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審決分類 |
審判 判定 同一・類似 属さない(申立不成立) C6 |
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管理番号 | 1124383 |
判定請求番号 | 判定2005-60033 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠判定公報 |
発行日 | 2005-11-25 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2005-05-20 |
確定日 | 2005-09-22 |
意匠に係る物品 | 食器洗浄機 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1073346号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面代用写真に示す「寿司皿用洗浄機」の意匠は、登録第1073346号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。 |
理由 |
第1. 請求の趣旨及び理由 請求人は、「イ号意匠は意匠登録第1073346号(以下、本件登録意匠という)に類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。」と申し立て、証拠として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出している。 その理由と申立の内容は、概ね次のとおりである。 イ号意匠は、インターネットの被請求人ホームページ上に掲載された製品紹介欄に掲載されている「寿司皿用洗浄機 SDC-150」(甲第1号証)であって、被請求人が製造・販売を行っているものであるが、イ号意匠は本件登録意匠における要部において共通し、加えて多くの具体的構成態様が共通するため、相違点を含めて意匠全体として総合的に判断しても共通点が相違点を凌駕し、看者に対し共通の印象を与えるから、本件登録意匠とイ号意匠は類似する。 そして請求人は、製品の写真(甲第2号証)、及び図面(甲第3号証)により、イ号意匠の詳細を示している。 1.本件登録意匠とイ号意匠の対比 1)共通点 [基本的構成態様] a)全体を直方体状の筺体に脚部を設けた形状とし、筺体上面に、食器投入口と食器排出口である2つの円形孔を横に並べて設け、各円形孔外周沿いに4本のガイド棒を配し、筺体正面側略中央に正面視横長長方形状のゴミ用引き出しを配した。 [具体的構成態様] b)円形孔は、筺体上面正面寄りに、横幅に対し略1/3中央からそれぞれ左右端部寄りに配され、c)ガイド棒は円形孔に対し、略×字状に等間隔に4本配され、d)ガイド棒4本のうち後方2本を前方2本より高さを高くし、e)ガイド棒は4本とも断面形状を円形とする棒状で、先端部の円形断面形状を小さくし、f)筺体正面側上端部はテーパー面を設け、g)筺体本体は、正面側略中央から上下に部品構成が分かれ、略中央に分割線が表れ、h)筺体底面四隅に略円柱状脚部を設け、i)脚部は上端接続部、中央柱状部、下端ベース部の3つの部位から構成され、j)上端接続部と下端ベース部は中央柱状部より径が大きい。 2)相違点 [具体的構成態様] k)筺体上面手前について、イ号意匠は横長楕円形状の小孔部を設けているのに対し、本件登録意匠には無く、l)ゴミ用引き出し下方が、イ号意匠は垂直方向に3部品に分かれているのに対し、本件登録意匠は分かれておらず、m)ゴミ用引き出しの取手について、本件登録意匠は略コ字状取手を中央に設けているのに対し、イ号意匠は略庇状取手を上端に設けており、n)操作パネルについて、本件登録意匠は筺体正面側左上に、縦長長方形状の操作パネルを配しているのに対し、イ号意匠はテーパー面中央に、横長長方形状の操作パネルを配している。 2.本件登録意匠の要部 この種物品において、基本的構成態様が本件登録意匠と共通する意匠は本件登録意匠出願前には全く存在しなかった。本件登録意匠出願前の食器洗浄機は、筺体上面に突出部を設け、操作部等を配したり、筺体の形状そのものが、シンプルな直方体状ではなかった。本件登録意匠は上面を平坦面とし、食器を筺体上面に載置可能としており、機能的に優れた意匠で、上面を平坦面とする意匠は本件登録意匠出願前には全くなかった。