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審決分類 審判 無効  1項2号刊行物記載(類似も含む) 無効としない J7
管理番号 1124380 
審判番号 無効2003-35381
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2005-11-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-09-09 
確定日 2005-09-29 
意匠に係る物品 輸液バッグ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1108823号「輸液バッグ」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申し立ておよび理由
請求人は、第1108823号意匠(以下、「本件登録意匠」という)の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める、と申し立て、その理由として審判請求書に記載のとおりの主張をし、証拠方法として、甲第1号証乃至甲5号証の書証を提出した。
その主張の概要は、以下のとおりである。
(1)本件登録意匠は、実質的に同一な次の2つの出願前公知意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号の規定に反して登録されたものであるから、同法第48条第1項第1号により無効とされるべきものである。(以下、「無効理由1」という。)
〔1〕甲第1号証
日本包装学会誌Vol.4No.1(1955)第49頁Fig1、及び第50頁Fig2
〔2〕甲第2号証
「オーツカCEZ注-MC1gキット」のカタログ(1998年6月)
尚、甲第1号証及び甲第2号証を併せて以下引用意匠1という。
(2)本件登録意匠は、上記甲第1号証または甲第2号証(引用意匠1)に、甲第3号証(特開平10-15035号公開公報図1に示す意匠)を組み合わせることにより、当業者なら容易に意匠の創作ができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定に反して登録されたものであり、意匠法第48条第1項第1号により無効とされるべきものである。(以下「無効理由2」という。)
第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由として答弁書に記載のとおりの反論をしたものである。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成12年6月20日に意匠登録出願し、平成13年3月9日に設定の登録がなされたものであって、願書の記載及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「輸液バッグ」とし、その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするものである(別紙第1参照)。
すなわち、主な形態を、(A)下端部中央に抽出口栓を設け、袋部全体を薄いシート状の略縦長隅丸長方形状とし、シール部により上半部に薬剤収納室を、下半部に溶解液収納室を区分けして一連に設けた構成の輸液バッグであって、(B)一連の袋部(注出口栓及びアルミラミネートシートを除く)を左右対称の正背面を同形状とし、全体の外周形状を、上辺左右を隅丸形状とし、下辺中央横幅1/2程の水平部から上方へ左右になだらかな斜辺を描き、角部を隅丸形状とし、左右両側辺中央ほんの僅か上寄り部に稍浅い半円弧状の切り欠き部を設けたもので、熱溶着シール部は、(C)上半部の薬剤収納室を、縦長長方形状下方(1/4弱)中央の横幅1/2程を下側に隅丸「コ」の字状形状を突出させ、両側辺から内側の突出両縁辺へと緩やかなS字曲線状辺で繋いだ形状(逆さなで肩広口瓶様形状)とし、その上部を幅広帯状のシール部とし、そのほぼ中央に吊り下げ用の小円孔を穿ち、突出片形状下部を上部シール縦幅の半分程の細幅帯状シール部(上下収納室の境部シール部)とし、両S字曲線状辺(逆さなで肩部)左右側部シール部を上部シール縦幅とほぼ同幅としたもので(左右側部にはシール部を設けていない)、(D)下半部の溶解液収納室を薬剤収納室より縦幅の長い(内容量の大きい)略縦長隅丸長方形状上方中央の幅1/2程を上側に隅丸「コ」の字状形状