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審決分類 審判    D6
管理番号 1399461 
総通号数 19 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2022-03-30 
確定日 2023-06-15 
意匠に係る物品 収納容器 
事件の表示 上記当事者間の意匠登録第1472070号「収納容器」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
次を結論とする審決を求める。
(1)登録第1472070号意匠の登録を無効とする。
(2)審判費用は被請求人の負担とする。

2 答弁の趣旨
次を結論とする審決を求める。
(1)本件審判の請求は成り立たない。
(2)審判費用は請求人の負担とする。


第2 手続の経緯
1 本件登録意匠の出願から意匠公報の発行までの経緯
本件登録意匠についての、出願から本件無効審判請求の前までの手続の経緯の概略は以下のとおりである。
平成24年 6月 5日 :出願(意願2012−13320)
同年11月16日付け:拒絶理由通知
同年12月14日 :意見書の提出
平成25年 4月25日付け:登録査定
同年 5月10日 :意匠権の設定登録
同年 6月17日 :意匠公報の発行

2 本件無効審判の手続の経緯
本件無効審判における手続の概略は、以下のとおりである。
令和 4年 3月30日 :審判請求書の提出
同年 6月 3日 :審判事件答弁書の提出
同年 7月12日 :審判事件弁駁書の提出
同年 8月24日付け:審理事項通知
同年10月 7日 :口頭審理陳述要領書の提出(被請求人)
同月24日 :口頭審理陳述要領書の提出(請求人)
同年11月 7日 :口頭審理
審判長は、上記口頭審理において、口頭により審理終結通知を告知した(令和4年11月7日の「第1回口頭審理調書」)。


第3 請求人が主張する無効理由
1 無効理由1
本件登録意匠は、その出願日前に中国の意匠公報に掲載された甲第1号証の意匠(以下「甲1意匠」という。)と類似するから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。

2 無効理由2
本件登録意匠は、その出願日前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、甲1意匠、甲第6号証ないし同11号証、同15号証、同17号証、同18号証、同20号証及び同21号証等の各意匠(以下、それぞれ「甲6意匠」ないし「甲11意匠」、「甲15意匠」、「甲17意匠」、「甲18意匠」、「甲20意匠」及び「甲21意匠」という。)に基づいて容易に創作をすることができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。


第4 当事者の主張及び証拠方法
1 無効理由1
(1)請求人の主張
ア 本件登録意匠
本件登録意匠は、意匠に係る物品を「収納容器」とするもので、意匠に係る物品の説明の欄において、「多目的の収納に用いられる。例えば、衣料、雑誌、新聞、おもちゃ、野菜、乾物などを収容するのに適している。」と記載されているように、収容物を問わない容器である。
(ア)基本的構成態様
[1]収納容器本体は、上方に開口部を有する有底筒状の容器本体であり、
[2]収納容器本体上方の対向位置には、一対の把手用ロープが夫々取り付けられてなる。
(イ)具体的構成態様
[3]収納容器本体は、合成樹脂製で、略楕円形状で小判型の底面とこれより大なる略楕円形状で小判型の上面とからなり、底面から上面外方に向かって漸次広がる略逆円錐台形状である、
[4]収納容器本体の上部は、正背面視、上辺が凹曲線形状に形成されてなる、
[5]収納容器本体の上部は、側面視、上辺が凸曲線形状に形成されてなる、
[6]把手用ロープは、収納容器本体の上部両側面に側面視略U字状に垂下され、その両端部が開孔を通して結び目として収納容器本体内に裸出してなる。
イ 甲1意匠
甲1意匠は、2009年6月3日に公告(公開)された中国の意匠公報CN300935313Dに掲載された意匠で、その名称(意匠に係る物品)を「包装桶(楕円)」とするものである。
(ア)基本的構成態様
[a]包装桶本体は、上方に開口部を有する有底筒状の桶本体であり、
[b]包装桶本体上方の対向位置には、一対の把手用ロープが夫々取り付けられてなる。
(イ)具体的構成態様
[c]包装桶本体は、合成樹脂製で、略楕円形状で小判型の底面とこれより大なる略楕円形状で小判型の上面とからなり、底面から上面外方に向かって漸次広がる略逆円錐台形状である、
被請求人は、甲1意匠に係る物品は、主視図及び左視図の容器上端に塗装が剥げたごとき黒色模様が見られることからスチール製であると解されると主張するが、立体図(斜視図)及び桶をオープンした状態の立体図(斜視図)には、黒色模様や黒色部分は掲載されていないものであって、該主視図(正面図)及び左視図(左側面図)の上端部の部分的な黒色をもって被請求人主張のような「塗装が剥げた」と推定することは決してできない。
[d]包装桶本体の上部は、正背面視、上辺が直線形状に形成されてなる、
[e]包装桶本体の上部は、側面視、上辺が直線形状に形成されてなる、
[f]把手用ロープは、包装桶本体の上部正背面に正背面視略U字状に垂下され、その両端部が開孔を通して結び目として包装桶本体内に裸出してなる。
ウ 本件登録意匠と甲1意匠との対比
(ア)両意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品が「収納容器」であるのに対し、甲1意匠の意匠に係る物品は「包装桶」であるが、いずれも用途機能を共通にする同一又は類似する物品である。
(イ)共通点
本件登録意匠と甲1意匠とは、収納容器本体(桶本体)に一対の把手用ロープを設けた基本的形態が共通し、しかも該容器本体が合成樹脂製である点や収納容器本体の形状が略逆円錐台形状である点においても共通する。すなわち、前記構成においてその基本的構成態様([1][2]と[a][b])において共通する。
また、具体的構成態様である[3]と[c]においても共通すると共に、[6]と[f]のうち、把手用ロープが収納容器本体の上部に略U字状に垂下され、その両端部が開孔を通して結び目として収納容器本体内に裸出してなる点においても共通しており、その主要な構成態様において共通するものである。
(ウ)相違点
a 収納容器本体の上周縁形状の相違
本件登録意匠と甲1意匠とは、具体的構成態様である収納容器本体(桶本体)の上部([4][5]と[d][e])において、本件登録意匠は、正背面視、上辺が凹曲線形状に形成されてなると共に、側面視、上辺が凸曲線形状に形成されてなるのに対し、甲1意匠は、正背面視及び側面視、上辺が直線形状に形成されてなる点で相違する。
b 把手用ロープの取付位置の相違
本件登録意匠と甲1意匠とは、具体的構成態様である把手用ロープの取付位置について([6]と[f])、本件登録意匠は側面側に設けられてなるのに対し、甲1意匠は正背面側に設けられてなる点で相違する。
エ 本件登録意匠と甲1意匠との類否判断
(ア)合成樹脂製の容器本体とロープとの組み合わせの評価について
被請求人は、本件登録意匠の拒絶理由通知書(甲第13号証)に対して提出した意見書(甲第14号証)において、「合成樹脂製の容器本体とロープという組み合わせに意外性があり、斬新でインテリア性を有するため、収納容器の分野の当業者にとって、容易に創作できたものとはいえません。」と主張する。
しかるに、上記公知意匠(甲1意匠、甲5意匠、甲6意匠、甲7意匠等)からも明らかなように、収納容器本体が合成樹脂製で、該容器本体に一対の把手用ロープを設けた組み合わせ形態は何ら新規な構成ではなく、ありふれた周知形態である。なお、甲1意匠と本件登録意匠とはこの点何ら相違するものではない。
なお、被請求人は、長手方向の両端上部に把手用ロープが設けた構成は全く存在しないと主張しているが、甲8乃至甲10から明らかなように、長手方向の両端上部に把手用ロープが設けられた構成は、本件登録意匠の出願日前において公知な構成であるため、被請求人の主張は誤りがある失当な主張である。
(イ)相違点
本件登録意匠と甲1意匠とは、前記のように主要な構成態様において共通するものであるが、下記点において相違するため該相違点について評価する。
a ロープの取付位置の評価([6]と[f])
本件登録意匠と甲1意匠とは、上記したように、本体上部に配置された把手用ロープの取付位置が本体の側面側であるか正背面側であるかで相違してなる。
しかし、係る相違は、本件登録意匠の拒絶理由通知書(甲第13号証)に対して提出した意見書(甲第14号証)において、被請求人自ら「軟質の合成樹脂製の容器本体とロープという組み合わせに意外性があり、斬新でインテリア性を有するため、収納容器の分野の当業者にとって、容易に創作できたものとはいえません。」と主張しているように、容器本体とロープ(把手用ロープ)との組み合わせが特徴であるとする以上、その取付位置は本件登録意匠と甲1意匠との類否判断に影響を与えるものではない。
そもそも、甲5意匠ないし甲11意匠に示すように、側面側や正背面側等といった容器本体の対向する位置に把手用ロープを貫通させて収納容器等の本体内にロープの結び目を外観視できるように設けることはありふれた周知ないし公知の態様であり、その取付位置の相違が類否判断に影響を与えるものでないことは明らかである。
被請求人は、使用態様を踏まえることを前提として、本件登録意匠の把手用ロープの取付位置は鋭意検討したうえで創作した構成に係るものであるため、把手用ロープを容器本体の長手方向の両端上部か、短手方向の上端上部かに設けた相違は、差異点として非常に大きいものであると主張する。
しかし、使用態様の差異を強弁して類否判断すること自体失当であり、容器本体の長手方向や短手方向のいずれかの両端上部に把手用ロープを設けることはありふれた態様である以上(甲5ないし甲11)、ロープの取付位置が長手方向か短手方向かの相違は両意匠の実質的な相違ではなく、本件登録意匠の把手用ロープの取付位置とすることに何ら創作的価値もないため、提げ手の取付位置の相違が類否判断に影響しないこと等にも鑑みれば(甲31、甲41等)、把手用ロープの取付位置の相違は、本件登録意匠と甲1意匠の類否判断に影響を与える差異点にはなり得ない。
また、被請求人は、側面側や正背面側などといった容器本体の対向する位置に把手用ロープを設けることが周知ないし公知の形態であることは、甲5ないし甲11において公知であることを認めた上で、軟質の合成樹脂からなる収納容器本体の長手方向の両端上部に把手用ロープが設けられている公知例がない等と縷々主張する。
しかし、軟質の合成樹脂からなる収納容器本体の長手方向の両端上部に把手用ロープが設けられている公知例が仮になかったとしても、被請求人の主張は、本件登録意匠の把手用ロープの取付位置の評価が低いことを認めるものであり、前記したように、把手用ロープの取付位置の相違が本件登録意匠と甲1意匠の類否判断に影響を与える差異点にはなり得ないことの裏付けにもなるものである。
b ロープの結び目の評価
本件登録意匠と甲1意匠とは、把手用ロープの太さや端部の結び目について多少大小の相違はあるが、甲第5号証ないし甲第12号証に示すように、ロープの端部に結び目を設けること自体ありふれた手法であるだけでなく、結び目の大きさや形態は把手用ロープの太さに応じて必然的に決まるものであり、本件登録意匠の結び目の大きさや形態自体公知であるため、ロープの太さやロープの結び目の大きさ、形態の相違がこの種意匠の特徴とはなり得ず、本件登録意匠と甲1意匠との類否判断に影響を与えるものではない。
特に使用状態を考慮すると、結び目の端部は収納物で隠れてしまうことが容易に理解できるため、結び目の大きさやその形態が類否に影響を与えるものではない。
c 容器本体の上周縁形状の評価([4]及び[5]と[d]及び[e])
本件登録意匠と甲1意匠とは、収納容器本体(桶本体)の上辺形状が正背面視において凹曲線形状であるか直線形状であるか、側面視において凸曲線形状であるか直線形状であるかで相違してなる。
しかるに、本件登録意匠は、審査段階の拒絶理由通知書(甲第13号証)に対し、被請求人が意見書(甲第14号証)において、「本件意匠では、その開口部上端面は、正面中央から側面中央の最高位置に向かって滑らかに大きく立ち上がる曲線を形成しているため、優しい印象を与える美感を有しています。」と強弁して意匠登録された経緯があるが、この構成態様は、甲第15号証及び同17号証、同18号証、同20号証、同21号証等から明らかなように公知の形状であるため、両意匠の非類似を決定づける要素とはなり得ない。
d 甲1意匠の上部内側には、被請求人が主張する凸状部材なるものが形成されているようだが、意匠公報では明確に視認できない他、内側の構造で外観上は目立つものではなく、桶全体に占める割合も非常に小さく、需要者の注意を喚起するものではないため、本件登録意匠と甲1意匠の類否判断に何ら影響を及ぼすものではない。
オ 小結
よって、本件登録意匠と甲1意匠との相違点はいずれも両意匠を全体観察した場合に細部的事項であって、本件登録意匠は甲1意匠と類似するため、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたことは明白である以上、同項第48条第1項第1号により無効にされるべきものである。

