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審決分類 |
審判 無効 1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない J7 審判 無効 意9条先願 無効としない J7 |
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管理番号 | 1122976 |
審判番号 | 無効2004-35131 |
総通号数 | 70 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2005-10-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-03-09 |
確定日 | 2005-08-29 |
意匠に係る物品 | 貼り薬 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1189179号「貼り薬」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1.請求人の申し立て及び理由 請求人は、意匠登録第1189179号の意匠(以下、本件登録意匠という)を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由として審判請求書及び弁駁書に記載のとおりの以下の主張をし、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。 本件登録意匠は、意匠登録第1129605号の意匠(以下、甲号意匠という)と類似する意匠であるから意匠法第9条第1項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、その登録は同法第48条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。 第2.被請求人の答弁及び理由 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として答弁書に記載のとおりの反論をし、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出したものである。 第3.当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠は、平成14年12月17日に意匠登録出願し、平成15年9月12日に設定の登録がされたものであって、願書の記載及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「貼り薬」とし、その形態を別紙第1のとおりとするものである。 その構成態様は、基布材に軟膏を塗布し、透明の剥離シートを被着した薄いシート状の貼り薬をやや大きめ隅丸の横長長方形状にし、剥離シートの全幅に対して中央部上下辺横幅約1/3強幅位置から2本の切断線を中心に向けて括れた左右対称の緩やかな凹凸波曲線状にして表したものである。 さらに詳細にみると、その2本の切断線と上下辺とで囲まれた形状は、中央が緩やかに括れ、その中央括れ部分横幅は上下辺切り込み横幅に対して約1/2弱程とし、縦幅の約1/2程の中央部分を占め、全体が細長瓢箪の上下を切った括れ部分形状(以下、「略瓢箪括れ部形状」という)を表した態様であることが認められる。 2.甲号意匠 甲号意匠は、平成12年9月11日に意匠登録出願し、平成13年10月26日に設定の登録がされ、平成13年12月17日に特許庁発行の意匠公報に掲載された意匠登録第1129605号の意匠であって、その公報の記載によれば、意匠に係る物品を「貼り薬」とし、その形態を別紙第2に示すとおりのものである。 その構成態様は、表面(背面図)を梨地模様で現した基布材に膏体を塗布し、透明の剥離シートを被着した薄いシート状の貼り薬を隅丸横長長方形状(平面図を横倒した状態)にし、剥離シートの全幅に対して中央部上下辺横幅約1/2強幅位置から2本の切断線を、僅かな直線部分の内側先端を角にして、その各角から中心に向けて左右対称に括れた大きな円弧状にして表したものである。 さらに詳細にみると、その2本の切断線と上下辺で囲まれた形状は、上下辺寄りの両角部が左右に薄く張り出し、中央が大きく円弧状に括れ、その中央括れ部分横幅は上下辺切り込み横幅に対して約1/3強程とし、縦幅の直線角部を除くほぼ全縦幅にわたって円弧状湾曲線を表し、全体が剣玉の柄の一端につけた括れ部の深い玉受け部形状(以下「玉受け部形状」という)を表した態様であることが認められる。 3.本件登録意匠と甲号証との比較検討 両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態について以下に示す共通点及び差異点が認められる。 すなわち、(A)基布材に軟膏を塗布し、透明の剥離シートを被着した薄いシート状の貼り薬を隅丸横長長方形状にした点、(B)剥離シートの中央部分に、中心に向けて左右対称に曲線状の括れ部を2本の切断線で表した点、が共通するものである。 一方差異点として、(ア)甲号意匠は基布材表面に梨地模様を現したのに対して、本件登録意匠は梨地模様を現していない点、(イ)全体形状の四隅の隅丸形状について、本件登録意匠はやや大きめの隅丸形状としたのに対して、甲号意匠はそれよりは小さめの隅丸形状とした点、(ウ)剥離シート中央部の2本の切断線形状について、本件登録意匠は、全幅の約1/3強幅の上下辺切り込み横幅に対して中央括れ横幅が約1/2弱程であって、全体の幅に占める切断線形状はやや細身で凹凸波曲線の括れ幅も少なく、その2本の切断線が構成する全体形状が緩やかな凹凸波曲線で表した略瓢箪括れ部形状としたのに対して、甲号意匠は、全幅の約1/2強幅の上下辺切り込み横幅に対して中央括れ横幅が約1/3強程であって、全体の幅に占める上下辺切り込み幅は大きく、上下辺寄り角部形状が左右に薄く幅広に張り出し、それに呼応するように括れ部の円弧状曲線も深く、幅も大きく、その2本の切断線が構成する全体形状が括れ部が深く、両玉受け部(上下辺と角部の構成)想到部が左右に薄く幅広に張り出した玉受け部形状とした点、が認められる。 