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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C7
管理番号 1400535 
総通号数 20 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-10-20 
確定日 2023-08-01 
意匠に係る物品 墓石 
事件の表示 意願2021− 17332「墓石」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとし、物品の部分について意匠登録を受けようとする、令和3年(2021年)8月11日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和4年(2022年) 1月27日付け :拒絶理由の通知
同年 4月12日 :意見書の提出
同年 7月13日付け :拒絶査定
同年 10月20日 :審判請求書の提出
同年 11月29日 :手続補正書の提出
同年 12月 1日 :手続補足書の提出
令和5年(2023年) 2月 7日付け :審尋
同年 3月 9日 :回答書の提出
同年 3月14日 :手続補足書の提出

第2 本願の意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「墓石」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書及び願書に添付した図面に記載のとおりとしたものであって、「実線で囲まれた部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(以下、本願について意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠
原査定の拒絶の理由は、この意匠登録出願の意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」といい、本願意匠とあわせて「両意匠」という。)に類似するものと認められるので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。

引用意匠(別紙第2参照)

著者の氏名 いせやのブログ
表題 集合墓の完成予想図 都筑まどか霊園
掲載箇所 ホーム>お墓・霊園・納骨堂>首都圏の墓所
媒体のタイプ [online]
掲載年月日 2020年 2月 1日
検索日 [令和4年 1月 6日検索]
情報の情報源 インターネット
情報のアドレス URL: https://wwww.iseya.co.jp/blog/%E9%9B%86%E5%90%88%E5%A2%93%E3%81%AE%E5%AE%8C%E6%88%90%E4%BA%88%E6%83%B3%E5%9B%B3%E3%80%80%E3%80%80%E9%83%BD%E7%AD%91%E3%81%BE%E3%81%A9%E3%81%8B%E9%9C%8A%E5%9C%92/
に掲載された墓石の意匠の当該部分

第4 対比
以下、引用意匠を本願意匠の図面の向きに合わせて対比する。

1 意匠に係る物品の対比
両意匠は、どちらも「墓石」であるから、両意匠の意匠に係る物品は、一致する。

2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)の用途及び機能は、共に墓標となる竿石及びその基台、並びに拝礼のために敷かれる拝石であるから、用途及び機能は、一致する。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分は、共に真ん中附近を矩形状に除いた竿石及びその基台、並びに墓石の地上に露出した拝石であるから、位置、大きさ及び範囲は、一致する。

4 両部分の形状等の対比
両部分の形状等には、主として、以下の共通点及び相違点がある。

ア 両部分の形状等の共通点
基本的構成態様として、
(ア)全体は、略縦長矩形厚板の竿石(以下「竿石部」という。)の下に略横長直方体の基台(以下「基部」という。)を配し、基部の正面に略横長矩形板の拝石(以下「拝石部」という。)を密着して配置したものである点、

各部の態様として、
(イ)竿石部について、正面視において、(a)上端部を緩やかな略凸弧状に構成し、(b)真ん中附近に略矩形額縁状のステンドグラス部を配し、(c)これを左右から囲うように略縦長長方形の枠体を設けている点、
(ウ)拝石部について、上面が、手前側から奥に向かうにしたがって高くなるように傾斜したものである点、において共通する。

イ 両部分の形状等の相違点
(エ)竿石部について、本願部分は、ステンドグラス部下端が基部に当接して配置され、竿石部が略倒コ字状を構成するのに対し、引用部分は、ステンドグラス部下端が竿石部下部の枠体に当接して配置され、竿石部が略ロ字状を構成する点、
(オ)正面視におけるステンドグラス部の縦横の長さの比が、本願部分は約1:1であるのに対し、引用部分は約1:2である点、
(カ)竿石部、基部及び拝石部の構成について、本願部分は基部及び拝石部の横幅が竿石部のそれより長く、正面視略凸字状となるのに対し、引用部分の竿石部、基部及び拝石部の横幅はほぼ等しく、正面視略長方形状となる点、において相違する。

第5 判断
1 意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は、一致するから同一である。

2 両部分の用途及び機能
両部分の用途及び機能は、一致するから同一である。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲
両部分の位置、大きさ及び範囲は、物品全体の形状等の中における位置、大きさ及び範囲が一致するから、同一である。

4 両部分の形状等の共通点及び相違点の評価
ア 共通点の評価
(ア)全体が、竿石部、基部及び拝石部から構成される点は、両部分の形状等を概括的に捉えた場合の共通点であり、また、この種物品分野においてはごく一般的な形状であるから、両部分のみに認められる格別の特徴とはいえず、両部分の類否判断に与える影響は小さい。

(イ)竿石部について、(a)の点については、例えば、以下の参考意匠1に見られるとおり、両部分のみに見られる態様ではないから、格別需要者の注意を引くものとはいえず、両部分の類否判断に与える影響は小さい。
また、(b)及び(c)の点については、例えば、以下の参考意匠2に見られるとおり、両部分のみに見られるものではなく、格別需要者の注意を引くものではないから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。

参考意匠1(別紙第3参照)
(株)石文堂発行の「月刊 石材」 8号 16巻 78頁記載
「墓石」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HA12026764号)

参考意匠2(別紙第4参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1358941号
(意匠に係る物品、墓石)の意匠


(ウ)拝石部の上面が、手前側から奥に向かうにしたがって高くなるように傾斜したものである点について、当該傾斜は、ごく僅かなものであって、さほど目立つものではないから、両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。

イ 相違点の評価
(エ)竿石部の相違について、需要者が特に注目する竿石部正面における相違であり、略倒コ字状に構成される本願部分と、略ロ字状に構成される引用部分とは、視覚的印象が大きく異なることから、両部分の類否判断に与える影響は極めて大きい。

(オ)正面視におけるステンドグラス部の縦横の長さの比率の相違は、需要者が注目する部分における相違であり、本願部分は、当該長さの比率を約1:1とする略正方形状であるのに対し、引用部分は、約1:2とする略横長長方形状であるから、縦横比において、引用部分は、本願部分より横に約2倍長く、需要者に対し別異の印象を強く与えるものといえ、両部分の類否判断に与える影響は大きい。

(カ)竿石部、基部及び拝石部の構成における相違について、本願部分は、基部及び拝石部の横幅が竿石部のそれより長いことにより、その構成が略凸字状となり、安定感のある印象を与えるのに対し、引用部分は、竿石部、基部及び拝石部の横幅がほぼ等しいことにより、シンプルですっきりした印象をもたらしていることから、両部分の類否判断に与える影響は大きい。

5 両部分の形状等の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠部分全体として総合的に観察し判断した場合、類否判断に与える影響は、共通点(ア)から共通点(ウ)については小さいのに対して、相違点(エ)から相違点(カ)については大きいものといえる。

したがって、両部分の形状等を総合的に観察した場合、共通点に比べて、相違点がもたらす両部分への類否判断に及ぼす影響の方が大きいものであるから、両部分の形状等は類似しない。

6 小括
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品は同一で、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲も同一であるが、両部分の形状等においては、共通点が未だ類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として観察した場合、両部分は、需要者に異なる美感を与えているというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。









審決日 2023-07-19 
出願番号 2021017332 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 尾曲 幸輔
渡邉 久美
登録日 2023-08-08 
登録番号 1751060 
代理人 亀山 夏樹 

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