(2)被請求人の主張
請求人の主張は、以下のとおり、全く理由がない。
ア 本件登録意匠と甲1意匠との対比
(ア)両意匠に係る物品の対比
本件登録意匠に係る物品は「収納容器」である。
この点、請求人は、本件登録意匠に係る物品と、甲1意匠に係る物品について、「いずれも用途機能を共通にする同一又は類似する物品である」などと述べている(前記(1)ウ(ア))。
しかしながら、甲1意匠に係る物品「包装桶(楕円)」は、何を意味しているのか、いかなる用途及び機能を有しているのか明らかでなく、請求人が、いかなる根拠に基づいて用途機能を共通にするなどと主張するかは全く不明である。
したがって、本件登録意匠と甲1意匠に係る物品の対比ができないことから、請求人の主張は失当である。
なお、本件登録意匠に係る物品と、甲1意匠に係る物品は、本件登録意匠に係る物品が軟質の合成樹脂でできているのに対して、甲1意匠に係る物品は、主視図及び左視図の容器上端に塗装が剥げたごとき黒色模様が見られることからスチール製であると解され、また、蓋を取り付けて用いるものであることから少なくとも硬質の素材からなるものである点で大きく異なる点については念のため付言する。
(イ)両意匠の対比
a 共通点
本件登録意匠と甲1意匠とは、基本的構成態様として、底面と、そこから徐々に拡径して立ち上がり長手方向の両端部が大きく湾曲した周面とを有する容器本体と、その容器本体の両端上部に対向して設けられた把手用のロープとから構成される点で、共通する。
また、具体的構成態様において、把手用ロープが周面を貫通して内部に突出する点で共通する。
b 差異点
本件登録意匠と甲1意匠は以下の点で相違する。
(a)容器本体の底面の形状並びに開口部の形状及び蓋の有無
本件登録意匠は、軟質の合成樹脂でなり、その底面及び開口部は略長円形状であり、開口に蓋を用いないのに対し、甲1意匠は、スチールなどの硬質素材で形成され、その底面及び開口部は略楕円形状であり、開口に同形の蓋を用いる点。
(b)把手用ロープの取付位置
本件登録意匠は収納容器本体の長手方向の両端上部に把手用ロープが設けられているのに対し、甲1意匠は包装桶本体の短手方向の両端上部に把手用ロープが設けられている点。
(c)把手用ロープの垂下の形状
本件登録意匠の把手用ロープはU字状に垂下してなるのに対し、甲1意匠の把手用ロープは略V字状に垂下してなる点。
(d)正面視及び背面視における上辺の長さと下辺の長さと高さとの比率並びに左右両側面視における上端部の幅と下端部の幅との比率
本件登録意匠の収納容器本体は、正面視及び背面視において、上辺の長さと下辺の長さと高さとの比率が約10:7.4:7.4であり、また、左右両側面視において、上端部の幅と下端部の幅との比率が約6.7:5.2であるのに対し、甲1意匠の包装桶本体は、正面視及び背面視において、上辺の長さと下辺の長さと高さとの比率が約10:8.3:7.2であり、また、左右両側面視において、上端部の幅と下端部の幅との比率が約6.7:4.9である点。
(e)把手用ロープの太さ及び模様
本件登録意匠の把手用ロープの太さと収納容器本体の正面視での最大径との比は約1:35であり、本件登録意匠の把手用ロープは撚り模様を有するのに対し、甲1意匠の把手用ロープの太さと包装桶本体の正面視での最大径との比は約1:88であり、甲1意匠の把手用ロープは撚り模様を有するかが不明である点。
(f)把手用ロープの両端部の形状
本件登録意匠の把手用ロープは両端部に結び目を有するのに対し、甲1意匠の把手用ロープは両端部に把手用ロープとは異なると思われる材料により構成されている留め具を有する点。
(g)正面視及び背面視の開口端の形状
本件登録意匠の収納容器本体における開口した開口端は、正面視及び背面視において、両端から中央部に向かって緩やかに下方に湾曲した円弧を形成しており、両端の高さと中央の高さとの比率が約10:8.7であるのに対し、甲1意匠の包装桶本体における開口した開口端は、正面視及び背面視において、直線形状である点。
(h)底面の構成
本件登録意匠の収納容器本体の底面には、その長手方向両端部には、その円弧に沿って、中央とその両側に等間隔で小さな突起がそれぞれ3つ設けられているのに対し、甲1意匠の包装桶本体底面の構成は不明である点。
(i)開口端における凸状部材の有無
本件登録意匠の収納容器本体における開口した開口端には特段の凸状の部材が設けられていないのに対し、甲1意匠の包装桶本体における開口した開口端には複数の凸状部材が設けられている点。
イ 本件登録意匠と甲1意匠との類否判断
(ア)共通点と差異点の評価
上述のとおり、甲1意匠に係る物品がどのようなものであるか明らかでなく、また、請求人における両意匠の類否に関わる主張は、この点を明らかにしないうえで、甲1意匠に係る物品が合成樹脂製であると一方的に決めつけたうえで行われた恣意的なものといわざるを得ず、その前提において失当であると思われるものの、以下では、念のため、両意匠の共通点と差異点の評価について主張する。
a 被請求人主張の概要
本件登録意匠と甲1意匠との共通点は、基本的構成態様として、容器本体が徐々に拡径して立ち上がり長手方向の両端部が大きく湾曲した周面とを有する点と、把手用ロープが容器本体のいずれかの両端上部に対向して設けられた点であり、また、具体的構成態様として、把手用ロープが周面を貫通して内部に突出する点である。
これに対して、両意匠の差異点は、基本的構成態様において、(a)容器本体の底面の形状並びに開口部の形状及び蓋の有無、(b)把手用ロープの取付位置、(c)把手用ロープの垂下の形状において存在し、具体的構成態様においても、(d)正面視及び背面視における上辺の長さと下辺の長さと高さとの比率並びに左右両側面視における上端部の幅と下端部の幅との比率、(e)把手用ロープの太さ及び模様、(f)把手用ロープの両端部の形状、(g)正面視及び背面視の開口端上辺の形状、(h)底面の構成、(i)開口端における凸状部材の有無、と非常に多く存在する。
b 把手用ロープの取付位置の相違について
(a)本件登録意匠に係る物品の使用態様(性質)を踏まえると、本件登録意匠が、軟質の合成樹脂をその材料とし、把手用のロープを収納容器本体の長手方向の両端上部に対向して設けた形態とした理由が容易に理解できる。すなわち、その使用態様に基づき、把手用のロープを収納容器本体の長手方向の両端上部に対向して設けたものである。
これに対して、甲1意匠に係る物品においては、その使用態様から考えて、把手用のロープを収納容器本体の長手方向の両端上部に対向して設けるなどといった理由や蓋然性は全く想定し得ない。
本件登録意匠は収納容器本体の長手方向の両端上部に把手用ロープが設けられているのに対し、甲1意匠は包装桶本体の短手方向の両端上部に把手用ロープが設けられている相違は、本件登録意匠においては、本件登録意匠に係る物品の想定される使用態様から、創作者が、その利便性を向上させるために鋭意検討したうえで創作した構成に係るものであり、差異点として非常に大きいものである。
この点、請求人が提出する公知意匠においても、長手方向の両端上部に把手用ロープが設けた構成は全く存在しないのであるから、公知意匠との関係においても、本件登録意匠における当該構成は高く評価されるべきものである。
以上のことからすると、本件登録意匠と甲1意匠とは、他の差異点を考慮するまでもなく、「把手用ロープの取付位置」という差異点(c)のみをもってすら、両意匠の共通点により生じうる美感を凌駕するものといえ、本件意匠と甲1意匠は、意匠全体として視覚を通じて起こさせる美感が大きく異なるものである。
(b)請求人は、甲8乃至甲10から、長手方向の両端上部に把手用ロープが設けられた構成は本件登録意匠の出願日前において公知な構成であるとも主張するが(前記(1)エ(ア))、甲8乃至甲10には、略直方体状の、木製ないし布製の、少なくとも軟質の樹脂製ではない収納容器ないし箱が掲載されているに過ぎず、軟質の合成樹脂で一体に形成された収納容器本体において長手方向の両端上部に把手用ロープが設けられた構成や、略長円形状の底面とそこから徐々に拡径して立ち上がり長手方向の両端部が大きく湾曲した周面とを有し上部が略長円形状に開口した収納容器本体において長手方向の両端上部に把手用ロープが設けられた構成は全く存在しないため、請求人の上記主張は失当である。
c 把手用ロープの取付位置の評価についての請求人の主張について
(a)請求人は、両意匠における「把手用ロープの取付位置」の相違を差異点として認めたうえで、この差異点の評価として、被請求人の本件登録意匠の審査過程における意見書の主張をもとに、被請求人が容器本体と把手用ロープとの組み合わせが特徴であると述べていたという点をもって、類否判断へ影響を与えるものではないとし(前記(1)エ(イ)a)、また、甲5ないし甲11において、側面側や正背面側などといった容器本体の対向する位置に把手用ロープを設けることは周知ないし公知の態様であるなどと主張するがいずれも明らかに失当である。
まず、意見書において特定の公知意匠との対比を前提として本件登録意匠の特徴点を述べたからといって、他の特徴点が存在しないことまでは述べておらず、他の特徴的構成が存する場合に、それが類否判断に影響を与えないなどとはいえないのであるから、請求人の上記主張が失当であることは明らかである。
また、側面側や正背面側等といった容器本体の対向する位置に把手用ロープを設けることが周知ないし公知の形態であるとの請求人の主張は、なるほどたしかに甲5ないし甲11においては容器に把手用ロープを設けること自体は種々紹介されているとしても、本件登録意匠のように、軟質の合成樹脂からなる収納容器本体の長手方向の両端上部に把手用ロープが設けられている公知例はひとつもないのであるから、請求人は、単に本件登録意匠と甲1意匠との差異点とは関係のない公知意匠を多数挙げたに過ぎず、失当であるといわざるを得ない。
(b)請求人は、被請求人の主張は、本件登録意匠の把手用ロープの取付位置の評価が低いことを認めるものであり、把手用ロープの取付位置の相違が本件登録意匠と甲1意匠の類否判断に影響を与える差異点にはなり得ないことの裏付けにもなるなどと主張している(前記(1)エ(イ)a)。
しかしながら、明らかに誤った、全く不当な主張である。被請求人は答弁書において、請求人が提出する甲5乃至甲11を参照したとしても、本件登録意匠のように、軟質の合成樹脂からなる収納容器本体の長手方向の両端上部に把手用ロープが設けられている公知例はひとつもないことを指摘しているに過ぎず、本件登録意匠の把手用ロープの取付位置の評価が低いことを認めるものでは決してない。
むしろ、本件登録意匠のように、軟質の合成樹脂からなる収納容器本体の長手方向の両端上部に把手用ロープが設けられている公知例はひとつもないのだから、差異点(b)把手用ロープの取付位置が、差異点(a)容器本体の底面の形状並びに開口部の形状及び蓋の有無と相俟って、本件登録意匠と甲1意匠の類否判断に重大な影響を与えることは明らかである。
ウ 小括
以上より、本件登録意匠は甲1意匠に類似するものではないから、本件登録意匠が意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものであって無効とされるべきであるとの請求人の主張には全く理由がない。