を突出させ(上部突出部幅より僅かに細く、長さは僅かに長い)、両側辺から内側の突出両縁辺へと緩やかなS字曲線状辺で繋いだ形状(なで肩広口瓶様形状)とし、その下部を左右両側辺から中央下へなだらかな傾斜状とした形状とし、その上部は上下収納室の境部シール部、下部を境部シール部の縦幅と同幅の細幅帯状のシール部とし、両S字曲線状辺(なで肩部)左右側部シール部を上部両S字曲線状辺(逆さなで肩部)左右側部シール部とほぼ同幅(その上収納室S字曲線状辺左右側部シール幅よりほんの僅かに幅広)としたもので(左右側部にはシール部を設けていない)、上下収納室の境部シール部の内側の細幅シールを弱シールとし、それ以外のシール部を強シールとしたもので、(E)正面側上部吊り下げ用小円孔下あたりから中央部下までを外形状とほぼ同形状のアルミラミネートシートで覆ったものである。
2.無効理由1について
請求人は、本件登録意匠は、引用意匠1(甲第1号証及び甲第2号証)(別紙第2参照)と類似するものであるから意匠法第3条第1項第3号に該当すると主張するので、以下、検討する。
まず、請求人は引用意匠1として甲第1号証及び甲第2号証を挙げ、両意匠は実質的に同一とするので両意匠を対比すると、甲第1号証に記載のFig.1,2の意匠を「オーツカ・マルチ・チャンバーバッグ」とし、甲第2号証の「オーツカCEZ注-MC」のMCをマルチチャンバーとしていること、また、両書証の図と写真版が中央シール部と上部シール部の縁取り表示が異なるため同一とは言えないが、その点以外はほぼ共通することから、請求人が主張するようにほぼ実質的に同一に近いものとするが、当審では写真版等が稍図より大きく、掲載数が多いことから甲第2号証に表された意匠と本件登録意匠と対比して検討することとする。
そこで検討するに、
(1)本件登録意匠
本件登録意匠は前示のとおりの構成態様である。
(2)甲号意匠
請求人が引用意匠1の1意匠とする甲第2号証の意匠(以下甲号意匠という)は、その書証の最終頁右下に1998年6月作成とあることから、本件登録意匠出願前に公知となった輸液バッグの意匠であり、その形態は刊行物(カタログ)「OnePush オーツカCEZ注-MC」(1998年6月発行(作成))赤矢印で示した輸液バッグ及びその他頁の輸液バッグ(頁数字不記載のため不明)掲載の意匠であり、その形態は同図版及び写真版に示されたとおりとするものである。
すなわち、その主な形態を、(ア)下端部中央に抽出口栓を設け、袋部全体を薄いシート状の略縦長隅丸長方形状とし、シール部により上半部に薬剤収納室を、下半部に溶解液収納室を区分けして一連に設けた構成の輸液バッグであって、(イ)一連の袋部(注出口栓を除く)を左右対称の正背面を同形状とし、全体の外周形状を、上辺左右両角部を隅丸形状とし、下辺左右両角部を稍大きな隅丸形状としたもので、熱溶着シール部は、(ウ)上半部の薬剤収納室を、正方形に近い隅丸長方形状とし、その周りをシール部としたもので、上部シール部は幅広帯状とし、その中央に吊り下げ用の小円孔を穿ち、左右側部シール部は上部シール部縦幅の1/5程の細幅帯状とし、下部シール部(上下収納室の境部シール部)はその左右幅の倍強の帯状としたもので、(エ)下半部の溶解液収納室を、薬剤収納室より縦幅の長い(内容量の大きい)略縦長隅丸長方形の下部を左右両隅丸形状から中央下へ緩やかな傾斜状とした形状とし、その周りをシールしたもので、左右側辺部シール部は上半部と同様の細幅帯状とし、下部シール部を左右細幅より幅広帯状とし、境部シール部を下部シール幅より若干幅広の帯状とし、該書証には明確な記載がないものの「手で押して隔壁を開通させる」とあることから、上下収納室の境部シール部の内側の細幅シール部を弱シール部とし(写真版参照)、それ以外のシール部を強シール部としたものである。
(3)本件登録意匠と甲号意匠との類否について
本件登録意匠と甲号意匠とを対比すると、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、その形態について以下に示す共通点及び差異点が主として認められる。
