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審決分類 審判 無効  2項容易に創作 無効とする L5
審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする L5
管理番号 1025143 
審判番号 審判1999-35266
総通号数 15 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2001-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-06-03 
確定日 2000-08-02 
意匠に係る物品 建築板用シール連結材 
事件の表示 上記当事者間の登録第995898号意匠「建築板用シール連結材」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第995898号意匠の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第一 請求の趣旨及びその理由
請求人は、「意匠登録第995898号の登録はこれを無効とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由として、請求書に記載のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証の1乃至25号証の書証を提出したものである。
請求の理由を大要すると、(1)意匠登録第995898号の意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、意匠登録出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物である甲第1号証及び甲第2号証に記載された意匠に類似するので、意匠法第第3条第1項甲第3号に該当し、無効とされるべきものである、(2)本件登録意匠は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証の1乃至25によって証明されるように、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において広く知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定に該当し、無効とされるべきものである、と主張するものである。
第二 被請求人の答弁及びその理由
被請求人は、「本件審判の請求は、成りたた立たない。審判費用は、請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由として答弁書に記載のとおりの反論をし、証拠方法として乙第1号証の書証を提出したものである。
その反論を大要すると、(1)本件登録意匠は、甲第1号証の意匠とは非類似である、(2)甲第2号証の意匠は、平面十字形であり、長尺の棒状である本件登録意匠とは類似しない。また、両意匠は、軸断面形状が似ているが、底辺につき、本件登録意匠は、底辺がフラットで特徴があるが、甲第2号証の意匠は、底辺が下方に向かってこぶ状に盛り上がっており、異質な美感を呈している。加えて、覆面の有無の違いもあり、類似しないものである、(3)甲第2号証、甲第3号証の2乃至25に示された意匠に基づいて容易に創作をすることができたものであるとの主張については、甲第2号証は、実用新案公報であり、これが頒布されたとしても、直ちに「日本国内において広く知られた形状等」には該当せず、甲第3号証の1のカタログについては、これが作成されたこと及びこれを受け取ったことを証明するのみであり、またガスケットが小さくしか描かれておらず、日本国内周知とはいえない、というものである。
第三 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成7年9月22日に出願をした登録第995898号意匠であり、意匠に係る物品が、「建築板用シール連結材」であり、その形態は、願書及び添付図面に示されたとおりのものである。(別紙第一参照)
2.甲号意匠
請求人が甲第2号証として提出した平成3ー56579号実用新案公報(平成3年12月19日公告)には、考案の名称、実用新案登録請求の範囲、考案の詳細な説明、図面の簡単な説明、及び図面(第1図乃至第5図)が含まれ、これらの全記載から判断するに、第2図に示された意匠は、H型鋼の枠組みの十字状に交叉する部分に取り付けられる建築板用シール連結部材に係り、その斜視形態が第2図に現され、その使用時断面形が第4図に現されているものと認められる。 そして、全記載から判断するに、H型鋼の枠組みの直線部分には、具体的な図面がないものの、上記連結部材と同形断面形の直線状棒材が用いられ、この直線状棒材と十字状部材が対として使用されることによって全体が完成するものと容易に推認されるものである。そうすると、当該直線状棒材の意匠(甲号意匠)は、本実用新案公報発行の時点において公然知られたものと認められるものである。さらに、本考案は、昭和62年9月21日に昭和62年実用新案公開第149521号として出願公開がなされたものであるから、甲号意匠も同日に公然知られたものと認められるものである。
