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審決分類 審判 無効  2項容易に創作 無効とする L3
管理番号 1122978 
審判番号 無効2003-35470
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2005-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-11-14 
確定日 2005-09-13 
意匠に係る物品 道路用防獣さく 
事件の表示 上記当事者間の登録第1186560号「道路用防獣さく」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第1186560号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の主張
請求人は,「意匠登録第1186560号の意匠の登録は無効とする。審判費用は,被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,請求の理由を要旨以下のように主張し,証拠方法として以下の証拠を提出した。
甲第1号証:特開2000-274118号特許公報,甲第2号証:登録第910504号意匠公報,甲第3号証その1:登録第1018887号意匠公報,甲第3号証その2:登録第1018889号意匠公報,甲第3号証その3:登録第779907号の類似3意匠公報
1.無効とすべき理由の要点
本件登録意匠は,平成15年8月15日付で登録されたものであるが,その出願前に公知となった形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作ができたものであるからその登録を無効とすべきである。
2.無効とすべき理由
本件登録意匠は,(ア)基本的に縦線材と横線材をほぼ直交するように組み合わせた線格子フエンスの構造をしている。(イ)横線材は,密に配設された2本1組の構成になっており,この2本1組の横線材が等間隔に4組配設されている。(ウ)上端部において,縦線材の先端が横線材よりも少し突出している。(エ)下端部は縦線材が突出し,該突出部に2本の横線材が配設されている。(オ)左右端において,横線材は縦線材よりも突出していない。
しかし,構成(ア),(イ)は,従来から周知の構成にすぎない。例えば,甲第1号証に示すフエンスは,縦線材と横線材からなる格子フエンスであって,2本1組の横線材が等間隔に4組配設されており,本件登録意匠の構成(ア),(イ)と全く同じである。構成(ウ)については,甲第1号証に示すフエンスの構成と同じである。構成(エ)については,甲第1号証のフエンスと同じ構成である。甲第1号証のフエンスは下部突出部に横線材が設けられていない点で本件登録意匠と相違する。構成(オ)については,甲第2号証のフエンスと同じ構成である。
相違点については,本件登録意匠と甲第1号証のフエンスとでは,下部突出部に横線材が配設されていないが,線格子フエンスにおいて,横線材を適宜増減することはありふれた手法にすぎない。
したがって,本件登録意匠は,甲第1号証に示す公知のフエンスに,甲第2号証に示すようにフエンス左右端の横線材を突出させないようにし,甲第3号証に示すようにフエンス下端部において,横線材の増加というありふれた構成をありふれた手法で行ったものにすぎない。
3.弁駁書における主張
請求人は,被請求人の答弁書に対して弁駁書を提出し,その要旨を以下のように主張した。
(1)本件登録意匠は,縦線材と横線材を組み合わせた単純な格子フエンスであり,しかも縦線材と横線材の突出と非突出,数の増減や配置位置の変更は,従来から適宜選択されていた構成にすぎない。(2)本件登録意匠におけるフエンス下端部の2本の横線材は,単純に等間隔に配設したものであり,両端部も従来公知のものであって極めてありふれた構成にすぎない。
第2 被請求人の主張
被請求人は,「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように主張し,証拠方法として以下の証拠を提出した。
