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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 N3
管理番号 1397255 
総通号数 17 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-09-29 
確定日 2023-04-03 
意匠に係る物品 鼓膜移動度測定値表示用画像 
事件の表示 意願2021− 17366「鼓膜移動度測定値表示用画像」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 事案の概要

1 手続の経緯
本願は、令和3年(2021年)5月17日に出願した意願2021−010647の一部を新たな意匠登録出願として出願した、2020年11月16日のアメリカ合衆国への出願に基づく優先権の主張を伴う、令和3年(2021年)8月11日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和3年(2021年)12月10日付け:拒絶理由通知
令和4年(2022年) 3月11日 :期間延長請求書の提出
同 年 5月13日 :意見書の提出
同 年 5月13日 :手続補正書(補正対象書類:
願書)の提出
同 年 6月29日付け:拒絶査定
同 年 9月29日 :審判請求書の提出
同 年 11月 8日 :手続補正書(補正対象書類:
審判請求書)の提出

2 本願意匠の願書及び添付図面の記載
本願は、画像の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であって、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書の【意匠に係る物品】の欄に「鼓膜移動度測定値表示用画像」と記載され、願書の【意匠に係る物品の説明】の欄に「画像図に表される画像は、患者の耳の内部に挿入されて超音波を使用して中耳炎のタイプを測定するオトスコープのデータを表示するための画像であり、測定された鼓膜移動度を示すものである。画像図に表される画像内のスライダは、変化した状態を示す画像図1ないし変化した状態を示す画像図4に示されるように、ホイール上を段階的に移動する。画像図に表される画像は、オトスコープが備えるディスプレイスクリーン上に表示される。」と記載され、本願意匠の態様を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、画像の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

3 原査定の拒絶の理由及び引用した意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は、鼓膜移動度測定値表示用画像であって、略円環からその下部を取り除き、その両端が略半径方向の直線となった略円弧を配置し、その略中心に数字を配置し、当該略円弧の内側の線及び外側の線を横切る大きさのつまみ部を当該略円弧に沿って移動させるもの、について意匠登録を受けようとするものと認められます。
しかしながら、略円環からその下部を取り除いた略円弧を配置し、その略中心に数字を配置し、つまみ部を当該略円弧に沿って移動させるものは、画像1にみられるように本願出願前に公知です。また、略円環からその下部を取り除き、その両端が半径方向の直線となった略円弧を配置したものは、画像2−3にみられるように本願出願前に公知です。また、略円弧の内側の線及び外側の線を横切る大きさのつまみ部を当該略円弧に沿って移動させるものは、画像4にみられるように本願出願前に公知です。
そうすると、本願意匠は、略円環からその下部を取り除いた略円弧を配置し、その略中心に数字を配置し、つまみ部を当該略円弧に沿って移動、略円環からその下部を取り除き、その両端が半径方向の直線となった略円弧、略円弧の内側の線及び外側の線を横切る大きさのつまみ部、といういずれも本願出願前に公知の態様を組み合わせ、鼓膜移動度測定値表示用の画像として表したものに過ぎず、当業者であれば容易に創作をすることができたものです。

画像1
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2018年11月12日
受入日 特許庁意匠課受入2018年11月28日
掲載者 Google Play
表題 STRATIS − Google Play
のアプリ
掲載ページのアドレス https://play.google.com/store/apps/details
?id=com.stratisems.stratissphere.resident
に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの計測機能」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ30130808号)の表示部の略中央部に表された画像(特に、略円弧とつまみ部の部分)

画像2
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2020年10月3日
受入日 特許庁意匠課受入2020年11月18日
掲載者 chiwawa
表題 Sound Meter − decibel
meter − Google Play の
アプリ
掲載ページのアドレス https://play.google.com/store/apps/details
?id=com.smok95.fdecibel
に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの計測機能」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第RJ02117522号)の略中央部やや上に表された画像(特に、略円弧の部分)

画像3
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1549470号の意匠
の表示部に表された画像(特に、略円弧の部分)

