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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H2 |
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管理番号 | 1400532 |
総通号数 | 20 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2023-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-09-09 |
確定日 | 2023-06-20 |
意匠に係る物品 | ジャンプスターター |
事件の表示 | 意願2021− 10301「ジャンプスターター」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続の経緯 本願は、2020年11月25日のアメリカ合衆国への出願に基づく優先権の主張を伴う、令和3年(2021年)5月17日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 令和3年(2021年) 9月28日付け:拒絶理由通知の送付(1回目 ) 同 年 10月18日 :手続補正書の提出 同 年 11月 5日付け:拒絶理由通知の送付(2回目 ) 令和4年(2022年) 2月 3日 :期間延長請求書の提出 同 年 4月 5日 :拒絶理由通知(2回目)に対 する意見書の提出 同 年 6月21日付け:拒絶査定 同 年 9月 9日 :審判請求書の提出 2 本願意匠の願書及び添付図面の記載 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「ジャンプスターター」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠 原査定の令和3年11月5日付けの拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当し、意匠登録を受けることができない、というものである。 そして、上記拒絶理由通知書において引用された意匠(以下「引用意匠」という。)は、下記のとおりである(別紙第2参照)。 記 「本願意匠と引用意匠とは、いずれもジャンプスターターに係る意匠であり、両意匠の形態については、筐体全体が横長直方体状であり、長辺側の側面から上面の縁部にかけて、凸状の線によって区画された複数の略四角形状部が看取され、筐体の左側面の中央に、1つの略長方形状のキャップが設けられた態様が顕著に共通しています。 一方、両意匠は主として、(1)筐体の右側面側における2つのキャップの態様について、本願意匠では、筺体の角部を覆う横長長方形状であって、2つのキャップの相対する端部にそれぞれつまみ部を有するのに対し、引用意匠では、筐体の右側面の平滑面上に納まる長方形状であって、上端部につまみ部、下端部に筐体と連結された帯状部が設けられている点、(2)筐体の右側面側において、角部に沿って水平方向に伸びる凸状の線の有無という点について相違しています。 しかしながら、上記の相違点(1)については、この種物品分野において、いずれも使用に応じて適宜変更される程度のものであり、上記の相違点(2)については、局所的な相違であるため、いずれも見る者の注意を強く惹かない微弱な相違であるといえます。 したがって、意匠全体として比較した場合、上記共通点が見る者に強い共通の美感を起こさせ、両意匠の類否判断を決定付けているのに対し、相違点はそれを凌駕して、見る者に別異の印象を与えるほどのものではありませんので、両意匠は、意匠全体として類似するものといわざるを得ません。 米国特許商標公報 2015年12月15日 充電器(登録番号US D745455S)の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH27327575号)」 なお、引用意匠である米国特許商標公報の登録番号US D745455Sの意匠に係る物品は、「BATTERY BOOSTER」と記載されているので、これを和訳して、本審決では引用意匠の意匠に係る物品を、以下「バッテリーブースター」と記載する。 第2 当審の判断 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は、「ジャンプスターター」であり、引用意匠の意匠に係る物品は、「バッテリーブースター」であって、その記載は異なるが、いずれも自動車の車載用バッテリーが上がって始動不能となった場合に、電力を供給してエンジンを始動させることができるものであるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、その用途及び機能が一致するものである。 (2)形状等の対比 両意匠の形状等を対比する(以下、対比のため、引用意匠も本願意匠の図面の図の表示及び向きに合わせることとする。)と、その形状等には、主として以下の共通点及び相違点が認められる。 ア 形状等の共通点 (共通点1)両意匠は、全体を、上面側及び底面側外周部分に面取りを施した略直方体形状の本体部分(以下「本体部」という。)の底面部分に、僅かな高さの脚部分(以下「脚部」という。)を配設し、本体部の右側面略中央部分に、デバイス接続用端子キャップ(以下「デバイス端子キャップ部」という。)を2つ配し、本体部の左側面略中央部分に、バッテリーケーブル接続用端子キャップ(以下「ケーブル端子キャップ部」という。)を1つ配した構成とした点が共通する。 (共通点2)両意匠は、本体部の正面側及び背面側の上面部面取り部分から側面部中央やや下寄りの部分にかけて、縦が短く幅広の略隅丸長方形状の凹部3つと、縦長で幅の狭い略隅丸長方形状の凹部2つを、僅かに間隔をあけて交互に形成し、本体部の上面部面取り部分の左右側面側の略中央部分に、略横長長方形状の凹部を1つ形成し、本体部の上面部面取り部分の左側面側の左右角部分に、平面視略四分円状で左側面視略直角三角形状の凹部を形成し、本体部の上面部分のほぼ全面に、その正面側及び背面側の辺の2箇所を僅かに略台形状に窪ませた平面視略横長八角形状の凹部を形成することで、本体部の上面側外周部分に枠状の凸条模様を形成した点が共通する。 (共通点3)両意匠は、ケーブル端子キャップ部の蓋部の形状等を、左側面視略隅丸六角形状とし、その上端部に略長方形状の小さなつまみ部を1つ形成した点が共通する。 (共通点4)両意匠は、本体部の左側面側のコーナー部分に、本体部の形状に合わせて湾曲した略長方形状の板状体を、表面部が本体部と面一になるように嵌め入れている点が共通する。 イ 形状等の相違点 (相違点1)本願意匠の本体部の縦横高さの比率が、約1.6:3.4:1としているのに対し、引用意匠の本体部の縦横高さの比率は、約2:4:1としている点で、両意匠は相違する。 (相違点2)本願意匠の本体部上面側外周部分の面取り部分の角度が、約25°の傾斜角度であるのに対し、引用意匠の本体部上面側外周部分の面取り部分の角度は、約35°の傾斜角度である点で、両意匠は相違する。 (相違点3)本願意匠のデバイス端子キャップ部の蓋部の形状等が、本体部の右側面側の左右のコーナー部分に、本体部の形状に合わせて湾曲した略長方形状の左右板状体を、表面部が本体部と面一になるように嵌め入れ、その板状体の内側部分を、観音開きに開閉する略長方形状の左右蓋部としたものであって、この左右蓋部の向かい合う内側の辺には、小さなつまみ部を上下に並設したものであるのに対し、引用意匠のデバイス端子キャップ部の蓋部の形状等は、本体部の右側面側略中央部分に、上下方向に開閉する略隅丸長方形状の左右蓋部を並設したものであって、この左右蓋部の上辺中央部分には、小さなつまみ部を1つずつ配し、下辺中央部分には側面視フック状の板状連結部を1つずつ配したものである点で、両意匠は相違する。 (相違点4)本願意匠の脚部の形状等が、底面部の長手方向一杯に、底面視倒[(角括弧)状の脚部を、上下に対向して1対配設しているのに対し、引用意匠の脚部の形状等は、底面部の四隅に、略小短円筒形状の脚部を、1つずつ配設している点で、両意匠は相違する。 (相違点5)本願意匠の本体部の右側面側の左右角部分の形状等が、上面部面取り部分に、平面視略四分円状で右側面視略直角三角形状の凹部を角部の形状に合わせて形成しているのに対し、引用意匠の本体部の右側面側の左右角部分の形状等は、上面部面取り部分から右側面部中央やや下寄りの部分にかけて、平面視略四分円状で右側面視略等脚台形状の凹部を角部の形状に合わせて形成している点で、両意匠は相違する。 2 両意匠の類否判断 (1)意匠に係る物品についての判断 両意匠の意匠に係る物品は、その用途及び機能が一致するから同一のものであるといえる。 (2)形状等についての判断 両意匠の意匠に係る物品は、緊急時に使用されるジャンプスターターであると認められるところ、この物品を購入する一般消費者である需要者は、使用時に的確に作業ができることを重視することから、操作部等の形状等を特に注視して観察するものであるといえる。 したがって、両意匠の類否判断にあたっては、需要者が特に注視して観察するデバイス端子キャップ部やケーブル端子キャップ部の具体的な形状等が、需要者の注意を惹く部分であるとの前提に基づいて、両意匠の共通点及び相違点が類否判断に及ぼす影響について、以下評価することとする。 ア 共通点の評価 (共通点1)の全体の構成態様については、この種物品において既に見られるものであって、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえないから、この(共通点1)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点2)の本体部の上面側外周部分に枠状の凸条模様を形成した点については、このような凸条模様に特徴があるとしても、本願意匠の出願前に多数存在しているものであるから、これらの凸条模様は両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず、この(共通点2)が意匠全体の美感に与える影響は一定程度のものである。 (共通点3)のケーブル端子キャップ部の蓋部の形状等は、本願意匠の出願前にごく普通に見られるものであって、両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず、この(共通点3)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 (共通点4)の本体部の左側面側のコーナー部分の形状等については、操作に係るような特に目に付く部分でもないため、この(共通点4)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 イ 相違点の評価 (相違点1)の本体部の縦横高さの比率、及び(相違点2)の本体部上面側の面取り部分の角度の相違については、本願意匠のものは、上面部分の傾斜が小さな高さのあるずんぐりした形状等であるとの印象を与えるのに対し、引用意匠のものは、上面部分の傾斜がやや大きい平たい形状等であるのとの印象を与えるから、需要者に別異の美感を起こさせるこの(相違点1)及び(相違点2)が意匠全体の美感に与える影響は一定程度あるといえる。 (相違点3)のデバイス端子キャップ部の蓋部の形状等の相違については、本願意匠のものは、従来品によく見られる側面視フック状の板状連結部のないすっきりした収まりの良い新規なものとの印象を与えるのに対し、引用意匠のものは、従来からごく普通に見られる板状連結部が突出したものとの印象を与えるから、需要者が注視する操作性に係る部分の形状等に係るこの(相違点3)が意匠全体の美感に与える影響は大きい。 (相違点4)の脚部の形状等、及び(相違点5)の本体部の右側面側の左右角部分の形状等の相違については、脚部はこの物品の使用時において特段目に付く部分ではなく、また、凸状模様の有無もいわれて気付く程度の相違にすぎないから、この(相違点4)及び(相違点5)が意匠全体の美感に与える影響は小さい。 ウ 形状等の類否判断 両意匠の形状等における各共通点及び相違点についての個別評価に基づき、全ての共通点及び相違点を総合的に観察した場合、両意匠は、需要者が注視して観察するデバイス端子キャップ部の形状等の相違が、意匠全体の美感に大きな影響を与え、本体部の縦横高さの比率や本体部上面側の面取り部分の角度の相違が、意匠全体の美感に一定程度影響を与えるのに対し、本体部の上面側外周部分に枠状の凸条模様を形成したという共通性が、意匠全体の美感に一定程度影響を与えるとしても、その他の共通点が意匠全体の美感に与える影響は小さいため、それらを合わせたとしても上記の相違点が与える影響を覆すことはできないから、両意匠は需要者に異なる美感を起こさせるものであって、両意匠の形状等は類似しないものである。 (3)小括 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品については同一のものであると認められるが、その形状等において類似しないから、本願意匠と引用意匠を類似するということはできない。 第3 むすび 上記のとおりであって、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2023-06-07 |
出願番号 | 2021010301 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H2)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 江塚 尚弘 |
登録日 | 2023-07-21 |
登録番号 | 1749701 |
代理人 | 大塚 雅晴 |
代理人 | 山尾 憲人 |