すなわち、直方体状の基本形状の平坦面状に2つの円形孔のみを配した点は、本件登録意匠の特徴が外観上顕著に表れている。 従って本件登録意匠の基本的構成態様は新規性が非常に高く、本件登録意匠の要部であると認められる。 3.意匠の類否判断 両意匠は意匠に係る物品が一致し、形態については、基本的構成態様全てについて共通する。 具体的構成態様については、前記共通点及び相違点が認められるため、相違点について検討すると、k)イ号意匠の横長楕円形状の小孔部は、全体から見れば小さな部位であり、その有無は微差に過ぎず、l)ゴミ用引き出し下方が相違するが、筺体の部品構成は製作上の都合により決定されるものであり、部品構成の相違が類否判断を左右する観点とは成り得ず、m)ゴミ用引き出しの取手についての相違は、全体から見れば小さな部位の相違に過ぎず、微差の範囲にとどまるものであり、n)操作パネルについて、両意匠は配された箇所が相違し、縦位置か横位置かの相違も認められるが、長方形状の操作パネルである点は共通し、全体から見れば小さな部位であるため、類否判断を左右する観点とは成り得ない。 以上を意匠全体として総合的に判断すると、前記のとおり本件登録意匠の要部は基本的構成態様であり、基本的構成態様が全て共通する両意匠は、共通の印象を看者に与え、加えて、両意匠は具体的構成態様についても上記のとおり共通し、多くの態様が共通することが認められ、一方、相違点については、上記のとおり、類否判断を左右する観点とは成り得ない、全体から見れば微差にすぎない相違点である。 してみれば、イ号意匠は本件登録意匠における要部において共通し、加えて多くの具体的構成態様が共通するため、相違点を含めて意匠全体として総合的に判断しても、いまだ相違点が全体に与える印象は微差の範囲にとどまり、共通点が相違点を凌駕し、看者に対し共通の印象を与えるものと判断される。 第2.被請求人の答弁 被請求人は、イ号意匠(製品)、イ号意匠写真、イ号意匠図面に示す意匠は、登録第1073346号意匠に類似する意匠の範囲に属さないと答弁し、証拠として、乙第1号証ないし乙第12号証を提出し、要旨以下のとおり主張している。 請求人は、「基本的構成態様が共通する意匠」、「直方体状の基本形状の平坦面である上面に2つの円形孔のみを配した点を要部とする意匠」、は、「本件登録意匠出願前にはまったく無かったこと」をもって新規性が非常に高く、本件登録意匠登録意匠の要部であると主張している。 しかし、本件登録意匠の各構成態様は、乙第1号証ないし乙第10号証に開示されているか、資料を提示するまでもない公知または周知デザインに過ぎないから、本件登録意匠は「直方体状の基本形状の平坦面である上面に2つの円形孔のみを配した点」を要部として登録されたのではなく、装置上面を平坦面とすること、上面に2つの円形孔を配したことに加え、公知または周知意匠(デザイン)がそれぞれ相まって一体化された、極めて限定された意匠として登録されたものであり、本件登録意匠公報の同一形状のみが意匠の要部となりえるものである。 第3.当審の判断 1.本件登録意匠(別紙第1参照) 本件登録意匠は、平成11(1999)年3月1日に出願され(意願平11-5048号)、平成12年(2000)3月17日に意匠権設定の登録がなされ、平成12(2000)年6月5日に意匠公報が発行された意匠登録第1073346号であって、願書及び願書添付の図面によれば、意匠に係る物品を「食器洗浄機」とした意匠であって、その形態を同図面記載のとおりとしたものである。 2.イ号意匠(別紙第2参照) イ号意匠は、インターネットの被請求人ホームページ上に掲載された製品紹介欄に、写真により掲載された「寿司皿用洗浄機 SDC-150」の意匠(甲第1号証)であって、その形態を同写真に現されたとおりとしたものである。 なお、請求人、被請求人とも、それぞれイ号意匠を図面に書き起こし提出しているが、上記写真はその意匠の要旨を検討するに充分な程度に現されているので同写真に基づきイ号意匠を検討し、やや不鮮明な上面については、分割構成が写真のものと略共通する、請求人提出の図面(甲第3号証)の平面図を参酌して検討する。 3.対比 両意匠を対比すると、意匠に係る物品については一致し、形態については次に示す共通点と相違点が認められる。 [共通点] (あ)全体を直方体状の筺体に脚部を設けた形状とし、上面部に食器投入口と食器排出口である2つの円形孔を横に並べて形成し、各円形孔外周沿いに4本のガイド棒を配し、正面部の略中央に正面視横長長方形状のゴミ用引き出し前板を形成し、上方側に配した操作パネルを略長方形状とした、基本的構成態様。 (い)筺体の直方体形状について、正面の丈と幅の寸法比率を略1:1.1とし、上面の奥行きと幅の寸法比率を略3:5として、奥行きの割合が小さい長方体とした点。 (う)円形孔について、直径を、筺体上面幅の約1/6程度とし、配置を、筺体上面の正面側寄りに、横幅に対してそれぞれ左右から略1/3の位置よりも端部寄りに形成し、ガイド棒を、4本のうち後方2本を前方2本よりも長くして、円形孔外周に沿って略「ロ」字状に等間隔に配置した点。 (え)正面部について、略中央部に横方向分割線を表し、上下にパネル構成を分けて形成し、上部パネルにつき、上端の稜角部部分に斜状切り欠き面を形成した点。 (お)脚部について、円形ベース部を下端に取り付けた細い柱状脚部を、筺体底面の四隅に設けた点。 [相違点] (ア)上面部の天板について、本件登録意匠は一枚板としたのに対し、イ号意匠は後方側をやや幅狭長方形板とし、その正面側を横に3分割状に形成し、そのうち中央部を幅狭に形成し、その手前側(正面部寄り)に横長楕円形状の小孔を設け、天板全体を4分割している点。 (イ)円形孔周囲のガイド棒の長さを、本件登録意匠は全体に短く、長い方のガイド棒でも円形孔直径に足りない長さとしたのに対し、イ号意匠は全体に長く、短い方のガイド棒でも同直径の略2倍の長さとしている点。 (ウ)正面部の分割構成について、本願意匠は横方向分割線に接した上部位置にゴミ用引き出し前板を配置したのに対し、イ号意匠はほぼ同下部位置にゴミ用引き出し前板を配置し、さらに下部パネルを、引き出しを左右から挟むように、垂直方向に3分割している点。 (エ)上部パネル正面上端部の斜状切り欠き面について、本願意匠は分厚い上部パネルの稜角部付近のみを小さく、単に面取り状に切り欠いたのに対して、イ号意匠はそこに操作パネルを配置するため、分厚い同パネルの稜角部を大きく、厚みのほとんどを占める斜状に切り欠いている点。 (オ)ゴミ用引き出しについて、本件登録意匠は、引き出しの幅を筺体正面幅の8割近くを占める広幅とし、同前板を正面部のパネルと略面一状に形成し、その中央部に略コ字状取手を突出させて形成したのに対し、イ号意匠は、引き出しの幅を筺体正面幅の半分弱とし、同前板を正面部のパネルよりも奥まった位置に形成し、その上端の幅いっぱいに略庇状取手を形成し、取手を含めた引き出し全体を正面部のパネルよりも中側に入り込むように配置し、引き出し周囲を矩形状に囲む細枠を、下部パネルから僅かに後退させて形成している点。 (カ)操作パネルについて、本件登録意匠は、正面部の上部パネルの左側端部近くの略中央位置に縦長に配置し、その操作ボタン(スイッチ)を縦2列に形成したのに対し、イ号意匠は、正面部の上部パネル上端の斜状切り欠き面の略中央に横長に配置し、その操作ボタンを横1列に形成している点。 (キ)脚部について、本件登録意匠は筺体四隅の端に配置し、円形ベース部を柱状部よりもわずかに大径としたのに対し、イ号意匠は筺体四隅の端からやや内側に配置し、円形ベースをかなり大径のものとしている点。 4.類否判断 これらの共通点及び相違点について検討すると、まず共通点について、共通点(あ)に示す全体の基本的構成態様については意匠全体の骨格を成すものであるが、直方体状の筺体に脚部を設けた態様はこの種物品に限らずごく周知の態様であり、4本のガイド棒を配した2つの円形孔を洗浄機の上面部に形成したものや、正面部の略中央部に横長長方形状のゴミ用引き出しを配したものは、本件登録意匠の出願前に既に公然知られており(実開平1-157658号、実開昭61-194474号等参照)、また、略長方形状の操作パネルを筺体正面部の上方部に配することも、操作パネルを備えた厨房機器の分野においてありふれた態様であるから、これらの各態様は本件登録意匠とイ号意匠にのみ見られる特徴と成し得ず、この基本的構成態様のみで類否が一概に左右されるものでなく、類否判断に及ぼす影響は限定的である。そして、以上のような公知例があるということは、この種物品分野にあっては、意匠的創作の要点は、いかにこれらの態様を具体的形状に表し、相互に結合させて全体的まとまりを形成するかにあるので、類否判断は各部の具体的態様についての評価を待って、意匠全体として検討されなければならない。 