3.本件登録意匠と甲号意匠の比較検討
本件登録意匠と甲号意匠を比較すると、両意匠は、意匠に係る物品が一致し、その形態については、主として以下の共通点と差異点があるものと認められる。
即ち、先ず共通点について、(1)全体が、上下逆略凹字状の下方挟持部の上辺上に略T字状の上方押さえ部を設けた断面態様の棒状体という基本的な形態である点、各部の具体的な態様において、(2)下方挟持部の内側について、幅太状の倒コ字状の左右辺の下方略半分の部分の内側面部を内方に向かって略過半円形状に膨出させてH鋼挟持片とし、その上側を略横長方形状の空間部とした点、(3)下方挟持部の外側について、左右辺下端部分が細幅で外方に水平状に延び、その先端が角丸状に上方に曲がり、扁平U字状の樋部を形成している点、(4)上方押さえ部について、太幅で扁平なT字状の水平軸部の先端が下方挟持部の左右上端部位と一致し、水平軸部と縦軸部と下方挟持部で囲まれて横長方形状状の空間部を形成し、T字の水平軸部の左右端寄り部分が削がれて斜面を成し、該水平軸部の左右中央位置に上方開口状の断面略擬宝珠型の楔溝を設けている点、が認められる。
次いで、差異点について、各部の具体的な態様において、(イ)H鋼挟持片の下辺部につき、本願意匠は水平状であるのに対して、引用意匠は、下方に膨出する弧状を成している点 (ロ)楔溝につき、引用意匠の方が本願意匠よりも広幅である点、(ハ)本願意匠は、樋の上端寄り内側の部位から下方挟持部の左右側面の上下中央より稍下寄り部位を繋ぐ外側下がりの斜面状の覆面部を取り付けているのに対して、引用意匠は、それが存在しない点、が認められる。
そこで、上記の共通点と差異点が両意匠の類否の判断に及ぼす影響について、以下に検討する。
先ず、共通点について、(1)の点は、全体の基本的な形態であって、形態全体の基調を決定するものであり、両意匠の形態の近似感を強くもたらしており、その影響は、極めて大きいものというべきである。(2)及び(3)の点は、全体の過半を占める下方挟持部の支配的部分の具体的態様の共通点であって、両意匠の共通感を強くもたらしており、その影響は、かなり大きいというべきである。(4)の点は、全体の中で相当に大きな、且つ機能構造上の重要な部分の態様に係り、両意匠の形態の共通感をもたらしており、その影響は、かなり大きいものというべきである。
そうすると、上記共通点は、これらが纏まって全体に及ぼす影響は、かなり大きいものと評価されるものである。
次いで、差異点について、(イ)の点は、図面に現されたとおりの差異が実際にあるものとしても、全体からすれば、部分的な態様の僅かの差異に止まっており、共に略過半円形状である点の共通点がこれを圧しており、その影響は、微弱に止まるものである。なお、本件物品が弾性のあるものであることを考慮すると、本件登録意匠においても、H鋼挟持時には若干下膨らみ状に変形する余地もあり、その場合には、さらに影響が弱まるものである。(ロ)の点は、この部分のみを注視すると確かに差異といえるものであるが、共に同部位に略擬宝珠状の溝を設けた点の共通点、ジッパーを嵌設したときには、上面全体が面一水平面となって、溝が隠れる点をも考慮すると、その影響は、微弱というべきである。(ハ)の点は、その厚さが薄いもので、その両端部は、簡単に取り外しができるように更に薄く成形されており、取り外しての使用も想定されていることからすれば、本体部に対して付加的、付属的な部分と認められ、さほど重視すべきものとはいえず、他方、形態上の明らか差異ともいえる点を総合的に考慮すると、その影響は、相当に大きいのというべきである。
そうすると、上記差異点は、これらが纏まって相乗的な効果が付加される点をも考慮しても、全体としての影響は、軽微乃至相当なもの程度に止まるものというべきである。
以上の検討によれば、共通点の影響が差異点の影響を凌駕していることはあきらかであり、結局、本件登録意匠は、甲号意匠に類似しているものといわざるを得ない。
4.結び
以上のとおりであって、請求人が主張する他の無効理由について検討するまでもなく、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に該当し、意匠登録を受けることができないものであるにも拘わらず登録されたものであるから、意匠法第48条第1項の規定により、その登録は、無効とされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別記


審理終結日 1999-09-08 
結審通知日 1999-09-21 
審決日 1999-10-01 
出願番号 意願平7-28219 
審決分類 D 1 11・ 121- Z (L5)
D 1 11・ 113- Z (L5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山崎 裕造 
特許庁審判長 森本 敬司
特許庁審判官 岩井 芳紀
伊藤 栄子
登録日 1997-07-11 
登録番号 意匠登録第995898号(D995898) 
代理人 田代 和夫 
代理人 谷山 守 

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