そこで、これらの共通点及び差異点を総合して両意匠を全体として考察する。 先ず共通点について、(A)の点については、この種の身体に当てて使用される貼り薬の分野においては、全体を、基布材に軟膏を塗布し、透明の剥離シートを被着した薄いシート状のものを隅丸横長長方形状にすることは、従来より普通にみられる態様であり、また、(B)の点については、この種の物品において剥離シートの中央部分に、中心に向けて左右対称に曲線状の括れ部を2本の切断線で表すことは極普通にみられる態様であり、両共通点は類否判断にさしたる影響を及ぼすものではない。 してみると、これら共通点が相関連する効果を考慮しても、共通点をもって直ちに両意匠の類否を決するまでのものとすることはできない。 これに対して差異点について、(ア)の点の基布材表面の模様は、全面に梨地模様を表したものであり、格別特徴を有するものでもなく、この分野においては通常行われている程度の模様表現であり、類否判断に与える影響は小さいものであり、また、(イ)の点の隅丸形状の大小は、ともに隅丸形状である事からすればほんの僅かな差異に過ぎないものと言わざるを得ない。そして、(ウ)の点の2本の切断線構成形状の中央部の括れ部は、本件登録意匠は凹凸の波曲線であることから縦幅の約1/2程を占めているのに対し、甲号意匠は上下両角直線部分を除くほぼ縦幅全域にわたって深く大きい円弧状括れ部を表している差異は、曲線の緩急も、縦幅に占める割合も異なることから別異の形状を表していると言っても過言ではなく、また、上下辺部寄りの形状についても本件登録意匠は甲号意匠の幅よりも幅狭の緩やかな湾曲線状としたのに対し、甲号意匠の左右に薄く幅広に角部を張り出した形状としたかの差異も一瞥してその相違が歴然としており、まして全体の2本の切断線構成態様としてみた場合も、つまり上記それぞれ異なる括れ部及び上下辺寄り部形状によって構成される全体形状が緩やかな凹凸波曲線で表した略瓢箪括れ部形状としたのに対し、括れ部が大きく、深い両玉受け部(上下辺と角部の構成)想到部が左右に薄く幅広に張り出した玉受け部形状とした差異は明らかに別異の形態を表したものと言わざるを得ず、その差異が類否判断に与える影響は大きいと言わざるを得ない。 そうすると中央に2本の切断線で表した形状の異なる両意匠は、それぞれ独自の視覚的まとまりを形成しているものとせざるを得ず、前述の共通点(A)及び(B)があいまったとしても、それらの共通点を超えて本件登録意匠独自の特徴を有していると言わざるを得ず、両意匠は、類似するものとすることはできない。 なお、請求人は、「両意匠は単なる横長長方形状として捉えられるものではなく、全くの同寸法であるから、看者の印象は共通するものである。そして、大きな膨出部が、ほぼ中央に相対向して対称的に1つ設けられてなる点が、まさに両意匠の外観を支配する要部である。 ところで、膨出部の円弧の大きさが若干相違するものの、この程度の差異は微細な相違点にすぎないものである。 しかも、前記膨出部に連設するステムにあっても、殊更に特殊な形態をなすものではなく、単に緩やかなカーブ状となっているか、直線状となっているかの差異にすぎず、これ又全体としては部分的な差異にすぎない。 すなわち、かかる差異点は、相対向する膨出部の存在の中に埋没してしまい、看者の注意を引く創作における要部とは決して言えないものである。」(第9頁5行目〜18行目)と主張するが、両意匠の属する分野においては通常隅丸横長長方形状の中央部に2本の切断線形状を表すことが行われ、それが機能上の制約とも関係するとするならば、それらの点は両意匠にのみ共通する態様と言うことができず、なおさらその2本の切断線形状をいかに表すかがそれぞれの特徴を構成することとなり、請求人が「2本の切断線は、相対向し、かつ、本体中央に向かって対称的に半弧を描くように膨出部が形成されている」点が共通すると主張するが、具体的な形状の差異については前記したとおりであり、概念的に膨出部があることから共通するということはできず、請求人の主張は採用することができない。 また、請求人は、請求理由として意匠法第9条第1項の規定の適用を主張するが、両意匠の出願時等の状況からすれば、本件登録意匠の出願前に出願された甲号意匠の意匠登録出願は、本件登録意匠の出願時には既に意匠登録を受け、刊行物である意匠公報に掲載され、発行されていたものであり、そうすると、本件登録意匠が他の登録要件を具備している場合には先願の規定の適用を受けるべきところ、他の登録要件を具備していたとはいえないこととなり、意匠法第9条第1項の規定を適用する以前に、意匠法第3条第1項第3項の規定を適用することが妥当であると認められる。 4.むすび 以上のとおりであるので、本件登録意匠は、甲号意匠と類似するものとすることができない意匠であるから、意匠法第3条第1項第3号の規定する意匠に該当しないものである。 したがって、請求人の主張及び提出した証拠によっては、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2005-06-27 |
結審通知日 | 2005-06-29 |
審決日 | 2005-07-14 |
出願番号 | 意願2002-34929(D2002-34929) |
審決分類 |
D
1
11・
113-
Y
(J7)
D 1 11・ 4- Y (J7) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 生亀 照恵 |
特許庁審判長 |
日比野 香 |
特許庁審判官 |
杉山 太一 山崎 裕造 |
登録日 | 2003-09-12 |
登録番号 | 意匠登録第1189179号(D1189179) |
代理人 | 牛木 理一 |
代理人 | 飯島 紳行 |
代理人 | 高橋 徳明 |
代理人 | 小野 信夫 |
代理人 | 小椋 崇吉 |