画像4
米国特許商標公報 2018年10月 2日
グラフィカルユーザインタフェースを備えたスマートフォン表示画面(登録番号US D829739S Smartphone display scr(当審注:「SMARTPHONE DISPLAY SCREEN WITH GRAPHICSAL USER INTERFACE)」の誤り)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH30322332号)の表示部の略中央部やや上に表された画像(特に、略円弧とつまみ部の部分)」

第2 請求人の主張

請求人は、令和4年(2022年)11月8日提出の手続補正書において、概ね以下のとおり主張した。

1 本願意匠が登録されるべき理由
本願意匠が、当業者が引用画像1〜5に基づいて容易に創作をすることができる意匠ではないことを以下説明する。
(1)本願意匠について
本願意匠は、以下の特徴を備えている。
ア 本願意匠は、オトスコープ上に表示される表示用画像である。
イ 本願意匠は、ホイールと数字とを用いて、鼓膜疾患に関連する健康度を段階的に示す5つの離散的な測定値を表示するものである。

2 本願意匠の創作性について
引用画像1〜5のいずれも、少なくとも、本願意匠の上記ア及びイの特徴の組み合わせを開示していないため、本願意匠は、ありふれた手法によってなされるものではない。それ故、本願意匠は引用画像1〜5に基づいて容易に創作できたものではないと思料する。以下、その理由を詳しく説明する。
ア 本願意匠は、オトスコープ上に表示される表示用画像である。オトスコープは、患者の耳の内部に挿入されると、超音波を使用して鼓膜移動度を測定し、中耳炎のタイプを判定することが可能なものである。オトスコープは、鼓膜移動度の測定結果として本願意匠を表示する。
他方、引用画像1〜5のいずれも、オトスコープ上に表示されるものではない。ましてや、引用画像1〜5のいずれも、オトスコープの測定結果を表示するものではない。
拒絶査定では、「画像の分野において、ある画像を異なるデバイス上に表示させることは極めて一般的な手法であることを鑑みると、公知である略円弧状の状態表示画像をオトスコープに採用することに特段の創作性は認められません。」という見解が示されている。しかしながら、そもそも、本願の出願時、図形を表示する表示部を備えるオトスコープは、出願人の知る限り存在していない。ましてや、鼓膜移動度の測定結果を図形で表示する表示部を備えるオトスコープが存在しないことはなおさらである。
従って、そもそも図形を表示する表示部を備えるオトスコープが公知ではない以上、図形をオトスコープに採用すること自体に独自の創作性が存在し、そのようなオトスコープに採用されるべき図形を創作することにも独自の創作性が存在するというべきである。それ故、オトスコープのデータを図形で表示する本願意匠は、本願意匠の創作者の創意工夫がなされたユニークなものである。
少なくともこれらのことから、本願意匠は、引用意匠1〜5に基づいて容易に創作することができたものではないというべきである。

イ 本願意匠は、オトスコープによって測定された鼓膜移動度(すなわち、鼓膜疾患に関連する健康度)をホイールおよび数字が5段階で(すなわち、5つの離散的な測定値を用いて)提示するものである。従って、測定結果として、5つの離散的な測定値の間の値は、存在しない。本願意匠では、ホイールの一端が、鼓膜疾患に関連する健康度が良い状態を示し、ホイールの他端が、鼓膜疾患に関連する健康度が悪い状態を示している。
上述したように、ある画像をオトスコープに採用することが、そもそも、ありふれた手法ではない。従って、本願意匠のような、ホイールを用いて鼓膜疾患に関連する健康度を表す画像を創作することもまた、ありふれた手法ではないというべきである。それ故、本願意匠は、引用意匠1〜5に基づいて容易に創作することができたものではない。
また、ホイールおよび数字を用いて鼓膜疾患に関連する健康度を表示することは、引用意匠1〜5のいずれにも開示されていない。従って、一端が鼓膜疾患に関連する健康度が良い状態を示し、かつ他端が鼓膜疾患に関連する健康度が悪い状態を示すホイールを表す本願意匠は、引用意匠1〜5に基づいて容易に創作することができたものではないというべきである。
また、ホイールの形状および離散的な測定値を示す変化の態様に関する無数の選択肢の中から、ホイールの形状および離散的な測定値を示す変化の態様に関する特定の選択肢を選択すること自体にも、本願意匠の創作者の創作性が認められるべきである。
拒絶査定では、「本願意匠の意匠登録を受けようとする部分は、いわば地の部分である略円弧状図形のみであり、意匠登録を受けようとする部分ではないスライダの変化態様について創作性がある旨の主張は採用できません。」という見解が示されている。しかしながら、本願の意匠登録を受けようとする部分は、各図において実線で描かれているとおり、ホイールと数字との組み合わせである。ホイールと数字との組み合わせが5つの離散的な測定値を示すような意匠は、引用意匠1〜5のいずれにも表れていない。従って、この点にも本願意匠の創作者の独自の創作性が認められるべきである。
少なくとも以上のことから、本願意匠は、引用意匠1〜5に基づいて容易に創作することができたものではない。

