ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする L2 |
---|---|
管理番号 | 1053559 |
審判番号 | 無効2001-35113 |
総通号数 | 27 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2002-03-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2001-03-22 |
確定日 | 2002-01-28 |
意匠に係る物品 | 構築用ブロック |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1101888号「構築用ブロック」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1101888号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求人の申立て及び理由 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨以下のとおり主張し、立証として、甲第一号証ないし甲第五号証を提出した。 1.請求の理由の要旨 意匠登録第1101888号の意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、その出願前公知の意匠と同一のものであるから、意匠法第3条第1項第1号及び又は第2号の意匠に該当し、同法第48条第1項第1号により意匠登録を無効にすべきものである。 2.公知の意匠について 本件登録意匠と同一の意匠は、次に提示する証拠に示すように、その出願日前において、出願人(審判被請求人)の行為に起因して明らかに公知にされた意匠である。 (1)本件登録意匠と同一の意匠は、平成11年(1999)11月23日〜26日、日本コンベンションセンター(幕張メッセ)において開催された『河川環境展’99』の被請求人会社のブースにて、その現物の展示によって公然と知られ、かつ同ブースで頒布された「エコテラス」と題した同社カタログの記載によって知られたものである。 なお、現物の展示について、出展者一覧表を告示した平成11年11月17日発行の「環境新聞」1528号47頁(株式会社環境新聞社、東京都新宿区四谷3-1-3)に被請求人会社の展示品目として「エコテラス」が記載されている。(甲第一号証) (2)平成11年11月17日発行の「環境新聞」1528号45頁には、被請求人会社の「エコテラス」に関する広告が現物写真入りで掲載されている。この写真には、標準型と金網型の2種類が発表されているが、本件登録意匠は標準型である。(甲第二号証) (3)前記『河川環境展’99』の開催時に主催者によって発行された「GUIDEBOOK」の24頁には、被請求人会社の「エコテラス」の記事と施工状態を示した写真が掲載されている。(甲第三号証) (4)前記『河川環境展’99』の開催中に請求人会社の技術開発部の土田保が入手した、被請求人会社のブースにおいて無料頒布されていたカタログ「エコテラス」中に、本件登録意匠の全体が詳細な図面によって記載されている。(甲第四号証) (5)本件登録意匠に係る製品は、河川工事現場写真に明らかなとおり、平成11年3月24日〜平成11年8月20日に公然実施されている。(甲第五号証) 第2.被請求人の対応 被請求人は、請求人の申立てに対して何ら答弁していない。 第3.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、意匠登録原簿、出願書類によれば、平成11年12月27日の意匠登録出願に係り、平成12年12月22日に意匠権の設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「構築用ブロック」とし、その形態は、次のとおりとしたものである。(別紙第1参照) すなわち、その基本的構成態様は、全体を、上方を開口した略横長直方体状の肉厚の箱体状とし、その後方の背壁板を左右側壁板より左右方向へ突出させたものである。その具体的な態様は、(ア)箱体の構成比について、前面板の縦横比を約1:2とし、両側壁板の奥行きを前面板の横幅よりやや短いものとし、(イ)前面板は、その後方側へ僅かに傾斜させ、高さは、両側壁板及び背壁板よりやや高く形成し、その前面全体に石割り状の不規則な低い凹凸模様を施し、(ウ)両側壁板は、上面視後方に向けてやや末広状に形成し、(エ)背壁板は、前面板の傾斜よりやや大きく後方へ傾斜させ、その左右の突出部は、左右対称であって、それぞれ横幅が前面板の横幅の約5分の1の大きさであり、(オ)底板には、その後方寄りの左右端部にそれぞれ横長の細い貫通孔を設け、(カ)前面板を除く、底板、両側壁板及び背壁板の外側は、平らな面としている。 