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審決分類 |
審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする B1 |
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管理番号 | 1048725 |
審判番号 | 無効2000-35518 |
総通号数 | 24 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2001-12-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2000-09-25 |
確定日 | 2001-10-15 |
意匠に係る物品 | 作業用上衣 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1038319号「作業用上衣」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1038319号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第一 請求人の申し立て及び理由 請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と申し立て、その無効理由を要旨以下のとおり主張し、証拠方法として、検甲第1号証及び参考資料を提出している。 1.本件登録意匠を無効とすべき理由 (1)本件登録意匠 本件登録意匠は作業用上衣に関するものであって、全体的形状は従来の一般使用の形状と変わりないのであるが、その正面における左右前身頃布地のデザインに特徴がある。 (2)証拠の意匠 検甲第1号証は、被請求人株式会社寅壱の「1997〜98 AUTUMN&WINTER」ワーキングウエアに関する商品カタログであって、各ワークショップや問屋などの得意先に1997年(平成9年)7月〜8月頃頒布されると共に、これらは顧客に対し広く商品販売されたものである。ところで、検甲第1号証の第44〜第47頁には、品番2530カラーブルゾン商品が掲載されている。 (3)本件登録意匠と証拠意匠との対比 本件登録意匠と検甲第1号証のものは、左右前身頃地に示された意匠デザインの全てと同一にするものであって、このことは本件登録意匠がその出願のおよそ1年も前に被請求人自身により公然知られた状態になっていたことになる。 2.むすび 以上から明かな通り、本件登録意匠は、その出願前に公然知られた意匠に外ならないことから、意匠法第3条第1項第1号に該当し、意匠法第48条第1項第1号により無効とされるべきものである。 第二 被請求人の答弁及びその理由 審判長は、審判請求書の副本を被請求人に送付し、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、被請求人からは、その期間を経過しても、答弁書の提出はなかった。 第三 当審の判断 1.請求人の無効理由について 請求人の無効理由は、「本件登録意匠は、その出願前に公然知られた意匠に外ならないことから、意匠法第3条第1項第1号に該当し、意匠法第48条第1項第1号により無効とされるべきものである。」とするものであるが、請求人が無効理由の証拠として提出した検証物である検甲第1号証は、日本国内において頒布された刊行物であり、意匠法第3条第1項第2号に該当するものであるから、請求人の無効理由によって、本件登録意匠を無効とすべきものとすることはできない。 2.当審の無効理由 本件登録意匠は、当審の証拠調の結果、下記の無効理由を発見したので、請求人及び被請求人に期間を指定して、意見を申し立てる機会を与えた。 すなわち、「本件登録意匠は、その出願前に、国内において頒布されたカタログ『TORAICHI WORKING WEAR COLLECTION 1997-98 AUTUMN&WINTER』の44頁、45頁の写真版及び図版として現された品番2530「上衣」の意匠と同一のものと認められ、意匠法第3条第1項第2号の意匠に該当しますので、同条同項柱書きの規定に違反して登録された意匠に該当します。」 3.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成10年5月14日の出願(意願平10-13713号)に係り、平成11年3月5日に設定の登録がなされた登録第1038319号意匠であり、その願書の記載及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品が「作業用上衣」であり、その形態が、同添付図面のとおりである(別紙第一参照)。 4.引用意匠 当審が無効理由において引用した意匠(以下、「引用意匠」という。)