3 小括
以上の次第で、本願意匠は、ありふれた手法によって創作されたものではなく、本願意匠の創作性が認められるべきであることから、本願意匠は、当業者によって容易に創作される意匠ではないものと思料する。

第3 当審の判断

本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性について、すなわち、本願意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて、以下検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
(1)願書の【意匠に係る物品】及び【意匠に係る物品の説明】の欄に記載された画像の用途
本願意匠は、「鼓膜移動度測定値表示用画像」であって、本願意匠に係る画像の用途は、超音波を使用して患者の中耳炎のタイプを測定するオトスコープにおいて、測定したデータを分かりやすく表示するために用いられるものである。
なお、この画像は、オトスコープが備えるディスプレイスクリーン上に、オトスコープが測定した鼓膜移動度の測定結果が表示されるものであるから、意匠法第2条第1項に規定する「機器がその機能を発揮した結果として表示される画像」(以下「表示画像」という。)であると認められ、本願部分は、同条同項に規定する「画像の部分」の要件を満たしている。

(2)本願部分の用途及び機能
本願部分の用途及び機能は、測定データに応じた鼓膜移動度の区分を表示するために用いられるものであり、その区分をスライダの位置及び中央部分の数字により一目で認識できるように分かりやすく表示する機能を有するものである。

(3)本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分の位置、大きさ及び範囲は、オトスコープが備えるディスプレイスクリーン上の略中央部分に位置し、当該スクリーンの上下左右に僅かな余地を残して、その領域のほぼ全体を占める大きさ及び範囲の画像である。

(4)本願部分の態様
本願部分は、願書の「意匠に係る物品の説明」及び願書に添付した図面の【画像図】及び【変化した状態を示す画像図1】ないし【変化した状態を示す画像図4】によれば、オトスコープの測定データに対応する鼓膜移動度を「0〜4」の5段階に区分した上で、測定データに応じた区分の画像をホイール上のスライダの位置及び中央部分の数字によって表した、5つの区分に応じた5つの画像における、スライダの部分を除いた画像からなるものであるところ、これら5つの画像の態様は以下のとおりである。

ア 【画像図】の態様
画像図は、右に90°回転した略C字状の部分(以下「ホイール」という。)の左下端部に、扁平な略楕円状の部分(以下「スライダ」という。)を配し、ホイール内側の略中央部分に意匠を構成しないものと認められる算用数字の4を配した構成の画像における、ホイール及び算用数字の4の部分であって、このホイールの具体的な態様は、一定の幅からなる円環の下側約1/5の部分を切り欠いたものとし、その右下端部を、円環を構成する円の半径方向に一致するような直線状に形成し、その左下端部を、スライダの形状に合わせて略円弧状に切り欠いた形状に形成したものである。

イ 【変化した状態を示す画像図1】の態様
変化した状態を示す画像図1は、画像図と同様なホイールの左側中央部やや上方部分にスライダを配し、ホイール内側の略中央部分に意匠を構成しないものと認められる算用数字の3を配した構成の画像における、ホイール及び算用数字の3の部分であって、このホイールの具体的な態様は、一定の幅からなる円環の下側約1/5の部分を切り欠いたものとし、その左右下端部を、円環を構成する円の半径方向に一致するような直線状に形成し、その左側中央部やや上方部分を、スライダの形状に合わせて略円弧状に切り欠いた形状同士を、向かい合うようにして形成したものである。

