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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L3 |
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管理番号 | 1409223 |
総通号数 | 28 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2024-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2023-07-18 |
確定日 | 2024-03-08 |
意匠に係る物品 | 破風化粧板を備えた住宅 |
事件の表示 | 意願2022− 24889「破風化粧板を備えた住宅」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、建築物の部分について意匠登録を受けようとし、意匠登録第1529069号(意願2014−26143)を本意匠とする関連意匠に係る、令和4年(2022年)11月17日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 令和 4年(2022年)12月 1日付け 拒絶理由通知書 令和 5年(2023年) 1月13日 意見書の提出 同年 4月13日付け 拒絶査定 同年 7月18日 審判請求書の提出 第2 本願の意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る建築物を「破風化粧板を備えた住宅」とし、その形状等(形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって、本願意匠において建築物の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表された部分が意匠登録を受けようとする部分である。平面図、底面図、背面図は、意匠登録を受けようとする部分が表れないので省略する。」としたものである。(別紙第1参照) 第3 原査定における拒絶の理由及び引用の意匠 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法3条1項3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである。 引用意匠(別紙第2参照) 著者の名称:RoomClip タイトル:parurun − 外構工事中/ベスの家/新築一軒家/デッキのある暮らし/玄関入り口/BESS G−LOG・・・ のインテリア実例 媒体のタイプ:online 掲載年月日:2018年05月29日 検索日:2022年12月01日 情報の情報源:インターネット 情報のアドレス:https://roomclip.jp/photo/cHqo に掲載されている住宅の本願意匠に相当する部分の意匠 第4 本意匠 本意匠(意匠登録第1529069号)は、平成26年(2014年)11月6日の意匠登録出願であって、平成27年(2015年)6月19日に設定登録され、同年7月21日に登録公報が発行されたものであり、その意匠に係る物品を「破風化粧板」としたものである。(別紙第3参照) 第5 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の類否判断 (1)対比 ア 意匠に係る建築物 本願意匠の意匠に係る建築物は「破風化粧板を備えた住宅」であるのに対し、引用意匠の意匠に係る建築物は「住宅」であって、若干表記は異なるが、どちらも「住宅」であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る建築物は、一致する。 イ 本願部分と引用意匠において本願部分と対比する部分の用途及び機能 本願部分と引用意匠において本願部分と対比する部分、すなわち本願部分に相当する部分(以下「引用部分」といい、本願部分と引用部分を合わせて「両部分」という。)の用途及び機能については、共に、建物の切妻屋根のケラバ(軒端(のきば))の下側に取り付ける破風化粧板であるから、両部分の用途及び機能は、一致する。 ウ 両部分の位置、大きさ及び範囲 両部分は、切妻屋根のケラバの下側に位置し、大きさ及び範囲は、正面における高さは全高の約7割(中央部分の厚みは全高の約1割)で、横幅は妻壁より1割程度横長であるから、両部分の位置、大きさ及び範囲は、一致する。 エ 両部分の形状等 両部分の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。 (ア)共通点 a 基本的構成態様 全体は、正面視略細長矩形状の薄板を略逆V字状に屈曲し、その正面において長さ方向に沿って上下に2分するように下側全体を段差状に薄く切り欠いている点、 各部の態様として、 b 縦横の長さの比率を約1:1.7とし、頂角を約80度としている点、 c 中央から両端に向かって先窄まり状に形成している点において、共通する。 (イ)相違点 本願部分は、線図のみで色彩は施していないのに対し、引用部分は、白色に着色している点において、相違する。 (2)類否判断 以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に与える影響を評価・総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。 ア 意匠に係る建築物の類否判断 両意匠の意匠に係る建築物は、同一である。 イ 両部分の用途及び機能の類否判断 両部分の用途及び機能は、同一である。 ウ 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価 両部分の位置、両部分の大きさ及び範囲は、同一である。 エ 両部分の形状等の共通点及び相違点の評価 両部分は、全体を正面視略細長矩形状の薄板を略逆V字状に屈曲し、その正面において長さ方向に沿って上下に2分するように下側全体を段差状に薄く切り欠いた基本的構成態様に加え、縦横の長さの比率、頂角の角度、中央から両端に向かって先窄まり状に形成した共通する態様が顕著であり、需要者に共通した美感を起こさせるというべきであるから、両部分の類否判断に与える影響は大きいのに対し、色彩の有無について相違するが、部分的な相違に過ぎず、微弱なものであるから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。 (3)小括 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る建築物は同一で、両部分の用途及び機能並びに位置、大きさ及び範囲も同一で、形状等においても、共通点が両部分の類否判断に与える影響は大きく、これら共通点が相まって需要者に共通の美感を与えているのに対して、相違点が類否判断に与える影響は小さいものであるから、本願意匠は、引用意匠に類似する。 2 本願意匠と本意匠の類否判断 (1)対比 ア 願書の意匠に係る物品の欄の記載 願書の意匠に係る物品の欄の記載について、本願意匠は「破風化粧板を備えた住宅」であるのに対し、本意匠は「破風化粧板」であるから、相違する。 イ 本願部分と本意匠の用途及び機能 本願部分と本意匠の用途及び機能については、共に、建物の切妻屋根のケラバの下側に取り付ける破風化粧板であるから、本願部分と本意匠の用途及び機能は、一致する。 ウ 本願部分と本意匠の位置、大きさ及び範囲 本願部分と本意匠は、切妻屋根のケラバの下側に位置し、大きさ及び範囲は、正面における高さは全高の約7割(中央部分の高さは全高の約1割)で、横幅は妻壁より1割程度横長であるから、本願部分と本意匠の位置及び大きさは、一致する。 なお、本意匠の位置及び大きさの認定に際しては、切妻屋根を有する住宅において通常配される破風化粧板の位置及び大きさを念頭に判断した。 一方、本願部分と本意匠の範囲については、本願部分は、正面及び左右側面の正面側に表れる一部であるのに対し、本意匠は、全体意匠であるから、本願部分と本意匠の範囲は、相違する。 エ 本願部分と本意匠の形状等 本願部分と本意匠の形状等については、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。 (ア)共通点 a 基本的構成態様 全体は、正面視略細長矩形状の薄板を略逆V字状に屈曲し、その正面において長さ方向に沿って上下に2分するように下側全体を段差状に薄く切り欠いている点、 各部の態様として、 b 縦横の長さの比率を約1:1.7とし、頂角を約80度としている点、 c 中央から両端に向かって先窄まり状に形成している点において、共通する。 (イ)相違点 本意匠は、正面視両端の下側を僅かに段差状に切り欠いているのに対し、本願部分は、切り欠いていない点において、相違する。 (2)類否判断 以上の共通点及び相違点が本願意匠と本意匠の類否判断に与える影響を評価・総合して、本願意匠と本意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。 ア 願書の意匠に係る物品の欄の記載について 本願は、願書の意匠に係る物品の欄の記載によれば「破風化粧板を備えた住宅」であるから建築物の形状等について意匠登録を受けようとするものであり、かつ、破風化粧板を備えたものであることを当該建築物の有する機能上の特徴として掲げたものである。一方、本意匠は、意匠に係る物品を「破風化粧板」としたものであるが、破風化粧板とは、破風の一種で(化粧破風とも呼ばれる。)、切妻屋根を伴う建築物の屋根裏を雨風から防ぐ目的でケラバの下側に取り付けて使用するものであるところ、それ以外の使用の目的は想定されない。