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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする L5
管理番号 1058412 
審判番号 無効2000-35485
総通号数 30 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2002-06-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-09-06 
確定日 2002-02-07 
意匠に係る物品 敷居用レール材 
事件の表示 上記当事者間の登録第1075575号「敷居用レール材」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1075575号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯及び本件登録意匠
本件登録意匠は、平成10年4月24日に出願(意願平10-12131号)され、平成12年4月7日に意匠権設定の登録がなされ、平成12年6月19日に意匠公報が発行された意匠登録第1075575号であって、願書及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「敷居用レール材」とし、その形態を同図面記載のとおりとしたものである(別紙1参照)。
2.請求人の主張
これに対し、請求人は、「第1075575号意匠登録は、これを無効とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由として、第1075575号登録意匠(以下本件登録意匠という)は、その出願日前、平成9年12月22日に特許庁が発行した意匠公報所載の意匠登録第989589の類似1号意匠(平成9年9月5日登録、平成9年12月22日意匠公報発行、以下、甲第1号証意匠という。なお、審判請求書第3頁12行には第989589号とあるが、誤りである。別紙2参照)と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同条柱書の規定により意匠登録を受けることができないものである旨主張し、証拠方法として、甲第1号証を提出している。
・甲第1号証 意匠登録第989589の類似1号公報
・甲第1号証の二 比較図
3.被請求人の主張
一方、被請求人は、平成12年11月22日付で答弁書を提出し、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求める。」と申し立て、本件登録意匠は、甲第1号証意匠に類似しない旨主張し、証拠方法として乙第1〜4号証を提出している。被請求人の主張の要旨及び証拠方法は次のとおりである。
[1]戸車用レールの本体を薄板状に形成すること及び、レール上面に戸車転動面や溝を形成することは、機能的な要請によるものであって、戸車レールの基本的な形状であり、乙第1〜4号に示すように、基本的な形状の一部を変更しただけで独自性が認められて登録されている。
[2]本件登録意匠は、正面視において横長で角張った矩形にレール本体を形成し、その上面部分の中心から左方に偏った位置に底部を細幅の水平面とし、対面する側壁部分を上方で僅かに広がる傾斜面とした戸車転動用の溝と、緩やかな円弧を描いて上方で広がる戸車転動面とから成る所謂椀形の溝を形成した点に特徴を有するものである。
[3]請求人のあげた甲第1号証意匠は、レール本体の上面と左右の側面との角部をアールに面取りし、底面の左右寄り部分にそれぞれ逆U字状の溝を形成したものであって、本件登録意匠とは全体形状が大きく異なるものであり、更にレール本体上面の溝についても、戸車転動用の溝の対面する側壁部分が垂直であり、戸車転動面が上方に直線状に広がるものであって、本件登録意匠と相違する。
[4]戸車転動用の溝を有する戸車転動面の部分が戸車用レールの機能上最も重要な部分であることからしても、「戸車転動面が湾曲しているか否かの形状等において若干の相違点はあるが、これらの相違点は全体形状に埋没してしまう程度の微差にすぎず、その基本形態つまり基本的構成態様が共通している限り、本件登録意匠は甲第1号証意匠に類似する」とする請求人の主張は、失当である。
・乙第1号証 意匠登録第951160号公報
・乙第2号証 意匠登録第952110の類似1号公報
・乙第3号証 意匠登録第952110号公報
・乙第4号証 意匠登録第989589号公報
4.当審の判断
4.1 甲第1号証意匠との対比
本件登録意匠と甲第1号証意匠を対比すると、両者は、意匠に係る物品が一致し、形態については次に示す共通点と相違点が認められる。