ウ 【変化した状態を示す画像図2】の態様
変化した状態を示す画像図2は、画像図と同様なホイールの上端部中央部分にスライダを配し、ホイール内側の略中央部分に意匠を構成しないものと認められる算用数字の2を配した構成の画像における、ホイール及び算用数字の2の部分であって、このホイールの具体的な態様は、一定の幅からなる円環の下側約1/5の部分を切り欠いたものとし、その左右下端部を、円環を構成する円の半径方向に一致するような直線状に形成し、その上端部中央部分を、スライダの形状に合わせて略円弧状に切り欠いた形状同士を、向かい合うようにして形成したものである。

エ 【変化した状態を示す画像図3】の態様
変化した状態を示す画像図3は、画像図と同様なホイールの右側中央部やや上方部分にスライダを配し、ホイール内側の略中央部分に意匠を構成しないものと認められる算用数字の1を配した構成の画像における、ホイール及び算用数字の1の部分であって、このホイールの具体的な態様は、一定の幅からなる円環の下側約1/5の部分を切り欠いたものとし、その左右下端部を、円環を構成する円の半径方向に一致するような直線状に形成し、その右側中央部やや上方部分を、スライダの形状に合わせて略円弧状に切り欠いた形状同士を、向かい合うようにして形成したものである。

オ 【変化した状態を示す画像図4】の態様
変化した状態を示す画像図4は、画像図と同様なホイールの右下端部にスライダを配し、ホイール内側の略中央部分に意匠を構成しないものと認められる算用数字の0を配した構成の画像における、ホイール及び算用数字の0の部分であって、このホイールの具体的な態様は、一定の幅からなる円環の下側約1/5の部分を切り欠いたものとし、その左下端部を、円環を構成する円の半径方向に一致するような直線状に形成し、その右下端部を、スライダの形状に合わせて略円弧状に切り欠いた形状に形成したものである。

なお、願書の【意匠に係る物品の説明】欄における「画像図に表される画像内のスライダは、・・・ホイール上を段階的に移動する。」の記載によれば、当該画像のスライダは、ホイール上を自在に、連続的に移動するものではなく、その位置は【画像図】及び【変化した状態を示す画像図1】ないし【変化した状態を示す画像図4】に示すように、測定データに対応する5つの区分に該当する等間隔に離散した5つの限定した位置にのみ表示されるものである。

2 原査定の拒絶の理由で引用した画像の認定
当審では、原査定の拒絶の理由で引用した画像1ないし画像4について、拒絶理由通知の記載内容とは異なり、以下のとおり認定した。
(1)画像1(別紙第2参照)
画像1は、平成30年(2018年)11月12日に、URLをhttps://play.google.com/store/apps/details?id=com.stratisems.stratissphere.residentとするWebページ内(上記第1の3参照)に掲載が確認された、スマートフォンに表示された、暖房機器の温度をコントロールするための意匠法第2条第1項に規定する「機器の操作の用に供される画像」(以下「操作画像」という。)であって、本願部分と対比、判断する部分(以下「画像部分1」という。)の態様は、以下のとおりである。
画像部分1の態様は、右に90°回転した略C字状のホイールの右上端部やや右側部分に、略円形状のスライダを配し、ホイール内側の略中央部分に意匠を構成しないものと認められる算用数字の73を配した構成の画像における、ホイール及び算用数字の73の部分であって、このホイールの具体的な態様は、一定の幅からなる円環の下側約1/5の部分を切り欠いたものとし、その右下端部を略円弧状に形成し、その右上端部やや右側部分を円環の幅と一致するような直径の略円形状のスライダの形状に合わせて略半円弧状に切り欠いた形状同士を、向かい合うようにして形成したものである。
また、当該画像のスライダは、温度設定の際には、ホイール上の任意の位置を自在に移動できるものである。