は、本件登録意匠の出願前に、株式会社寅壱が頒布したカタログ「TORAICHI WORKING WEAR COLLECTION 1997-98 AUTUMN&WINTER」の44頁、45頁の写真版及び図版として現された品番2530「上衣」の意匠である。 5.本件登録意匠と引用意匠の対比 両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態について、以下の共通点と差異点が認められる。 [共通点] 基本的構成態様において、全体が、襟部を有する長袖の前あきの上衣であり、その前あき部に縦に帯状の袷部を設けて、その内側にスライドファスナーを設けている点、 また、具体的態様において、 (1)左前身頃部(正面図右側)について、袖ぐり部の下方略1/3の位置から袷部に向けて傾斜下降し、それが袷部付近において、略「く」の字状に屈曲し急激な傾斜を描いて裾部に至るライン模様を表し、そのライン模様の外側に、それと略平行に同様のライン模様を表わして、略台形状の区画模様としている点、 (2)右前身頃部について、袷部を介して、ライン模様を左前身頃部と対称に表している点、 (3)ポケット部について、左胸部(正面図右側)、両脇腹部及び左袖上腕部(正面図右側)に各々設け、左胸部のポケットにつき、横方向に開口部を形成してスライドファスナーを設け、その周辺を袖ぐり部に向けて先細りの楔様に縁取りし、また、両脇腹部のポケットにつき、縦方向にほぼ垂直に開ロ部を形成してスライドファスナーを設け、左袖上腕部のポケットにつき、袖丈方向に長い略五角形状のものとしている点、 (4)袖部について、左右の袖先部分に幅広帯状の袖口(カフ)を形成し、背面視につき、両肩部から各袖口にかけて、袖部上端と略平行にライン模様を表し、また、右袖上腕部に、袖幅方向に矩形状のネーム枠を設けている点、 (5)背部について、両袖口部の略中央を横に結ぶライン模様を表している点、 (6)裾部について、ベルト様の帯状を形成し、その帯状の正面側の左右に、横長矩形状を表している点、 (7)ライン模様について、実線と点線により構成される二重線である点、が共通している。 [差異点] 一方、両意匠には、裾部のベルト様の帯状部において、本件登録意匠が平行な2本の点線を表しているのに対し、引用意匠は、縦線模様を表している点に、差異がある。 4.類否判断 そこで、上記共通点と差異点が、両意匠の類否の判断に及ぼす影響について検討する。 両意匠に共通する基本的構成態様の点は、両意匠の骨格を形成し、両意匠の大部分を占めるところであり、類否判断の支配的要素というべきである。また、具体的態様の共通点、特に、(1)及び(2)の前身頃部について、袖ぐり部の下方略1/3の位置から袷部に向けて傾斜下降し、それが袷部付近において、略「く」の字状に屈曲し急激な傾斜を描いて裾部に至るライン模様を表し、そのライン模様の外側に、それと略平行に同様のライン模様を表わして、略台形状の区画模様としている点、また、(3)ポケット部について、左胸部(正面図右側)、両脇腹部及び左袖上腕部(正面図右側)に各々設け、左胸部のポケットにつき、横方向に開口部を形成してスライドファスナーを設け、その周辺を袖ぐり部に向けて先細りの楔様に縁取りし、また、両脇腹部のポケットにつき、縦方向にほぼ垂直に開ロ部を形成してスライドファスナーを設け、左袖上腕部のポケットにつき、袖丈方向に長い略五角形状のものとしている点は、基本的構成態様の共通点と相俟って、両意匠の類似感を表出しており、その類否判断に及ぼす影響は、大きいというべきである。 一方、差異点は、引用意匠のベルト様の帯状部にゴム紐が縫い込まれていることにより、その皺が縦線模様として表れているものであり、実質的な差異とはいえず、その類否判断に及ぼす影響は、微弱なものといわざるを得ない。 以上のとおりであって、両意匠は、意匠に係る物品が共通しており、その形態については、実質的に同一の意匠といわざるを得ない。 第四 むすび したがって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第2号に該当し、意匠登録を受けることができない意匠であるにも拘わらず意匠登録を受けたものであるから、意匠法第48条第1項第1号の規定により、その登録は、無効とされるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2001-08-08 |
結審通知日 | 2001-08-13 |
審決日 | 2001-08-31 |
出願番号 | 意願平10-13713 |
審決分類 |
D
1
11・
113-
Z
(B1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 川崎 芳孝、清野 貴雄 |
特許庁審判長 |
吉田 親司 |
特許庁審判官 |
西本 幸男 伊藤 晴子 |
登録日 | 1999-03-05 |
登録番号 | 意匠登録第1038319号(D1038319) |
代理人 | 忰熊 弘稔 |