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審決分類 |
審判 無効 2項容易に創作 無効とする L3 |
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管理番号 | 1071998 |
審判番号 | 無効2002-35028 |
総通号数 | 39 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2003-03-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2002-01-28 |
確定日 | 2003-01-17 |
意匠に係る物品 | 道路用防獣さく |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1130237号「道路用防獣さく」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1130237号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第一 請求人の申立及び理由 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として大要以下に示すとおり主張した。 無効とすべき理由 本件登録意匠は、その出願日前の公知となった形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作することができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであり、意匠法第48条の規定により無効にされるべきものです。 甲第1号証 実用新案登録第3041701号公報 甲第3号証 意匠登録第910503号公報 第二 被請求人の答弁 被請求人は、「本件意匠登録無効の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由として大要以下のとおり主張し、乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。 意匠法第3条2項違反について 1. 請求人は、本件登録意匠は、甲第1号証の図1の意匠に図2に記載の中間連結部材の1組を組み合わせたものに過ぎず、或いは更に加えて甲第3号証の3本で1組の横線材を組み合わせたものに過ぎず、公知の意匠を慣用的な手法により寄せ集めたものに過ぎないため、意匠法第3条第2項に違反すると主張する。 (1)本件登録意匠は甲第1号証の図1の意匠に図2に記載の中間連結部材1組を組み合わせたものに過ぎないとの主張について 甲第1号証の図1は中段の横線材がなく、看者に最も印象の強い部分たるフェンスの中央部分は縦線材だけしか存在しない極めてシンプルなデザインである。 甲第1号証の図2の意匠は、甲第1号証の実用新案登録出願の考案に係る防獣フェンス構造体における一実施の形態を全体的実施図面として図示しているものであり、支柱部材や有刺鉄線等が防獣フェンス構造体としてフェンスと共に一体的に図示されている複雑なデザインの意匠である。 図2に記載の中間連結部材の形状は、防獣フェンス構造体の一実施の形態の意匠から抽象的に一部を取り出されたものであり、甲第1号証の図1の意匠と組み合わされるべきものではない。 従って、請求人の主張するような甲第1号証の図1の意匠に図2の中間連結部材1組を組み合わせるという発想自体がそもそも困難であると解釈しなければならない。 また、仮に図2の意匠からフェンス本体の形状のみを抽出してフェンス形状を仮想したとしても、上記論理は同様に適応される。すなわち、図2のフェンス本体における中間連結部材の1組もフェンス本体の一部材であり、図2の意匠に完全に一体化されたものであり、一物品として把握されるフェンス本体からその一構成部材を抽出することは一物品の形状を本質とする意匠において一物品であるべき意匠の本質をないがしろにする行為である。 (2)甲第3号証の3本1組の横線材を組み合わせたものに過ぎないとの主張について 請求人は、本件登録意匠は上記の主張に、更に加えて甲第3号証の3本1組の横線材を組み合わせたものに過ぎず、公知意匠を慣用的な手法により寄せ集めたものに過ぎないと主張する。 しかし、甲第3号証の3本1組の横線材は、前述した甲第1号証の図2の中間連結部材の1組を組み合わせたものに関する考え方と全く軌を一にする。 すなわち、甲第3号証の3本1組の横線材も甲第1号証の図2の中間連結部材の2本1組と同じように全体図面から独立して抽出できるものではない。従って甲第3号証の3本1組の横線材はこのようにフェンスに一体に融合された形状であるため抽象的に取り出して甲第1号証の図1と組み合わせることはできない。 更には、甲第3号証の3本1組の横線材は矩形状フェンス枠の上端と下端に設けられたものであり、この甲第3号証の3本1組の横線材をたとえ甲第1号証の図1に組み合わせたとしても、 甲第3号証の3本1組の横線材の両端自由端をいかにするか、 甲第3号証の3本1組の横線材と交差する縦線材の上下自由端をどの程度突出させるか等はまさに創作性の範疇に属することであり、たとえ甲第3号証の3本1組の横線材を組み合わせるにしても本件登録意匠の形状に到達するためには十分な創作性を必要とする。 2. 従来のフェンスに関する各種登録例から見た本件登録意匠の新規性及び創作性について 従来の登録例における類否判断について、乙第2号証ないし乙第8号証を提出する。 第三 当審の判断 1. 本件登録意匠 本件登録意匠は、本意匠を意匠登録第1129869号として、平成11年9月22日に意匠登録出願し、平成13年11月2日に意匠登録第1130237号(関連意匠)として登録の設定がされたものであり、願書及び願書に添付された図面の記載によれば、意匠に係る物品を「道路用防獣さく」とし、その形態を添付された図面に示すとおりとしたものである(別紙第1参照)。 