2 無効理由2
(1)請求人の主張
ア 構成態様の評価
(ア)基本的構成態様の評価
本件登録意匠のように収納容器、特に合成樹脂製の収納容器に一対の把手用ロープを設けるとのデザインコンセプトやその形態は、周知ないし少なくとも公知のデザイン思想であると同時に公知の形態である。
本件において、本件登録意匠の基本的構成態様である、「収納容器本体が上方に開口部を有する有底筒状の容器本体である構成」、「収納容器本体上方の対向位置には、一対の把手用ロープが夫々取り付けられてなる構成」、並びに具体的構成態様である、「収納容器本体が略楕円形状で小判型の底面とこれより大なる小判型の上面とからなり、底面から上面外方に向かって漸次広がる略逆円錐台形状である構成」は、この種収納容器の分野において、甲1意匠等によって周知ないし公然知られた構成である。
(イ)具体的構成態様の評価
さらに、本件登録意匠の具体的構成態様である、「把手用ロープは、収納容器本体の上部両側面に側面視略U字状に垂下され、その両端部が開孔を通して結び目として収納容器本体内に裸出してなる」構成も、この種収納容器の分野において甲1意匠、甲第6号証ないし甲第11号証によって公然知られたものである。
さらに、本件登録意匠の収納容器本体の上辺が、正背面視凹曲線形状、側面視凸曲線形状である具体的構成態様も甲第15号証、同17号証、同18号証、同20号証、同21号証等によって周知ないし少なくとも公然知られた(公知の)形状である。
(ウ)創作性
すなわち、本件登録意匠は、その出願当時において公然知られていた甲1意匠の上辺を甲第15号証、同17号証、同18号証、同20号証、同21号証等に示す収納容器等(収納かご等の意匠)のような円弧に形成してなると共に、甲第15号証に示す収納かご短手方向の両端上部に対向して設けた取手部を、当業者にとってありふれた手法によって甲第6号証ないし甲第11号証に示す把手用ロープ(ロープ様の持ち手)に置き換えして構成したにすぎない意匠、若しくは、甲1意匠の上辺を甲第15号、同17号証、同18号証等に示す収納容器等のような円弧に形成した桶本体と、甲第6号証ないし甲第11号証に示す把手用ロープを当業者にとってありふれた手法により寄せ集めたにすぎない意匠に他ならない。そのためいずれにしても、本件登録意匠は、当業者であれば容易に創作することができたものであるため、意匠法第3条第2項の規定によって本件登録意匠は意匠登録を受けることができない意匠であることは明白である。
なお、甲1意匠の包装桶本体の外観形状と本件登録意匠の収納容器本体の外観形状に凸状部材の有無による相違があるとしたとしても、本件登録意匠の外観形状は収納容器本体の外観であって、中国語において広口で底が狭い円形状の鉢やたらい等といった多目的の収納に用いられる収納容器である「盆」(甲20意匠)の外観形状と実質同一形状であるため、本件登録意匠の創作性が否定されることが左右されるものではない。
イ 被請求人の反論について
(ア)被請求人は、後記(2)イにおいて、「容器上辺の円弧状や把手用ロープの公知意匠があるとしても、単にそれぞれそのようなものが存在するというだけで、甲1意匠の包装桶本体のどの位置にどのようにロープを取り付けるかなどの示唆はなく、個々の形状の組み合わせパターンは無数に考えられる」と主張する。
しかし、この種意匠の分野においては、甲15、甲17、甲18、甲20、甲21等に示すように、種々の円弧形状(曲率)とされた上辺形状からなる容器本体が公知であるため、上辺が円弧形状である意匠と直線形状である意匠が類似と判断されている実情にも鑑みれば(甲45、甲46等)、甲1意匠の本体上辺を本件登録意匠の本体上辺の形状とすることが当業者にとって創作容易であることは明らかである。
また、本件登録意匠や甲1意匠のような、全体として横長な楕円形状からなる略逆円錐台形状からなる容器本体においては、長手方向の両端上部か短手方向の両端上部にロープ(提げ手)を設けなければ持ち上げることはできず、これまでに例示した公知意匠はいずれも長手方向若しくは短手方向の両端上部に持ち手や提げ手が設けられてなる以上、ロープの取付位置は長手方向か短手方向の両端上部の一対位置に限定されるのであり、このことは甲5乃至甲11によっても示唆されている。
よって、当業者が把手用ロープを甲1意匠に示されている包装桶本体のどの位置にどのように取り付けるかということは、当業者にとって、意匠全体の美感に重大な影響を及ぼすものでも高度に創作性が要求される事項(構成態様)ではないため、本件登録意匠は単なる置き換え又は寄せ集めによって構成された創作容易な意匠に他ならず、被請求人の主張は失当である。
(イ)被請求人は、本件登録意匠の収納容器本体の形状を前提として、把手用ロープの態様や取付位置についてその特徴を強弁しているが、合成樹脂製の収納容器本体の対向する両端上部に一対の把手用ロープを設けることは甲5ないし甲11によって公知ないしありふれた態様であり、かつ、撚り模様が視認できる一対の把手用ロープが太い縄紐状である態様は甲8ないし甲11、両端部の結び目の態様は甲12によってそれぞれ公知で、いずれもありふれた態様であり、しかも容器本体の湾曲壁面に一対のロープをU字状に垂下させて取り付けた態様も甲11等によって公知である以上、本件登録意匠はこの種収納容器の分野において、当業者にとって前記公知意匠に基づき、ありふれた手法によって容易に創作することができた意匠であることは明らかである。
(ウ)被請求人は、請求人が挙げた公知意匠を例示して、「把手の取付位置として、長手方向の両端上部か短手方向の両端上部等とが組み合わされて数多くの態様が開示されており、このことは、甲1意匠のような全体として横長な楕円形状で略逆円錐台形状からなる容器本体における把手に関して、極めて多くのバリエーションが存在していることを裏付けるものである。」(後記(2)エ(ア))と主張する。
このことは、把手の取付位置として長手方向の両端か短手方向の両端かは既に公知の手法として知られていることを裏付けるものである。
すなわち、被請求人の主張は、本件登録意匠の把手用ロープを収納容器本体の長手方向の両端上部に取り付けること自体が、意匠全体の美感に重大な影響を及ぼすものでも、当業者にとって高度な創作性が要求される事項(構成態様)でもないことをむしろ自認しているのである。
また、被請求人は、「当業者が把手用ロープを甲1意匠に示されている包装桶本体のどの位置にどのように取り付けるかということについて、多様な創作の余地があることは明らかである」と主張しているが、到底多様な創作の余地があるとは考えられず、把手用ロープの取付位置の決定は創作ではなく単なる選択(二者択一)であるため、「意匠全体の美感に重大な影響を及ぼす高度な創作性が要求される」とする主張も含めて、被請求人の主張には一切理由がない。
(エ)被請求人が指摘した「把手用ロープの太さと収納容器本体の正面視での最大径との比率が約1:35」である構成は、甲6乃至甲10において種々の比率が公知であることからすれば、本件登録意匠が創作容易な意匠であることに何ら影響を与えるものではない。
本件登録意匠の把手用ロープの太さは、格別創作性のある太さでは決してないのである。
よって、「本件登録意匠の把手用ロープの特徴のうちの1つないし少数を有する公知意匠を複数示していること自体が、本件登録意匠の創作性がきわめて高いことの証左である。」との被請求人の主張にも理由はないし、係る主張は、列記した複数の構成が公知であり、本件登録意匠は複数の公知の構成を単なる寄せ集め又は置き換えによって構成された創作容易な意匠であることを認めるものである。
ウ 小結
よって、本件登録意匠が仮に意匠法第3条第1項第3号の無効理由に該当しないとしても、本件登録意匠はこの種物品分野における当業者であれば、容易に創作できたものであるため、意匠法第3条第2項の規定に違反して登録されたことは明白である以上、同項第48条第1項第1号により無効にされるべきものである。

