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審決分類 |
審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効とする F5 |
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管理番号 | 1102945 |
審判番号 | 無効2004-35130 |
総通号数 | 58 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2004-10-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-03-05 |
確定日 | 2004-08-09 |
意匠に係る物品 | 旗 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1042734号「旗」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1042734号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求人の申立及び理由 請求人は、結論同旨の審決を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下の主張をし、立証として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。 登録第1042734号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、甲第1号証、及び甲第2号証に記載された意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。 即ち本件登録意匠は、意匠に係る物品「旗」において、基本構成を、縦横比率が1:0.4の縦長矩形状とし、具体的構成を、(a)上辺部と右側辺部とに折返し支持棒挿通部が形成され、(b)上部右角部に横長矩形状の切欠部が設けられたものである。そして上記構成のうち、基本構成は旗として周知であり、具体的構成(a)は、のぼり旗においては古来よりなされ、(b)は、のぼり旗の機能に伴い普通に見受けられる構成で、これらは甲第1号証ないし甲第4号証に認められる。そして甲第1号証の第1図の旗は、上部両角に切欠部があるが、一方の切欠部は横支持棒の留め具のために便宜上設けられたもので、本件登録意匠との対比において影響を及ぼす差異ではなく、甲第2号証の第1図の旗は、左辺中央、及び上辺中央にも切欠部が設けられているが、旗の美的外観に差異を生じさせるほどの差ではない。従って、本件登録意匠は、甲第1号証に記載された意匠、ならびに甲第2号証に記載された意匠に類似する。 第2.被請求人の答弁 当審では、請求書の副本を被請求人に送達し、期間を指定して答弁書を提出する機会を与えたが、その期間を経過しても被請求人から応答がなく、答弁書の提出がなされなかった。 第3.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成10年4月20日に意匠登録出願をし、平成11年4月9日に意匠権の設定の登録がなされたものであり、意匠に係る物品を「旗」とし、その形態を、願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとするものである。(別紙第一参照) 2.甲号意匠 請求人が提出した甲第1号証に記載の意匠は、特許庁発行の公開実用新案公報に記載の、実用新案出願公開平3-33479号(平成3年4月2日公開)の第1図に示されたのぼり用布帛の意匠(以下「甲号意匠」とする。)であり、その形態は、当該公報に記載のとおりである。(別紙第二参照)。 3.本件登録意匠と甲号意匠の対比検討 本件登録意匠と甲号意匠とを対比するに、両意匠は意匠に係る物品が共通し、その形態について、縦長矩形状の旗布材において、一方の側縁、及び上縁にそれぞれ一定幅の折返し部分を設けてこれを筒状とし、この筒状部が直交する部分、即ち上縁の一方の角部を矩形状に切り欠いた態様としている点が共通する。 一方、両意匠には差異点として、(1)上縁の他方の角部につき、甲号意匠は筒状部が先端付近で途切れ、先端に帯環(ループ状テープ)が取付けられているのに対し、本件登録意匠はこのような途切れや帯環がなく、筒状部が角部の先端まで形成されている点、(2)甲号意匠の上縁の筒状部は、当該公報において、図面上、下端が実線で示されており、該部で布を継ぐ等、側縁部分とやや異なる縫製で筒状に形成されていると認められるのに対し、本件登録意匠は、側縁と同様、上縁をそのまま手前に折返して筒状に形成している点、がある。 そこで両意匠の共通点と差異点を形態全体として検討すると、差異点(1)は、甲号意匠において、途切れや帯環もさほど大きく形成されたものではなく、また帯環も筒状部の延長幅上に形成されたもので、矩形部分が切欠状に現れることを考慮に入れても形態全体としてはさほど際立たず、しかも本願登録意匠の当該部分は、そこに途切れや帯環がなく、単に角部は先端までが筒状のもので、甲第2号証に記載の意匠(実開平3-2392号公報 第1図)に照らしても独自性がなく、また甲第3号証(鈴木敬三編「有識故実大辞典」吉川弘文館 第一版第二刷 556頁写し)の「乳付の側面全体を折返し、竿を通す筒状に綴じて・・・旗の上縁も同様にして竿の横手に通した。」との記載に照らしても従前態様の域を出ないものと認められるから、到底、両意匠を別異に特徴付ける差異とはいえず、類否判断に及ぼす影響は微弱で、(2)の点についても、甲号意匠について、該部の縫製の詳細は当該公報に特に説明がされていないものの、その構成は「側縁及び上縁に、夫々端縁に沿って一定幅を折り返して夫々両端が開放した筒状に縫合形成された竿挿通部を有するのぼり用布帛」(「実用新案登録請求の範囲」の項の記載)であることは明らかで、この点において両意匠は共通し、しかも前述のとおり、本件登録意匠の上縁は、側縁と同様に折り返してそのまま筒状に綴じたまでの格別の特徴の認められないものであるから、仮に甲号意匠との間に縫製上の違いがあるとしても、類否判断に影響を及ぼす差異とは到底いえない。 これに対し両意匠の共通点は、両意匠の形態全体に及び、その基本的な構成をなし、また両意匠の特徴を端的に表すところであるから、たとえこれに近いものが古来よりみられるとしても、類否判断に極めて大きな影響を及ぼすものとせざるを得ない。 そして前述のとおり、差異点が類否判断に及ぼす影響は何れも微弱で、相まった効果を考慮に入れても、共通点が類否判断に及ぼす影響を到底凌駕するには至らず、両意匠は全体として類似するものである。 4.むすび 以上のとおりであって、本件登録意匠は、甲号意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当するにもかかわらず意匠登録を受けたものであるから、その登録を無効とすべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2004-06-15 |
結審通知日 | 2004-06-17 |
審決日 | 2004-06-29 |
出願番号 | 意願平10-11449 |
審決分類 |
D
1
11・
113-
Z
(F5)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 関口 剛 |
特許庁審判長 |
遠藤 京子 |
特許庁審判官 |
渡邊 久美 市村 節子 |
登録日 | 1999-04-09 |
登録番号 | 意匠登録第1042734号(D1042734) |
代理人 | 須田 孝一郎 |
代理人 | 須田 元也 |