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審決分類 |
審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする G2 |
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管理番号 | 1078122 |
審判番号 | 無効2002-35412 |
総通号数 | 43 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2003-07-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2002-09-30 |
確定日 | 2003-05-12 |
意匠に係る物品 | 電動スクーター |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1153465号「電動スクーター」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1153465号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求人の申し立て及び理由 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として、要旨次のとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。 すなわち、意匠登録第1153465号の意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、本件意匠登録出願の日前に、日本国内において公然知られた意匠であるか、外国において頒布された刊行物に記載された意匠であるか、又はそれらに類似する意匠であるか、若しくは当該刊行物に記載の意匠に基づいて当業者が容易に創作できた意匠であり、意匠法第3条1項1号ないし3号又は同条2項の規定に違反してなされたものであるか、或いは、意匠の創作をした者でない者であってその意匠について意匠登録を受ける権利を承継しない者の意匠登録出願に対してされたものであるから、意匠法第48条1項1号又は同3号に該当し、本件意匠登録は無効とされるべきものである。 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、意匠に係る物品が「電動スクーター」であって、その形態及び色彩は意匠登録願に添付された写真のとおりである。 2.甲号意匠 甲第1号証のカタログ「YONGJIANG E-SCOOTER」に記載された型番YJES-602E3の写真版の意匠(以下、「甲号意匠」という。)は、意匠に係る物品が「電動スクーター」であって、その形態及び色彩は写真版のとおりである。 そして、甲第1号証のカタログは、2001年10月15日から同月26日までの間、中華人民共和国(以下、「中国」と略称する。)で開催された「広州交易会」の会場において一般参加者に対して公然と頒布された刊行物である。この「広州交易会」には世界各国から交易関係者等が参加したものであり、日本国からも関係者が多数参加した。日本国からの参加者の一員として、本件請求人会社の専務取締役小川征紀がこの広州交易会に参加し、開催日の会場において「E-スクーター(電動スクーター)」の展示商談を行っていた浙江永江実業有限公司(ZHEJIANG YONGJIANG INDUSTRY CO.,LTD.)から甲第1号証のカタログを公然頒布を受けたものである。この甲第1号証のカタログを当該「広州交易会」の会場において公然頒布を受けた事実は、甲第3号証の小川征紀の証明書により明らかである。 したがって、甲号意匠は、少なくとも2001年10月26日までに中国において公然知られた意匠である。 また、本件請求人会社専務取締役の小川征紀は、当該交易会の終了後、前記カタログを日本国内に公然持ち帰り、2001年11月30日より日本国内での市販に供するための営業活動を開始し、前記カタログ記載の電動スクーターの輸入販売の商談において公然と使用したものである。この日本国内での商談において前記カタログを公然使用し説明した事実は甲第3号証の小川征紀の証明書及び甲第4号証の株式会社シーエー産商の証明書により明らかである。 したがって、甲号意匠は、少なくとも平成13年11月30日より日本国内において公然知られた意匠である。 3.本件登録意匠と甲号意匠との対比検討 本件登録意匠と甲号意匠を比較すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については、両意匠を全体的に観察した場合、両意匠の構成要素からみて、車体カバー、サドル付支柱及び前後の車輪の部分において一致している。そして、両意匠の支配的要素は、車輪及び電動部等を覆う車体カバーの部分であって、両意匠は互いに恰もイルカのシルエットのような流線的で躍動感と力強さと軽快さを感じさせる斬新さを有し、かつ重心の低い安定感を有することで、看者に美感を与えるものである点で両意匠は一致し、その余において相違している。 そして、両意匠の相違点をみると、本件登録意匠においては、前部の照明ランプの取り付け状態を後向きにしてハンドルが取り付けられている点で、照明ランプを前向きにしたハンドルが取り付けられた甲号意匠と細部において僅かに相違しているものである。 