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審決分類 審判 無効  意9条先願 無効とする J7
管理番号 1010657 
審判番号 審判1999-35116
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2000-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-03-15 
確定日 2000-01-11 
意匠に係る物品 医療用容器 
事件の表示 上記当事者間の登録第989089号類似第3号意匠「医療用容器」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第989089号の類似第3号意匠の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第一 手続きの経緯
1.請求人の申し立て及び理由
請求人は、第989089号登録意匠の類似第3号の登録はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由として請求書に記載のとおりの主張をし、証拠方法として甲第1号証乃至甲第8号証の書証を提出したものである。
その理由を大要すると、登録第989089号の類似第3号登録意匠(以下、「本件登録類似意匠」という。)は、登録第929552号意匠(甲第3号証)、登録第929552号の類似第1号意匠(甲第5号証)、及び登録929552号の類似第2号意匠(甲第6号証)に類似するものであり、意匠法第3条第1項第3号に該当し、意匠登録を受けることができないものであるから、その意匠登録は、同法第48条第1項第1号に該当し、無効とされるべきである、というものである。
2.被請求人の答弁及びその理由
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由として答弁書記載のとおりの反論をし、証拠方法として乙第1号証乃至乙第6号証の書証を提出したものである。
その反論を大要すると、甲第5,6号証の登録類似意匠は、本件登録類似意匠の出願時点では、未公開であったので、これを以て本件登録類似意匠が意匠法第3条1項第3号に該当するといえないことは明明白白である。従って、無効理由は、本件登録類似意匠は、甲第3号証の公知意匠に類似するということとなるが、本件登録類似意匠は、甲第3号証の意匠に非類似である、というものである。
3.当審の発した登録無効理由通知
当審は、本件審判請求に対して、本件登録類似意匠は、他人の先願に係る登録第929552号の類似第1号意匠に類似するから、意匠法第9条第1項の最先の意匠登録出願人に係るものに該当せず、その登録を無効とすべきものであるとの登録無効理由通知を発したものである。
4.被請求人の意見書
上記登録無効理由通知に対して、指定期間内に請求人からは何らの応答がなく、被請求人から意見書の提出があったが、その意見の大要は、通知のあった無効理由については特に意見はないが、当初の無効理由である甲第3号証の意匠と本件登録類似意匠との類否判断を審決において明確に示すべきである、と主張するものである。
第二 当審の判断
1.本件登録類似意匠
本件登録類似意匠(登録第989089号の類似第3号意匠)は、平成9年9月2日の意匠登録出願に係り、意匠に係る物品が「医療用容器」、その形態が願書及び添付図面に示されたとおりのものである。(別紙第一参照)
2.甲号意匠
本件登録類似意匠の無効理由において、請求人が引用した意匠は、登録第929552号意匠(甲3号証所載、以下、「甲1号意匠」という。平成7年7月11日意匠公報掲載。)、登録第929552号の類似第1号意匠、(甲第5号証所載、以下、「甲2号意匠」という。平成9年4月24日出願、平成11年4月21日意匠公報掲載。)、及び登録第929552号の類似第2号意匠(甲第6号証所載、以下「甲第3号意匠」という。平成9年4月24日出願、平成11年4月21日意匠公報掲載。)である。
3.本件登録類似意匠と甲1号意匠の類否
本件登録類似意匠と甲1号意匠を比較すると、意匠に係る物品が同一であって、その形態については、主として以下の共通点と差異点があるものと認められる。