(2)被請求人の主張
請求人の主張は、以下のとおり、全く理由がない。
ア 本件においては、まず、甲1意匠に示されている包装桶本体の外観形状と本件登録意匠の収納容器本体の外観形状には大きな相違があることは、前記1(2)において主張したとおりである。
また、甲8の1及び甲8の2並びに甲10に示された意匠については、いずれも個人によるインターネットへの投稿記事であり、そもそも掲載日付に信用性がないだけでなくこれらの意匠の画像が掲載日付に公衆が閲覧できる状態になったかどうかも定かではない。
したがって、甲8の1及び甲8の2並びに甲10に示された意匠は、そもそも、本件登録意匠の出願日以前に公知であったとはいえない。
イ かかる前提のもと、仮に請求人が主張するとおり、容器上辺の円弧状や把手用ロープの公知意匠があるとしても、単にそれぞれそのようなものが存在するというだけで、甲1意匠の包装桶本体のどの位置にどのようにロープを取り付けるかなどの示唆はなく、個々の形状の組み合わせのパターンは無数に考えられるのである。
すなわち、意匠の創作は、個々の要素を全体として一つのまとまりに作り上げるものであるから、個々の要素だけでなく、全体のまとまりをも観察した上でその創作性を判断すべきである。本件登録意匠における収納容器本体と把手用ロープの組み合わせ態様は、造形上、多様な創作の余地があるところであって、構成各部の態様を具体的に決定し、構成各部をどのように関連付け、構成し、それらの結合により全体の形態についてどのように具体化するかの選択肢は多様にあるものである。また、当業者が把手用ロープを甲1意匠に示されている包装桶本体のどの位置にどのように取り付けるかということは、意匠全体の美感に重大な影響を及ぼす高度に創作性が要求される事柄である。
以上のことから、本件登録意匠は、単なる置き換え又は寄せ集めによって構成されたものとは到底いえない。
ウ 甲6及び甲7に示されている把手用ロープは本件登録意匠のように撚り模様がはっきり視認できる程度に太い縄紐状ではなく、細紐状である。
また、甲8に示されている把手用ロープは太い縄紐状ではあるが、角張った箱型の収納容器本体は織紙製であるため、収納容器本体の素材とのコントラストに意外性がないものである。
さらに、甲9ないし甲11に示されている把手用ロープも太い縄紐状であるが、角張った箱型の収納容器本体は木製であるため、収納容器本体の素材とのコントラストに意外性がないものである。
本件登録意匠では、撚り模様がはっきり視認できる程度に太い把手用ロープが、略長円形状の上面が開口した収納容器本体の正面視正面側及び背面側の、湾曲が小さい壁面ではなく、左右両側面の湾曲が大きい壁面の上部に狭い間隔で根本部が取り付けられ、U字状に垂下されている点において、甲8ないし甲11に示された意匠と大きく相違している。
エ 請求人の反論について
(ア)請求人は、当業者が把手用ロープを甲1意匠に示されている包装桶本体のどの位置にどのように取り付けるかということは、当業者によって、意匠全体の美感に重大な影響を及ぼすものでも高度に創作性が要求される事項(構成態様)ではないなどと主張する(前記(1)イ(ア))。
しかしながら、請求人が挙げる公知意匠に限ってみても、把手の形態として、一対のロープ(甲1、甲5、甲6及び甲7)、整理かごの側面内又はその上部に一体に形成された提げ手(甲27と甲28、甲33と甲34等)、容器本体の各両端上部に両端部が固定された1つの提げ手(甲31、甲41等)等と、把手の取付位置として、長手方向の両端上部か短手方向の両端上部等とが組み合わされて数多くの態様が開示されており、このことは、甲1意匠のような全体として横長な楕円形状からなる略逆円錐台形状からなる容器本体における把手に関して、極めて多くのバリエーションが存在していることを裏付けるものである。
したがって、当業者が把手用ロープを甲1意匠に示されている包装桶本体のどの位置にどのように取り付けるかということについて、多様な創作の余地があることは明らかであり、意匠全体の美感に重大な影響を及ぼす高度な創作性が要求されることは明らかである。
(イ)請求人は、種々の公知意匠から、収納容器本体の対向する両端上部に一対の把手用ロープを設けること、撚り模様が視認できる一対の把手用ロープが太い縄紐状であること、両端部の結び目の態様、容器本体の湾曲壁面に一対のロープをU字状に垂下させて取り付けた態様等が公知であることを主張する(前記(1)イ(イ))。
しかしながら、請求人が示す公知意匠は本件登録意匠とは全く類似しない公知意匠において、本件登録意匠の把手用ロープの特徴の1つないし少数を有するものを例示しているに過ぎず、本件登録意匠のように撚り模様を有し、把手用ロープの太さと収納容器本体の正面視での最大径との比が約1:35である把手用ロープが、略長円形状の上面が開口した軟質の合成樹脂で一体に形成された収納容器本体の正面視正面側及び背面側の、湾曲が小さい壁面ではなく、左右両側面の湾曲が大きい壁面の上部に狭い間隔で根本部が取り付けられ、U字状に垂下されている意匠は請求人が示した公知意匠の中に1つも存在しない。すなわち、請求人が、本件登録意匠の把手用ロープの特徴のうちの1つないし少数を有する公知意匠を複数示していること自体が、本件登録意匠の創作性がきわめて高いことの証左である。
オ したがって、本件登録意匠は、甲1意匠及び甲6ないし甲11、甲15、甲17、甲18、甲20などに示された意匠に基づいて、当業者にとってありふれた手法によって一の意匠を構成しただけのものではないから、本件登録意匠は意匠法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであり無効とされるべきであるとの主張には全く理由がない。

3 証拠方法
(1)請求人
請求人は、審判請求書の別紙として本件登録意匠(意匠登録第1472070号の意匠)の意匠公報(写し)を提出するとともに、以下の甲第1号証ないし甲第64号証(甲第64号証は原本。それ以外は全て写しである。)を、審判請求書、審判事件弁駁書及び口頭審理陳述要領書の添付書類として提出した。

甲第1号証の1 中華人民共和国CN300935313D 意匠公報
甲第1号証の2 甲第1号証の1の翻訳文
甲第2号証 被請求人のホームページ
甲第3号証 登録第1463144号 意匠公報
甲第4号証 登録第1463319号 意匠公報
甲第5号証の1 「Scullery Set Up ? Be Ready For Service!」と
題する個人ブログ
甲第5号証の2 甲第5号証の1の翻訳文
甲第6号証 特開2006−15015号 公開特許公報
甲第7号証 実開平4−33369号 公開実用新案公報
甲第8号証の1 「B2 Designs」と題する個人ブログ
甲第8号証の2 甲第8号証の1の翻訳文
甲第8号証の3 コンテナ・ストアー社のホームページ
甲第8号証の4 甲第8号証の3の翻訳文
甲第9号証 株式会社主婦の友社発行の「100円グッズ、かご、
カラボ、スノコ、使える!アイデア収納」
甲第10号証 栃木県の旅行記と題するブログ(ウェブページ)
甲第11号証 Amazon.co.jpのホームページ
甲第12号証 ゲッティ・イメージズ・セールス・ジャパン合同会社
が運営するiStockのホームページ
甲第13号証 本件登録意匠の拒絶理由通知書
甲第14号証 本件登録意匠の意見書
甲第15号証 本件登録意匠の拒絶理由通知書で引用された
公知意匠1
甲第16号証 本件登録意匠の拒絶理由通知書で引用された
公知意匠2
甲第17号証 登録第1081783号 意匠公報
甲第18号証 登録第580057号 意匠公報
甲第19号証 登録第1374783号 意匠公報
甲第20号証 中華人民共和国 CN300826894D意匠公報
甲第21号証 中華人民共和国 CN301774006S意匠公報
甲第22号証 Amazon.co.jpのホームページ
甲第23号証 Amazon.co.jpのホームページ
甲第24号証 イノマタ化学のカタログ
甲第25号証 Amazon.co.jpのホームページ
甲第26号証 イノマタ化学のカタログ
甲第27号証 登録第654109号意匠公報
甲第28号証 登録第登録第654109の類似10号意匠公報
甲第29号証 登録第696545号意匠公報
甲第30号証 登録第696545の類似2号意匠公報
甲第31号証 登録第779787号意匠公報
甲第32号証 登録第779787の類似7号意匠公報
甲第33号証 登録第915174号意匠公報
甲第34号証 登録第915174の類似1号意匠公報
甲第35号証 意匠審査基準(平成18年改正意匠法対応)
甲第36号証の1 中国企業のホームページの写し
甲第36号証の2 甲第36号証の1の翻訳文
甲第37号証 登録第767603号意匠公報
甲第38号証 登録第767603の類似1号意匠公報
甲第39号証 登録第699931号意匠公報
甲第40号証 登録第699931の類似2号意匠公報
甲第41号証 登録第779787の類似6号意匠公報
甲第42号証 登録第776581号意匠公報
甲第43号証 登録第776581の類似1号意匠公報
甲第44号証 登録第779787の類似22号意匠公報
甲第45号証 登録第890877号意匠公報
甲第46号証 登録第890877の類似10号意匠公報
甲第47号証 登録第登録第654109の類似2号意匠公報
甲第48号証 登録第登録第696545の類似1号意匠公報
甲第49号証 登録第776581の類似4号意匠公報
甲第50号証 Amazon.co.jpのホームページ
甲第51号証 楽天市場のホームページ
甲第52号証 楽天市場のホームページ
甲第53号証 侵害訴訟事件における本件登録意匠の構成態様の
変遷と本件無効審判事件との構成態様の相違
甲第54号証 意匠公報(意匠登録第1637950号)
甲第55号証 意匠公報(意匠登録第1670892号)
甲第56号証 意匠公報(意匠登録第1202123号)
甲第57号証 意匠公報(意匠登録第1202124号)
甲第58号証 「B2 Designs」と題する個人ブログを印刷したもの
その訳文
甲第59号証 下野新聞社のホームページ
甲第60号証 意匠公報(意匠登録第388726号)
甲第61号証 大阪地判平20(ワ)3277号判決文
甲第62号証 大阪高判平21(ネ)2465号判決文
甲第63号証 知財高判令3(行ケ)10158号判決文
甲第64号証 意匠鑑定書

(2)被請求人
被請求人は、以下の乙第1号証ないし乙第6号証(全て写しである。)を、審判事件答弁書及び口頭審理陳述要領書の添付書類として提出した。
乙第1号証 被請求人のホームページ(抜粋)
乙第2号証の1 請求人が販売する商品のタグ(表)
乙第2号証の2 請求人が販売する商品のタグ(裏)
乙第3号証の1 インスタグラムの投稿(令和3年4月9日)
乙第3号証の2 ブログ「ダイソー新商品はあの人気商品にそっくり!?
ソフトバスケット3種の収納アイデア」
乙第3号証の3 ブログ「人気商品のそっくりさん!ダイソーでソフト
バスケット発見!この収納グッズは見逃し注意!」
乙第3号証の4 ブログ「そっくり!!ダイソー★ソフトバスケット★」
乙第3号証の5 ブログ「インテリアショップ顔負け!ダイソーの高額商
品はSNS映え間違いなしのおしゃれアイテムが勢ぞろい」
乙第3号証の6 インスタグラムの投稿(令和3年3月25日)
乙第4号証 中華人民共和国 CN300935313Dの
立体図の画像
乙第5号証の1 中華人民共和国 登録実用新案第201161743号
乙第5号証の2 乙第5号証の1のJ−PlatPatによる機械翻訳
乙第6号証 検索エンジン「Google」(https://www.google.com/)に
おける「バルコロール」の画像検索の検索結果


