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審決分類 審判 無効  2項容易に創作 無効としない L3
審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない L3
管理番号 1096471 
審判番号 無効2003-35409
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2004-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-09-30 
確定日 2004-04-21 
意匠に係る物品 フエンス 
事件の表示 上記当事者間の登録第1164548号「フエンス」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の申立及び理由
請求人は、「意匠登録第1164548号(以下、「本件登録意匠」という)を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」と申立、その理由として要旨以下に示すとおり主張した。
1.本件登録意匠は、その出願前に公知となった甲第1号証の意匠に類似する意匠であるから意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号の規定により、無効とすべきものである。
2.本件登録意匠は、その出願前に公知となった甲第1号証と甲第2号証とに基づいて容易に創作することができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号の規定により、無効とすべきものである。
3.本件登録意匠は、その出願前に公知となった甲第3号証と甲第2号証とに基づいて容易に創作することができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号の規定により、無効とすべきものである。
4.本件登録意匠と甲第1号証ないし甲第3号証の意匠との対比において、横線材の一部が波打ち状に屈曲部を形成するか否かは、必要に応じて適宜採用される構成にすぎず、かつ慣用的な手法にすぎない(甲第4号証の1ないし3)。

証拠方法
甲第1号証 意匠登録第1129869号の公報
甲第2号証 意匠登録第910504号の公報
甲第3号証 実用新案登録第3041701号の公報
甲第4号証の1 意匠登録第944330号の公報
甲第4号証の2 意匠登録第931241号の公報
甲第4号証の3 意匠登録第1013685号の公報

第2 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として要旨以下に示すとおり主張した。
本件登録意匠は、平行に配列された縦線材に2本一組の横線材を3段配置した線格子フェンスを基本的な構成とし、横線材が平面図から明らかなように、所定間隔で山形を形成しているところに特徴があり、該山形は、縦線材2本おきに1つ形成されており、この構成により特有の美感を呈している。
これに対して、甲第1号証ないし甲第3号証にはいずれも、本件登録意匠のような独特の間隔で山形形状に形成した横線材は開示されておらず、単純な直線状の横線材を使用しているだけである。
したがって、本件登録意匠が甲第1号証に類似せず、甲第1号証と甲第2号証に基づいて容易に創作できたものでもなく、さらに甲第3号証と甲第2号証に基づいて容易に創作できたものででもないことは明らかである。
また、請求人は、横線材を屈曲させることが慣用的手法として示す甲第4号証の1ないし3の横線材はいずれも本願意匠の横線材の曲げ形状とは全く異なっており、このような甲第4号証を勘案したとしても、本件登録意匠が甲各号証に基づいて容易に創作できたものではないことは明らかである。
以上のように、本件登録意匠は、甲第1号証ないし甲第4号証に基づいて容易に創作することができたものではないことは明らかであり、本件登録意匠が無効となるべきものではない。
第3 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成14年3月1日の意匠登録出願に係り、平成14年12月6日に設定の登録がなされたものであって、意匠に係る物品を「フエンス」とし、その形態は、願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである(別紙第1参照)。
すなわち、その形態は、
(ア)全体を、縦線材と横線材を略横長長方形パネル状の竪繁格子状に形成したものであり、縦線材は40本を幅狭の等間隔垂直に配列し、横線材は、2本を一組とし、縦線材の上下端に余地部を残して幅広等間隔水平に3段配列した基本的構成態様のものが認められ、
各部の具体的な態様は、
(イ)一組の横線材は、その上下の間隔を、隣り合う縦線材の左右の間隔とほぼ同長とし、各横線材は、平面視形状において、正面側に向かって尖ったV字状の折り曲げ部を縦線材2本おきに間隔を開けて形成しており、横線材の各段間は、隣り合う縦線材の左右の間隔の略10倍の長さで配した点、
(ウ)縦線材の上下端の余地部につき、上端は、隣り合う縦線材の左右の間隔と同長とし、下端は、隣り合う縦線材の左右の間隔に対して略2倍長としたものである点、
が認められる。