すなわち、形態は、 (ア)全体が、縦線材と横線材を竪繁格子状に形成したものであり、縦線材は42本を幅狭の等間隔で垂直に配列し、横線材は、上部連結部材及び下部連結部材として、上下間隔幅狭の3本一組を一段として上端寄り及び下端寄りに水平に二段配し、その中央に中間連結部材として上下間隔幅狭の2本一組の一段を水平に配したもので、 (イ)各段の上下の間隔は、隣り合う縦線材の左右の間隔の略10倍長の幅広等間隔で配し、 (ウ)各段を構成する横線材同士の上下の間隔は、上記縦線材の間隔と同長とし、 (エ)縦線材の上下端部及び横線材の左右端部に、それぞれ上下左右方向に余地部を残し、特に下端部の余地部は、上記縦線材の間隔の略4倍長とし、下端部を土中に埋設するようにしたものである点が認められる。 2. 甲号意匠 (1)甲第1号証 甲第1号証の意匠は、平成9年7月9日、特許庁が発行した登録実用新案公報に掲載された実用新案登録第3041701号の防獣用フェンス及び防獣用フェンス構造体であって、その形態は、同公報に掲載されたものである。(別紙第2参照) (1)その図1に掲載の意匠の形態は、 (ア)全体が、縦線材と横線材を竪繁格子状に形成したものであり、縦線材は41本を幅狭の等間隔で垂直に配列し、横線材は、上部連結部材及び下部連結部材として上下間隔幅狭の2本一組を一段として上端寄り及び下端寄りに水平に二段配したもので、 (イ)隣り合う縦線材の左右の間隔と、横線材各段の横線材の上下の間隔を略同長とし、 (ウ)縦線材の上下端部及び横線材の左右端部に、それぞれ上下左右方向に余地部を残し、特に下端部の余地部は、上記縦線材の間隔の略3倍長とした点が認められる。 (2)図2に掲載の意匠の形態は、 (ア)全体が、縦線材と横線材で竪繁格子状に形成したものであり、縦線材は40数本を幅狭の等間隔で垂直に配列し、横線材は、上部連結部材及び下部連結部材として上下間隔幅狭の2本一組を一段として上端寄り及び下端寄りに配し、その中間に、中間連結部材として横線材を上下間隔幅狭の2本一組を一段として、隣り合う縦線材の左右の間隔の略6倍長のやや幅広等間隔で三段配したもので、 (イ)隣り合う縦線材の左右の間隔と、上部連結部材、下部連結部材及び中間連結部材としての各段の横線材の上下の間隔を略同長とし、 (ウ)縦線材の上下端部及び横線材の左右端部に、それぞれ上下左右方向に余地部を残し、特に下端部の余地部は、上記縦線材の間隔の略3倍長として土に埋設のための突出部を形成した点が認められる。 (3)更に、実用新案登録請求の範囲の請求項2に「(前略)上部連結部材と下部連結部材との間に、水平方向に設けてある所用数の中間連結部材とを備えており、(後略)」との記載があるものである。 (2)甲第3号証 甲第3号証の意匠は、平成6年10月27日、特許庁が発行した意匠公報に掲載された登録意匠第910503号であって、意匠に係る物品をフェンスからとにね、その形態は、同公報に掲載されたものである(別紙第3参照)。 すなわち、その形態は、全体が、縦線材と横線材で竪繁格子状に形成したもので、縦線材は41本を幅狭の等間隔で垂直に配列し、横線材は、上部連結部材及び下部連結部材として上下間隔幅狭の3本一組を一段として上端寄り及び下端寄りに水平に二段配したもので、 3. 本件登録意匠の創作容易性についての判断 (1)甲第3号証の意匠から、 線材からなる竪繁格子状のフェンスにおいて、その上部連結部材及び下部連結部材として、幅狭間隔の横線材3本一組を一段として上端及び下端に水平に二段配したものが、本件登録意匠の出願前に公然と知られた形状であったことが認められる。 (2)甲第1号証の図1から、 (ア)全体が、縦線材と横線材を竪繁格子状に形成したものであり、縦線材は40数本を幅狭の等間隔で垂直に配列し、上部連結部材及び下部連結部材として横線材を幅狭間隔の2本一組を一段として上端寄り及び下端寄りに水平に二段配したもので、 (イ)隣り合う縦線材の左右の間隔と、横線材各段の横線材の上下の間隔を略同長とし、 (ウ)縦線材の上下端部及び横線材の左右端部に、それぞれ上下左右方向に余地部を残し、特に下端部の余地部は、各縦線材の間隔の略3倍長として土に埋設のための突出部を形成した「防獣用さく」の形状が、出願前、公然知られていたことが認められる。 (3)甲第1号証の図2から (ア)横線材2本一組を一段として上部連結部材及び下部連結部材として設け、当該連結部材の中間部に横線材2本一組を一段とした中間連結部材を複数段幅広等間隔に設けた形状が公然知られた形状であることも明らかである。 そして、甲第1号証の請求項に記載の「(前略)上部連結部材と下部連結部材との間に、水平方向に設けてある所用数の中間連結部材とを備えており、(後略)」との記載から、上端寄り及び下端寄りに設けた上部連結部材及び下部連結部材の上下間(中間部)に2本一組を一段とする中間連結部材を複数段配すること、及びその段数は使用態様に合わせて設けることは、出願前公然と知られていたことが明らかである。 そうであるから、本件登録意匠は、上部連結部材及び下部連結部材を3本一組のものとし、その中間部に2本一組からなる中間連結部材の所用数を一段としたまでの創作であって、出願前に公然知られた甲第1号証及び甲第3号証の意匠に基づいて容易に創作することができたものと認められる。 4. むすび 以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条第2項の規定に該当する意匠であるにもかかわらず、意匠登録を受けたものであるから、請求人の他の主張を検討するまでもなく、その登録は無効とされるべきものでである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2002-11-12 |
結審通知日 | 2002-11-15 |
審決日 | 2002-12-06 |
出願番号 | 意願平11-25363 |
審決分類 |
D
1
11・
121-
Z
(L3)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 川越 弘 |
特許庁審判長 |
秋間 哲子 |
特許庁審判官 |
西本 幸男 鍋田 和宣 |
登録日 | 2001-11-02 |
登録番号 | 意匠登録第1130237号(D1130237) |
代理人 | 高橋 清 |
代理人 | 松尾 憲一郎 |
代理人 | 内野 美洋 |