第5 当審の判断
1 本件登録意匠
(1)本件登録意匠の意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品(以下「本件物品」という。)は、意匠公報(別紙第1参照。別紙第1は審判請求書の「別紙」。)の記載によれば「収納容器」であり、「意匠に係る物品の説明」には、「本物品は、収納容器本体と、その本体の側面上部に取り付けられた把手用のロープとからなる。収納容器本体は、軟質の合成樹脂で一体に形成されており、多目的の収納に用いられる。例えば、衣料、雑誌、新聞、おもちゃ、野菜、乾物などを収納するのに適している。」と記載されているから、本件物品は、家庭において、生活雑貨や食品などの家庭用品を収納する容器であると認められる。
(2)本件登録意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合
本件登録意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、以下のとおりである。
ア 全体の形状
全体は、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状である本体部と、一対の紐状の把手部から成るものである。本体部開口端部の外周形状は、平面視略横長トラック形状であって、本体部底面の外周形状は、開口端部よりも小さい平面視略横長トラック形状であり、すなわち、本体部の径が下方にいくにつれてしだいに小さくなっている。本体部の長手方向の両側面上部に把手部が設けられている。
イ 正面から見た本体部の態様
正面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約100°である。本体部の上端は倒弓状に形成されて、中央部は略平坦状に表されており、左端寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きくなって、本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状に表されている。
正面から見た本体部の最大横幅(本体部上端の左右両端間の距離):最小横幅(底面の長さ):最大縦幅(本体部左右両端の上端の高さ)の比は、約1.4:1:1であり、最小縦幅(左右方向中央の本体部の高さ)は、最大縦幅の約7/8である。
ウ 右側面から見た本体部の態様
右側面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約95°である。本体部の上端はなだらかな略山状に形成されている。
右側面から見た本体部の最大横幅(本体部左右両端の上端間の距離):最小横幅(底面の長さ):最大縦幅(左右方向中央の本体部の高さ)の比は、約0.9:0.7:1であり、最小縦幅(本体部左右両端の上端の高さ)は、最大縦幅の約7/8である。
エ 把手部の態様
把手部は、右側面視略U字状に表されており、上端部が本体部に設けられた円形孔から本体部の内側に貫入し、本体部の内側で結び目が形成されて留められている。当該結び目の先の端部が解れているので、把手部の紐は荒縄であると推認され、軸方向に注連縄状に表されている。紐の太さは、正面から見て、本体部の最大横幅の約1/35である。
オ 把手部の配置
右側面から見て、把手部の縦幅は、本体部の最大縦幅の約2/5であり、把手部の上端の位置は本体部の最大縦幅の約4/5の高さ、把手部の下端の位置は本体部の最大縦幅の約2/5の高さである。すなわち、把手部は、本体部の最大縦幅を上から約1:2:2に内分した中央の位置にある。また、把持部は、本体部の最大横幅を左から約4:5:4に内分した中央の位置にある。
正面から見ると、把手部は鉛直に垂下しており、本体部の左右両端と成す角度は約10°である。把手部の位置は、本体部上端の左右両端の位置とほぼ同じである。

2 無効理由1について
(1)甲1意匠
ア 甲1意匠について
甲1意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前である2009年6月3日に公告(公開)された、中華人民共和国発行の公報(別紙第2参照)に掲載された、CN300935313Dの意匠である。
イ 甲1意匠の意匠に係る物品
上記公報の記載によれば、甲1意匠の意匠に係る物品は「包装桶」である。同公報には、包装桶の蓋部も現されているが、本件登録意匠と対比される対象は蓋部を除いたものである。
同公報には「包装桶」に収納されるものについての記載はないが、「包装桶」は一般の家庭で用いられると推認できるので、「包装桶」は生活雑貨などの家庭用品を収納する容器であるということができる。
ウ 甲1意匠の形態
甲1意匠の形態は、以下のとおりである。なお、右側面図は左側面図と対称であるため、左側面図に表された形態を左右対称にした形態を右側面から見た形態として認定する。
(ア)全体の形状
全体は、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状である本体部と、一対の紐状の把手部から成るものである。本体部開口端部の外周形状は、蓋部の外周形状と一致するので、略楕円形状であると推認できる。本体部の径が下方にいくにつれてしだいに小さくなっているので、本体部底面の外周形状も、開口端部よりも小さい略楕円形状であると推認できる。本体部の短手方向の正面(及び背面)上部に把手部が設けられている。
(イ)正面から見た本体部の態様
正面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約97°である。本体部の上端は水平状に現されている。
正面から見た本体部の最大横幅(本体部上端の長さ):最小横幅(底面の長さ):縦幅の比は、約1.2:1:1である。
(ウ)右側面から見た本体部の態様
右側面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約95°である。本体部の上端は水平状に現されている。
右側面から見た本体部の最大横幅(本体部上端の長さ):最小横幅(底面の長さ):縦幅の比は、約0.7:0.5:1である。
(エ)本体部の内側上部の態様
本体部の内側上端部には、周方向に等間隔に、多数の凸状部材が配されている。「立体図」の画像(乙第4号証。別紙第3参照。)には、その凸状部材が鮮明に現されている。
(オ)把手部の態様
把手部は、正面視略放物線状に現されており、上端部が本体部に設けられた孔から本体部の内側に貫入し、本体部の内側で端部に別部材が結合されて留められている。把手部の紐は、軸方向に注連縄状に現されている(乙第4号証。別紙第3参照。)。紐の太さは、正面から見て、本体部の最大横幅の約1/65である。
(カ)把手部の配置
正面から見て、把手部の縦幅は、本体部の最大縦幅の約6/8であり、把手部の上端の位置は本体部の最大縦幅の約7/8の高さ、把手部の下端の位置は本体部の最大縦幅の約1/8の高さである。すなわち、把手部は、本体部の最大縦幅を上から約1:6:1に内分した中央の位置にある。また、把持部は、本体部の最大横幅を左から約1:4:1に内分した中央の位置にある。
右側面から見ると、把手部は、本体部に密着して巻き付くように現されている。把手部の上端の位置は、本体部上端の左右両端の位置よりもやや内側である。
(キ)本体部は乳白色に、把手部の紐は黄色に、把手部の端部の別部材は黒色に、それぞれ現されている。

(2)本件登録意匠と甲1意匠の対比
ア 意匠に係る物品の対比
本件登録意匠の意匠に係る物品と甲1意匠の意匠に係る物品は、共に生活雑貨などの家庭用品を収納する容器であるから、共通する。
イ 形態の対比
(ア)形態の共通点
(共通点1)全体の共通点
全体が、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状である本体部と、一対の紐状の把手部から成るものであって、本体部の径が下方にいくにつれてしだいに小さくなっており、本体部の上部に把手部が設けられている。
(共通点2)正面から見た共通点
正面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、最小横幅と縦幅は、ほぼ同じ長さである。
(共通点3)右側面から見た共通点
右側面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約95°である。最大横幅及び最小横幅の長さは、縦幅よりも小さい。
(共通点4)把手部の態様の共通点
把手部の上端部が本体部に設けられた孔から本体部の内側に貫入し、本体部の内側で留められている。把手部の紐には、軸方向に注連縄状に表されている。
(イ)形態の相違点
(相違点1)全体の相違点
本件登録意匠の本体部開口端部と本体部底面の外周形状が、略横長トラック形状であるのに対して、甲1意匠の本体部開口端部と本体部底面の外周形状は、略楕円形状である。
また、本件登録意匠では、把手部が本体部の長手方向の両側面に把手部が設けられているが、甲1意匠では、把手部が本体部の短手方向の正面及び背面に設けられている。
(相違点2)本体部の構成比率の相違点
正面から見て、本体部の左右両端が底面となす角度が約100°であるか(本件登録意匠)、約97°であるか(甲1意匠)、で相違し、正面から見た本体部の最大横幅が最小横幅及び縦幅の約1.4倍であるか(本件登録意匠)、約1.2倍であるか(甲1意匠)、で相違する。
また、右側面から見て、本体部の最大横幅:最小横幅:縦幅の比が、約0.9:0.7:1であるか(本件登録意匠)、約0.7:0.5:1であるか(甲1意匠)、で相違する。
(相違点3)本体部の上端形状の相違点
正面から見て、本件登録意匠では、本体部の上端は倒弓状に形成されて、中央部は略平坦状に表されており、左端寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きくなって、本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状に表されている。これに対して、甲1意匠では、本体部の上端は水平状に現されている。
右側面から見て、本件登録意匠の本体部の上端はなだらかな略山状に形成されているが、甲1意匠の本体部の上端は水平状に現されている。
(相違点4)凸状部材の有無
甲1意匠の本体部の内側上端部には、周方向に等間隔に、多数の凸状部材が配されているが、本件登録意匠にはそのような凸状部材はない。
(相違点5)把手部の形状の相違点
把手部が、略U字状か(本件登録意匠)、略放物線状(甲1意匠)か、で相違する。
また、紐の太さは、正面から見て、本体部の最大横幅の約1/35であるか(本件登録意匠)、約1/65であるか(甲1意匠)、で相違する。
(相違点6)把手部の留め部の相違点
本件登録意匠の把手部は、本体部の内側で結び目が形成されて留められているのに対して、甲1意匠の把手部は、端部に別部材が結合されて留められている。
(相違点7)把手部の配置の相違点
把手部が配されている面から見て、把手部が、本体部を上下方向で約1:2:2に内分しているか(本件登録意匠)、約1:6:1に内分しているか(甲1意匠)、で相違し、本体部を左右方向で約4:5:4に内分しているか(本件登録意匠)、約1:4:1に内分しているか(甲1意匠)、で相違する。
また、把手部が配されていない面から見て、本件登録意匠の把手部は鉛直に垂下し、本体部の左右両端と成す角度は約10°であって、把手部の位置は、本体部上端の左右両端の位置とほぼ同じである。これに対して、甲1意匠では、把手部が本体部に密着して巻き付くように現されており、把手部の上端の位置は、本体部上端の左右両端の位置よりもやや内側である。
(相違点8)色彩についての相違点
甲1意匠では、本体部は乳白色に、把手部の紐は黄色に、把手部の端部の別部材は黒色に、それぞれ現されているが、本件登録意匠では、色彩は表されていない。