すなわち、共通点として、両意匠は、(a)同様に下端部中央に抽出口栓を設け、袋部全体を薄いシート状の略縦長隅丸長方形状とし、シール部により上半部に薬剤収納室を、下半部に溶解液収納室を区分けして一連に設けた構成の輸液バッグであって、(b)一連の袋部(注出口栓及びアルミラミネートシートを除く)を左右対称の正背面を同形状とし、全体の外周形状を、上辺左右角部を隅丸状とし、下辺左右角部を隅丸形状とした基本的な構成態様とした点、具体的には、熱溶着シール部を(c)上半部は、薬剤収納室の上部シール部を幅広帯状とし、そのほぼ中央に吊り下げ用の小円孔を穿ち、上下収納室境部シール部縦幅を上部シール部縦幅の半分程の細幅帯状シール部とした点、(d)溶解液収納室は、薬剤収納室より縦幅を長くし(室内容量の大きい)、下部を左右両隅丸形状から中央下へ緩やかな傾斜状とし、その上下部をシールしたもので、境部シール部を下部シール幅とほぼ同幅の帯状とし、上下収納室の境部シール部の内側の細幅シール部を弱シール部とし、それ以外のシール部を強シール部とした点、が認められる。
一方差異点は、(あ)本件登録意匠は、一連の袋部の左右側辺中央ほんの僅か上寄り部に左右同形の稍浅い半円弧状の切り欠き部を設けたのに対して、甲号意匠にはそのような切り欠き部を設けていない点、(い)本件登録意匠は、袋部下辺形状を中央横幅1/2程の水平部から上方へ左右になだらかな斜辺を描き、角部を隅丸形状としたのに対して、甲号意匠は、下辺中央横幅1/2強の水平部から左右角部の稍大きな隅丸形状に繋いだ形状とした点、(う)上半部を、本件登録意匠は薬剤収納室を縦長長方形下方(1/4弱)を逆さなで肩広口瓶様形状とし、その両側S字曲線状辺(逆さなで肩部)の左右側部シール部を上部シール縦幅とほぼ同幅の幅広状とし、境部シール部を上部シール部縦幅の半分程とし、左右側部にはシール部を設けていないのに対して、甲号意匠は薬剤収納室を正方形に近い隅丸長方形状とし、その周りをシール部で囲み、両側部シール部を上部シール部縦幅の1/5程の細幅帯状とし、境部シール部を両側部シール部幅の倍強の帯状とした点、(え)下半部を、本件登録意匠は、溶解液収納室を略縦長隅丸長方形上方(1/3弱程)をなで肩広口瓶様形状(上半部逆さほぼ同形状より瓶口部相当幅を僅かに細く、首部長さが僅かに長い)としたもので、その両側S字曲線状辺(なで肩部)の左右側部シール部を上部シール部縦幅とほぼ同幅とし、左右側部にシール部を設けていないのに対して、甲号意匠は、溶解液収納室を略縦長隅丸長方形状とし、上部を境部シール部、左右側部に細幅のシール部を設けて、周りをシール部で囲んだ形状とした点、(お)本件登録意匠は、正面側上部吊り下げ用小円孔下あたりから中央部までをアルミラミネートシートで覆ったのに対して、甲号意匠にはそのようなシートを設けていない点、が主に認められる。
そこで上記共通点と差異点につき、両意匠の類否判断に及ぼす影響を意匠全体として検討する。
まず、両意匠において共通する前記基本的構成態様の(a)及び(b)の点については、両意匠の属する分野においては通常見られる態様であって、両意匠にのみ限った格別特徴のある態様とは言えず、類否判断に与える影響は小さい。具体的な態様のうち(c)の上半部の薬剤収納室の上部シール部中央に輸液バッグ吊り下げ用の小円孔を穿つために幅広帯状とした点は、いずれも輸液バッグの分野においては通常見られる態様であって、この点も類否判断に与える影響は小さく、(d)溶解液収納室は、上半部の薬剤を溶解するために薬剤量より多量の溶解液を必要とすることから、薬剤収納室より縦幅の長い(内容量の大きい)形状としたまでであり、また、その下辺部を左右同隅丸形状とし、その左右両側から中央下へなだらかな傾斜状とした態様は、溶解液を中央注出口栓からスムーズに抽出するために傾斜状としたまでであり、このような形状とすることは用途及び機能的要請によるところとも言え、この分野では通常行われているところであり、両意匠に限った特徴とすることもできず、溶解液収納室の上下部をシールすることも、下部シール部に注出口栓を設け、その周りを補強するためにやや幅広帯状にすることも、さらに、溶解液収納室部分を手で押して上下室の隔壁を開通するため上下室の境目シール部の内側の細幅シール部を弱シール部とし、その他の部分を薬液が漏れないように強シール部とすることも、注出口栓や弱シール部を併設するために境部シール幅を側部シール部幅よりやや幅広の帯状とすることも、いずれも輸液バッグの分野においては、その機能を効率よく果たすため、形状やシール幅強度において共通する態様になることは避けられないものと認められることから、それぞれがともに両意匠のみの共通する特徴とすることもできず、類否判断に与える影響が大きいとは言い難い。
