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審決分類 |
審判 L3 |
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管理番号 | 1129041 |
審判番号 | 無効2004-88014 |
総通号数 | 74 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2006-02-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-06-01 |
確定日 | 2006-01-19 |
意匠に係る物品 | 郵便ポスト |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1010773号「郵便ポスト」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1010773号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 請求人の申立及び理由 請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由として、意匠登録第1010773号(以下、「本件登録意匠」という)は、出願前に公然と設置された、甲第1号証及び甲第3号証に表れた郵便ポストの意匠と類似であり(無効理由1及び2)、また、本件出願前に頒布された甲第2号証及び甲第3号証の刊行物に表れた意匠、及び、甲第4号証の刊行物に表れた意匠と類似のものであり(無効理由3乃至5)、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当する。また、本件登録意匠は、本件出願前に頒布された甲第4号証の刊行物に表れた意匠と同一であり(無効理由6)、意匠法第3条第1項第2号の規定に該当する旨主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。 甲第1号証 現総務省(旧郵政省)撮影の平成7年に札幌大通郵便局前に 試行設置した郵便ポストの写真のコピー 甲第2号証 郵政省発行、平成7年4月7日付のお知らせ 甲第3号証 財団法人日本郵趣協会、平成7年7月1日発行の「郵趣」6 頁〜7頁 甲第4号証 郵政省発行、平成8年7月8日付「郵務局長定例記者会見配 布資料」 甲第5号証 平成8年7月9日付日本経済新聞(38)面に掲載の記事 甲第6号証 平成8年7月9日付朝日新聞(13)面に掲載の記事 甲第7号証 郵務局総務課管理係作成、平成8年7月9日付の「郵務局関 係新聞記事」 第2 被請求人の答弁 上記審判請求書の副本を送付して、期間を指定して答弁を求めたが、被請求人は、何ら主張をしなかった。 第3 当審の判断 1. 本件登録意匠 本件登録意匠は、平成9年2月27日に意匠登録出願し、平成10年3月13日に意匠登録第1010773号として意匠権の設定の登録がされたものであり、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「郵便ポスト」とし、その形態を添付された図面に示すとおりとしたものである(別紙第1参照)。 すなわち、その形態は、 全体が、正面視縦横の長さが略同長で奥行きがわずかに短い略直方体状の本体部と、その下面に設けた柱状の脚部とからなり、本体部の正面側上半部に2個の矩形状の投函部を形成し、該投函部それぞれの上方に庇部を設けた基本的構成態様のものである点が認められ、 各部の具体的態様において、 (A)本体部につき、上面及び下面は、前後方向に湾曲しており、左右の側面は、上下辺を上下面の湾曲に合わせて凸弧状とし、かつ、平面視において弧状に膨出した形状である点、 (B)投函部につき、上端部寄りに、奥まった態様で投函口を形成し、該投函口周囲の面を、投函口に向かってすぼまり状の傾斜面とした態様のものである点、 (C)投函口につき、右側の投函口が左側の投函口に比べて幅広としている点、 (D)庇部につき、投函部と同幅で、正面視において上方にわずかに湾曲状とし、かつ平面視において前方に凸弧状に膨出したものである点、 (E)脚部につき、正面視と側面視の幅の比率を略2対1とし、断面形状が左右側部を円弧状とした小判型のものである点、 (F)各部の大きさの比率につき、本体幅を1とすると、本体高さ1弱、本体奥行き略0.7、脚部正面幅略0.4、脚部側面幅略0.2の比率である点、 が認められる。 2. 甲号意匠 各甲号証のうち、甲第4号証は、平成8年7月8日、当時の郵政省が、「郵務局長定例記者会見配付資料」として配付した資料の抜粋の写しであり、当該資料のうち、5頁所載の「準大型・形状別差入口」の意匠を、以下甲号意匠として審案する。 甲第4号証によれば、甲号意匠は、意匠に係る物品を「ポスト」とし、その形態を図面に示すとおりとしたものである(別紙第2参照)。 すなわち、その形態は、 全体が、正面視縦横の長さが略同長で奥行きがわずかに短い略直方体状の本体部と、その下面に設けた柱状の脚部とからなり、本体部の正面側上半部に2個の矩形状の投函部を形成し、該投函部それぞれの上方に庇部を設けた基本的構成態様のものである点が認められ、 各部の具体的態様において、 (A’)本体部につき、上面及び下面は、前後方向に湾曲しており、左右の側面は、上下辺を上下面の湾曲に合わせて凸弧状とし、かつ、平面視において弧状に膨出した形状である点、 (B’)投函部につき、上端部寄りに投函口を形成し、投函口周囲の面の態様は不明である点、 (C’)投函口につき、右側の投函口が左側の投函口に比べて幅広としている点、 (D’)庇部につき、投函部と同幅で、正面視を直状とし、平面視において前方に凸弧状に膨出したものである点、 (E’)脚部につき、正面視と側面視の幅の比率を略2対1とし、断面形状が不明なものである点、 (F’)各部の大きさの比率につき、本体幅を1とすると、本体高さ1強、本体奥行き略0.7、脚部正面幅略0.4、脚部側面幅略0.2の比率である点、 が認められる。 