2.甲号意匠 甲号意匠は、請求人が甲第二号証として提出した刊行物に記載されたものに係り、平成11年11月17日発行の「環境新聞」1528号の第45頁左下に掲載の写真版によって現された意匠(商品名「エコテラス」の標準型と表示のもの)であって、同頁の記載によれば、意匠に係る物品を「構築用ブロック」とし、その形態については次のとおりとするものである。(別紙第2参照) すなわち、その基本的構成態様は、全体を、上方を開口した略横長直方体状の肉厚の箱体状とし、その後方の背壁板を左右側壁板より左右方向へ突出させたものである。その具体的な態様は、(ア)箱体の構成比について、前面板の縦横比を約1:2とし、両側壁板の奥行きを前面板の横幅よりやや短いものとし、(イ)前面板は、その後方側へ僅かに傾斜させ、高さは、両側壁板及び背壁板よりやや高く形成し、その前面の態様は、同頁掲載の他の写真版を参酌すれば、全体に石割り状の不規則な低い凹凸模様を施したものと認められる。(ウ)両側壁板は、上方視後方に向けてやや末広状に形成し、(エ)背壁板は、前面板の傾斜よりやや大きく後方へ傾斜させ、その左右の突出部は、左右対称であって、それぞれ横幅が前面板の横幅の約5分の1の大きさであり、(オ)底板には、その後方寄りの右端部に横長の細い貫通孔を設けているが、後方寄りの左端部に右端部と同様の貫通孔を設けているか否か不明である。(カ)左側壁板の外側は、平らな面であるが、底板の底面、右側壁板の外側の面及び背壁板の後面の態様は不明である。 3.本件登録意匠と甲号意匠の比較検討 (1)意匠に係る物品については、本件登録意匠と甲号意匠ともに護岸等の構築に用いられるブロックであるから一致している。 (2)両意匠の形態については、その基本的構成態様が共通しているものと認められ、具体的な態様においては、本件登録意匠の(ア)ないし(エ)の態様と甲号意匠の(ア)ないし(エ)の態様において共通していると認められるので、本件登録意匠の(オ)及び(カ)の態様と甲号意匠の(オ)及び(カ)の態様について、以下、検討する。 (3)まず、甲号意匠が、(オ)の底板後方寄り左端部に、右端部と同様の貫通孔が設けられているか不明な点については、甲号意匠は、「標準型」と表示した構築用ブロックに係るものであるが、同頁には他に写真版によって甲号意匠の前面板の部位を金網で構成した「金網型」と表示した構築用ブロックが現されており、その底板を観察すると甲号意匠の右端部の貫通孔と同様の貫通孔が後方寄りの左端部にも見られることから、甲号意匠においても底板の後方寄り左端部に右端部と同様の貫通孔が設けられていると推認される。 したがって、甲号意匠の底板後方寄り左端部の態様は、本件登録意匠の底板後方寄り左端部の態様と同様のものと認められる。 次に、(カ)の底板の底面、右側壁板の外側の面及び背壁板の後面の態様が不明である点については、同頁に、特にこれらの部位の態様について明らかにするための記載がないものの、この種物品の使用状態、材質等を考慮すると、当該部位は、本件登録意匠と同様の平らな面であると推認することができる。 (4)以上を総合すると、本件登録意匠と甲号意匠は、基本的構成態様が共通し、具体的な態様もほぼ共通するものと認められる。 (5)そうすると、本件登録意匠と甲号意匠は、意匠に係る物品が一致し、その形態においても基本的構成態様及び具体的な態様において共通するものであるから、両意匠は、全体として同一のものといわざるを得ない。 4.むすび 以上のとおり、本件登録意匠は、その出願前に頒布された刊行物に記載された意匠と同一であるから、他の証拠について検討するまでもなく、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第2号に該当し、その意匠登録は、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第48条第1項の規定により、その意匠登録を無効とすべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審理終結日 | 2001-11-28 |
結審通知日 | 2001-12-03 |
審決日 | 2001-12-14 |
出願番号 | 意願平11-35703 |
審決分類 |
D
1
11・
113-
Z
(L2)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 神谷 由紀 |
特許庁審判長 |
足立 光夫 |
特許庁審判官 |
伊藤 栄子 藤 正明 |
登録日 | 2000-12-22 |
登録番号 | 意匠登録第1101888号(D1101888) |
代理人 | 牛木 理一 |