これに対して差異点は、(あ)の一連の袋部の左右側辺中央僅か上寄り部に同形の稍浅い半円弧状の切り欠き部を設けた点については、両意匠の属する分野においては、上下収納室の境部の両脇に半円弧形状や「く」の字形状などの小さな切り欠き形状を設けることは通常行われていることからすれば、この切り欠き形状を設けた点のみでは類否判断に与える影響はさほど大きいものとも言えない。(い)の下辺形状については、中央水平部から左右になだらかな斜辺を形成したか否かの差異であり、その斜辺もなだらかであり、ともに中央水平部、左右の角を隅丸形状にした点では共通することから、その差異はほんの僅かな差異に過ぎないものと言えよう。(う)の薬剤収納室の縦長長方形下方(1/4弱)の逆さなで肩広口瓶様辺形状及び(え)の溶解液収納室の略縦長隅丸長方形上方(1/3弱程)のなで肩広口瓶様辺形状(上半部逆さほぼ同形状より瓶口相当幅を僅かに細く、長さが僅かに長い)と、半円弧状切り欠き部を含む両側辺部形状で囲まれた中央部シール部態様、つまり、概略曲線特太H字様形状(以下、特太H字様形状と言う)に形成したシール部の態様を、輸液バッグのほぼ中央部分に、全体の縦長さの1/3弱程を占める部分に表し、さらに上下収納室両側部にシール部を設けていないことからその特太H字様形状シール部分を周囲から浮かび上がらせ、強調させることとなり、本件登録意匠の特徴とも言うべき態様を形成しているのに対して、甲号意匠のように本件登録意匠のそのシール部と同程度の範囲に表されたシール部の態様は、薬剤収納室下方及び溶解液収納室上方形状をともに同幅、同形の対抗する隅丸コの字形状辺と両側部平行辺形状とに囲まれた態様とし、やや幅広の水平帯状形状の境部シール部と上下ともに平行同細幅帯状とした左右側辺部シール部で構成した態様、つまり平行細幅シール部と水平倍幅シール部を直角に構成した所謂細H字形状をそのまま表した態様は、この分野では従来から通常知られた形状、態様であって、格別特徴を有する形状、態様とは言えず、甲号意匠とは異なる上述した独自の特徴あるシール部の形態との差異が類否判断に与える影響は大きく、両意匠は別異の感を呈する意匠であると言わざるを得ないものと認められる。
そして、それに加えてさらに、本件登録意匠のそのシール部分の態様を仔細に観ると、その上下収納室の隅丸コの字状突出部形状(なで肩広口瓶様形状の首上部分)の長さも幅も、S字状曲線辺形状(なで肩広口瓶様形状のなで肩から首部下部分)も微妙に相違することから、逆に上下に非対称とする、むしろ均衡を保たない微妙な変化を有する形態と言え、甲号意匠とは異なる独自の視覚的まとまりを形成しているものと認められ、その態様が両意匠の類否判断に与える影響は格別大きいと言わざるを得ない。
なお、(あ)において左右側片に設けた半円弧状切り欠き形状については、その形状の周りの形状との関連性、あるいは周りの形状に特徴がない場合に、その切り欠き形状のみを観た場合にはこの物品分野で通常行われている中央部分左右側片に設けられている小さな単なる切り欠き形状であると言わざるを得ず、大きな特徴となりにくいものとしたものの、上述したように特徴あるシール部形状を構成する特太H字様形状の一部を形成する半円弧状切り欠き形状としてみた場合とでは大いに異なり、特徴ある態様を形成する一端を担う特徴の一部を構成しているものと認めざるを得ない。
(お)のアルミラミネートシートの有無は、そのシートそのものが薬剤の変質等を防ぐ薬剤収納室を覆うものであり、輸液バッグの分野においては通常みられるところであって、使用時には剥がしてしまうものであり、その形状も上辺中央に極小さな指掛け用の突出半円形状を設け、上半部外形状そのままの極薄シートであることからすれば、特に特徴を見いだすこともできず、類否判断に与える影響はほんの僅かなものにすぎないものと言えよう。
そうすると、前述のとおり共通点はこの物品分野において通常みられる態様、あるいはこれら物品分野において機能を効率的等のため通常行われている範疇に入る形態であって、類否判断に影響を与えるものとは評価できず、これに対して両意匠の差異は、本件登録意匠の特徴をよく表すところに係わり両意匠の別異感を看者に強く印象付けており、共通点の類否判断に及ぼす影響を凌駕するに十分で、両意匠は全体として類似するものとすることができない。
以上のように、引用意匠が甲第2号証としての場合については上記の通りであるが、では甲第1号証との対比についてはどうかと言えば、前述したように甲第1号証と甲第2号証とは(請求人はほぼ実質的に同一と言う)中央シール部と上部シール部の縁取り形状が異なっており、その他はほぼ同一に近いのでその縁取り形状等について検討すると、本件登録意匠にはそのような形状は表されていないが、上部シール部を縁取り形状とすることも、中央シール部のシール形状線が重なる形状とすることもこの物品分野では通常行われていることからすれば僅かな差異にすぎず、類否判断に影響を与えるほどの差異とは認められないが、その余の形態は、甲第2号証とほぼ同一に近いことから上述の甲第2号証との判断と同様であり、本件登録意匠と甲第1号証とも類似するものとすることはできない。