乙第1号証:本件登録意匠と先行意匠との対比表,乙第2号証の1:登録第910503号意匠公報,乙第2号証の2:登録第910504号意匠公報,乙第2号証の3:登録第962887号意匠公報,乙第2号証の4:登録第962887号の類似1意匠公報,乙第3号証の1:登録第1127698号意匠公報,乙第3号証の2:登録第1127794号意匠公報,乙第3号証の3:登録第1127699号意匠公報,乙第3号証の4:登録第1127795号意匠公報,乙第4号証の1:登録第984250号意匠公報,乙第4号証の2:登録第984250号の類似2意匠公報,乙第5号証の1:登録第965023号意匠公報,乙第5号証の2:登録第965023号の類似1意匠公報,乙第5号証の3:登録第965024号意匠公報,乙第5号証の4:登録第965025号意匠公報,乙第5号証の5:登録第965026号意匠公報,乙第5号証の6:登録第965026号の類似1意匠公報,乙第5号証の7:登録第978532号意匠公報,乙第5号証の8:登録第965059号意匠公報,乙第5号証の9:登録第965059号の類似1意匠公報,乙第6号証の1:登録第674319号意匠公報,乙第6号証の2:登録第674319号の類似1意匠公報,乙第6号証の3:登録第674319号の類似2意匠公報,乙第6号証の4:登録第674319号の類似3意匠公報,乙第6号証の5:登録第674319号の類似4意匠公報,乙第6号証の6:登録第674319号の類似5意匠公報,乙第6号証の7:登録第674320号意匠公報,乙第6号証の8:登録第674320号の類似1意匠公報,乙第6号証の9:登録第674321号意匠公報,乙第6号証の10:登録第674322号意匠公報,乙第6号証の11:登録第674323号意匠公報,乙第6号証の12:登録第686131号意匠公報,乙第6号証の13:登録第702391号意匠公報
1.甲第2号証は,矩形フェンスの中に,3本一組の横線材を上段に,2本一組の横線材を中段と下段にそれぞれ配設したフェンスが一物品として意匠登録されたもので,これらの横線材群は,フェンスの形状構造に一体的に融合したフェンスの一構成部材にすぎない。
かかる一物品としてのフェンスの一構成部材の形状を抽出して,それを甲第1号証の意匠と組み合わせる手法は,実用新案や特許等の技術に関する進歩性の判断手法であり,意匠のように一物品が一意匠である意匠法では採用されない手法である。特に,一構成部材を抽出してもそれが独立した物品の形状となり得ない甲第2号証の場合はなおさらである。このように,請求人の主張するような甲第1号証の図3の意匠に,甲第2号証の意匠の横線材群を組み合わせるという発想自体がそもそも困難である。
2.請求人が主張するように,甲第1号証の図3の意匠に甲第2号証の意匠の横線材群を組み合わせることができたとしても,甲第2号証の上段の横線材は3本一組であるため,これを2本一組とし,横線材の段数も3段から4段に変更するという創作が更に必要となる。
さらには,甲第1号証の図3の意匠に,甲第2号証の意匠を組み合わせたとしても,縦線材の下端部を最下位の第1段横線材よりも下方へ突出させて,同下端部に2本の横線材を上下方向に間隔を開けて直交状態に連結している本件登録意匠の形状にはならない。
3.請求人は,本件登録意匠は,甲第3号証その1乃至その3に示されるように,フエンス下端部において,横線材の増加というありふれた構成をありふれた手法で行っているものにすぎないと主張するが,甲第3号証の横線材も甲第2号証の横線材と同じように,全体図面から独立して抽出できるものではない。従って,甲第3号証の横線材は,このようにフエンスに一体に融合された形状であるため抽象的に取り出して甲第1号証の図3と組み合わせることはできない。
更には,甲第3号証のその1乃至その3の横線材を,甲第1号証の図3や甲第2号証に組み合わせるとしても,甲第1号証の図3や甲第2号証のフェンスのどの位置に組み合わせるのか,下端部の2本の横線材の上下間隔をどの程度にするか,甲第3号証その1乃至その3の下端部の横線材と交叉する縦線材の下自由端をどの程度突出させるか,甲第3号証その3の下部の横線材の両端自由端をいかにするか等は,まさに創作性の範疇に属することであり,本件登録意匠の形状に決定するためには,十分な創作性を必要とする。
4.甲第1号証の図3の意匠は,横線材の左右自由端と縦線材の上下自由端が左右側方と上下方とにそれぞれ突出したフェンス形状であり,甲第2号証の意匠は,矩形状のフェンス形状であり,甲第3号証その1乃至その3の意匠は,それぞれ下端部において横線材を他の部分よりも増加させて密に配設したフエンス形状である。
仮に,これらのフェンス形状を組み合わせるとしても,各号証の各形状から一構成部材の形状を抽出して総合するという作業が必要であり,かかる作業は多くの文献から抽象的な形状だけを抽出して組み合わせるのと同様の作業であり,ここにおいて抽出した形状を総合するにしても,いかなる形状に組み立てるかということはまさに意匠の創作力そのものであり,かかる意味において本件登録意匠は,意匠法第3条第2項の創作性を具備するということができる。
以上のことは,従来のフェンスに関する各種登録例からも首肯できる。
第3 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は,2000年12月8日の意匠登録出願に係り,2003年8月15日に設定の登録がなされた登録第1186560号であって,願書及び願書添付の図面の記載によれば,意匠に係る物品を「道路用防獣さく」とし,その形態を別紙第1に示すとおりとしたものである。