即ち、両意匠は、上下の口栓部を有する輸液容器、両頭針を取り付けたニードルホルダー、バイアルを収容するニードルケース、フイルムシート等で構成されるところ、先ず共通点について、全体の基本的な構成態様として、(1)横幅が奥行きより長く、稍縦長の略角丸直方体状の上下面中央に口栓部を設けた輸液容器の上側に輸液容器より小さな略円筒状のニードルケースを取り付け、その内側に両頭針を垂直状に取り付けたニードルホルダーをはめ込んだ態様である点、各部の具体的な態様において、(2)輸液容器につき、正面幅が奥行きの略2倍、高さが略3倍の比率のもので、本体部の上下端寄り部分が正面視なだらかな斜面を成して口栓部に集束し、下方の口栓部が稍細長状である点、(3)ニードルケースの周側面上端の直径上の対向位置を基部として、細帯状板を略アーチ状に曲げた態様の提手を取り付けている点、(4)ニードルケースの上端面に円形の一端を頂点部を丸めた三角形状に延伸した態様のフイルムシートを貼着している点、が認められる。
次いで、差異点について、各部の具体的な態様において、(イ)輸液容器について、本件登録類似意匠は、上方視長円状で、上部口栓部が細長で露出しており、下部口栓部は、鍔縁内に円盤状栓が嵌設され、下面に方形フイルムシートが貼着され、透明であるのに対して、甲1号意匠は、上方視角部を丸めた略三味胴形で、上部口栓部の基部が大径状で、その過半がニードルケースに隠れており、全体が不透明で、下部口栓部には、上端に細縁を巡らせた有底2段円筒状の大きな蓋が被せられ、蓋の下面に背の低い有蓋円筒の上面中央に背の低い円錐台状の突出部を設けた態様の部品を取り付けている点、(ロ)ニードルケース(スリーブを含む。)について、本件登録類似意匠は、スリーブとケースが重ねられて構成され、上部口栓部の上端部より上に取り付けられ、高さが直径より稍長い透明有底円筒状であり、底部の周端が角丸状に丸められ、ニードルホルダー及びその中心位置に直立する両頭針が透視されるものであるのに対して、甲1号意匠は、輸液容器の肩部に密接して取り付けられ、高さが径の略2倍の背高な略円筒状を呈し、その周側面の下方直径上の対向部分に方形窓を設け、その窓から上部口栓部が垣間見えるもので、全体が不透明である点、が認められる。
そこで、上記共通点と差異点が両意匠の類否の判断に及ぼ影響の大きさについて、以下に検討する。
先ず、共通点について、(1)の点については、全体の基本的な構成態様に係るものではあるが、両意匠にのみ認められるものでなく、甲1号意匠の出願前において既に他の出願(登録第780294号、平成2年1月26日意匠公報掲載。登録第926536号意匠、平成4年12月29日出願。)にみられる態様であって、この点に甲1号意匠の特徴があるものとはいえず、また構造上の必然的構成に近い態様でもあり、各部のより具体的な態様の在りようが類否を左右するものというべきであり、その影響は、さほどに大きいものということはできない。 このことは、甲1号意匠が登録第926536号意匠と非類似の意匠として独立の登録がなされていることからも肯けるものというべきである。(2)の点は、輸液容器の本体部分の正面視の形態の共通感を感得させるものであるが、未だそれは輸液容器の形態の大半を占めるまでには至っておらず、また容器一般として特段の特徴のあるものでもなく、全体として及ぼすその影響は、軽微に止まるものである。(3)の点は、目立つ部位にあって、確かに共通感をもたらすものではあるが、本件物品において、提手があることは必然的であり、その態様も一般的なものであり、その影響は、微弱に止まるものである。(4)の点は、付属的で特段珍しい態様でもなく、その影響は、微弱に止まるものである。
そうすると、上記の共通点は、これらが纏まって相乗的な効果が付加される余地を考慮したとしても、全体としてその影響は、類否を左右するまでのものと評価することができないものである。
次いで、差異点について、(イ)の点は、それぞれが輸液容器の注視される各部の具体的な態様に係る大きな差異点であって、差異点が合わさって全体に占める面積も大きく、その全体として及ぼす影響は、かなり大きいものというべきである。(ロ)の点は、ニードルホルダーのみの態様を比較すると極めて大きな差異であり、この差異と輸液容器との結合態様の差異を合わせると、その全体としての影響は、かなり大きなものというべきである。
そうすると、上記の差異点は、これらが合わさって全体に及ぼす影響は、かなり大きいものというべきである。
以上のとおりであって、共通点の及ぼす影響が差異点の及ぼす影響を凌駕しているとはいえない両意匠は、結局類似するとはいえないものである。
4.本件登録類似意匠と甲2号意匠の類否
甲2号意匠は、本件登録類似意匠のいわゆる先願に係る意匠であって、先行公知意匠の地位にないことは、被請求人の反論のとおりであり、この判断に基づいて当審は、甲2号意匠を引用して、本件登録類似意匠が意匠法第9条第1項の規定に違背しており、その登録が無効とされるべきとの登録無効理由を通知したものであるが、以下に両意匠の類否を検討する。
両意匠を比較すると、意匠に係る物品が一致し、その形態については、主として以下の共通点と差異点があるものと認められる。