(2)画像2(別紙第3参照)
画像2は、令和2年(2020年)10月3日に、URLをhttps://play.google.com/store/apps/details?id=com.smok95.fdecibelとするWebページ内(上記第1の3参照)に掲載が確認された、スマートフォンに表示された、測定された音量の測定結果をするための「表示画像」であって、本願部分と対比、判断する部分(以下「画像部分2」という。)の態様は、以下のとおりである。
画像部分2の態様は、右に90°回転した略C字状の円弧部分を配し、その内側の略中央部分に略円形状の中心円部及びそこから右斜め上方に延びる略細長三角形状の針状部を配した構成の画像における、略C字状の円弧部分であって、この略C字状の円弧部分の具体的な態様は、一定の幅からなる円環の下側約1/4.5の部分を切り欠いたものとし、その左右下端部を、円環を構成する円の半径方向に一致するような直線状に形成したものである。
また、当該画像には、本願意匠のようなスライダに該当する部分は存在しない。

(3)画像3(別紙第4参照)
画像3は、平成28年(2016年)5月16日に、特許庁発行の意匠公報に記載された、意匠登録第1549470号(意匠に係る物品:バルブ用ハブ)の意匠(上記第1の3参照)における表示部に表されたバルブの作動状態等を示す画像であって、物品の部分としての画像を含む意匠の表示部に表示された、バルブの開閉回数やバルブの所要部位の温度等を表示する「物品の機能にとって必要な表示画像」であって、本願部分と対比、判断する部分(以下「画像部分3」という。)の態様は、以下のとおりである。
画像部分3の態様は、右に90°回転した略C字状の円弧部分を配し、その内側の略中央部分に意匠を構成しないものと認められる算用数字を配した構成の画像における、略C字状の円弧部分及び算用数字の部分であって、この略C字状の円弧部分の具体的な態様は、一定の幅からなる円環の下側約1/4の部分を切り欠いたものとし、その左右下端部を、円環を構成する円の半径方向に一致するような直線状に形成したものである。
また、当該画像には、本願意匠のようなスライダに該当する部分は存在せず、略C字状の円弧部分内部の表示の範囲が段階的に増減するものである。

(4)画像4(別紙第5参照)
画像4は、平成30年(2018年)5月16日に、米国特許商標庁発行の米国特許商標公報に記載された、登録番号US D829739SのSMARTPHONE DISPLAY SCREEN WITH GRAPHICSAL USER INTERFACEの意匠(上記第1の3参照)のスマートフォンに表示された、温度調節ができる衣服の温度を設定するための「操作画像」であって、本願部分と対比、判断する部分(以下「画像部分4」という。)の態様は、以下のとおりである。
画像部分4は、右に90°回転した略C字状のホイール上を自在に移動可能な略円形状のスライダを配し、ホイール内側の略中央部分に周囲を円弧で囲み、その内部に円とYの字を上下に表した外枠付きの円形部分を配した構成の画像における、ホイールの部分であって、このホイールの具体的な態様は、一定の幅からなる円環の下側約1/5の部分を切り欠いたものとし、その左右下端部を略円弧状に形成し、その右斜め上方部分を、円環の幅より大きな直径の略円形状のスライダの形状に合わせて略円弧状に切り欠いた形状同士を、向かい合うようにして形成したものである。
また、当該画像のスライダは、温度設定の際には、ホイール上の任意の位置を自在に移動できるものである。

3 本願意匠の創作容易性の判断
(1)意匠法第3条第2項の判断手法について
意匠法第3条第2項の規定は、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった画像に基づいて容易に創作をすることができた意匠である場合には、その意匠については、排他独占的な権利を与えるべき意匠の創作的な価値を見出せないのであるから、登録できないとするものである。
そして、意匠法第3条第2項における創作容易性の判断においては、出願された意匠と先行する意匠(全体意匠)を対比することにとどまらず、その先行する意匠の画像の構成要素である態様を部分的に抽出して出願された意匠と比較し、出願された意匠が、その形態に基づいて当業者が容易に創作することができたか否かについても容易な創作であるとして判断するものである。
なお、この判断に当たっては、画像の分野におけるありふれた手法に基づく創作や、出願前に公知となった構成要素や具体的態様がそのまま表れているもののみだけではなく、画像の構成要素や具体的態様に多少の改変が加えられた上で表されているような軽微な改変にすぎないものも、容易な創作に当たるものとする。