2.甲号意匠
(1)甲第1号証
甲第1号証の意匠は、平成12年10月3日、特許庁が発行した意匠公報に掲載された意匠登録第1129869号の意匠であって、意匠に係る物品を「道路用防獣さく」とし、その形態は、同公報に記載されたとおりのものである(別紙第2参照)。
すなわち、その形態は、
(ア)全体が、縦線材と横線材を略横長長方形パネル状の竪繁格子状に形成したものであり、縦線材は42本を幅狭の等間隔垂直に配列し、横線材は、2本を一組とし、左右両端部を左右両端の縦線材よりわずか外側に突出させるとともに、縦線材の上下端にわずかに余地部を残して幅広等間隔水平に3段配列した基本的構成態様が認められ、各部の具体的な態様は、
(イ)横線材は、直状のもので、一組の横線材は、その上下の間隔を、隣り合う縦線材の左右の間隔と同長とし、横線材の各段間は、隣り合う縦線材の左右の間隔の略8倍の長さで配した点、
(ウ)縦線材の上下端の余地部につき、上端は、隣り合う縦線材の左右の間隔の略2分の1の長さとし、下端は、隣り合う縦線材の左右の間隔に対して2倍強長としたものである点、
が認められる。
(2)甲第2号証
甲第2号証の意匠は、平成6年10月27日、特許庁が発行した意匠公報に掲載された登録意匠第910503号の意匠であって、意匠に係る物品を「フエンス」とし、その形態は、同公報に記載されたとおりのものである(別紙第3参照)。
すなわち、その形態は、
(ア)全体が、縦線材と横線材で竪繁格子状に形成したもので、縦線材は41本を幅狭の等間隔で垂直に配列し、横線材は、上段が4本組、中段が2本組、下段が3本組からなり、縦線材の上端部、中央部及び下端部に幅広等間隔水平に配列した基本的構成態様が認められ、各部の具体的な態様は、
(イ)横線材は、直状のもので、上段の横線材は、縦線材の上端部に、縦線材を挟む態様で、正背面に2本配し、その下方に、上下にわずかな間隔を開けて2本の横線材を配したものであり、中段の横線材は、わずかな間隔を開けて上下に配し、下段の横線材は、縦線材の下端部に縦線材を挟む態様で、正背面に2本配し、その上方に、わずかな間隔を開けて1本の横線材を配したものであり、各組の横線材の上下の間隔は、隣り合う縦線材の左右の間隔よりわずかに短く、横線材の各段間は、隣り合う縦線材の左右の間隔の略10倍の長さで配したものである点が認められる。
(3)甲第3号証
甲第3号証の意匠は、平成6年10月27日、特許庁が発行した登録実用新案公報に掲載された実用新案登録第3041701号の図1の防獣フェンスであって、その形態は、同公報に記載されたとおりのものである(別紙第4参照)。
すなわち、その形態は、
(ア)全体が、縦線材と横線材を竪繁格子状に形成したものであり、縦線材は41本を幅狭の等間隔で垂直に配列し、横線材は、2本を一組とし、縦線材の上下端にわずかに余地部を残して水平に2段配列した基本的構成態様が認められ、各部の具体的な態様は、
(イ)横線材は、直状のもので、各段の上下の間隔を、隣り合う縦線材の左右の間隔と略同長とした点、
(ウ)縦線材の上下端部及び横線材の左右端部に、それぞれ上下左右方向に余地部を残し、特に下端部の余地部は、上記縦線材の間隔の略3倍長として土中に埋設のための突出部を形成した点、
が認められる。

