さであるから、一致する。

(3)両部分の形状等
両部分の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。
なお、両部分の対比のため、本願意匠の図の向きに合わせて、引用意匠の図の向きを認定する。

ア 共通点
両部分は、右側面視略円形とする垂直な平坦面の中心に、これより一回り小さい略円形孔を形成している点において共通する。

イ 相違点
(ア)孔の形状について、本願部分は、平坦面に対し直角に形成した略短円筒形状であるのに対し、引用部分は、平坦面に対し約75度の角度で漸次縮径した略短円錐台形状である点、
(イ)孔の直径及び深さの比率について、本願部分は、約5:6であるのに対し、引用部分は、約2:1で、本願部分の方が引用部分より孔が深い点において相違する。

類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響の評価に基づき、総合的に観察して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は一致するから、同一である。

(2)両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲
両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲は一致するから、同一である。

(3)両部分の形状等の共通点及び相違点の評価
両部分は、接合ツールのうち、被接合材と接する端面であるから、需要者は、主に、回転の軸となる端面中心の態様について観察することになる。
したがって、まず、需要者が最も注意を払う端面中心の孔について評価し、かつそれ以外の形状等もあわせて、各部を総合して意匠全体として形状等を評価する。

ア 共通点の評価
この種物品の分野において、接合ツールの被接合材と接する端面を平坦な面とし、その中心に攪拌用の突起(ピン)を垂直に設けたものが一般に知られているものであるところ(例えば、特開2000−153374に所載の接合ツールの意匠。)、両部分は、端面の中心に、ピンではなく、略円形孔を形成しているものであるから、需要者が注目するものといえ、両部分の類否判断に影響を与えるものである。

イ 相違点の評価
まず、相違点(ア)は、外部から見えにくい孔の内周形状における相違ではあるが、回転ブレや加圧力に大きな影響を与える孔の内周形状は、需要者の最も関心が高い部位であるところ、略短円筒形状である本願部分と、略短円錐台形状である引用部分とは、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。
次に、相違点(イ)は、本願部分の孔の深さは直径より長いのに対し、引用部分の孔の深さは直径の半分程度あることに加え、相違点(ア)の内周形状の相違も相まって、需要者に異なる美感を起こさせているから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。

ウ 形状等の共通点及び相違点の総合評価
両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、共通点は、両部分の類否判断に影響を与えるものであるのに対し、相違点(ア)及び相違点(イ)は、両部分の類否判断に与える影響は大きいものであるから、相違点全体が相まって、両部分の類否判断に与える影響は大きい。

(4)小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一で、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲も同一であるが、形状等においては、共通点は両部分の類否判断に影響を与えるものの、相違点が両部分の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲


審決日 2023-03-07 
出願番号 2020027962 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 石坂 陽子
内藤 弘樹
登録日 2023-04-25 
登録番号 1743442 
代理人 内藤 拓郎 

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