(2)本願意匠に対する意匠法第3条第2項の適用
請求人の主張を踏まえ、本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて、以下検討する。

本願部分の態様は、【画像図】及び【変化した状態を示す画像図1】ないし【変化した状態を示す画像図4】によれば、(ア)「一定の幅からなる円環の下側約1/5の部分を切り欠き、その左右下端部を、円環を構成する円の半径方向に一致するような直線状に形成した、右に90°回転した略C字状のホイールの部分」に、ホイールからはみ出る大きさの扁平な略楕円状のスライダ(当審注:該部位は意匠登録を受けようとする部分ではない。)を、(イ)「測定データに対応する5つの区分に該当する、等間隔に離散した5つの限定した位置にのみ表示する」とともに、(ウ)「ホイールの内側中央部分に、測定データに対応する5つの区分に該当する0〜4の数字のうちの一つを表示する」表示画像であって、(エ)ホイール上のスライダとの境界部分の形状を、略円弧状の形状同士が向かい合うように形成したものであるところ、まず(ア)に見られるような「一定の幅からなる円環の下側約1/5の部分を切り欠き、右に90°回転した略C字状のホイールの部分の態様は、画像1及び画像4にあるように既に見られるものであり、その左右下端部を、円環を構成する円の半径方向に一致するような直線状に形成したものも、画像2及び画像3にあるように既に見られる本願意匠の出願前に公然知られたものであるから、本願部分の態様には着想の新しさないし独創性があるとはいえず、当業者が画像1ないし画像4に接すれば容易になし得るものである。
次に、(イ)の測定データに対応する5つの区分に該当する、等間隔に離散した5つの限定した位置にのみスライダを表示する点については、スライダを、ホイールを等間隔に5等分とした位置にのみ限定的に表示するものは、画像1ないし画像4には見られない本願部分独自の態様であるから、公然知られた意匠をありふれた手法を用いて僅かに改変した程度のものとはいえず、当業者が画像1ないし画像4に接したとしても容易になし得るものではない。
そして、(ウ)のホイールの内側中央部分に、測定データに対応する5つの区分に該当する0から4の数字を表示する点については、測定データに基づく値を該部位に意匠を構成しない算用数字で表示することは、画像3にあるように本願意匠の出願前に公然知られたものであるから、本願部分の態様には着想の新しさないし独創性があるとはいえず、当業者が画像3に接すれば容易になし得るものである。
また、(エ)のホイール上のスライダとの境界部分の形状を、略円弧状の形状同士が向かい合うように形成した点についても、画像4にあるように本願意匠の出願前に公然知られたものであるから、本願部分の態様には着想の新しさないし独創性があるとはいえず、当業者が画像4に接すれば容易になし得るものである。

そうすると、本願部分のホイールの部分、ホイール内側の数字の部分、及びホイール上のスライダとの境界部分の形状は、特段特徴のないものであって、それに着想の新しさないし独創性があるとはいえず、この物品分野の当業者にとってみれば容易になし得るものであるとしても、測定したデータに応じて、スライダをホイール上の、等間隔に離散した5つの区分に該当する5つの位置にのみ限定して表示する点については、公知意匠には見られない本願部分独自の態様であるから、その創作は公然知られた意匠をありふれた手法を用いて僅かに改変した程度のものとはいえず、当業者が容易になし得るものであるということはできない。
よって、本願意匠は、その出願前に当業者が日本国内又は外国において公然知られた態様に基づいて容易に創作をすることができたものではない。

第4 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲















審決日 2023-03-22 
出願番号 2021017366 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (N3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
渡邉 久美
登録日 2023-05-09 
登録番号 1744249 
代理人 石川 大輔 
代理人 山本 健策 
代理人 飯田 貴敏 
代理人 森下 夏樹 
代理人 山本 秀策 

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