3. 本件登録意匠の類否判断及び創作容易性の判断
(1)本件登録意匠と甲第1号証の意匠との類否判断について
本件登録意匠と甲第1号証の意匠とは、意匠に係る物品が共通し、形態について、全体が、縦線材と横線材を略横長長方形パネル状の竪繁格子状に形成したものであり、縦線材は略40本を幅狭の等間隔垂直に配列し、横線材は、2本を一組とし、縦線材の上下端にわずかに余地部を残して幅広等間隔水平に3段配列した基本的構成態様が共通し、各部の具体的な態様においても、本件登録意匠の横線材の平面視形状、すなわち、縦線材2本おきの部位に、正面側に向かって尖ったV字状の折り曲げ部を水平状に形成している差異点及び両意匠の横線材の左右両端の余地部の有無の差異点を除いてほとんどの点で共通しているが、これらの共通点は、いずれも、この種物品において普通に見受けられる態様であって、格別特徴を有するものとはいえず、これらの共通点が両意匠の類否判断に与える影響は微弱なものといわざるを得ない。
これに対して、差異点のうち本件登録意匠の横線材の左右両端の余地部の有無の点は、この種物品においていずれも普通に見受けられる態様であってこの点に格別の意匠の創作は認められず、類否判断に与える影響は微弱にすぎないものであるが、もう一つの差異点である、本件登録意匠の横線材の正面側に向かって尖った平面視V字状の折り曲げ部を適宜間隔を開けて形成した点は、直状の横線材で構成された平面状の甲第1号証の意匠とは、明らかに形状が異なり、該V字状の折り曲げ部が、格子面から突出した多数の棘を想起させるもので、本件登録意匠の出願前にこのような形状のものが見当たらないことから、本件登録意匠のみの特徴といえ、線材による比較的単純な構成からなるこの種意匠においては、視覚的効果が顕著に見られるものであり、類否判断に大きな影響を与えるものと認められる。
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態においても前述のとおり共通点があるものの、本件登録意匠の特徴である横線材の格子面から突出した多数の棘を想起させる形状がこれを凌駕しており、全体として観察した場合、両意匠は、類似するものとはいえない。
(2)甲第1号証の意匠と甲第2号証の意匠に基づく創作容易性及び甲第3号証の意匠と甲第2号証の意匠に基づく創作容易性について
甲第1号証ないし甲第3号証の意匠と本件登録意匠とを比較した場合、いずれの意匠にも、本件登録意匠の特徴であり、横線材の正面側に向かって尖ったV字状の折り曲げ部を間隔を開けて水平状に形成した形状が存在しない。
したがって、本件登録意匠は、甲第1号証の意匠と甲第2号証の意匠に基づいて容易に創作できたものとすることはできず、また、甲第3号証の意匠と甲第2号証の意匠に基づいて容易に創作できたものとすることはできない。
(3)横線材を波状に屈曲した点について
請求人は、本件登録意匠と甲第1号証ないし甲第3号証の意匠との対比において、横線材の一部が波打ち状に屈曲部を形成するか否かは、必要に応じて適宜採用される構成にすぎず、かつ慣用的な手法にすぎないとし、証拠方法として甲第4号証の1ないし3を示した。
しかしながら、甲第4号証の1ないし3の意匠は、いずれも、横線材を水平波状に屈曲したものが認められるが、その屈曲の程度、すなわち、具体的な波形形状の相違によって別異な意匠として登録されたものであり、本件登録意匠の出願前に、本件登録意匠の特徴である横線材を正面側に向かって尖ったV字状の折り曲げ部を水平状に形成したものが存在する証拠もないことから、適宜構成され、慣用的な手法にすぎないとした主張は当を得ないものである。

4. むすび
以上のとおりであって、請求人の主張する理由によって、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2004-02-24 
結審通知日 2004-02-27 
審決日 2004-03-10 
出願番号 意願2002-5371(D2002-5371) 
審決分類 D 1 11・ 113- Y (L3)
D 1 11・ 121- Y (L3)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川越 弘 
特許庁審判長 藤 正明
特許庁審判官 内藤 弘樹
西本 幸男
登録日 2002-12-06 
登録番号 意匠登録第1164548号(D1164548) 
代理人 内野 美洋 
代理人 高橋 清 
代理人 内野 美洋 
代理人 松尾 憲一郎 
代理人 松尾 憲一郎 

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