よって、まず具体的構成態様の共通点について検討すると、筺体の直方体状に関する共通点(い)は、ありふれた直方体であることを示すに過ぎないうえ、食器の洗浄機の分野にあって、直方体を呈するものは既に知られており(実開昭57-72865参照)、円形孔についての共通点(う)は、その形成位置や大きさも、円形孔に沿ったガイド棒の構成態様も、従来から既に公然知られており(前掲実開平1-157658号や実開平1-135066号参照)、皿洗浄機の分野にあってはむしろ一般化している態様といえるものであり、正面部についての共通点(え)については、上端稜角部の斜状切り欠き面の形成は従来よりごく普通に行われてきている態様であって看者の注意を惹くところとならず、この部位の担う役割や全体に占める大きさ等を勘案して類否の判断が成されなければならないから、相違点(エ)についての判断を待たねばならず、横方向分割線を表したことについては、目新しい分割方法ではないから特徴となるほどではないが、分割線に基づく正面部のその他の構成要素、例えば引き出しの配置構成等を勘案して評価すべきであるから、横方向分割線についてはさらに検討するものとし、脚部についての共通点(お)は、目立たない部位に係るものであるうえに、ありふれた態様で、意匠全体に及ぼす影響が微弱な局所的共通点にすぎない。 以上のとおりであるから、イ号意匠と共通する具体的態様は、基本的構成態様同様、両意匠にのみ特徴的な態様ではないといえる。 次に相違点の検討に移ると、円孔周囲のガイド棒の長さについての相違点(イ)は、長短という数値的な差異に過ぎず、ガイド棒が配された円孔部の共通点(う)に基づく類似感を凌ぐものでなく、脚部についての相違点(キ)は、見えにくい部位の局所的差異に過ぎず、類否判断を左右するものではない。 しかし、その他の、上面部の天板についての相違点(ア)、正面部の分割構成についての相違点(ウ)、上部パネル正面上端部の斜状切り欠き面についての相違点(エ)、ゴミ用引き出しについての相違点(オ)、操作パネルについての相違点(カ)は、それぞれ外観上目に着きやすい部位に表されていると共に、大きな面積を占める部位か、使い勝手にかかわる部位であり、特に引き出しについて、本件登録意匠の引き出し前面部は既に見られる形状であるのに対し(前掲実開昭61-194474号参照)、引用意匠の引き出し形状はこれと大きく異なるため、これら相違点として表れる態様は需要者の関心を惹き、類否判断を左右する大きな要素となるものである。 すなわち、さらに検討するとした横方向分割線における共通点については、正面部の分割構成についての相違点(ウ)に、ゴミ用引き出しについての相違点(オ)、操作パネルについての相違点(カ)が加わることで、その共通感は希釈されるどころか、周囲の差異に埋没し、正面部全体は相違点が共通点を圧倒し、両意匠間に異なる美感を惹起させるものとなっており、上面部の天板についての相違点(ア)には、天板部から筺体内部への手立ての有無が表れているから、需要者は一定の関心を持つはずであり、類否判断上無視することはできないものである。そして、上部パネル正面上端部の斜状切り欠き面の大きさ及び操作部配置の有無という相違点(エ)は、操作性に具体的に係わるので需要者の注意を惹く差異といえるから、切り欠き面形成といういわば概念的な共通性を遙かに凌駕するものである。 以上を総合すると、基本的構成態様を含め、両意匠の各共通点は既に知られた態様の中に見て取れるものであって、本件登録意匠を特徴付ける構成要素とは成し得ないものであるから、本件登録意匠の意匠的特徴は、共通点に示された態様と相違点に掲げた態様が結合されたものというべきであるが、前記したとおり、相違点(ウ)、(エ)、(オ)、(カ)及び(ア)が相まって示される意匠的まとまりは、両意匠間に異なった視覚的印象をもたらし、その視覚効果は、各共通点や共通点が相まって奏する効果を凌駕し、美感を異ならせるものとなっている。すなわち、イ号意匠を本件登録意匠に類似するものとすることはできない。 5.むすび したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないものと認められる。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2005-09-08 |
出願番号 | 意願平11-5048 |
審決分類 |
D
1
2・
1-
ZB
(C6)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 樋田 敏恵 |
特許庁審判長 |
日比野 香 |
特許庁審判官 |
杉山 太一 樋田 敏恵 |
登録日 | 2000-03-17 |
登録番号 | 意匠登録第1073346号(D1073346) |
代理人 | 渡邉 知子 |
代理人 | 日高 一樹 |