先ず、共通点について、全体の基本的な構成態様として、(1)横幅が奥行きより長く稍縦長の略角丸直方体状の上下面中央に口栓部を設けた輸液容器の上側に輸液容器より小さな略円筒状のニードルケースをを取り付け、その内側に両頭針を垂直状に取り付けたニードルホルダーをはめ込んだ態様である点、各部の具体的な態様において、(2)輸液容器につき、正面幅が奥行きの略2倍、高さが略3倍の比率のもので、本体部の上下端寄り部分が正面視なだらかな斜面を成して口栓部に集束し、上下の口栓部が共に稍細長円筒状である点、(3)ニードルケース(スリーブを含む。)について、輸液容器本体部と距離をおいて、上部口栓部の上側に載置した略有底円筒状で、底面周部が角丸状に丸められ、上端部に鍔を設けている点、(4)ニードルケースの周側面上端の直径上の位置に細幅帯状板をアーチ状に曲げた態様の提手を取り付けている点、(5)ニードルケースの上端面に円形の一端を頂点部を丸めた三角形状に延伸したフイルムシートが貼着されている点、(6)下部口栓部の下面にフイルムシートを貼着している点、が認められる。
次いで、差異点について、各部の具体的な態様において、(イ)輸液容器について、本件登録類似意匠は、上方視長円状で、下部口栓部は、鍔縁内に円盤状の栓をはめ込み、全体が透明のものであるのに対して、甲2号意匠は、上方視楕円形で、下部口栓部に有底円筒状の稍大きな蓋が被せられている点、(ロ)下部口栓部の底面に貼着されたフイルムシートにつき、本件登録類似意匠は、方形状であるのに対して、甲2号意匠は、円形の一端を頂点を丸めた三角状に延伸した態様である点、が認められる。
そこで、上記の共通点と差異点が両意匠の類否の判断の及ぼす影響の大きさについて、以下に検討する。
先ず、共通点について、(1)の点は、上記3の共通点(1)の場合と同様に判断され、その影響は、さほど大きいものということはできない。(2)の点は、輸液容器の正面の略全体形態の共通感をもたらし、上方視及び下端部の態様の差異を圧しており、全体としてのその影響は、かなり大きいものというべきである。(3)の点は、全体の中で相当な面積を占め、且つ注視される部分に係り、その影響は、かなり大きいものである。(4)及び(5)の点は、上記3の共通点(3)(4)の場合と同様に判断され、その影響は、それぞれ微弱に止まるものである。(6)の点は、付属的なものであって、共に特段特徴的な態様でもなく、その影響は、微弱である。
そうすると、上記共通点は、(1)(2)(3)が纏まることのみによっても、その全体に及ぼす影響は、かなり大きいものというべきである。
次いで、差異点について、(イ)の点は、上方視長円形と楕円形の差異については、平面形態としても近しい形態でありまた、これを共通点(2)と合わせて立体的に観察すると、その差異感はさらに減じられ、その及ぼす影響は、微弱に止まるものである。(ロ)の点は、細部の付属的部分の態様の僅かの差異に過ぎず、その影響は、微弱である。
そうすると、上記差異点は、両者が合わさったとしても、その影響が微弱に止まるというべきである。
以上のとおりであって、共通点の及ぼす影響が差異点の及ぼす影響を凌駕する両意匠は、結局、類似するものといわざるを得ない。
結び
以上のとおり、本件登録類似意匠は、甲1号意匠に類似しないものの、甲2号意匠に類似するものであるから、甲3号意匠との類否判断を待つまでもなく、意匠法第9条第1項の最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当せず、同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠であるにも拘わらず、登録を受けたものであるから、意匠法48条第1項第1号に該当し、その登録は、これを無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別紙第一










審理終結日 1999-10-15 
結審通知日 1999-10-26 
審決日 1999-11-05 
出願番号 意願平9-66486 
審決分類 D 1 11・ 4- Z (J7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 生亀 照恵 
特許庁審判長 森本 敬司
特許庁審判官 伊藤 栄子
岩井 芳紀
登録日 1997-05-09 
登録番号 意匠登録第989089号(D989089) 
代理人 朝日奈 宗太 
代理人 牛田 利治 
代理人 佐木 啓二 
代理人 岩谷 敏昭 
代理人 澤 由美 

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