なお、請求人は弁駁書を提出して、「プラスチックフィルム製の袋体の製造において、複数のプラスチックフィルムを熱シールした結果生ずるシール線により形成される形態はこの種袋体の製造方法に付随するものであり、意匠的効果は格別のものとは言えない。」と主張するが、確かにシール部形成においてはプラスチックフィルムを熱シールして製造する訳であるが、輸液バッグ全体のうちのどの部分をどの程度の幅に形成するかは事前に、輸液バッグとしての機能、効果を効率よくするため等を検討して企画、あるいは創作して決定しなければならない訳であって、その企画、創作に基づき決定されたシール部分の形状、幅を含む全体の形態を形成するための製造工程を調整した後製造することが通常と察せられることからすれば、確かにシール部を直接形成するのは機械で製造されるものの、製造前にシール部の形状、幅を創作、決定することから、そこに意匠の創作があったものと認められ、請求人の主張は採用することはできない。
4.無効理由2について
請求人は、本件登録意匠は、甲第1号証または甲第2号証に、甲第3号証を組み合わせることにより、当業者なら容易に意匠の創作ができたものであるから、意匠法第3条第2項の規定に該当すると主張するので、以下、検討する。
まず、本件登録意匠、甲第1号証及び甲第2号証の形態は、上記の通りの形態であって、甲第3号証(別紙第3参照)の主な形態は、上端部中央に吊り下げ用の突出片とその右に注入栓、下端部中央に抽出口栓をそれぞれ設け、袋部全体を薄いシート状の略縦長隅丸長方形状とし、周囲を細幅帯状シール部で囲み、中央より上寄りにシール部で上半部に粉末製剤収納室、下半部に液状製剤収納室を区分けして一連に設けた構成の輸液バッグであって、中央上寄りのシール部の左右側辺に半円弧状の切り欠き部を設け、吊り下げ突出片の左右角部をやや大きな隅丸形状とし、その中央上寄りに吊り下げ用の穴を穿った形状としたもので、「ヒートシールは外力を加えることにより剥離可能に形成されている」ものである。
そこで検討するに、請求人は、甲第1号証または甲第2号証の輸液バッグの形態に、甲第3号証に表された図の粉末製剤(甲第1号証、甲第2号証では薬剤)の容器の中央やや上、両側辺に設けられた半円弧状の切り欠き形状を組み合わせる(半円弧状に切り欠く)ことにより、本件登録意匠の形態を容易に意匠の創作ができたものと主張するが、まず、その基礎の形態となる甲第1号証及び甲第2号証は、上記の如く本件登録意匠とは類似するものとは言えないから、その類似しない甲第1号証及び甲第2号証の両側辺に本件登録意匠と同様の半円弧状に切り欠いた形態を想定しても、そこには本件登録意匠と同様の形態を見いだすことができず、請求人が主張する容易に創作をすることができたものとは認められず、本件登録意匠は意匠法第3条第2項に該当する意匠ともいえない。
以上のとおりであるので、本件登録意匠は、請求人の主張及び提出した証拠によっては、意匠法第3条第1項第3項の規定に該当するにもかかわらず登録されたものとして、また、意匠法第3条第2項の意匠に該当するにもかかわらず登録されたものとして、その登録を無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2005-01-27 
結審通知日 2005-01-31 
審決日 2005-02-23 
出願番号 意願2000-16726(D2000-16726) 
審決分類 D 1 11・ 113- Y (J7)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 生亀 照恵 
特許庁審判長 日比野 香
特許庁審判官 山崎 裕造
杉山 太一
登録日 2001-03-09 
登録番号 意匠登録第1108823号(D1108823) 
代理人 松井 宏記 
代理人 小松 陽一郎 
代理人 宇田 浩康 
代理人 小谷 悦司 
代理人 薬丸 誠一 
代理人 川瀬 幹夫 
代理人 岩田 徳哉 
代理人 藤本 昇 

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