しかしながら、この相違点について検討すると、実際上の使用態様を勘案すれば、照明ランプというものは通常、前方の照明に使用するものであることは常識であって、後向きの照明ランプであっては夜間の走行において前方を照明することは不可能かつ危険であることは明らかであり、しかも本件登録意匠のように 「ハンドルの支柱上部の傾きが後向き傾斜」に取り付けられたものであっては、「座席とハンドルとの間隔」が殆どなくなり、安全に走行して操縦したり、旋回することも不可能又は困難となるものあり、さらにそれに関連して「ブレーキも後方下向き傾斜」に取り付けられたものであって、ブレーキ操作も通常の操作態様では困難かつ極めて危険となるものであるから、常識的に本件登録意匠をみれば、この相違点は照明ランプ付きハンドルの組み付けの間違いであることは明らかである。 そうすると、両意匠の相違点は、前記したような常識に反する後向きの照明ランプ、ハンドル及びブレーキの向きにして、奇異な外観を敢えて意識した意匠であるならば格別、そうでなければ、常識的には実質的な意味を持つ相違とは考えられない程度の細部の徴差であり、特に看者の注意を引く部分ではないから、結局、本件登録意匠と甲号意匠とは、実質上全く同一であるか又は少なくとも類似である。 それゆえ、本件登録意匠は、本件意匠登録出願の日前(新規性喪失の例外の適用の日前)に中国又は日本国内において公然知られた意匠と同一又は類似であり、意匠法第3条1項1号又は3号の規定に違反してなされたものであるから、意匠法第48条1項1号に該当し、本件意匠登録は無効とされるべきものである。 第2.被請求人の答弁及び理由 被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めると答弁し、その理由として、要旨次のとおり主張し、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。 被請求人は、以下述べる理由により請求人の主張事実を認めることはできない。 1.甲第1号証について 甲第1号証のカタログには、発行日が全く記載されていない。 請求人は、甲第3号証、甲第4号証等の証明書によって、本件意匠登録出願前の刊行物であることを立証しようとしているが、これらの証明書は、何れも審判請求人自身が作成した宣誓書のような性質のものにすぎない。 すなわち、甲第3号証は、請求人(富士見産業株式会社)の担当者が証明したものであり、甲第4号証も、請求人(富士見産業株式会社)の担当者から、同じく請求人(株式会社シーエー産商)に証明させたものにすぎない。 また、甲第5号証で求める人証にしたところで、本人が宣誓をするにすぎないものであり、何等証拠能力がないものである。 しかも、甲第3号証及び甲第4号証の証明書は、証明を求める者が日付の欄を予め空欄とし、後から証明する者が記入するといった形式の証明書であり、請求人の都合の良いように、後から作られたものとしかいいようがないものである。 特許庁の他の条文の規定による証明書の取扱いや判例においても、本人以外の第三者の証明を必要とすることが明記されており、請求人の提出した証明書は証拠能力がないものと言わざるを得ないものである。 したがって、これらの証拠については、被請求人は、敢えて答弁する必要はないものであり、請求人主張の無効とすべきである理由は、その根拠を欠くものである。 よって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第2号又は同第3号、若しくは同第3条第2項に該当しない。 2.以上述べたように、請求人の主張は、当を得たものではなく、本件登録意匠は、何等無効とされるような意匠ではない。 第3.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、意匠登録原簿及び出願書面の記載によれば、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする意匠登録出願として、平成14(2002)年2月1日に出願され、その後同法第4条第2項の規定の適用を受けて平成14年7月26日に、意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1153465号の意匠であって、意匠に係る物品を「電動スクーター」とし、形態は、願書の記載及び願書に添付された図面代用写真のとおりとしたものである(本件審決書に添付の別紙第1参照)。 2.甲号意匠 甲号意匠は、2001年10月15日から同月26日までの間、中国で開催された「広州交易会」の会場において、浙江永江実業有限公司より発行されたカタログ「YONGJIANG E-SCOOTER」に所載の、Electric Scooter YJES-602E3と記載の写真版、および、これに関連する記載の内容によって現された電動スクーターの意匠であって、形態は、同写真版よって現されたとおりである(甲第1号証、本件審決書に添付の別紙第2参照。)。 3.甲号意匠の公知性 被請求人は、甲第1号証のカタログに発行日が記載されていないこと、また、甲第3号証及び甲第4号証の証明書は請求人自身が作成したものであることから、これらの証拠については、証拠能力がない旨主張する。 そこで、この点について検討すると、請求人のうち「富士見産業株式会社」内の専務取締役小川征紀は、甲第3号証の証明書により、甲第1号証のカタログが、2001年10月15日から同月26日までの間、中国で「広州交易会」が開催され、その会場において、浙江永江実業有限公司により一般参加者に対して公然頒布された事実と、前記の小川征紀が、甲第3号証の証明書により、甲第1号証のカタログを、日本国内に公然持ち帰り、2001年11月30日より日本国内での市販に供するための営業活動を開始して、前記カタログ記載の電動スクーターの輸入販売の商談に、前記カタログを公然と使用した事実を、請求人本人が立証している。