(3)本件登録意匠と甲1意匠の類否判断
ア 意匠に係る物品の類否判断
本件登録意匠と甲1意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、共通する。
イ 形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、共に生活雑貨などの家庭用品を収納する容器であるので、需要者は、家庭用品の収納のしやすさや、置き場所、持ち運びなどの観点から、物品を観察するというべきである。特に、把手部は実際に需要者が手に触れる部分であるから、需要者は把手部の形態や、本体部における取付け位置に着目する。そして、持ち運び中の状態においては、物品の全体が露出しており、需要者は全方向から物品を観察することとなるので、需要者は、把手部を含む物品の各部について全方向から詳細に観察を行う、ということができる。したがって、両意匠の類否判断においては、これらを前提として、需要者の視点から、物品の各部の形状を評価することとする。
(ア)形態の共通点の評価
共通点1、すなわち、全体が略逆円錐台形状である本体部と、一対の紐状の把手部から成り、本体部の径が下方にいくにつれてしだいに小さくなって本体部の上部に把手部が設けられている共通点は、両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点にすぎないものであり、需要者がこの概括的共通点に美感を抱くとはいい難い。
共通点2、すなわち、正面から見て本体部の左右両端が上部にいくにつれて逆ハ字状に広がって、最小横幅と縦幅がほぼ同じ長さである共通点は、例えば、請求人が提出した甲第21号証の意匠(後記3(11)参照)においても見受けられるので、この共通点が、家庭用品を収納する意匠を観察する需要者が特に注目するものであるとはいい難く、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
共通点3のうち、右側面から見て本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がり、底面となす角度は約95°である共通点は、例えば、請求人が提出した甲第17号証の意匠(後記3(8)参照)においても、右側面から見て、左右両端が底面となす角度がほぼ95°であり、また、最大横幅及び最小横幅の長さが縦幅よりも小さいので、共通点3が、家庭用品を収納する意匠を観察する需要者が特に注目するものであるとはいい難く、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そして、共通点4、すなわち、把手部の上端部が本体部に設けられた孔から本体部の内側に貫入して留められて、把手部の紐が注連縄状に表されている共通点も、例えば、請求人が提出した甲第8号証の意匠(後記3(4)参照)においても見受けられるので、共通点4が、家庭用品を収納する意匠を観察する需要者が特に注目するものであるとはいい難く、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
このように、いずれの共通点も、両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといわざるを得ない。
(イ)形態の相違点の評価
これに対して、本件登録意匠と甲1部分の形態の相違点については、以下のとおり評価される。
まず、相違点1で指摘した、把手部が本体部の長手方向の両側面に把手部が設けられているか(本件登録意匠)、把手部が本体部の短手方向の正面及び背面に設けられているか(甲1意匠)の相違は、需要者が一見して気が付く相違であって、両意匠を持ち運ぶときはもちろんのこと、両意匠を壁面や収納棚などに配置するときに、把手部がどの位置に付いているかを注視することとなる。例えば、周囲の壁面の美感を向上させるために把手部を隠すように向きを変えて意匠を配置したり、引き出しやすさのために把手部が前面になるような向きにして配置するなど、需要者は把手部の位置について常に注意を払うということができる。
また、本体部開口端部と本体部底面の外周形状が略横長トラック形状であるか(本件登録意匠)、略楕円形状であるか(甲1意匠)の相違も、需要者が両意匠を平面から子細に観察した際に気が付く相違であって、両意匠が需要者に与える視覚的印象に変化をもたらす相違であるというべきである。
そうすると、相違点1が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといわざるを得ない。
次に、本体部の上端形状の相違点3については、本体部の上端が水平状に現されている甲1意匠に対して、本件登録意匠の上端形状は、正面視倒弓状、右側面視略山状と異なっており、特に、正面から見て、左端寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きくなって本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状に表されている点は、需要者に対して独特の美感を起こさせるというべきである。そうすると、相違点3が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
そして、甲1意匠の本体部の内側上端部に多数の凸状部材が配されているが、本件登録意匠にはないという相違点4は、本体部の内側上端部が開口端部付近であるから需要者にとって観察し易い部分であることを踏まえると、需要者が凸状部材の有無の相違に容易に気が付くというべきであるから、相違点4が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。
また、把手部の形状の相違点5、すなわち、把手部が略U字状であって、その太さが本体部の最大横幅の約1/35であるか(本件登録意匠)、略放物線状であって約1/65であるか(甲1意匠)の相違は、本件登録意匠の把手部の太さ(本体部に対する太さ)が甲1意匠の2倍近くであって、本件登録意匠の把手部が荒縄であることを勘案すると、需要者は、甲1意匠の把手部よりも堅牢で丈夫な印象を本件登録意匠の把手部に対して抱くこととなる。そうすると、相違点5が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。
さらに、相違点7として指摘した、把手部が、本体部を上下方向で約1:2:2に内分して左右方向で約4:5:4に内分しているか(本件登録意匠)、上下方向で約1:6:1に内分して左右方向で約1:4:1に内分しているか(甲1意匠)の相違は、本件登録意匠に比べて甲1意匠の方が、把手部が配されている面(甲1意匠では正面及び背面)における把手部の占める面積が大きいという相違であって、相違点6で指摘したように甲1意匠の把手部の太さが本件登録意匠に比べて小さいこととあいまって、甲1意匠の把手部は、本件登録意匠に比べて間延びした華奢な印象を需要者に引き起こすというべきである。同様に、把手部が配されていない面から見て、本体部に密着して巻き付くように現されている甲1意匠の把手部は、鉛直に垂下している本件登録意匠の把手部に比べて、弱々しい華奢な印象を需要者に引き起こしている。そうすると、相違点7が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方、本体部の構成比率の相違点2は、家庭用品を収納する容器には様々な構成比率のものがあることを踏まえると、需要者は、本体部の左右両端が底面となす角度が約100°であるか(本件登録意匠)、約97°であるか(甲1意匠)の相違や、本体部の最大横幅が最小横幅及び縦幅の約1.4倍であるか(本件登録意匠)、約1.2倍であるか(甲1意匠)の相違などに注意を払うとはいい難い。したがって、相違点2が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
また、把手部の留め部の相違点6については、把手部の留め部が本体部の内側であって目立たない位置にあるから、結び目が形成されて留められているか(本件登録意匠)、端部に別部材が結合されて留められているか(甲1意匠)の相違は、需要者が常に観察して両意匠の美感を左右するほどのものとはいい難い。したがって、相違点6が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
加えて、色彩についての相違点8についても、把手部の紐の色彩を本体部の色彩と別にすることも、家庭用品の収納する容器においてはありふれており(例えば、請求人が提出した甲第8号証の意匠(後記3(4)参照))、把手部の端部の別部材は本体部の内側であって目立たない位置にあるから、色彩の有無の相違は両意匠を別異のものと印象付けるものであるということはできない。したがって、相違点8が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そうすると、両意匠の形態の相違点1、相違点3ないし相違点5、及び相違点7が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく、その余の相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいとしても、相違点は、総じて両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすということができる。
(ウ)請求人の主張について
請求人は、「甲1意匠の上部内側には、被請求人が主張する凸状部材なるものが形成されているようだが、意匠公報では明確に視認できない他、内側の構造で外観上は目立つものではなく、桶全体に占める割合も非常に小さく、需要者の注意を喚起するものではないため、本件登録意匠と甲1意匠の類否判断に何ら影響を及ぼすものではない。」と主張する。
しかし、前記(イ)で説示したとおり、甲1意匠の凸状部材が本体部の開口端部付近に配されているから需要者がその凸状部材を容易に観察し得るというべきであり、凸状部材が周方向に等間隔に、言わば規則的に配されていることから、需要者に一定の視覚的印象を与えているということができる。そうすると、このような凸状部材の有無の相違は、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすというほかない。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。
ウ 総合判断
以上のとおり、本件登録意匠と甲1意匠は、意匠に係る物品が共通するが、形態においては、共通点が類否判断に及ぼす影響がいずれも小さいのに対して、相違点は総じて類否判断に及ぼす影響は大きく、共通点が需要者に与える美感を覆して本件登録意匠と甲1意匠を別異のものと印象付けるものであるから、本件登録意匠は、甲1意匠に類似するということはできない。

(4)小活
本件登録意匠は、甲1意匠(中華人民共和国発行の公報に掲載されたCN300935313Dの「包装桶」の意匠)に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠には該当しないので、同項柱書の規定により本件登録意匠について意匠登録を受けることができないとはいえない。
したがって、請求人が主張する無効理由1には、理由がない。

3 無効理由2について
本件登録意匠が、甲1意匠、6意匠ないし甲11意匠、甲15意匠、甲17意匠、甲18意匠、甲20意匠及び甲21意匠(以下、これらの意匠を「無効理由2の甲意匠」ともいう。)の形態に基づいて、当業者が容易に創作をすることができた意匠であるか否かについて検討し、判断する。

(1)甲1意匠
甲1意匠の認定は、前記2(1)のとおりである。

(2)甲6意匠(別紙第4参照)
ア 甲6意匠について
甲6意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前である平成18年(2006年)1月19日に日本国特許庁が公開した、公開特許公報「特開2006−15015」に掲載された、手提げ鞄の意匠である。
イ 甲6意匠の意匠に係る物品
上記公報の記載によれば、甲6意匠の意匠に係る物品は「手提げ鞄」である。
同公報の【0001】【0004】には、「本発明は、収納ケース、手提げ鞄に関するものである。」「・・・財布や携帯電話などを持ち歩く為に・・・」との記載があるので、甲6意匠は、携行用品などを収納する容器であると認められる。
ウ 甲6意匠の形態
甲6意匠の形態は、以下のとおりである。なお、長手方向に平行な面を正面及び背面と認定する。
(ア)全体の形状
全体は、上部が開口して下端が水平面状の略箱状である収納ケース部と、一対の手提げ紐から成るものである。収納ケース部開口端部の外周形状は長方形状であり、収納ケース部底面の外周形状も長方形状である。収納ケース部の短手方向の正面(及び背面)上部に手提げ紐が設けられている。
(イ)収納ケース部の態様
収納ケースの正面視縦幅:正面視横幅:奥行きの比は、約4:3:2である。収納ケースの底面の四隅寄りに短円柱状の凸部(脚部)が設けられている。収納ケースは、透明又は半透明である。
(ウ)手提げ紐の態様
手提げ紐は、略U字状に表されており、端部が収納ケース部に設けられた孔から収納ケース部の内側に貫入し、収納ケース部の内側で結び目が形成されて留められている。手提げ紐の太さは、収納ケース部の正面横幅の約1/50である。

(3)甲7意匠(別紙第5参照)
ア 甲7意匠について
甲7意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前である平成4年(1992年)3月18日に日本国特許庁が公開した、公開実用新案公報「平4−33369」に掲載された、魚釣り用ネット付きバケツの意匠である。
イ 甲7意匠の意匠に係る物品
上記公報の記載によれば、甲7意匠の意匠に係る物品は「魚釣り用ネット付きバケツ」である。
同公報の〔実施例〕には、「ネット付きバケツの非ネット部の開口部(2)から海水、及び冷凍餌(8)を入れる。・・・冷凍餌(8)は容易に解凍し、この餌をネット(5)に載置して水切りを行うと共に、サシエ用ネットとして使用する・・・ネット(5)を取り除くと、普通のバケツとして種々利用できる」との記載があるので、甲7意匠は、冷凍餌(8)を解凍させたり、サシエ(餌)を置いたり、普通のバケツとして使用したりするものであると認められる。
ウ 甲7意匠の形態
甲7意匠の形態は、以下のとおりである。なお、長手方向に平行な面を正面及び背面と認定する。
(ア)全体の形状
全体は、上部が開口して下端が水平面状の略箱状であるバケツ主体と、一対の紐状の提手から成るものである。バケツ主体開口端部の外周形状は角丸長方形状であり、バケツ主体底面の外周形状も角丸長方形状である。収納ケース部の短手方向の正面(及び背面)上端寄りに提手が設けられている。
(イ)バケツ主体の態様
バケツ主体の正面視縦幅:正面視横幅:奥行きの比は、約5:3.5:3である。バケツ主体の上端部には周方向に肉厚の帯状部が形成されており、開口端部の右半部にはネットが設けられている。
(ウ)提手の態様
提手は、略U字状に表されており、端部がバケツ主体に設けられた孔からバケツ主体の内側に貫入し、バケツ主体の内側で結び目が形成されて留められている。提手の太さは、バケツ主体の正面横幅の約1/60である。

