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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B3
管理番号 1399460 
総通号数 19 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-07-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-12-27 
確定日 2023-06-27 
意匠に係る物品 傘 
事件の表示 意願2021− 16190「傘」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとし、物品の部分について意匠登録を受けようとする、令和3年(2021年)7月27日の意匠登録出願であって、主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年(2021年) 8月 2日 :新規性の喪失の例外証明書
提出書の提出
令和4年(2022年) 3月 1日付け :拒絶理由の通知
同年 4月14日 :意見書の提出
同年 9月30日付け :拒絶査定
同年 12月27日 :審判請求書の提出

第2 本願の意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「傘」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書及び願書に添付した図面に記載のとおりとしたものであって、「実線で表した部分が、部分意匠として、意匠登録を受けようとする部分である。透明部を示す参考平面図において薄墨部分は、透明である。」としたものである(以下、本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠
原査定の拒絶の理由は、この意匠登録出願の意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」といい、本願意匠とあわせて「両意匠」という。)に類似するものと認められるので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第0960262号
(意匠に係る物品、洋傘)の意匠

第4 当審の判断
以下、引用意匠を本願意匠の図面の向きに合わせて対比する。
1 本願意匠及び引用意匠の対比
以下、引用意匠のうち本願部分に相当する部分を「引用部分」といい、本願部分と併せて「両部分」という。

(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「傘」であるのに対し、引用意匠は「洋傘」である。

(2)両部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能
両部分は、いずれも、傘のうち、破線で表された石突部、2つのネーム部及びハンドル部を除く実線で表された部分である。

(3)両部分の形状等
両部分の形状等には、主として、以下の共通点及び相違点がある。
(共通点1)全体の基本構成が、中棒と中棒から放射状に8分割して傘生地が張られた傘部から成る点
(共通点2)8分割された傘生地部のうち連続する2区画において、上部が不透明の生地、下部が透明な生地で構成された点
(相違点1)傘部の側面視において、本願部分はいわゆる「深張り」の形状であり、横幅全長:高さの比を約7:3として親骨が略弧状を形成するのに対し、引用部分はいわゆる「浅張り」又は「標準張り」の形状であり、横幅全長:高さの比を約4:1として親骨が略弧状を形成する点
(相違点2)傘生地部の側面視において、不透明の生地と透明な生地の比が、本願部分は約4:7であるのに対し、引用部分は約3:2である点
(相違点3)傘生地部の側面視において、本願部分の下縁は、直線状に構成されるのに対し、引用部分の下縁は、8分割ごとに緩やかな凹弧状の曲線で構成される点

類否判断
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「傘」であるのに対し、引用意匠は「洋傘」であって、表記は異なるが、いずれも、雨、雪或いは日差し等を避けるために頭上にかざして用いる傘であり、意匠に係る物品は一致する。

(2)両部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ、及び範囲
両部分の位置、大きさ及び範囲、並びに用途及び機能は共通する。

(3)両部分の形状等の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、雨、雪或いは日差し等を避けるために、頭上にかざして用いる「傘」であり、需要者は、主に、傘を購入して使用する一般需要者が想定される。
したがって、まず、需要者が手にとって使用する時に最も注意を払う、開いた状態における傘地全体から受ける視覚的印象について評価し、かつそれ以外の形状等も併せて、各部を総合して部分意匠全体として評価することとする。

ア 共通点の評価
(共通点1)は、両部分の形状等を概括的に捉えた場合の共通点であり、両部分のみに認められる格別の特徴とはいえず、この種物品分野においてはごく一般的な形態であるから、これらが部分意匠全体の美感に与える影響は小さい。
(共通点2)について、透明な生地で構成された傘生地部の下部は、通常使用時に需要者の視界に入る部分であって、需要者に観察されやすい傘部の視覚的印象に影響をもたらすものであり、部分意匠全体の印象に一定程度の影響を及ぼすものと認められる。

イ 相違点の評価
(相違点1)は、需要者に観察されやすい傘部の張りの相違であって、需要者であれば、傘の類型である深張りと浅張り又は標準張りを混同することはないから、大きな相違である。
(相違点2)は、需要者に観察されやすい傘生地部の下部における透明な部分の面積の相違であり、使用時には、当該部分の面積によって、使用者の視界の範囲が規定されるので、透明部分の割合が大きいか(本願部分)、不透明部分の割合が大きいか(引用部分)の相違は類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
(相違点3)は、部分的な相違にとどまり、両部分の類否判断に与える影響は小さい。

(4)両部分の形状等の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、部分意匠全体として総合的に観察し判断した場合、(共通点1)及び(相違点3)は類否判断に与える影響は小さく、(共通点2)については類否判断に与える影響は一定程度あるものの、(相違点1)及び(相違点2)のそれを凌駕するほどものとはいえない。

したがって、両部分の形状等を総合的に観察した場合、共通点に比べて、相違点がもたらす影響の方が大きいものであるから、両部分の形状等は類似しない。

3 小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一で、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲も共通するが、両部分の形状等においては、類似しないから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲



審決日 2023-06-14 
出願番号 2021016190 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 尾曲 幸輔
江塚 尚弘
登録日 2023-07-05 
登録番号 1748613 
代理人 弁理士法人あしたば国際特許事務所 

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