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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K7
管理番号 1399451 
総通号数 19 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-10-17 
確定日 2023-06-15 
意匠に係る物品 Machine tool for metal working 
事件の表示 意願2021−500755「Machine tool for metal working」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 主な手続の経緯

本願は、2020年10月23日の欧州連合知的財産庁への出願に基づく、パリ条約による優先権の主張を伴い、令和3年(2021年)4月14日に国際登録がなされた国際意匠登録出願であり(国際登録番号DM214349)、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和4年(2022年) 1月19日付け 拒絶の通報
同年 7月12日付け 拒絶査定
同年 10月17日 審判請求書提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「Machine tool for metal working」(参考訳:「金属加工用工作機械」、以下日本語訳で示す。)とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠

原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)

オンライン動画共有プラットフォーム「YouTube」にアップロードされた下記の動画に写った「パンチングプレス」の意匠(動画内の18〜24秒付近で表示)

公知日 2016年10月25日
URL https://www.youtube.com/watch?v=iZtNQlTUVNU
動画のタイトル TRUMPF Punching:TruPunch 1000 − Retrofitting to an automated TruMatic 1000 fiber
投稿者 TRUMPFtube
媒体のタイプ online
情報源 インターネット

第4 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「金属加工用工作機械」であるのに対し、引用意匠は「パンチングプレス」であって、表記は異なるが、どちらも金属板に孔を開けたり、切断するために使用される金属加工用の機器であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。

(2)両意匠の形状等
両意匠の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。なお、引用意匠の認定に際しては、本願意匠と同じ向きとして、認定する。

ア 共通点
全体は、略扁平横長直方体の本体の左右側面に、横桟状の2本のブリッジで上端を連結した略横長矩形板状のカバーを取り付け、平面視略横長長方形の脚付きテーブルを両側から1台ずつ十字状に配置し、本体側面の背面近傍に両端に略矩形板状のストッパーを取り付けた略横長角柱状の部材(以下「レール部」という。)を直交するように貫通したものであって、本体の上面に略長円形の切欠きを2つ形成し、テーブルの正面及び外側の側面に略横長長方形板状の衝立を略L字状に取り付け、正面側にアーム付きの略横長矩形板状のコントロールパネルを取り付けている点において、共通する。

イ 相違点
(ア)全体
引用意匠は、本体の左右後方に略縦長直方体の箱体を2個ずつ設置しているのに対し、本願意匠は、何も設置してない点、
(イ)本体
a 正面について、本願意匠は、下端に略横長長方形の切欠きを形成しているのに対し、引用意匠は、上端左寄りにアームを取り付けるための切欠きと、真ん中よりやや上に略横長長方形状の凹陥を形成している点、
b 背面について、本願意匠は、長さの異なる略横長直方体の突起を真ん中よりやや上の左右と下端近くの右寄りに合計3個取り付けているのに対し、引用意匠は、背面の開示がなく背面側の態様が不明である点、
c 上面について、引用意匠は、正面から右側面にかけて略L字状に浅く段差状の切欠きを形成しているのに対し、本願意匠は、切欠きは形成していない点、
d 本願意匠は、正面の切欠きの前側に略矩形板の底面側の四隅に車輪を取り付けた台車様の部材を近接して配置しているのに対し、引用意匠は、何も配置していない点、
(ウ)脚付きテーブル
本願意匠は、右側のテーブルのみ天板の外端を若干短くしているのに対し、引用意匠は、右側のテーブルの外形と天板のサイズは同じである点、
(エ)コントロールパネルのアーム
本願意匠は、略縦長四角柱状の支柱を本体正面の左隅に近接して設置し、その先端に略L字状に屈曲した略角棒状のアームを取り付けているのに対し、引用意匠は、先端を下方に屈曲した略角棒状のアームを、本体の正面上端から前方に向かって水平に取り付けている点、
(オ)レール部
本願意匠は、レール部の両脇に、略横長矩形板状の衝立を設置しているのに対し、引用意匠は、衝立は取り付けていない点において、相違する。