また、請求人のうち「株式会社シーエー産商」内の代表取締役青木成夫は、甲第4号証の証明願により、甲第1号証のカタログが、2001年11月30日より日本国内において、商談に公然と使用された事実を、前記の請求人「富士見産業株式会社」に依頼されて、請求人同士で立証している。 そうすると、甲第3号証の証明書及び甲第4号証の証明願によれば、甲第1号証のカタログは、本件登録意匠の出願前の2001年10月26日に、外国において頒布されたものであり、さらに、本件登録意匠の出願前の2001年11月30日に、日本国内において公然知られたものであると推認するのが妥当である。 また、被請求人は、甲第1号証と、甲第3号証及び甲第4号証の成立を争わずにその信憑性を争っているが、何らそれを覆す証拠がないものであるから、たとえ甲第3号証及び甲第4号証が、請求人本人或いは請求人同士において作成したものであっても、直ちに、信憑性を欠くものということはできず、また、請求人がその内容を格別虚偽したことを疑わせる証拠は見当たらないのであるから、甲第1号証のカタログは、本件登録意匠の出願前に頒布され、公然知られたものと推認できるものである。 4.本件登録意匠と甲号意匠の対比検討 本件登録意匠と甲号意匠を、意匠全体として対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態については、以下に示す共通点及び差異点がある。 すなわち、両意匠は、全体の基本的構成態様について、前後輪の上方を覆うように略一体状の車体カバーを設け、その前部上方にハンドル部を後部上方にサドル部を立設した点が共通し、各部の具体的態様について、車体カバーは、前後部を瘤状に中央部を凹状に形成してその左右を一段低いステップとし、ハンドル部は、後傾状の支柱の中間に支柱カバーを設けて上端にバーハンドルを設けた点が共通する。 一方、各部の具体的態様において、(1)車体カバーついて、本件登録意匠は、車体カバー全体を一体状としているのに対し、甲号意匠は、車体カバーの中央部を蓋状に形成して鍵を設けている点、(2)ハンドル部について、本件登録意匠は、ハンドル部が後向きに取り付けられているのに対し、甲号意匠は、前向きに取り付けられている点に差異がある。 そこで、両意匠の共通点及び差異点を総合して、両意匠を全体として検討する。 先ず、両意匠に共通するとした全体の基本的構成態様については、形態全体の基調を表象するものであって、また、各部の具体的態様については、形態上の特徴を表出するものであり、これらの共通する態様が相俟って、両意匠の醸し出す形態全体の印象を同じにする程の、著しい共通感を奏するものであるから、類否判断に影響を及ぼすといわざるを得ない。 次に、差異点とした各部の具体的態様のうち、(1)の車体カバーついては、甲号意匠が車体カバーの中央部を蓋状に形成して鍵を設けているとしても、格別目立つものとはいい難いものであって、その差異は、形態全体から観れば、前記の両意匠の共通点に包含される部分的な差異にすぎず、類否判断に及ぼす影響は微弱というほかない。 (2)のハンドル部については、通常の使用状態を考慮すれば、殆ど差異はないといえるものであるから、類否判断に及ぼす影響は微弱というほかない。 そうすると、前記の(1)および(2)の差異点は、何れも類否判断に及ぼす影響が微弱にすぎず、さらに、それらの差異点を纏めても、両意匠の醸し出す形態全体の印象を異にする程の、格別な特徴を表出するとはいい難いから、類否判断に及ぼす影響がなお微弱の域を超えないといわざるを得ず、前記の共通点の奏する基調と特徴を凌駕して、類否判断を左右するとはいい難い。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態においても、前記の共通点は、両意匠に著しい共通感を生じて、類否判断を左右するといわざるを得ないから、意匠全体として観察すると、類似するものというほかない。 5.むすび 本件登録意匠は、その意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠に類似するから、意匠法第3条第1項第3号に該当するものであり、同法同条同項柱書の規定に違背して登録されたものであるから、その余の点について審理するまでもなく、その登録は、無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2003-02-13 |
結審通知日 | 2003-02-18 |
審決日 | 2003-03-31 |
出願番号 | 意願2002-2321(D2002-2321) |
審決分類 |
D
1
11・
113-
Z
(G2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 富永 亘 |
特許庁審判長 |
藤 正明 |
特許庁審判官 |
伊勢 孝俊 伊藤 栄子 |
登録日 | 2002-07-26 |
登録番号 | 意匠登録第1153465号(D1153465) |
代理人 | 石原 啓策 |
代理人 | 新井 信昭 |
代理人 | 富田 哲雄 |
代理人 | 新井 信昭 |
代理人 | 足立 勉 |
代理人 | 松尾 卓哉 |
代理人 | 富田 哲雄 |
代理人 | 富田 哲雄 |
代理人 | 富田 哲雄 |
代理人 | 新井 信昭 |
代理人 | 新井 信昭 |