ポートフォリオ機能
| ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
| 既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード
|
| 審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7 |
|---|---|
| 管理番号 | 1400540 |
| 総通号数 | 20 |
| 発行国 | JP |
| 公報種別 | 意匠審決公報 |
| 発行日 | 2023-08-25 |
| 種別 | 拒絶査定不服の審決 |
| 審判請求日 | 2023-01-18 |
| 確定日 | 2023-07-11 |
| 意匠に係る物品 | リモコン |
| 事件の表示 | 意願２０２２− ６４５４「リモコン」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
| 結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
| 理由 |
第１ 手続の経緯 本願は、令和４年（２０２２年）３月２８日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和４年（２０２２年） ８月３１日付け ：拒絶理由の通知 同年 ９月２６日 ：意見書の提出 同年 １０月２５日付け ：拒絶査定 令和５年（２０２３年） １月１８日 ：審判請求書の提出 第２ 本願の意匠 本願の意匠（以下「本願意匠」という。）は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「リモコン」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合（以下「形状等」という。）を、願書及び願書に添付した図面に記載のとおりとしたものである（別紙第１参照）。 第３ 原査定の拒絶の理由及び引用の意匠 原査定の拒絶の理由は、この意匠登録出願の意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠（以下「引用意匠」といい、本願意匠とあわせて「両意匠」という。）に類似するものと認められるので、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠（先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠）に該当する、というものである。 引用意匠（別紙第２参照） ＤＭ／２１７ ８３６ ２０２１年１２月２４日 無線リモコン装置（登録番号ＤＭ／２１７ ８３６ Ｒｅｍｏｔｅ−ｃｏｎｔｒｏｌ ａｐｐａｒａｔｕｓ （ｗｉｒｅｌｅｓｓ））の意匠 （特許庁意匠課公知資料番号第ＲＨ０３５１８９５２号） ※ホルダー用孔（破線部）を含む 第４ 対比 以下、引用意匠を本願意匠の図面の向きに合わせて対比する。 １ 意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は、「リモコン」であるのに対し、引用意匠は、「Ｒｅｍｏｔｅ−ｃｏｎｔｒｏｌ ａｐｐａｒａｔｕｓ （ｗｉｒｅｌｅｓｓ）」であり、いずれもリモコンと認められる。 ２ 両意匠の形状等の対比 両意匠の形状等には、主として、以下の共通点及び相違点がある。 （共通点１）全体の基本構成について、縦長の柱状体で構成され、当該柱状体の扁平な面の略上半部に、略縦長長円形状の操作部（以下「縦長操作部」という。）と、略横長長円形状の操作部（以下「横長操作部」という。）が上下に配置される点 （共通点２）縦長操作部について、上中下に三分割され、上部に略逆Ｖ字状の図記号、下部に略Ｖ字状の図記号が配置される点 （共通点３）横長操作部の形状について、略長円形状に構成される点 （共通点４）背面略中央に小さな二重円状部を有する点 （相違点１）全体の基本構成について、本願意匠は、略長円柱であり側面のうち扁平な部分が、平面を構成するのに対し、引例意匠は、略楕円柱であり側面のうち扁平な部分が、凸曲面を構成する点 （相違点２）筐体のパネルの構成について、本願意匠は、２つの平面視略Ｕ字状のパネルの頂部を突き合わせて構成されるのに対し、引用意匠は、正面上部のパネル、正面下部のパネル及び背面のパネルから構成される点 （相違点３）縦長操作部の分割線について、本願意匠は、上中下の分割線上に状態表示部を有するのに対し、引用意匠は、分割線のみ有する点 （相違点４）縦長操作部の上部及び下部について、本願意匠は模様であるのに対し、引用意匠は、凸状に突出する形状である点 （相違点５）横長操作部について、本願意匠は側面視において凸状に突出せず、押下部表面中央に円形の凹みを有するのに対し、引用意匠は側面視において凸状に突出し、押下部周縁の筐体部に縁取りを有する点 （相違点６）各操作部周囲について、引用意匠の縦長操作部と横長操作部の間に４つの小さな略横長長円形状部、及び縦長操作部上部に小さな略縦長長円形状部を有するのに対し、本願意匠にはそのような長円形状部がない点 （相違点７）背面について、本願意匠は縦長操作部と同程度の大きさの略長円形状凹部を有し、当該凹部の略上半部にさらなる略長円形状凹部、略下半部に小さな円形状凹部が設けられ、当該部の上部に逆三角形状部を有するのに対し、引用意匠の当該部には略長円形状の線が形成されている点 第５ 判断 １ 意匠に係る物品 両意匠の意匠に係る物品は、一致すると認められるから同一である。 ２ 両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価 両意匠の意匠に係る物品は、機器の遠隔操作のために用いられる「リモコン」であり、当該物品分野の需要者は、主に、使用者、製造業者、販売業者及び取引業者が含まれる。そして、リモコンは操作部を押下等して使用するものであるから、需要者の注意を最も強く引く部位は、操作部といえ、この形状等について評価し、かつ、それ以外の形状等も併せて、各部を総合して意匠全体として形状等を評価することとする。 （１） 共通点の評価 基本的構成態様に係る（共通点１）について、リモコンの分野において、全体を柱状体で構成し、当該柱状体の略上半部に操作部を配置することはよく見られる構成であるから、この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 （共通点２）について、需要者の最も強く注意を引く部位である縦長操作部の形状等に係るものであり、縦長操作部の全体構成においては共通するものの、（相違点３）及び（相違点４）に後述する当該部の具体的態様においての相違が顕著であることに比すれば、この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 （共通点３）について、横長操作部の全体構成においては共通するものの、（相違点５）に後述する当該部の具体的態様においての相違が顕著であることに比すれば、この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 （共通点４）について、具体的態様は共通するものの、当該箇所は、通常使用時においてさほど目につかない部位であり、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 （２） 相違点の評価 （相違点１）について、略長円柱か略楕円柱かという全体形状の相違により、需要者が、リモコンを手に取って操作する際の感触や、フラットな面に置いた場合の安定性が異なり、需要者は注目するところであるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 （相違点２）について、本願意匠のパネル構成は、略長円柱が略Ｕ字状のパネルの外殻で覆われるような印象を与えるのに対し、引用意匠のパネル構成は、一塊の略楕円柱という印象を与え、需要者は注目するところであるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 （相違点３）について、本願意匠の縦長操作部における状態表示部は、使用時において需要者が最も着目する部分であるから、当該部の有無が、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 （相違点４）について、縦長操作部の記号が模様であるか凸状であるかは、需要者の操作時における触覚的認知に関わり、異なる使用感を与えるため、需要者は着目するから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 （相違点５）について、横長操作部の突出態様の相違は、異なる使用感を与えるため、需要者は着目するから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 （相違点６）について、縦長操作部と横長操作部の間の４つの小さな略横長長円形状部、及び縦長操作部上部の小さな略縦長長円形状部は極めて小さなものであり、需要者は着目しないから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 （相違点７）について、この物品分野において、背面は通常着目しない面といえるものの、当該部の形状は、壁等の垂直面への設置可能性に影響するので、使い勝手に影響するものといえ、需要者は、ある程度の関心を持って注目するから、両意匠の類否判断に与える影響は一定程度あるものといえる。 （３）両意匠の形状等の類否判断 共通点及び相違点の評価に基づき、両意匠を、全体として総合的に観察し、判断した場合、（共通点１）から（共通点３）は、両意匠の形状等を概括的に捉えた場合の共通点にすぎず、（共通点４）は、目立たない部位での共通点であり、両意匠の類否判断に与える影響は小さいのに対し、（相違点１）から（相違点５）は、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 したがって、両意匠の形状等を全体として総合的に観察した場合、両意匠の形状等は類似するものである。 ３ 小括 以上のとおり、両意匠の意匠に係る物品は同一であるが、両意匠の形状等においては、相違点の類否判断に与える影響が共通点のそれを凌駕しており、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。 第６ むすび 以上のとおり、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。     |
| 審決日 | 2023-06-28 |
| 出願番号 | 2022006454 |
| 審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(H7)
|
| 最終処分 | 01 成立 |
| 特許庁審判長 |
小林 裕和 |
| 特許庁審判官 |
尾曲 幸輔 江塚 尚弘 |
| 登録日 | 2023-08-03 |
| 登録番号 | 1750714 |
| 代理人 | 杉村 憲司 |
| 代理人 | 村松 由布子 |
| 代理人 | 杉村 光嗣 |