類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響の評価に基づき、総合的に観察して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。

(1)意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は一致するから、同一である。

(2)形状等の共通点及び相違点の評価

ア 共通点の評価
この種物品の分野において、全体を、左右側面に、略横長矩形板状のカバーを取り付けた略扁平横長直方体の本体の側面に、正面及び側面に略L字状の衝立を取り付けた脚付きテーブルを両側から1台ずつ十字状に配置し、本体側面の背面近傍に両端に略矩形板状のストッパーを取り付けたレール部を直交するように貫通させたものは、以下の参考意匠1に見られるとおり、本願の出願前から公然知られており、また、上記カバーの上端を2本のブリッジで連結したものや、本体の正面側にアーム付きの略横長矩形板状のコントロールパネルを取り付けたものも、以下の参考意匠2に見られるとおり、本願の出願前から公然知られていることから、この共通するとした態様は、両意匠のみに共通するものとはいえず、この共通点が、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

参考意匠1(別紙第3参照)
日本国特許庁が、平成30年(2018年)1月9日に発行した
意匠公報第1594122号(意匠に係る物品:レーザ加工機構付きパンチプレス)の意匠

参考意匠2(別紙第4参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が、平成28年(2016年)12月16日に受け入れた、
トルンプ株式会社が発行した内国カタログ(平成29年度内国カタログNo.12)「モジュール式マシン TruPunch 1000 TruMatic 1000 fiber」第7頁所載
「複合加工機」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC29000812号)

また、本体の上面に形成した2つの略長円形の切欠きについては、両意匠にのみ見られる態様ではあるが、両意匠の特徴を顕著に表しているとまではいえず、これによる両意匠の類否判断に及ぼす影響は、限定的なものにとどまるものであるから、この共通点が、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。

イ 相違点の評価
相違点(ア)について、引用意匠の箱体は、本体の背面側に設置したものであるが、大きく、非常に目立つものであり、意匠全体としてみた場合、需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(イ)について、a及びdは、最も目に付きやすい正面側の態様の相違であって、需要者の注意を引くものといえるから、a及びdが、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。一方、bは、目に付きにくい背面の態様であるから、部分的な相違といわざるを得ず、cは、ごく浅い切り欠きであって、さほど目立つものではないから、b及びcが、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
相違点(ウ)について、右側のテーブルの天板における相違は、端部における部分的な相違であって、さほど目立つものではないから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。
相違点(エ)について、略縦長四角柱状の支柱を本体正面の左隅に近接して設置し、その先端に略右倒L字状に屈曲したアームを取り付けている本願意匠と、先端を下方に屈曲した水平状のアームを本体の正面上端に直接取り付けている引用意匠とは、一見して異なる視覚的印象となって、需要者に異なる美感を起こさせるものであることに加え、コントロールパネルは、各種設定等を行う部位であり、需要者が最も注意を払うものであるところ、コントロールパネルの位置を調節するために設けられたアームの態様も、需要者の関心が高いものであるから、相違点(エ)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。
相違点(オ)について、レール部は、正面奥の比較的目立つ位置に取り付けられているところ、本願意匠のように、レール部の両脇に、略横長矩形板状の衝立を設置している態様は、非常に目立つものといえ、需要者に異なる美感を起こさせるものといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。

ウ 形状等の類否判断
両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察し判断した場合、共通点は、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものであるのに対し、相違点(イ)及び相違点(ウ)は、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものの、相違点(ア)、相違点(エ)及び相違点(オ)は、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものである。
したがって、両意匠の形状等を全体として総合的に観察した場合、両意匠の形状等は、共通点に比べて、相違点が両意匠の類否判断に与える影響の方が大きいものであるから、両意匠の形状等は類似しない。

(3)小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、形状等において、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、両意匠は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲












審決日 2023-05-24 
出願番号 2021500755 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 尾曲 幸輔
内藤 弘樹
登録日 2023-06-30 
登録番号 1748378 
代理人 松永 章吾 
代理人 前川 砂織 
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 
代理人 山崎 和香子 

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