その概略は,(イ)縦線材と横線材を竪繁格子状に形成し,全体の縦辺対横辺の長さを略4:5とした横長のフエンスであって,(ロ)多数の縦線材を幅狭かつ等間隔で垂直に配列し,横線材は,縦線材と同間隔で2本一組としたものを,縦線材の配列の上端より下端近くまで等間隔で水平に4段配列し,(ハ)最下段の2本一組の横線材の下方に2本の横線材を等間隔に配設し,(ニ)縦線材の上下端を横線材よりわずかに突出させ,横線材の左右端を縦線材と揃えた態様のものである。
2.甲号証意匠
(1)甲第1号証意匠
甲第1号証意匠は,平成12年10月3日に公開された公開特許公報所載の特開2000-274118号図3に示されたフエンスの意匠であって,その形態を別紙第2に示すとおりとしたものである。
(2)甲第2号証意匠
甲第2号証意匠は,平成6年10月27日発行の意匠公報に記載された意匠登録第910504号の意匠であって,その形態を別紙第2に示すとおりとしたものである。
(3)甲第3号証その1の意匠
甲第3号証その1の意匠は,平成10年8月19日発行の意匠公報に記載された意匠登録第1018887号の意匠であって,その形態を別紙第3に示すとおりとしたものである。
(4)甲第3号証その2の意匠
甲第3号証その2の意匠は,平成10年8月19日発行の意匠公報に記載された意匠登録第1018889号の意匠であって,その形態を別紙第4に示すとおりとしたものである。
(5)甲第3号証その3の意匠
甲第3号証その3の意匠は,平成5年11月18日発行の意匠公報に記載された意匠登録第779907号の類似3の意匠であって,その形態を別紙第5に示すとおりとしたものである。
3.本件登録意匠の創作性について
本件登録意匠の上記の各態様について検討すると,上記第3,1.(イ)の態様のうち,縦線材と横線材を竪繁格子状に形成したフエンスの態様は,ごく一般的なものであるところ(例えば,甲第2号証及び甲第3号証その1参照),その全体の縦辺対横辺の比率を種々変えることは常套的方法であるから(甲各号証参照),全体の縦辺対横辺の長さが略4:5である横長のフエンスとすることは格別の創意を要しないものと認められる。したがって,上記第3,1.(イ)の態様に見るべき創作性は認められない。上記第3,1.(ロ)の多数の縦線材を幅狭かつ等間隔で垂直に配列し,横線材は,縦線材と同間隔で2本一組としたものを,縦線材の配列の上端より下端近くまで等間隔で水平に4段配列した態様は,この分野で既に知られている態様であり(例えば,甲第1号証図2及び図3参照),この態様に格別の創作性を認めることはできない。なお,甲第1号証は,本件登録意匠の出願の約2ヶ月前に公開された公知資料であるが,本件登録意匠と同一の物品分野に属する公開特許公報であるから,当業者においては既知の資料であると認められる。上記第3,1.(ハ)の最下段の2本一組の横線材の下方に2本の横線材を等間隔に配設した態様については,線格子フエンスの下端部に横線材を適宜増設する等のことは、甲第3号証に示されるように周知の手法であるのみならず,フエンス下方からの小動物の侵入を防ぐという防獣さくの本来の目的から当然考えつくことでもあるから,この点に格別の創作性を認めることはできない。上記第3,1.(ニ)の縦線材の上下端を横線材よりわずかに突出させ,横線材の左右端を縦線材と揃えた態様については,甲第2号証に示されるように常套的変更の範囲内のものであるから,この態様にも特別の創意は認められない。
結局,上記1.(イ)〜(ニ)の態様はいずれも格別評価すべき創作性ある態様とは認められず,また,それらはいずれも本件登録意匠と同一の分野に属する公知の態様であるから,これらを組み合わせて本件登録意匠の態様とすることも当業者であれば容易になし得ることであると認められる。
4.結び
以上のとおりであって,本件登録意匠は,意匠法第3条第2項に該当し,意匠登録を受けることができない意匠であるにもかかわらず意匠登録を受けたものであるから,意匠法第48条第1項第1号により,その登録は無効とされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2005-01-11 
結審通知日 2005-01-13 
審決日 2005-02-04 
出願番号 意願2000-35207(D2000-35207) 
審決分類 D 1 11・ 121- Z (L3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川越 弘 
特許庁審判長 藤木 和雄
特許庁審判官 樋田 敏恵
岩井 芳紀
登録日 2003-08-15 
登録番号 意匠登録第1186560号(D1186560) 
代理人 松尾 憲一郎 
代理人 松尾 憲一郎 
代理人 高橋 清 

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