したがって、両者の願書の意匠に係る物品の欄の記載が相違するとしても、本願意匠と本意匠は、実質的に用途及び機能が共通するものと判断できるから、願書の意匠に係る物品の欄の記載における相違は、本願意匠と本意匠の類否判断を左右しない。 イ 本願部分と本意匠の用途及び機能の類否判断 本願部分と本意匠の用途及び機能は、同一である。 ウ 本願部分と本意匠の位置、大きさ及び範囲の評価 本願部分と本意匠の位置及び大きさは、同一である。 一方、本願部分と本意匠の範囲は、相違するものの、正面以外の面は、使用状態において屋根の裏側に隠れてほとんど目に付かないものであるから、この相違は、本願部分と本意匠の類否判断を左右しない。 エ 本願部分と本意匠の形状等の共通点及び相違点の評価 本願部分と本意匠は、全体を正面視略細長矩形状の薄板を略逆V字状に屈曲し、その正面において長さ方向に沿って上下に2分するように下側全体を段差状に薄く切り欠いた基本的構成態様に加え、縦横の長さの比率、頂角の角度、中央から両端に向かって先窄まり状に形成した共通する態様が顕著であり、需要者に共通した美感を起こさせるというべきであるから、両部分の類否判断に与える影響は大きいのに対し、両端の切欠きの有無において相違するが、目立たない箇所における部分的な相違に過ぎず、微弱なものであるから、両部分の類判断に与える影響は小さい。 (3)小括 以上のとおり、本願意匠と本意匠は、願書の意匠に係る物品の欄の記載において相違するものの、両者の類否判断に与える影響は小さく、本願部分と本意匠の用途及び機能は同一で、位置及び大きさも同一で、範囲は相違するものの、両者の類否判断に与える影響は小さく、形状等においても、共通点が類否判断に与える影響は大きく、これら共通点が相まって需要者に共通の美感を与えているのに対して、相違点が類否判断に与える影響は小さいものであるから、本願意匠は、本意匠に類似する。 3 本願意匠が意匠法10条1項の規定に該当するか否かについて 本願意匠は、前記1のとおり、引用意匠と類似するものである。しかしながら、前記2のとおり、本願意匠は、引用意匠の公知日(2018年5月29日)より出願日が先行する本意匠(2014年11月6日出願)にも類似するものであるから、意匠法10条1項に規定する本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たすものである。 また、本意匠は、本願の出願前の自己の意匠登録出願であるから、本願は、意匠法10条1項に規定する出願時期及び出願人に係る要件を満たしている。 したがって、本願意匠は、意匠法10条1項の規定に該当する。 4 引用意匠が意匠法3条1項2号に掲げる意匠に該当しないことについて ア 引用意匠が、請求人が関連意匠として意匠登録を受けようとする意匠(本願意匠)の基礎意匠(本意匠)と同一又は類似する意匠であって、当該基礎意匠の出願時以降に公知となったものであることについて 引用意匠の掲載頁の右側中段付近に「BESSの家」のタグが確認できるところ、この「BESSの家」は、株式会社アールシーコア(請求人)の事業の1つであるBESS事業(1986年から事業開始)の中で商品化された住宅であるから(参考文献、別紙第4参照)、引用意匠は、請求人の公知の意匠といえるものである。 また、引用意匠は、前記3のとおり、本意匠の出願日より後に公知となったものである。 イ 引用意匠において本意匠に相当する部分が本意匠に類似することについて 引用意匠において本意匠に相当する部分と本意匠の意匠に係る物品は、共に「破風化粧板」であるから、両者の意匠に係る物品は、同一であり、形状等についても、正面から見た態様における共通感が顕著であるから、両者の形状等は、類似する。 したがって、引用意匠において本意匠に相当する部分は本意匠に類似する。 ウ 小括 上記のとおり、引用意匠において本意匠に相当する部分は、本意匠と同一又は類似する意匠であって、当該本意匠の出願時以降に公知となった自己の意匠であるから、意匠法10条2項の規定により、本願意匠についての同法3条1項の規定の適用については、同法3条1項2号に該当するには至らなかったものとみなすことができる。 第6 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、引用意匠に類似するものの、引用意匠は、意匠法3条1項2号に該当するには至らず、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2024-02-27 |
出願番号 | 2022024889 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(L3)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
内藤 弘樹 吉田 英生 |
登録日 | 2024-03-25 |
登録番号 | 1767191 |
代理人 | 佐藤 力哉 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 茜ヶ久保 公二 |