(4)甲8意匠(別紙第6参照)
ア 甲8意匠について
甲8意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前である2012年4月16日に「B2 Designs」と題する個人ブログに掲載された、ロープハンドル付き収納容器の意匠である。
イ 甲8意匠の意匠に係る物品
上記意匠について説明しているコンテナ・ストアー社のホームページ(甲第8号証の3)の記載によれば、甲8意匠の意匠に係る物品は「ロープハンドル付き収納容器」である。
同ホームページには、「多機能なラグビーストライプ柄の収納容器は、本や雑誌をまとめたり、リビングで毛布を投げ入れたり、寝室で枕を投げ入れたり、浴室で丸めたタオルを収納したりするのに最適です」との記載があるので、甲8意匠は、家庭用品を収納する容器であると認められる。
ウ 甲8意匠の形態
甲8意匠の形態(甲第8号証の1に現されている形態を認定する。)は、以下のとおりである。なお、ロープハンドルが現れている面を正面と認定する。
(ア)全体の形状
全体は、上部が開口して下端が水平面状の略箱状である本体部と、一対の紐状のロープハンドルから成るものである。本体部開口端部の外周形状は略長方形状であり、本体部底面の外周形状も略長方形状である。本体部の短手方向の正面(及び背面)上端寄りにロープハンドルが設けられている。
(イ)本体部の態様
本体部の正面視縦幅:正面視横幅:奥行きの比は、約3:2.4:2である。本体部の周面には、黒色と白色の横縞模様が配されている。
(ウ)ロープハンドルの態様
ロープハンドルは、略弧状に現されており、上端部が本体部に設けられた円形孔から本体部の内側に貫入し、本体部の内側で結び目が形成されて留められている。ロープハンドルは、軸方向に注連縄状に現されている。その太さは、本体部の正面横幅の約1/15である。
(エ)ロープハンドルの配置
正面から見て、ロープハンドルの縦幅は、本体部の縦幅の約2/6であり、ロープハンドルの上端の位置は本体部の縦幅の約5/6の高さ、ロープハンドルの下端の位置は本体部の縦幅の約3/6の高さである。すなわち、ロープハンドルは、本体部の縦幅を上から約1:2:3に内分した中央の位置にある。また、ロープハンドルは、本体部の横幅を左から約1:2:1に内分した中央の位置にある。

(5)甲9意匠(別紙第7参照)
ア 甲9意匠について
甲9意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前である平成16年(2004年)5月1日に株式会社主婦の友が発行した書籍「100円グッズ、かご、カラボ、スノコ、使える!アイデア収納」の110頁に掲載された、木箱の意匠である。
イ 甲9意匠の意匠に係る物品
甲9意匠の意匠に係る物品は「木箱」であり、上記書籍に掲載された木箱の中には雑誌や掃除用品が収納されているので、甲9意匠は、家庭用品を収納する容器であると認められる。
ウ 甲9意匠の形態
甲9意匠の形態は、以下のとおりである。なお、把手部が現れている面を正面と認定する。
(ア)全体の形状
全体は、上部が開口して下端が水平面状の略箱状である本体部と、一対の紐状の把手部から成るものである。本体部開口端部の外周形状は略長方形状であり、本体部底面の外周形状も略長方形状である。本体部の長手方向の正面(及び背面)上端寄りに把手部が設けられている。
(イ)本体部の態様
本体部の正面視縦幅:正面視横幅:奥行きの比は、上記書籍には斜視方向の甲9意匠しか現されていないから、不明である。
(ウ)把手部の態様
把手部は、正面視略扁平U字状に現されており、上端部が本体部に設けられた孔から本体部の内側に貫入し、本体部の内側で結び目が形成されて留められている。把手部の紐は、軸方向に注連縄状に現されている。紐の太さは、正面から見て、本体部の横幅の約1/17である。
(エ)把手部の配置
正面から見て、把持部は、本体部の横幅を左から約1:2:1に内分した中央の位置にある。把手部の縦幅や、それが本体部の縦幅に占める比率は、上記書籍に斜視方向の甲9意匠しか現されていないから、不明である。

(5)甲10意匠(別紙第8参照)
ア 甲10意匠について
甲10意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前である平成17年(2005年)11月23日付けで「栃木県の旅行記・ブログ by しんちゃんさん」のウェブページに掲載された、木箱の意匠である。
イ 甲10意匠の意匠に係る物品
甲10意匠の意匠に係る物品は「木箱」であり、上記ウェブページに掲載された木箱の中には何も収納されておらず、特に何を収納するかについての記載もないので、甲10意匠が主として何を収納する容器であるのかは不明である。
ウ 甲10意匠の形態
甲10意匠の形態は、以下のとおりである。なお、把手部が現れている面を正面と認定する。
(ア)全体の形状
全体は、上部が開口して下端が水平面状の略箱状である本体部と、一対の紐状の把手部から成るものである。本体部開口端部の外周形状は略長方形状であり、本体部底面の外周形状も略長方形状である。本体部の長手方向の正面(及び背面)上端寄りに把手部が設けられている。
(イ)本体部の態様
本体部の正面視縦幅:正面視横幅:奥行きの比は、上記ウェブページには斜視方向の甲10意匠しか現されていないから、不明である。
(ウ)把手部の態様
把手部は、正面視略扁平U字状に現されており、上端部が本体部に設けられた孔から本体部の内側に貫入し、本体部の内側で端部に別部材が結合されて留められている。把手部の紐は、軸方向に注連縄状に現されている。紐の太さは、正面から見て、本体部の最大横幅の約1/30である。
(エ)把手部の配置
正面から見て、把持部は、本体部の横幅を左から約2:3:2に内分した中央の位置にある。把手部の縦幅や、それが本体部の縦幅に占める比率は、上記ウェブページに斜視方向の甲10意匠しか現されていないから、不明である。

(6)甲11意匠(別紙第9参照)
ア 甲11意匠について
甲11意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前である平成17年(2005年)5月25日にAmazon.co.jpでの取り扱いが開始され、Amazonのウェブページに掲載された、バケットの意匠である。
イ 甲11意匠の意匠に係る物品
甲11意匠の意匠に係る物品は「バケット」であり、上記ウェブページには「バケット」に収納されるものについての記載はないが、「バケット」は一般の家庭で用いられると推認できるので、「バケット」は生活雑貨などの家庭用品を収納する容器であるということができる。
ウ 甲11意匠の形態
甲11意匠の形態は、以下のとおりである。
(ア)全体の形状
全体は、上部が開口して下端が水平面状の略有底円筒形状である本体部と、一対の紐状の把手部から成るものである。本体部開口端部の外周形状は略円形状であり、本体部底面の外周形状も略円形状である。本体部の対向する上端寄りに把手部が設けられている。
(イ)本体部の態様
本体部の高さ:径の比は、約1.1:1である。本体部の周面には、文字部などが配されている。
(ウ)把手部の態様
把手部は、略弧状に現されており、上端部が本体部に設けられた円形孔から本体部の内側に貫入し、本体部の内側で結び目が形成されて留められている。把手部の太さは、本体部の径の約1/22である。
(エ)把手部の配置
把手部の縦幅は、本体部の高さの約2/8であり、把手部の上端の位置は本体部の縦幅の約7/8の高さ、把手部の下端の位置は本体部の縦幅の約5/8高さである。すなわち、把手部は、本体部の縦幅を上から約1:2:5に内分した中央の位置にある。把手部の横幅や、それが本体部の径に占める比率は、上記ウェブページに斜視方向の甲11意匠しか現されていないから、不明である。

(7)甲15意匠(別紙第10参照)
ア 甲15意匠について
甲15意匠は、特許庁意匠課が受け入れた、特許庁意匠課公知資料番号第HJ22079731号の収納かごの意匠である(番号中の「22」は特許庁が平成22年に受け入れたことを示している。)。
イ 甲15意匠の意匠に係る物品
上記HJ22079731号によれば、甲15意匠の意匠に係る物品は「収納かご」であり、別紙第10の4/4頁には、タオルを入れて使用する事例が示されているので、甲15意匠は、家庭用品を収納する容器であると認められる。
ウ 甲15意匠の形態
甲15意匠の形態は、以下のとおりである。なお、長手方向に平行な面を正面及び背面と認定する。
(ア)全体の形状
全体は、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状であって、長手方向の両側面上部に一対の把手部が設けられている。
開口端部の外周形状と、底面の外周形状は、上記HJ22079731号には平面から見た甲15意匠が現されていないので、不明である。正面視縦幅:正面視横幅:奥行きの比も、正面及び平面から見た甲15意匠が現されていないので、不明である。
(イ)正面から見た態様
正面から見て、左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、上端は緩やかな凹弧状に形成されている。
正面から見た、左右両端が底面となす角度や、最大横幅(上端の左右両端間の距離):最小横幅(底面の長さ):最大縦幅(左右両端の上端の高さ)の比は、上記HJ22079731号に正面から見た甲15意匠が現されていないので、不明である。
(ウ)左側面から見た態様
左側面から見て、左右両端が上部にいくにつれて逆ハ字状に広がり、上端が緩やかな凸弧状に形成されていると推認されるが、その具体的形状は、上記HJ22079731号に左側面から見た甲15意匠が現されていないので、不明である。同様に、左側面から見て、左右両端が底面となす角度や、最大横幅(左右両端の上端間の距離):最小横幅(底面の長さ):最大縦幅(左右方向中央の高さ)の比も、不明である。
(エ)把手部の態様及び配置
把手部は、略横長楕円状に開口している。
左側面部に占める把手部の大きさや配置については、上記HJ22079731号に左側面から見た甲15意匠が現されていないので、不明である。
(オ)全体が緑色に現されている。

(8)甲17意匠(別紙第11参照)
ア 甲17意匠について
甲17意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前である平成12年(2000年)8月7日に日本国特許庁が発行した意匠公報に掲載された、意匠登録第1081783号の意匠である。
イ 甲17意匠の意匠に係る物品
上記公報の記載によれば、甲17意匠の意匠に係る物品は「整理かご」であり、意匠に係る物品の説明には「本物品は主に洗濯物を入れたり、日用品を整理したりする」と記載されているので、甲17意匠は、家庭用品を収納する容器であると認められる。
ウ 甲17意匠の形態
甲17意匠の形態は、以下のとおりである。
(ア)全体の形状
全体は、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状であって、両側面上部に一対の把手部が設けられている。開口端部の外周形状は、平面視略円形状であって、底面の外周形状は、開口端部よりも小さい平面視略円形状であり、すなわち、径が下方にいくにつれてしだいに小さくなっている。
(イ)正面から見た態様
正面から見て、左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約97°である。上端は略凹弧状に形成されている。
正面から見た最大横幅(上端の左右両端間の距離):最小横幅(底面の長さ):最大縦幅(左右両端の上端の高さ)の比は、約0.9:0.6:1であり、最小縦幅(左右方向中央の高さ)は、最大縦幅の約7/8である。
(ウ)右側面から見た態様
右側面から見て、左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約97°である。上端は凸弧状に形成されている。
右側面から見た最大横幅(左右両端の上端間の距離):最小横幅(底面の長さ):最大縦幅(左右方向中央の高さ)の比は、約0.9:0.6:1であり、最小縦幅(左右両端の上端の高さ)は、最大縦幅の約7/8である。
(エ)把手部の態様
把手部は、略横長楕円状に開口している。
(オ)把手部の配置
右側面から見て、把手部の縦幅は、最大縦幅の約1/6であり、把手部の上端の位置は全体の最上端に近接しており(最上端まで最大縦幅の約0.4倍の長さ)、把手部の下端の位置は最大縦幅の約5/6の高さである。すなわち、把手部は、最大縦幅を上から約0.4:1:5に内分した中央の位置にある。また、把持部は、最大横幅を左から約1:1:1に内分した中央の位置にある。