[共通点]
(1)長手方向に連続する板状のレール材であって、上方に漸次拡がる戸車溝をレール上面の片側に寄せて1本配置した全体の基本構成。
(2)戸車溝の態様について、底部を一段陥没させて断面視略矩形状の細溝を形成し、該細溝の縁部から戸車溝の上縁部にかけて傾斜するやや広幅の戸車転動面を形成していること。
(3)レールの全幅を全高の略5倍程度としていること。
[相違点]
(1)戸車転動面の態様について、本件登録意匠においては、断面視略円弧状の緩やかな湾曲面であるのに対し、甲第1号証意匠においては、平面状であること。
(2)戸車溝底部の細溝の態様について、本件登録意匠においては、両側が逆台形状に僅かに傾斜しており、該細溝の深さが戸車溝全体の深さの略3分の1程度であるのに対し、甲第1号証意匠においては、両側が垂直に切り立っており、該細溝の深さが戸車溝の深さの略半分程度であること。
(3)レール上面両隅の態様について、本件登録意匠においては、直角に角張らせているのに対し、甲第1号証意匠においては、丸面に面取りしていること。
(4)レール裏面の態様について、本件登録意匠においては、平坦面であるのに対し、甲第1号証意匠においては、両側寄りに1本ずつ、合計2本の条溝を刻んでいること。
4.2 類否判断
これらの共通点及び相違点について検討すると、共通点(1)の全体の基本構成及び共通点(3)の全体的な寸法比率については、被請求人が[1]で主張するように、多分に機能的要請に基づくものではあるが、両意匠の全体的な骨格を成すものであって、比較的単純な形態から成る両意匠間においては、その共通性は観察者に強く印象づけられるものであり、共通点(2)の戸車溝の態様については、底部を一段陥没させた態様が特徴的なものであって、これが共通点(1)に加わることによって両意匠の全体的な基調が形成され、両意匠間に強い類似性をもたらしているものと認められる。
これに対し、相違点(1)の戸車転動面の態様における差異については、本件登録意匠の湾曲の程度が摩耗による経年変化程度の極緩やかなものであり、しかも出隅部における断面視円弧状の面取りが所謂「匙面」としてありふれたものであるため、機能的効果についてはともかく、該部位の態様を本件登録意匠の構成要素としてさほど評価することはできず、しかも、戸車溝に共通点(2)に示す特徴的な共通性があることを考慮すれば、その差異は局所的微差に止まるものであり、共通点(1)〜(3)に示す全体的な共通性を凌ぐものではない。
つぎに、相違点(2)の戸車溝底部の細溝の態様のうち、両側壁の傾斜における差異については、それが微細な個所における極僅かなものであるため、その視覚効果について特筆すべきものはなく、戸車溝全体の深さに対する該細溝の深さの寸法比率における差異については、通常施される技術的改変の域を出ないものであるため、いずれの差異も共通点(2)に示す戸車溝の共通性を凌ぐものとは成し得ない。
つぎに、共通点(3)のレール上面両隅の態様については、床面と面一に埋め込むタイプのレールにおいて典型的な態様である本件登録意匠に特筆すべきものは無く、甲第1号証意匠の態様もありふれた丸面であるため、その差異は微弱であり、両意匠の類否を左右するものとは成し得ない。
また、相違点(4)のレール裏面の態様における差異については、本件登録意匠の該部位の態様に特筆すべきものは無く、該部位が使用時に裏面に隠れてしまうことを考慮すれば、その差異は両意匠の類否を左右するものとは成し得ない。
さらに、これらの相違点に係る態様が相俟って表出する効果を勘案しても、前記各共通点から惹起される両意匠の類似性を凌ぐ視覚効果を認めることはできない。
すなわち、本件登録意匠は、甲第1号証意匠に類似するものと認められる。
5.むすび
以上のとおりであるから、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同項柱書の規定に違反して登録を受けたものであるから、同法第48条第1項第1号に該当する。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2001-04-17 
結審通知日 2001-04-27 
審決日 2001-05-08 
出願番号 意願平10-12131 
審決分類 D 1 11・ 113- Z (L5)
最終処分 成立  
前審関与審査官 須田 紳 
特許庁審判長 吉田 親司
特許庁審判官 岩井 芳紀
伊藤 栄子
登録日 2000-04-07 
登録番号 意匠登録第1075575号(D1075575) 

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