3.本件登録意匠と甲号意匠の同一性についての判断 請求人の主張によれば、無効理由6として、本件登録意匠は、その出願前に頒布された刊行物に記載された甲号意匠と同一であるから、意匠法第3条第1項第2号に基づき、無効理由を有するものである旨主張したものである。 まず両意匠は、意匠に係る物品が、共に「ポスト」に係るものである点で一致する。 次に形態において、以下の共通点及び差異点が認められる。 まず、共通点として、 全体が、正面視縦横の長さが略同長で奥行きがわずかに短い略直方体状の本体部と、その下面に設けた柱状の脚部とからなり、本体部の正面側上半部に2個の矩形状の投函部を形成し、該投函部それぞれの上方に庇部を設けた基本的構成態様のものである点が認められ、 各部の具体的態様において、 (a)本体部につき、上面及び下面は、前後方向に湾曲しており、左右の側面は、上下辺を上下面の湾曲に合わせて凸弧状とし、かつ、平面視において弧状に膨出した形状である点、 (b)各投函部につき、それぞれの上端部寄りに投函口を形成した点、 (c)投函口につき、右側の投函口が左側の投函口に比べて幅広としている点、 (d)庇部につき、平面視において前方に凸弧状に膨出したものである点、 (e)脚部につき、正面視と側面視の幅の比率を略2対1としたものである点、 (f)各部の大きさの比率につき、本体幅を1とすると、本体高さ1弱、本体奥行き略0.7、脚部正面幅略0.4、脚部側面幅略0.2の比率である点、 が認められる。 これに対して、差異点として、各部の具体的態様において、 (d’)庇部につき、本件登録意匠は、それぞれ正面視において、わずかに上方に湾曲状としているのに対して、甲号意匠は、直状としている点、 が認められる。 また、甲号意匠は、その具体的態様において、 (b’)投函部につき、投函口を含む、面の態様が不明である点、 (e’)脚部につき、断面形状が不明である点、 が認められる。 そこで上記差異点等が、両意匠の同一性の判断に及ぼす影響について以下に検討する。 まず、差異点について、 (d’)の庇部の正面視形状につき、それぞれの庇部が、ポスト全体に対して占める比率が小さい部分であること、及び本件登録意匠の上方への湾曲の度合いが小さいものであることから、この点のみを注視すればわかる程度の差異に止まり、また、本体の正面視における横幅が大きいことから、それぞれの庇部の差異感が希釈化され、形状全体として観察した場合、ほぼ同一視できる程度のものである。 次に、甲号意匠の具体的態様が不明な点について、 (b’)の投函口周囲の面の態様について、甲号意匠は、甲第4号証の5頁の図面のみでは、その態様について、明確ではないものの、甲第5号証ないし甲第7号証の平成8年7月9日付新聞記事には、前日(平成8年7月8日)甲第4号証を配付した際に、同時に配布したと思われるポストの写真が掲載されており、これによれば、投函口周囲の面をうちすぼまり状の傾斜面に形成していることが明らかであり、これらのことから、甲号意匠の当該部分が、本件登録意匠とほぼ同一視できる程度の傾斜面を形成した態様のものであると推認することができる。 (e’)脚部の断面形状について、甲号意匠は、甲第4号証の5頁の図面のみでは、その態様について特定することができないものであるが、正面視及び側面視における幅の比率が、本件登録意匠の幅の比率と一致するものであり、本体部分が全体として丸みを帯びていること、甲第4号証の6頁の参考資料に掲載された平成8年3月31日現在のポストの脚部をいずれも円柱状としていることを参酌すると、甲号意匠の脚部について、その断面形状を、左右側面を円弧状とした小判型のものとすることが、当業者であれば容易に想到できるものといえるところであるから、甲号意匠の脚部の断面は、本件登録意匠の脚部とほぼ同一視できる程度の形状のものであると推認することができる。 以上を総合すると、本件登録意匠と甲号意匠は、基本的構成態様が共通し、具体的態様のいずれもがほぼ共通するものと認められる。 そうすると、本件登録意匠と甲号意匠は、意匠に係る物品が一致し、その態様においても、基本的構成態様及び各部の具体的態様において共通するものであるから、両意匠は、全体として同一のものといわざるを得ない。 4.むすび 以上のとおり、本件登録意匠は、その出願前に頒布された刊行物に記載された意匠と同一であるから、他の証拠について検討するまでもなく、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第2号に該当し、その意匠登録は、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第48条第1項の規定により、その意匠登録を無効とすべきである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2004-11-22 |
結審通知日 | 2004-11-25 |
審決日 | 2004-12-07 |
出願番号 | 意願平9-5731 |
審決分類 |
D
1
113・
113-
Z
(L3)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
藤 正明 |
特許庁審判官 |
内藤 弘樹 西本 幸男 |
登録日 | 1998-03-13 |
登録番号 | 意匠登録第1010773号(D1010773) |
代理人 | 竹内 麻子 |
代理人 | 渡辺 光 |
代理人 | 井野 砂里 |
代理人 | 辻居 幸一 |