(9)甲18意匠(別紙第12参照)
ア 甲18意匠について
甲18意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前である昭和57年(1982年)7月12日に日本国特許庁が発行した意匠公報に掲載された、意匠登録第580057号の意匠である。
イ 甲18意匠の意匠に係る物品
上記公報の記載によれば、甲18意匠の意匠に係る物品は「小物入れ」であり、小さな家庭用品を収納する容器であると認められる。
ウ 甲18意匠の形態
甲18意匠の形態は、以下のとおりである。
(ア)全体の形状
全体は、上部が開口して下端が水平面状の略筒形状であり、開口端部の外周形状は、平面視略楕円形状であって、底面の外周形状は、開口端部よりも小さい平面視略トラック形状である。正面及び背面から見ると径が下方にいくにつれて僅かに大きくなっており、側面から見ると径が下方にいくにつれてしだいに小さくなっている。
(イ)正面から見た態様
正面から見て、上端は略凸弧状に形成されている。
正面から見た最大横幅(左右両端の上端間の距離):最小横幅(底面の長さ):最大縦幅(左右方向中央の高さ)の比は、約0.8:0.8:1であり、最小縦幅(左右両端の上端の高さ)は、最大縦幅の約10/11である。
(ウ)右側面から見た態様
右側面から見て、左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約92°である。上端は左右非対称の凹弧状に形成されている。
右側面から見た最大横幅(上端の左右両端間の距離):最小横幅(底面の長さ):最大縦幅(左右両端の上端の高さ)の比は、約0.6:0.5:1であり、最小縦幅(左右方向中央の高さ)は、最大縦幅の約10/11である。
(エ)正面の中央部に、白色の縦筋模様が左右に4本ずつ対称状に間隔を空けて配されており、最も外側の縦筋の幅が太く、その内側に近接して3本の縦筋が並んでいる。

(10)甲20意匠(別紙第13参照)
ア 甲20意匠について
甲20意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前である2008年9月10日に公告(公開)された、中華人民共和国発行の公報に掲載された、CN300826894Dの意匠である。
イ 甲20意匠の意匠に係る物品
上記公報の記載によれば、甲20意匠の意匠に係る物品は「冰盆」(日本語訳:「氷はち」、以下日本語訳で示す。)である。
同公報には「氷はち」に収納されるものについての記載はないが、「氷はち」は一般の家庭で用いられ、ボトルなどを冷やすために使用されると推認できるので、「氷はち」は家庭用品を入れる容器であるということができる。
ウ 甲20意匠の形態
甲20意匠の形態は、以下のとおりである。
(ア)全体の形状
全体は、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状である本体部と、一対の線材の把手部から成るものである。本体部開口端部の外周形状は、平面視略横長トラック形状であって、本体部底面の外周形状は、開口端部よりも小さい平面視略楕円形状であり、すなわち、本体部の径が下方にいくにつれてしだいに小さくなっている。本体部の長手方向の両側面上部に把手部が設けられている。
(イ)正面から見た本体部の態様
正面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約104°である。本体部の上端は緩やかな凹弧状(凹レンズ状の凹弧状)に形成されている。
正面から見た本体部の最大横幅(本体部上端の左右両端間の距離):最小横幅(底面の長さ):最大縦幅(本体部左右両端の上端の高さ)の比は、約9:7:4であり、最小縦幅(左右方向中央の本体部の高さ)は、最大縦幅の約7/8である。
(ウ)左側面から見た本体部の態様
左側面から見て、本体部の左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、底面となす角度は約95°である。本体部の上端は略山状に形成されている。
なお、左側面から見た本体部の各部の比率は、甲20意匠を写真撮影した左側面図のパースが強調されているので、正確に測ることができない。
(エ)把手部の態様
把手部は、左側面視略倒鐙形状に現されており、線材の太さは、左側面から見て、本体部の最大横幅の約1/65である。
(オ)把手部の配置
左側面から見て、把手部の縦幅は、本体部の最大縦幅の約1/3であり、把手部の上端の位置は本体部の最上端付近、把手部の下端の位置は本体部の最大縦幅の約2/3の高さである。すなわち、把手部は、本体部の最大縦幅を上から約1:2に内分した上側の位置にある。また、把持部は、本体部の最大横幅を左から約1:1:1に内分した中央の位置にある。
正面から見ると、把手部は本体部の左右両端に密着している。
と成す角度は約10°である。把手部の位置は、本体部上端の左右両端の位置とほぼ同じである。
(カ)全体が、やや緑色がかった灰色に現されている。

(11)甲21意匠(別紙第14参照)
ア 甲21意匠について
甲21意匠は、本件登録意匠の意匠登録出願前である2011年12月28日に公告(公開)された、中華人民共和国発行の公報に掲載された、CN301774006Sの意匠である。
イ 甲21意匠の意匠に係る物品
上記公報の記載によれば、甲21意匠の意匠に係る物品は「冰桶」(日本語訳:「氷桶」、以下日本語訳で示す。)である。
同公報には「本製品は酒類を冷やすための容器。」と記載されているので、「氷桶」は一般の家庭で用いられ、ボトル(酒類)などを冷やすために使用されると推認できるので、「氷桶」は家庭用品を入れる容器であるということができる。
ウ 甲21意匠の形態
甲21意匠の形態は、以下のとおりである。
(ア)全体の形状
全体は、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状であって、長手方向の両側面上部に一対の把手部が設けられている。開口端部の外周形状は、平面視略楕円形状であって、底面の外周形状は、開口端部よりも小さい平面視略楕円形状であり、すなわち、径が下方にいくにつれてしだいに小さくなっている。
(イ)正面から見た態様
正面から見て、左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、左端及び右端は外側に凸の僅かな弧状に現されている。その左端及び右端が底面となす角度は約107°である。上端は略凹弧状に形成されている。
正面から見た最大横幅(上端の左右両端間の距離):最小横幅(底面の長さ):最大縦幅(左右両端の上端の高さ)の比は、約1.6:1.2:1であり、最小縦幅(左右方向中央の高さ)は、最大縦幅の約5/6である。
(ウ)左側面から見た態様
左側面から見て、左右両端は上部にいくにつれて逆ハ字状に広がっており、左端及び右端は外側に凸の僅かな弧状に現されている。その左端及び右端が底面となす角度は約102°である。上端は凸弧状に形成されている。
右側面から見た最大横幅(左右両端の上端間の距離):最小横幅(底面の長さ):最大縦幅(左右方向中央の高さ)の比は、約1:0.7:1であり、最小縦幅(左右両端の上端の高さ)は、最大縦幅の約5/6である。
(エ)把手部の態様
把手部は、略横長楕円状に開口している。
(オ)把手部の配置
右側面から見て、把手部の縦幅は、最大縦幅の約1/10であり、把手部の上端の位置は本体部の最大縦幅の約8.5/10の高さ、把手部の下端の位置は本体部の最大縦幅の約7.5/10の高さである。すなわち、把手部は、本体部の最大縦幅を上から約1.5:1:7.5に内分した中央の位置にある。また、把持部は、最大横幅を左から約2:1:2に内分した中央の位置にある。

(12)創作非容易性の判断
家庭用品を入れる容器の物品分野において、全体の形状を、上部が開口して下端が水平面状の略逆円錐台形状として、径を下方にいくにつれてしだいに小さくし、長手方向の両側面上部に一対の把手部を設けることは、甲15意匠、甲20意匠及び甲21意匠に見られるように、本願の出願前に公然知られている。また、家庭用品を入れる容器の物品分野において、紐状の把手部を軸方向に注連縄状に表すことも、甲1意匠、甲8意匠、甲9意匠及び甲11意匠に見られるように、本願の出願前に公然知られている。
しかしながら、本件登録意匠のように、本体部開口端部と本体部底面の外周形状が共に略横長トラック形状であるものは、請求人が提出した無効理由2の甲意匠には見られず、また、把手部が配されている面から見て、略U字状の紐状の把手部を、上から約1:2:2に内分した中央の位置であり、かつ左から約4:5:4に内分した中央の位置を占めるように配置したものは、無効理由2の甲意匠には見られない。そうすると、開口端部と底面の外周形状が共に略横長トラック形状であるという特徴を持つ本体部の長手方向の両側面上部に、略U字状の紐状の把手部を、上から約1:2:2に内分した中央の位置であり、かつ左から約4:5:4に内分した中央の位置を占めるように配置することについて、無効理由2の甲意匠に基づいて当業者が容易に創作をすることができたということはできない。
さらに、本件登録意匠の正面から見た本体部の上端は、倒弓状に形成され、中央部が略平坦状に表されて、左端寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きくなって本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状になっており、このような上端形状は、本件登録意匠に独特なものであって、無効理由2の甲意匠には見られず、同甲意匠に基づいて容易に創作ができたものともいい難い。
したがって、無効理由2の甲意匠に基づいて、当業者が容易に本件登録意匠の創作をすることができたということはできない。

(13)請求人の主張について
請求人は、「本件登録意匠の収納容器本体の上辺が、正背面視凹曲線形状、側面視凸曲線形状である具体的構成態様も甲第15号証、同17号証、同18号証、同20号証、同21号証等によって周知ないし少なくとも公然知られた(公知の)形状である。」と主張する。
しかしながら、甲15意匠の正面上端形状は緩やかな凹弧状であり、甲17意匠では略凹弧状、甲18意匠では左右非対称の凹弧状、甲20意匠では緩やかな凹弧状(凹レンズ状の凹弧状)、甲21意匠では略凹弧状に上端形状が表されているところ、これらを「凹曲線形状」として括ることは適切ではなく、その「凹曲線形状」なるものが、独特な形状といえる本件登録意匠の正面視本体部上端形状、すなわち、倒弓状に形成され、中央部が略平坦状に表されて、左端寄り及び右端寄りの曲率が次第に大きくなって本体部の左右両端の上端付近との間が先尖り状になっている上端形状と同等であると認めることは困難であるといわざるを得ない。
したがって、請求人の主張を採用することはできない。

(14)小括
以上のとおり、本件登録意匠は、甲1意匠、甲6意匠ないし甲11意匠、甲15意匠、甲17意匠、甲18意匠、甲20意匠及び甲21意匠の形態に基づいて、当業者が容易に創作をすることができたということはできないので、意匠法第3条第2項が規定する意匠には該当せず、本件登録意匠について意匠登録を受けることができないとすることはできない。
したがって、請求人が主張する無効理由2には、理由がない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する無効理由1及び無効理由2には理由がなく、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件登録意匠の登録は、無効とすることはできない。

審判に関する費用については、意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。

よって、結論のとおり審決する。
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。



















































審決日 2022-11-29 
出願番号 2012013320 
審決分類 D 1 113・ 113- Y (D6)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
小林 裕和
登録日 2013-05-10 
登録番号 1472070 
代理人 佐藤 力哉 
代理人 弁理士法人藤本パートナーズ 
代理人 白木 裕一 
代理人 三宅 晃史 
代理人 茜ヶ久保 公二 
代理人 細沼 萌葉 

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